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流れる星(ミーター)

2023-06-09 19:59:19 | 地球へ
149第7話流れる星(ミーター)
ミーターの大冒険 
第六部 
地球へ
第7話 

流れる星(ミーター)

あらすじ

 ミーターとイルミナを乗せたファー・スター2世号は、ファウンデーション暦488年1月、カビレ星系目指して、第一回目の探索をおそらく恒星カビレ近くのオリオン座のベテルギウスの超新星爆発のガンマ線バーストによって大破し、ミーター・マロウも宇宙空間に放り出された。

 そこ近くの領域を航行中のR・レオナルド・エノビアレラに拾われた。R・レオナルド・エノビアレラは、自己修理のため銀河辺境のイオス星というロボット第零法則グループの製造・修理の基地に赴く途中であった。彼はミーターをイオス星につれて行くことにした。

 それから4年間、ミーターは独自なリハビリを受ける。ポニェッツ仕様のラヴェンダーのエキスの温泉療養である。

 4年が過ぎ、ファウンデーション暦492年、眠りにおちていたミーターは、修理されていたファー・スター2世号の中で、イルミナに起こされた。その時、ファー・スター2世号はシンナ星の軌道上にあった。

 ファー・スター2世号はシンナ星からカルガン星経由でコンポレロンに着く。

 コンポレロンでは、地上ではこれといった手がかりは見つけられなかったが、イルミナにある異変(フィードフォワード症候群)が生じ、不死の従僕の気配を感じる、という。

 イルミナの特殊能力で、ヴァジル・テニアドールという懐疑主義の歴史学者の頭脳から二つの情報を手に入れる。
 一つは約2万年前の航海日誌に記されてあった周辺の星の座標と、二つ目は故郷の星系カビレの異常さ、つまり、他には珍しい、ガス惑星を取り囲む巨大リングのある惑星と、他の岩石惑星を回る巨大衛星があること。

 その航海日誌の座標にはない恒星系が前方に存在していて、彼らは突如として、反ミュールで知られていたガイアを発見する。
 
 ガイアの長老ドムとの通信で地球とミュールに纏わる真実を知った。

 ガイアの誘導で、ファー・スター2世号はオーロラの恒星系に無事にたどり着く。

 二人の目の前には、オーロラの揺らめく極光が怪しく波打っていた。

  オーロラでジスカルド・レヴェントロフの機能停止の頭部を発見し、銀河歴史消滅以前の全体像を垣間見た。

 ファー・スター2世号に戻った二人は、オーロラの次の探索星をソラリアに定める。

 ミーターは、例のデニアドールの航海日誌にあった座標を現在時点の時差を考慮して修正して方向をロックした。おそらく例のソラリアであった。
 ミーターは日誌にあった、他の二つのスペーサーの星も、その座標には間違わないと確信した。
 
 ついにファー・スター2世号はかつてグレディアがいたと言われていたソラリアの軌道に着く。そこで、イルミナのリサーチによって、伝説通りに、大量のロボットがいることを確認する。そして両性具有の人間の存在も。

 ミーターとイルミナは、そこのロボットたちと両性具有の人間に遭遇するかどうか、選択の岐路に立つ。

 ミーターは、そこでイオス星で教わった「三十六計逃げるに如かず」を思い出す。

 次に、メルポメニアに着いた。ミーターは廃墟の街の探検を決めた。

149
イルミナ 流石ですね、ミーター教授。コンパーさん譲りのコンパスをちゃんと把握して、2万年前のスペーサー時代の天体図を思い描いたんですね。

ミーター まず、君の評価については99点とする。

イルミナ お褒め頂き光栄です。けどその1点というのは、どこがお気に召さなかったのかしら?

ミーター よくぞ訊いてくれた、秀才女子学生! その1点の減点の意味は、「流石」という表現だ。正確には「流星」、あるいはシューティング・スターと呼んでくれたまえ。

イルミナ なるほどね!ごもっともです、先生!
 ミーターさんは、流星のメテオからの言葉だったんですからね。しかも、アルカディアさんが命名して下さった名前でしたからね。「狙ったまとを正確に射止める」という意味でしたんでした。それが今では地球がまとになったんですね!

ミーター イルミナ、それと「銀河復興」、「消された歴史からの復興」、「汚染され死に絶えた地球の再生」がそのまとだわい。

イルミナ それを当時の天体図から証明しようとされるのですね。メルポメニアの図書館で地球時代の天体図を発見すれば、この星から逆算すれば、容易に地球とカビレ星系の座標が換算できるという目算。

ミーター それこそ「図星」だ!お見事。

イルミナ じゃあ、しっかりと防御服で、地上に降りて行って下さい。船内に苔の細胞が混入しないようにご注意下さいね。

ミーター 承知だ。抜かりはない。

イルミナ 「流星」様!

ミーター アハハハハ!

写真はケンタウルス座アルファ・ケンタウリ。三連星。その近くのプロクシマ・ケンタウリは、太陽系から一番近い(4.246光年)。同時にハビタブル・ゾーン内の住居可能な惑星もあるのではないかと目されています。


両性具有の人間

2023-06-05 19:13:56 | 地球へ
145第3話両性具有の人間
ミーターの大冒険 
第六部 
地球へ
第3話 

両性具有の人間

あらすじ

 ミーターとイルミナを乗せたファー・スター2世号は、ファウンデーション暦488年1月、カビレ星系目指して、第一回目の探索をおそらく恒星カビレ近くのシリウス星界近くでの超新星爆発のガンマ線バーストによって大破し、ミーター・マロウも宇宙空間に放り出された。

 そこ近くの領域を航行中のR・レオナルド・エノビアレラに拾われた。R・レオナルド・エノビアレラは、自己修理のため銀河辺境のイオス星というロボット第零法則グループの製造・修理の基地に赴く途中であった。彼はミーターをイオス星につれて行くことにした。

 それから4年間、ミーターは独自なリハビリを受ける。ポニェッツ仕様のラヴェンダーのエキスの温泉療養である。

 4年が過ぎ、ファウンデーション暦492年、眠りにおちていたミーターは、修理されていたファー・スター2世号の中で、イルミナに起こされた。その時、ファー・スター2世号はシンナ星の軌道上にあった。

 ファー・スター2世号はシンナ星からカルガン星経由でコンポレロンに着く。

 コンポレロンでは、地上ではこれといった手がかりは見つけられなかったが、イルミナにある異変(フィードフォワード症候群)が生じ、不死の従僕の気配を感じる、という。

 イルミナの特殊能力で、ヴァジル・テニアドールという懐疑主義の歴史学者の頭脳から二つの情報を手に入れる。
 一つは約2万年前の航海日誌に記されてあった周辺の星の座標と、二つ目は故郷の星系カビレの異常さ、つまり、他には珍しい、ガス惑星を取り囲む巨大リングのある惑星と、他の岩石惑星を回る巨大衛星があること。

 その航海日誌の座標にはない恒星系が前方に存在していて、彼らは突如として、反ミュールで知られていたガイアを発見する。
 
 ガイアの長老ドムとの通信で地球とミュールに纏わる真実を知った。

 ガイアの誘導で、ファー・スター2世号はオーロラの恒星系に無事にたどり着く。

 二人の目の前には、オーロラの揺らめく極光が怪しく波打っていた。

  オーロラでジスカルド・レヴェントトロフの機能停止の頭部を発見し、銀河歴史消滅以前の全体像を垣間見た。

 ファー・スター2世号に戻った二人は、オーロラの次の探索星をソラリアに定める。

 ミーターは、例のデニアドールの航海日誌にあった座標を現在時点の時差を考慮して修正して方向をロックした。おそらく例のソラリアであった。
 ミーターは日誌にあった、他の二つのスペーサーの星も、その座標には間違わないと確信した。
 
 ついにファー・スター2世号はかつてグレディアがいたと言われていたソラリアの軌道に着く。そこで、イルミナのリサーチによって、伝説通りに、大量のロボットがいることを確認する。そして両性具有の人間の存在も。

145
イルミナ ミーターさん、感じたわ、地下深くの地下坑に1個体または2個体の人間のような生体反応。

ミーター イルミナ、さっきは感じないで、今はじめて感じられたというのか?

イルミナ そうですけど、明らかにロボットが動く金属反応とは、違うわ。オーロラでは、地下坑道にいた機能停止状態のジスカルド・レヴェントロフ様を感じられなくて、悔しい思いをしたので、今度は失敗しちゃいけないと思ってね、サーヴェイ能力を別な波長に切り替えたんです。

ミーター 別な波長で?どこまでお前の能力は凄いんだ!
 ところで、その「人間のような」というのは、どういう意味なんだ?

イルミナ そうね、なんキロも離れたテリトリーに分散されてはいるものの、同じ反応なのです。
 性染色体が通常の人間の染色体と違うのよ。
 いうなれば、XXY という異形染色体ね。「反陰陽」と呼ぶことも可能ですね。

ミーター なんだって、人間もある生物のように「両性具有」ってあるのか?

イルミナ そうとしか考えられない反応なんです、ミーターさん。「宇宙は広い、神秘で溢れてる!」ってことでしょうか?

ミーター なにギャグ、言ってんだか!そんな場合じゃ、ないぞ、イルミナ。

イルミナ そうでした。ごめんなさい。

 そうね、明らかに両性具有って、性分化疾患では、ないわね。雌雄同体と同じことなんですから。ある種の植物や動物にみられる進化変化ということですね。
 ところで、どうされるんです、ボス?この惑星に降りられんですか?
 おそらく、ガール・ドーニックは降りて、彼らと直面したんだわ。勇気があったんですね!

ミーター 今考えている最中だ。
 それにしても、お前のその表現、気に食わないなあ。俺が勇気がないとバカにしているようにしか聴こえないけど。

イルミナ ごめんなさい。誤解しないでください。それはあくまでもガール・ドーニックの判断・行動への評価にしか過ぎない言い方で...

ミーター まあ、いい。イルミナ、その彼らに会ったら、地球についての情報が得られるか、どうか思案しているんだ。哲学的に。

イルミナ 心理歴史学的に、ですね!素晴らしい発想ですわ。そう来なくちゃ!

ミーター 今、ミュールのことを考えていた。ミュールとの相違と言ってもいい。

イルミナ なるほどね、ミーター教授。ミュータントの意味のことですね。ガールが追時した微細心理歴史学ですね!宇宙の神秘には、宇宙自体の構造的発展、単にプラス・マイナスを超えた視野から、もう一歩先の観点から見ないといけない、という、あれね!「宇宙潮流の地政学」!

ミーター まさしく、流石、学習するイルミショナー!

□『ファウンデーションの夢』、『ミーターの大冒険』の目次、及び
『銀河二万年史』を参照されたい方はこちら
⇨https://ocean4540.com/%ef%bc%92%e4%b8%87%e5%b9%b4%e5%be%8c%e3%81%ae%e9%8a%80%e6%b2%b3/%e3%80%8e%e3%83%95%e3%82%a1%e3%82%a6%e3%83%b3%e3%83%87%e3%83%bc%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%b3%e3%81%ae%e5%a4%a2%e3%80%8f%e3%83%bb%e3%80%8e%e3%83%9f%e3%83%bc%e3%82%bf%e3%83%bc%e3%81%ae%e5%a4%a7%e5%86%92-2/

□『ファウンデーションの夢』、『ミーターの大冒険』を再読されたい方はこちら⇨
https://ocean4540.com




ミーターの大冒険 第六部 地球へ 第20話 繭と両生類化

2023-01-02 08:53:15 | 地球へ
162第20話繭と両生類化
ミーターの大冒険 
第六部 
地球へ
第19話

繭と両生類化

あらすじ

 ファウンデーション暦492年、いよいよミーターとイルミナを載せたファー・スター2世号はメルポメニアからアルファに着く。

 ミーターは、太陽系と地球についての最終的情報を得ようとしてアルファに降りることにした。
 その前にメルポメニアで入手した図書館の蔵書に記されていた地球と地球人類、そしてアルファの住民の起源の土地、ニフについての恐怖の出来事について驚嘆する。

 その古文書のなかに、メルポメニアの滅亡寸前に記されたであろう『スペーサーとアルファ』なる書物をミーターは、イルミナに提示し、その概略の説明をさせる。

 ニフの起源と核戦争の事実であった。

 イルミナはまたニフ人が二種類いることを語る。

 ニフ人たちは、核融合という理想のエネルギーを人類に提供するものの、謙譲の美を進んで実行し、祖先がそうであったように、移動の民に目覚め、密かに宇宙に出て行った。
 彼らは後にシンナックス人として知られるようになる。それは、ナックの思想に同調していたニフ人以外にも地球全土に人種を越えて散らばっていったからである。

 残ったニフ人たちは、地球各地で放射能に汚染された環境浄化をしつつ、最後まで地球を守り続けた。が、最終的には地球を手放さなくてはならなかった。そして彼らはテラフォーミングを必要としていたアルファに移住した。

 イルミナは、銀河の歴史的収束点前後の大事件について繙(ひもと)く。

 それは、ケルドン・アマディロ博士の「核反応増強装置」による「地球放射能汚染計画」であった。

 アマディロは、イライジャ・ベイリーとハン・ファストルフ博士への恨み骨髄に達するほどに執念を燃やし、ついに復讐の刃を地球人撲滅という悲惨で残酷なシナリオを完成させようとしていた。

 ついに太陽系の入り口にたどり着いた。人類の母なる太陽系。そして夢の地球。

 ミーターは、ロボットには病原菌は感染しないことを承知のうえで、万全の防備態勢でアルファに降り立った。そこには一人の少女が待ち受けていた。

 ミーターは、まずこの少女が語る彼らの星の名称がメルポメニアで入手したデータと食い違っていることに驚嘆する。

 さらにミーターはアルファ人の特異性について知らされる。
 

 
162

ツムギ イルミナってなんですか?

ミーター 失礼しました。独り言です。

ツムギ ミーターさんは、お一人であの航宙船でいらしたのですか?もしかしたらお供のかたは、女性ですか?

ミーター いやいや、イルミナは女性というか、人間でもありません。

ツムギ まあ、そしたら他のものでしたら、なんでしょう?

ミーター また別の質問をさせてもらいます。
 
 この星は、とてもユニークです。ながひょろくて、島の端にカビレの山がありますよね?

ツムギ そうです。ミーターさんが仰るように人口は二万五千人が住んでいます。それぞれ、山に向かって8つの町が並んでいます。カビレの山の一番麓にマーキュリーという町があります。

ミーター それで、あなたのお住みの町の名前は?

ツムギ アタカナです。カビレからは三番目に近い町です。ビーナスの次です。

ミーター アタカナの次はなんですか?

ツムギ 次はマース、そしてジュピター、サターン、ウラノス、最後がネプチューンです。

ミーター なるほど、この8つの町は何かの類比のようですが、その由来についてはモノリー先生はなにかおっしゃっていましたか?

ツムギ その由来については知りません。先祖の昔から、そう呼ばれていたんですから、それ以上のことはわかりません。

ミーター おかしいですね。あなたの町だけ水で囲まれいますね。

ツムギ そうです。この水は海の水ではなく淡水です。島全体の農作物のための湖です。

ミーター なるほど、それでバイオテクノロジーとか気象をコントロールする技術が応用されているのですね。
 農作物の主な産物はなんですか?

ツムギ 百種以上の作物を畑で栽培し、果実のなる樹木も二十種類以上もありますが、わたしたちが一番大事に管理しているのは、桑の木と昆虫の蚕です。

ミーター なんですって!蚕ですか?
 なんのために。

ツムギ もちろん食用のためでもありますが、衣服の材料のためのシルクを作っています。それに...

ミーター それに?

ツムギ 繭を材料にした寝具の製造のためです。

ミーター 繭の寝具ですって!

ツムギ そうです。それがこの星の習慣です。蚕の繭のようなながひょろい形を大きくして、その中で寝ます。

ミーター 大変変わった習慣ですね?なんのためにそんな変わったことをするんでしょうか?

ツムギ さあ、ミーターさんのターミナスでは、わたしたちの習慣と違うんですね。

ミーター 違うもなにも!

 それじゃ、別の話題に変えてご質問させていただきます。
 この惑星はほぼ海です。男たちは漁業で海洋資源を採って船に載せて戻ってきますよね?

ツムギ そうです。それでもうすぐ、わたしどもの念願の技術がもうすぐ完成します。

ミーター ツムギさん、それってもしかしたらもう一つのバイオテクノロジーの応用ですか?

ツムギ なぜお分かりですか。人間の両生類化計画です。
 もうすぐ完成するとモノリー長老は言ってました。
 エラ呼吸は、地球以来のわたしどもの悲願です。


ミーターの大冒険  第六部  地球へ  第19話  コンパニオン  

2023-01-01 15:41:23 | 地球へ
161第19話コンパニオン
ミーターの大冒険 
第六部 
地球へ
第19話

コンパニオン

あらすじ

 ファウンデーション暦492年、いよいよミーターとイルミナを載せたファー・スター2世号はメルポメニアからアルファに着く。

 ミーターは、太陽系と地球についての最終的情報を得ようとしてアルファに降りることにした。
 その前にメルポメニアで入手した図書館の蔵書に記されていた地球と地球人類、そしてアルファの住民の起源の土地、ニフについての恐怖の出来事について驚嘆する。

 その古文書のなかに、メルポメニアの滅亡寸前に記されたであろう『スペーサーとアルファ』なる書物をミーターは、イルミナに提示し、その概略の説明をさせる。

 ニフの起源と核戦争の事実であった。

 イルミナはまたニフ人が二種類いることを語る。

 ニフ人たちは、核融合という理想のエネルギーを人類に提供するものの、謙譲の美を進んで実行し、祖先がそうであったように、移動の民に目覚め、密かに宇宙に出て行った。
 彼らは後にシンナックス人として知られるようになる。それは、ナックの思想に同調していたニフ人以外にも地球全土に人種を越えて散らばっていったからである。

 残ったニフ人たちは、地球各地で放射能に汚染された環境浄化をしつつ、最後まで地球を守り続けた。が、最終的には地球を手放さなくてはならなかった。そして彼らはテラフォーミングを必要としていたアルファに移住した。

 イルミナは、銀河の歴史的収束点前後の大事件について繙(ひもと)く。

 それは、ケルドン・アマディロ博士の「核反応増強装置」による「地球放射能汚染計画」であった。

 アマディロは、イライジャ・ベイリーとハン・ファストルフ博士への恨み骨髄に達するほどに執念を燃やし、ついに復讐の刃を地球人撲滅という悲惨で残酷なシナリオを完成させようとしていた。

 ついに太陽系の入り口にたどり着いた。人類の母なる太陽系。そして夢の地球。

 ミーターは、ロボットには病原菌は感染しないことを承知のうえで、万全の防備態勢でアルファに降り立った。そこには一人の少女が待ち受けていた。

 ミーターは、まずこの少女が語る彼らの星の名称がメルポメニアで入手したデータと食い違っていることに驚嘆する。
 

 
161

ミーター ツムギさん、この星はほとんど海のようですね。それにわたしの航宙船が降りてく最中に船から見た限り、男たちの姿が見えなかったみたいですが、かれらはどこにいるのですか?

ツムギ 男たちは海に出て、漁船に乗って漁をしています。月に一回満月の日に帰って来て、釣った魚を下ろしたら、七日間このヤマブキに戻って来て、カビレ山で祭りをして、また海に帰って行きます。

ミーター 「カビレ」の山ですって!!
 カビレって太陽系のことですか?

ツムギ ごめんなさい、わたしは知りません。わたしの知っていることはモノリー爺さんから教わったことだけです。
 カビレは島の中央にある一番高い場所です。
 そこに住民全員が登ってお祭りをします。

 太陽系ってなんですか?

ミーター なに言ってるんですか?
 太陽系のこと、ご存じないのですか?

ツムギ ええ、モノリー老人は、この祭りの時にわたしたちに長い話しをしてくれます。 
 毎回、同じ内容ですから、聞いているみんなは、イビキをかいて寝てしまいます。話しが終わったらみんな、目を覚まします。
 ですからわたしはモノリー先生の話しは全部覚えていますけれど、太陽系という言葉は知りません。はじめて聞く言葉です。

ミーター それじゃ、別な質問をさせて下さい。この星はアルファと言われていますが、ご存じですか?

ツムギ ええ、知っています。この星の名前はアルファです。別の名前は「新しい地球」です。ずっと昔に「地球」からアルファ人はやって来ました。

ミーター おかしいな!この星はプロクシマ・ケンタウリの回りを回っている惑星の一つじゃないんですか?

ツムギ ケンタウリというのは当たっていますが、正式には「アルファ・ケンタウリ」って言われています。「プロクシマ」という言葉ははじめて聞く言葉です。

ミーター じゃ、あの太陽の近くに、それより小さい二つの太陽が見えますね。あの二つのうちの大きい方はなんと呼んでいるのですか?

ツムギ ああ、大きい方は「コンパニオン」です。小さい方は「コドモ」と言います。

ミーター それでは「コンパニオン」の意味は?

ツムギ それはわたしたちのアルファ太陽の周りを80年で回っているからです。それで80年に一回、大きな祭りをこのヤマブキの中央の山カビレ山の麓に島中の人たちが漁や畑仕事を休んで、テントを張って祝います。

ミーター ええ、80年ですって!
 じゃ、聞きますが、アルファ人の平均寿命は?

ツムギ 80年です。

ミーター それじゃ、ちょうどアルファ人が生まれて死ぬのをちゃんと見守っているようですね。

ツムギ そうです。それで山の祭りを盛大に80年周期で行うのです。コンパニオンが一番大きく見える一番接近する年にです。そしてあの二連太陽はアルファ太陽と融合するのです。

ミーター 正式には、あの二連恒星が重なりあって、地球からだと、三番目に輝きが強い恒星に見えるんだがなあ。

ツムギ そういうふうにはきいていませんので、その通りです、とはわたしとしてはご返事できません。

ミーター まあ、いいです。それに、ツムギさん、夜になると、ω文字のような6つのジグザグの星座が見えますね。その一番下の一番暗い星の名前をご存じですか?

ツムギ ええ、その星座には名前があります。カシオペアです。そしてその一番下の一番暗い星のことをやっぱりωと呼んでいます、ミーターさん。そしてそのωにはもう一つの呼び名がありますよ。「悪魔の星」って言われております。カシオペアの一番下の一番暗い星のことをですね。あの星はオメガでしょう?

ミーター まいったなあ!ほとんどツムギさんが仰っていることは間違いとは真逆で、正しいんですから。

ツムギ ミーターさんの仰っている意味が全く理解できません。

ミーター (ほとんど独り言のように)オメガか!
 あなた(ツムギ)って女予言者のようですね。地球は放射能に汚染されていて、かたやターミナス、この銀河系の一番遠い星であり、同時に人類の最後の植民惑星ですから。
 言ってみればターミナスもオメガ星っていうことですか。ツムギさんにとっては、地球もターミナスも悪魔星になってしまうんですから。
 (まいったなあ!
 悪魔星が悪魔星を解放するのか。
 イルミナが聞いたら、笑い転げるなあ!

 まてよ、笑っても転げないか。)

Photo プロクシマ・ケンタウリα星の想像図 背景に主星プロキシマ・ケンタウリと、連星であるアルファ・ケンタウリAとBが描かれている。実際、プロキシマ・ケンタウリα星が太陽系に一番近い系外惑星ということになります。取りあえずアルファ星と呼んでおきましょう。


ミーターの大冒険  第六部  地球へ  第18話 小さな島が一つだけの海の惑星

2022-12-31 20:34:06 | 地球へ
160第18話小さな島が一つだけの海の惑星
ミーターの大冒険 
第六部 
地球へ
第18話

小さな島が一つだけの海の惑星

あらすじ

 ファウンデーション暦492年、いよいよミーターとイルミナを載せたファー・スター2世号はメルポメニアからアルファに着く。

 ミーターは、太陽系と地球についての最終的情報を得ようとしてアルファに降りることにした。
 その前にメルポメニアで入手した図書館の蔵書に記されていた地球と地球人類、そしてアルファの住民の起源の土地、ニフについての恐怖の出来事について驚嘆する。

 その古文書のなかに、メルポメニアの滅亡寸前に記されたであろう『スペーサーとアルファ』なる書物をミーターは、イルミナに提示し、その概略の説明をさせる。

 ニフの起源と核戦争の事実であった。

 イルミナはまたニフ人が二種類いることを語る。

 ニフ人たちは、核融合という理想のエネルギーを人類に提供するものの、謙譲の美を進んで実行し、祖先がそうであったように、移動の民に目覚め、密かに宇宙に出て行った。
 彼らは後にシンナックス人として知られるようになる。それは、ナックの思想に同調していたニフ人以外にも地球全土に人種を越えて散らばっていったからである。

 残ったニフ人たちは、地球各地で放射能に汚染された環境浄化をしつつ、最後まで地球を守り続けた。が、最終的には地球を手放さなくてはならなかった。そして彼らはテラフォーミングを必要としていたアルファに移住した。

 イルミナは、銀河の歴史的収束点前後の大事件について繙(ひもと)く。

 それは、ケルドン・アマディロ博士の「核反応増強装置」による「地球放射能汚染計画」であった。

 アマディロは、イライジャ・ベイリーとハン・ファストルフ博士への恨み骨髄に達するほどに執念を燃やし、ついに復讐の刃を地球人撲滅という悲惨で残酷なシナリオを完成させようとしていた。

 ついに太陽系の入り口にたどり着いた。人類の母なる太陽系。そして夢の地球。

 ミーターは、ロボットには病原菌は感染しないことを承知のうえで、万全の防備態勢でアルファに降り立った。そこには一人の少女が待ち受けていた。
 

 
160

ミーター や~、こんにちは!

ツムギ 外からの方ですね?

ミーター 外からといっても人間ではありませんけど。あなたはなぜ、着陸地点の真下で、待つていたのですか?まるで予定通りに着陸時間がわかっていたように?

ツムギ 外来者がいつ来てもいいように待っているのが、わたしたちの仕事ですから。

ミーター 仕事?待っているだけの仕事ですか? わたしたちとは?

ツムギ わたしたち一族の女たちの任務なんです。

ミーター 知っていますよ、そういうことをしなけれならない理由を?

ツムギ まあ、ご存じでしたか!
 まあ、そんなことは何百年もの間、なかったことですね。じゃあ、あなたはこの星の秘密をご存じのうえで、敢えて降りて来られた、と仰るんですね。
 わたし一人で対処できないわね!
 長老かお姉さんに知らせなきゃなりませんね。

ミーター いいんですよ。少しのあいだだけ、お訊きすることができれば、すぐに宇宙に出て行ってしまいますから。

ツムギ どうしましょう?

ミーター 大丈夫です。私が去ったら、あなたの記憶も、航宙船が降りたった光景を目撃した方々の記憶もすっかり消えてしまいますから。

ツムギ まあ、そんなことがどうしてできるのでしょうか?不思議すぎです。直ぐには信じられませんわ。

ミーター そうでしょうね。
 じゃ、そうですね、あなたのご家族のお名前を申し上げましょうか。
 お母さんは、リンですね。お姉さんはヒロコですね。お父さんはいない。お母さんはあなたのお父さんの名前をスムールだと教えてくれましたね。
 あなたの妹の名前はヒナタです。
 ついでに、あなたの村落の長老の名前は、おしゃべりモノリーです。

ツムギ まあ、どうしてそんなことまでお分かりになるんですか?

ミーター まだ知ってますよ、この星には人口は二万五千人位でしょう。

ツムギ わかりましたわ。それであなたの名前は?わたしはツムギといいます。

ミーター わたしの名前は、ミーター・マロウ。この銀河のちょうど反対の端からやってきました。わたしは人間ではありません。ロボットです。

ツムギ まあ、そんな遠くから!
 それに、人間じゃない!なんですか、ロボットって?

ミーター 説明するのは大変です。わたしたちの星では普通ですが、あなた方の星では考えられない、人間に似た動く物体とでも言っておきましょうか。
 そうですね、あなた方の星には、わたしどもの星にない知識がおありですね。例えば、バイオテクノロジーや気象を一定にできる技術。そういう具合に、この銀河にはその星独自の特徴がある、とでも言いましょうか。