八ヶ岳オーレン小屋日誌

八ヶ岳オーレン小屋の小屋番日誌です。
山での感動をお届けします。

薪ストーブの前で

2008年06月22日 13時01分10秒 | Weblog
今日は、一日雨模様。
こういう日は、薪ストーブの周りでまったりするのがいい。
いろいろな話をしたり、本を読む。たまにはそんな時間があるととても癒される。
仕事は好きだが、雨なら仕方がない。今日はゆっくり休もう。

薪が弾ける音が聞こえる。「ぱち、ぱち」
シラビソの木は、火力は弱いがよく燃える。

ストーブの正面に座るのは、おやっさんと決まっている。
おやっさんが、火の管理をするからだ。

たまに、自分も正面に座り、火を起こす時があるがいつもドキドキする。
それは、このストーブが特別な存在だからだ。
何が特別って、それは、言葉にするのは難しいが「生きてるストーブ!?」
うーん、何ていえばいいかな。そう感じる時があるとしかえいない。

そんな馬鹿なって単純に思うかもしれないが、機械であったり物でも存在すべてに
意味があって力を感じる時がある。難しいが、とにかくこのストーブは生きている。

生きている証拠に、性格がある。
時には気難しく、時には躍動感を感じ、時には静かに包み込んでくれる。

薪ストーブと対峙する時は、真剣に向き合わなければいけない。
そう決めている。会話は、言葉でなく薪の燃える音で意志疎通を行う。

はじめは、中の燃えカスを平にして風の通り道をつくる。
その上に薪を置く。新聞紙を間にいれ火をつける。
そして、扉を閉めて静かに待つ。「ボ、ボ、ボー」と音が聞こえる。
風が入りこみ火を煽っている音だ。

静かに耳を澄ませながらじーーーっと待つ。
そのうち「パチ!・・・パチ、パチ、パチ」と威勢よく弾ける音がすると、
今日は、調子が良いなと感じる。でもまだ気は抜けない。。。

長くなりそうだから、この先は、また今度。それにコツは秘密にしておきたい。

薪ストーブの燃やし方に、取扱説明書は無い。
オーレンでは、何にしても自分で覚えるのが基本だと教えられた。
特に、身内には厳しい。おやっさんも何も教えない。話さない。それが決まり。
「見て体で覚えろ!」昔は、よく反発した。怒鳴りあった事もしょっちゅうあった。
そんなある時、薪ストーブはおやっさんに似ていると、いや親爺そのものだと気がついた。
そこらじゅう傷だらけで穴も開いているし、錆びだらけで中も熱で凸凹だ。
でも、毎日、そこにいて登山者の寒い体を温めてくれる存在。
時には、ストーブの前に座って登山者を温かく見守る姿は一心同体にも見える。
何も言わず、何も話さない。そんな薪ストーブに親爺を見た気がする。

何だか今まで反発していた気持ちが、スーっと消えた。
何も語らないその奥に、親爺の深さを知った瞬間だった。

「このストーブは生きている。特別な存在。」

今日も、薪ストーブを焚いた周りでたくさんの登山者が寛いでいる。

そんな場所をいつまでも大切にしたいと思う。