oceanside

仏語、英語学習者。アイザック・アシモフのファン。ノース・ホワイトヘッド思想信奉。縄文志向、仏陀志向。

ミーターの大冒険 コンポレロン 2 「ミーター哲学者・詩人になる」

2022-02-26 16:11:48 | ボー・アルーリンの秘密
2 イルミナ、いよいよコンポレロン星域だな!

 そうよ、ターミナスの太陽よりスペクトラムがやや短く、コンポレロン星はターミナスの軌道より外側ですから、肌寒いのは覚悟しなくてはならないわ。と言っても私は地表には降りませんけどね。

 また、余計な口、しゃべって、減らず口って言うんだ。少し性格変えたらいいんだがなぁ!

 なにをおっしゃるロボットちゃん、おぬしもたまに人間の男の子みたいにボ~っとする癖、なんとかならんのか?

 いいや、イルミナ、今、ずっと真剣に考えていたんだ。仮に不死の従僕さんがこの銀河の歴史消滅を画策した張本人だとしたら、なぜロボットの分際で主人の人類に対して致命的な犯罪行為をしたか。なぜ僕らは、ありもしない可能性のいわゆる人類の故郷の「最古の星」を探さなくてはならないのか?とね。
 いつも夢見てる。アルカディアには悪いけど、ある星の谷間の薄暮に紫に光るルピナスの光景をね。

 ミーター、あなたって、人間に生まれ変わったとしたら、「哲学者」か「詩人」っていう職業が向いているわね!

 そうからかうな。それはそうと、そもそも「コンポレロン」っていう妙な響きの固有名詞の意味は、なんなのかい?

 そうね、今、コンポレロンの首都の図書館と接続してみるね!

 接続って?驚いたなあ!お前の偉大なる機能の一つなのか?

 そうよ、知らなかった?各図書館の全文献にアクセスできるわ。0.1パーセク以内だったらね。

・・・

 正式な記載ではないんだけど、言い伝えなら山ほどあるわ、
 ええと、少し整理してまとめると、スペーサーを駆逐したセッツラーの最初の星とあるわ。その『伝説物語』には、トランター銀河帝国の前にこの星域は、ティラニー帝国というのがあって、当時は、ベンバリー・ワールドと呼ばれていたみたい。その前の時代は、もっと不鮮明だけど、ベイリー・ワールドという記録も残ってるわ。いつの頃からか、ある迷信の影響がましてきて、この星の原初に、敵対していたスペーサーの女性と仲良くなった貿易商人のベイリー・ワールドの男の話があるわ。まったくの作り話となってるけどね!
 コンポレロンっていうのは、「共に男女が連れだって、港から旅立つ」っていう意味らしいわ。ロマンチックな表現ね。

 まてよ、イルミナ、ついにお前に、なぜ俺が「グレディア」とういう名前にこだわったかの訳が今わかった。その名前を、ハーディーの次女に薦めたのは、コンポレロン出身のボー・アルーリン。アルカディアが、説明してくれた物語がある。ガール・ドーニックがハリ・セルダンに提出したという「故郷星探索記録」に、彼がまだ彼の故郷の星、シンナックスにいた頃の記録が捕捉されてあった。そのなかにガールが「証古学」に目覚めたきっかけをつくったある発見が書かれてある。ある寺院の裏に石棺の中に二体の遺骨を発見した。その蓋には古代銀河聖語で「夢多き300歳の若きグレディア・ソラリアとダニール・ジスカルド・ベイリーここに眠る」と刻されてあったという。その不可思議な言葉の意味が今わかった気がする。

 どうかしたのか、イルミナ?!

 ミーター、助けて、私も、「哲学者や詩人」になりそうだわ!!

https://youtu.be/vvOuZwClF9s

yatcha john s. 『ミーターの大冒険』 コンポレロン 2 「ミーター哲学者・詩人になる」


ミーターの大冒険 オーロラへ 18 「ボー・アルーリンの秘密」

2022-01-22 16:19:42 | ボー・アルーリンの秘密
18 「グレディアの日記」にはグレディアが母ドースから聞いた、ドースのおばさんウォンダの若い頃の様子が詳しく書かれてる。後でわかったことなんだが、ウォンダさんがイオス星で亡くなるとき、どうしてもということで、ドースさんをターミナスから呼び寄せたんだよ。おそらくハリ・セルダンのこと、心理歴史学のこと、これからの未来のこと、彼女の数奇な人生を女性という立場で同性の姪に伝えたかったと思う。というより、正確にはアルカディアの言ったことをそのまま俺はお前に伝えてるだけだけどね。その時その往復に付き添っていたのが、ボー・アルーリンだったんだ。

 へ~、アルーリンさんは、ウオンダさんよりずっと長生きしたんですね!

 そうだ。彼はガールよりも長生きした。アルーリンは、ずっと頻繁にトランターとターミナスを行き来して、両ファウンデーションの設立に奮闘してくれたんだ、ピレンヌの像を建てるようにハーディンに進言したし、あの「時間霊廟」も彼が考案した。そして第二期のターミナスの大立て者のハーディンを見出だし、教育し、女の子がいなかったドースの養子にハーディンの娘のグレディアを薦めたのもアルーリンさんだ。
 そしてここからが最も大事だ。暗黙のうちに巧妙に、あれから500年の今にチャンと作動するように仕組んだんだ。だから今彼の思惑通りに全てが作動してきた。

 何もかも驚きだわ!ふむふむ、それじゃ、アルカディアさんまで繋がる女系一族の仕掛人もアルーリンさんということになるわね。驚きを通り越してるわ。それじゃ、「蝶番」の役割はボー・アルーリンさんなのね?じゃあ、たしか、ガール・ドーニックさんも「蝶番」の役割をハリから託されたということは、二人で「蝶番」の役割を分担したってこと?

 そう先をせっつくな、二人の役割の違いについては、そのうちおいおいと話してあげるからな。その質問に答える前に、まだウォンダさんの物語の続きが残っている。

 そうだったわ。ミーター、先走っちゃって、ごめんなさい。そうよ、そのウォンダさん!

yatcha john s. 『ミーターの大冒険』 オーロラへ 18 「ボー・アルーリンの秘密」