166第4話オールトの雲
ミーターの大冒険
第七部
太陽系
第4話
オールトの雲
あらすじ
ファウンデーション暦492年、いよいよミーターとイルミナを載せたファー・スター2世号はアルファ星から出発して太陽系に入った。
人類の故郷の星系。懐かしい星、地球。
かつて、カビレ星系と言われていた太陽系。かつてアタカナと言われていた地球。
R・ミーター・マロウの主人アルカディアの志しを携えて、アルカディアのなし得なかった志しの実現の領域に確実に入ろうとしていた。
はたして地球の放射能汚染を駆除することができるのか?
ミーターは、太陽系と地球についての最終的情報を得ようとしてアルファに降りることにした。
その前にメルポメニアで入手した図書館の蔵書に記されていた地球と地球人類、そしてアルファの住民の起源の土地、ニフについての恐怖の出来事について驚嘆する。
その古文書のなかに、メルポメニアの滅亡寸前に記されたであろう『スペーサーとアルファ』なる書物をミーターは、イルミナに提示し、その概略の説明をさせる。
ニフの起源と核戦争の事実であった。
イルミナはまたニフ人が二種類いることを語る。
ニフ人たちは、核融合という理想のエネルギーを人類に提供するものの、謙譲の美を進んで実行し、祖先がそうであったように、移動の民に目覚め、密かに宇宙に出て行った。
彼らは後にシンナックス人として知られるようになる。それは、ナックの思想に同調していたニフ人以外にも地球全土に人種を越えて散らばっていったからである。
残ったニフ人たちは、地球各地で放射能に汚染された環境浄化をしつつ、最後まで地球を守り続けた。が、最終的には地球を手放さなくてはならなかった。そして彼らはテラフォーミングを必要としていたアルファに移住した。
イルミナは、銀河の歴史的収束点前後の大事件について繙(ひもと)く。
それは、ケルドン・アマディロ博士の「核反応増強装置」による「地球放射能汚染計画」であった。
アマディロは、イライジャ・ベイリーとハン・ファストルフ博士への恨み骨髄に達するほどに執念を燃やし、ついに復讐の刃を地球人撲滅という悲惨で残酷なシナリオを完成させようとしていた。
ついに太陽系の入り口にたどり着いた。人類の母なる太陽系。そして夢の地球。
ミーターは、ロボットには病原菌は感染しないことを承知のうえで、万全の防備態勢でアルファに降り立った。そこには一人の少女が待ち受けていた。
ミーターは、まずこの少女が語る彼らの星の名称がメルポメニアで入手したデータと食い違っていることに驚嘆する。
さらにミーターはアルファ人の特異性について知らされる。
そしていよいよ待望した太陽系に突入して行く。
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ミーター イルミナ、太陽系に入ったな。
イルミナ そうです。アルファ三連星の引力圏を離脱しました。
まず、オールトの雲に突入します。
オールトの雲は、ホウキ星と言われる彗星の生じる揺りかごとも呼ばれているところです。
ミーター コメットのことだよね。
イルミナ そうです。恒星(太陽)に近づくと
長い尾を放つようになる天体のことだわ。
それが太陽に接近し、太陽系の内円あたりに来ると尾を持ち始めるのよ。そして地球あたりでその光景は見事に綺麗な尾をもつ、ってことね。
それで、なかにはあの流星や流星群の母体のもとでもあると言われてます。
ミーター 流星の母体ね!
さぞ、地球上に降り注ぐ流星雨は素晴らしいだろうな。
イルミナ でもミーターさん、もし地球に大気がなかったら、直接地表に降り注いで、恐ろしい状態になってしまうわ。綺麗だ、って言ってる場合じゃ、ないですよ。
ミーター そうだな、問題は、どの程度、地球に大気の層が残っているかだよなぁ!
待てよ、そう言えば、あのアルファのモノリーさんが教えてくれたアルファの天候のコントロールの技法の秘密。
イルミナ なんですか、もしかして、バイオテクノロジーの応用のことですか。
ミーター そう、アルファの気候コントロールはバイオテクノロジーによる。
そしてそれはキノコの菌糸をカビレ山頂から飛ばすっていう方法なんだ。
イルミナ なんですって!
ミーター まさしく、キノコの菌糸の流星化だ。地球の大気蘇生に応用できるかもしれない。
イルミナ、またしてもお前のお手柄だかもしれない。