ミーターの大冒険 第四部 コンポレロン 第6話 「 イルミナの異変 」
あらすじ
ミーターとイルミナを乗せたファー・スター2世号は、シンナの軌道上、カルガン以来、初めての惑星探索を果たした。はじめはドローンで、そしていよいよ、ミーターはコンポレロンの地表に到達し、人間社会にも扮装して紛れ込んだ。人間たちは、透明なドームの鋼鉄都市に住みはじめていた。それはトランターの繁栄した時代の外界の宇宙空間から身を守るような形態であって、ターミナスやその周辺星域の惑星とは異なっていることに二人(?)はいわゆる懐古趣味というような違和感をおぼえた。さらに、コンパーやジスカルド・ハニス、オリンサスの縁故がいないのには何故か落胆したが、ミーターの洞察力はにわかに鋭さを増していく。
ミーターは、コンポレロンの人々が最古の星の話題に異常な恐怖感を持つのに、あるもう一つの理由があることに思いつく。
それは、太古の星についての忌まわしい伝説、地表は放射能で焼けただれているという。それは真実なのか?ただの迷信なのか?
問題なのは、コンポレロンからオーロラという禁断の星へのルートがわからない。困難に直面した二人(?)であったが、そのとき、突如としてイルミナにある異変が生じた!
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イルミナ ミーターさん、あのね、私、あなたが、地上に降りてた間、自分の能力をチェックしていたんですけど、妙に気になる感覚が起きたんです。あなたには今まで言わなかったんですが、いわゆる「フィードフォワード」症候群って言って、問題の焦点を突き詰めると、その先がちょっとだけ見えるような気分なんです。
ミーター イルミナ、まさかお前って人間で言う千里眼という能力者のことだな。
イルミナ なにかね、感応能力者と繋がるような、そんな気分なの。なんかね、向こう側の存在がいて、こっちに向かって手招きしているような。私は、「私たちの道を示してください」と銀河の大霊に波長を合わせたのよ。
ミーター それって、前に話した極素輻射体と同じ反応だ。まさにお前はハイパーリサーチ能力を着火させたんだ。きっとそうだ。
ということは、誰かが手招きしているってことだ。「感応間主体」って言うんだ。
実は、俺が目論んでいたのは、まさにこんなことなんだ。何かが俺らを呼んでいる。
イルミナ ミーターさん、そういうことなんだわ。相手は、あるときは霧でヴェールを懸け、あるときはそのヴェールを払う。ということはあの方(かた)の仕業としか思えないわ。
ミーター う~。この銀河のその時が迫って来ている証拠だ。お前のおかげで、いよいよ秘密のヴェールが開けられる時が差し迫ってるんだ!歴史記録消滅の、今度は逆転の時代のはじまりかもしれない。このコンポレロンでか~。
イルミナ、俺って、また感動の涙が出てきた!
イルミナ、このコンポレロンの先って言ったって半球180度のどの方向なのかわからないんでは、このファー・スター2世号を進められないよな。仮に直線コースが正しいとも限らない。なにかもう少し手がかりが欲しい。
イルミナ そうね、今度は、コンポレロンの地上に向かって、私の感応照射をある人物に当てたらいいんじゃないかと思うの。たとえば、あなたがさっき言った懐疑主義者のある人物の心理に入り込むとか。リストはもう出来上がっていますから。どうでしょう?ヴァジル・デニアドールっていうらしい大学に籍があるんだけど、学生からは人気がない、変わりものの学者さんらしいの。その人の心理にちょっとだけ入らせてもらうわ。
ミーター イルミナ、そんなことできるのか、それができたら願ったりだが、お前って案外、凄いんだなあ!
イルミナ ミーターさん、あなたっていつも私を見くびっているんですこと。まあいいわ、じゃあやってみるわね。
Photo は地球から見た月と土星。次回その表示の意味を明かします。