
「事業再生とリーダーシップ」というテーマで6月20日(土)に開かれたOBSフォーラム2009は、多くの方にご参加いただき、盛況のうちに終えることができました。OBSの玉井健一准教授に、フォーラムの概要を報告してもらいます。
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今年度から小樽商科大学ビジネススクールで「特殊講義II 事業再生とリーダーシップ」を担当されている吉村仁先生に講演をしていただきました。
本公演は、事業再生に携わる経営者が、変革のリード役として、いかに考え行動すべきかを焦点としています。吉村先生は、企業の経営破綻の実態を明らかにしながら、親会社の経営破綻により経営が悪化した三井観光開発株式会社(現:株式会社グランビスタ ホテル&リゾート)での再建の経験を踏まえ、事業再生において検討すべき課題、および再生の具体的な手法を体系化してお話されました。
まず、経営破綻の実態については、売上や当期利益が伸びているような企業でも破綻は起こりうることを指摘します。そして、企業が経営破綻に陥る基本的理由として、身の丈を考えない成長による資金不足、コンプライアンスの欠如、ビジネスを成立させることができる経営者の不在を挙げられ、経営破綻がどのような企業にも起こる可能性がある問題であり、その兆候を捉える必要性を認識させてくれました。
次に、破綻状態に陥った企業を再建するために、吉村先生自身が経営者として携わった三井観光の再建手法を、
(1)再生が必要な項目
(2)戦略策定準備
(3)100日プラン
として紹介されました。
(1)再生が必要な項目では、破綻に陥る企業に生じる課題として、企業文化、生産性、組織運営、人事力(特に人事評価)を挙げられ、それら4つの観点から三井観光における課題を明らかにされました。
(2)戦略策定準備では、多くの課題を抱える企業の再生をどこから準備していくかを考えるフレームとして、ビジョンによる方向づけ、内部アセスメントによる企業の強みの理解、外部評価による市場状況や競争状況の理解が重要であること、そして、これらの理解に基づいてキャッシュの調達、製品・市場、実行する組織についての戦略を策定することの必要性を強調されています。
(3)社長就任後の最初の100日プランにおいては、最初の100日は、社長が何をやりたいのかを社内・社外にメッセージとして伝え、この会社がどうやって舵をとっていくかを決める非常に重要な時期であると指摘しています。そこでは、特にコミュニケーションの重要性を強調し、役職者全員と会って何が起こっているか、どう思うか、また自分はどう思うかといった忌憚のない対話を行うこと、コンプライアンスの問題については全員参加で行うこと、また関係会社を巻き込んで議論することがポイントになると述べられています。
以上のような取り組みから、吉村先生は、企業再生において重要な実践的教訓がヒトと戦略に関わるものであると述べられています。ヒトの面では、ヒトはなかなか変わらないことを認識して再生に取り組むこと、経営は一人ではできないためチームづくりが大事であること、人材を外部から採用することは難しいため内部の人間を動機付けて成長させることがポイントになることを指摘されました。また、戦略面では確実性の高い投資(売上向上より生産性向上)を行うこと、ハードよりもソフトを大事にすることを指摘されました。
講義の後、参加者から「組織変革の不安とどう向きあったのか」、「管理職が多すぎる状況で重要でない管理者をどう扱ったか」、「信頼できる部下はどのようにしたら発見できるのか」というような吉村先生の経験から学ぼうとする質問や、「札幌のホテル業界を分析してください」といった現状認識に関する質問があり、吉村先生の丁寧かつクリアな回答は、参加者に企業再生のみならずビジネスの考え方について多くの示唆を与えたものと思われます。
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今年度から小樽商科大学ビジネススクールで「特殊講義II 事業再生とリーダーシップ」を担当されている吉村仁先生に講演をしていただきました。
本公演は、事業再生に携わる経営者が、変革のリード役として、いかに考え行動すべきかを焦点としています。吉村先生は、企業の経営破綻の実態を明らかにしながら、親会社の経営破綻により経営が悪化した三井観光開発株式会社(現:株式会社グランビスタ ホテル&リゾート)での再建の経験を踏まえ、事業再生において検討すべき課題、および再生の具体的な手法を体系化してお話されました。
まず、経営破綻の実態については、売上や当期利益が伸びているような企業でも破綻は起こりうることを指摘します。そして、企業が経営破綻に陥る基本的理由として、身の丈を考えない成長による資金不足、コンプライアンスの欠如、ビジネスを成立させることができる経営者の不在を挙げられ、経営破綻がどのような企業にも起こる可能性がある問題であり、その兆候を捉える必要性を認識させてくれました。
次に、破綻状態に陥った企業を再建するために、吉村先生自身が経営者として携わった三井観光の再建手法を、
(1)再生が必要な項目
(2)戦略策定準備
(3)100日プラン
として紹介されました。
(1)再生が必要な項目では、破綻に陥る企業に生じる課題として、企業文化、生産性、組織運営、人事力(特に人事評価)を挙げられ、それら4つの観点から三井観光における課題を明らかにされました。
(2)戦略策定準備では、多くの課題を抱える企業の再生をどこから準備していくかを考えるフレームとして、ビジョンによる方向づけ、内部アセスメントによる企業の強みの理解、外部評価による市場状況や競争状況の理解が重要であること、そして、これらの理解に基づいてキャッシュの調達、製品・市場、実行する組織についての戦略を策定することの必要性を強調されています。
(3)社長就任後の最初の100日プランにおいては、最初の100日は、社長が何をやりたいのかを社内・社外にメッセージとして伝え、この会社がどうやって舵をとっていくかを決める非常に重要な時期であると指摘しています。そこでは、特にコミュニケーションの重要性を強調し、役職者全員と会って何が起こっているか、どう思うか、また自分はどう思うかといった忌憚のない対話を行うこと、コンプライアンスの問題については全員参加で行うこと、また関係会社を巻き込んで議論することがポイントになると述べられています。
以上のような取り組みから、吉村先生は、企業再生において重要な実践的教訓がヒトと戦略に関わるものであると述べられています。ヒトの面では、ヒトはなかなか変わらないことを認識して再生に取り組むこと、経営は一人ではできないためチームづくりが大事であること、人材を外部から採用することは難しいため内部の人間を動機付けて成長させることがポイントになることを指摘されました。また、戦略面では確実性の高い投資(売上向上より生産性向上)を行うこと、ハードよりもソフトを大事にすることを指摘されました。
講義の後、参加者から「組織変革の不安とどう向きあったのか」、「管理職が多すぎる状況で重要でない管理者をどう扱ったか」、「信頼できる部下はどのようにしたら発見できるのか」というような吉村先生の経験から学ぼうとする質問や、「札幌のホテル業界を分析してください」といった現状認識に関する質問があり、吉村先生の丁寧かつクリアな回答は、参加者に企業再生のみならずビジネスの考え方について多くの示唆を与えたものと思われます。