映画なんて大嫌い!

 ~映画に憑依された狂人による、只々、空虚な拙文です…。 ストーリーなんて糞っ喰らえ!

ゾンビと米国人

2012年09月24日 | 憑映堂雑記
 …不意に、ゾンビ。


 おそらく僕ら日本人が考える以上に、米国の観客は、過敏にゾンビから《不安》や《緊張》を嗅ぎ取っているように思える。

 マイケル・ムーア監督の『ボーリング・フォー・コロンバイン』(2002)でも描かれていたけれども、米国人は先住民(インディアン)から土地を略奪した建国の経緯がある。先住民を居留地へ放り込み、彼等から自由を取り上げてしまった。それとは別件に、アフリカ西海岸の地からは、現地人(黒人)を奴隷として拉致して来た歴史も残る。それ故か、絶えず異人種からの報復や異教徒との接触に怯えている。1938年のラジオドラマ『火星人来襲』を聴いていた多くの米国人が、実際に地球が襲われていると信じてパニックを引き起こした出来事は、あまりにも有名だ。滑稽な出来事と思えても、決して笑う事は出来ない。日本でも関東大震災(1923)の際に、「朝鮮人が井戸に毒を入れた!」との風評が広がって、朝鮮人への虐殺は起きている。差別する側は、いつも心のどこかで報復を恐れ、怯えているものなのだろう…。
 戦後、共産主義が台頭し、東西冷戦は米国にキューバ危機(1962)の緊張を齎した。キューバに核ミサイルが配備され、全米中がほぼ射程圏内に入った時、米国人が経験したストレスは、嘗て開拓移民がインディアンからの来襲に怯えた《不安》や《緊張》と同じ感覚だったかも知れない。このキューバ危機の6年後、ジョージ・A・ロメロのゾンビ映画の第一弾『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968)は公開される。この年は、ベトナムからの即時撤退を主張して大統領選への出馬を表明していたロバート・ケネディや、黒人公民権運動の指導者マーティン・ルーサー・キング牧師が暗殺された年でもある。将来を嘱望された二人の指導者は、敵対する勢力からはゾンビのように扱われていたであろうし、或いは、彼等を襲った側の勢力がゾンビであったかも知れない。昨今のイスラム圏に於ける反米暴動などは、米国人(キリスト教徒)の側から見れば、ゾンビの来襲のように映るだろう。9.11同時多発テロ(2001)以降に制作されたゾンビ映画『ドーン・オブ・ザ・デッド』(2004)では、まさしく《ムスリム》と《ゾンビ》を結び付ける悪質な映像編集も見られる。卑小な意志の作品であった。ゾンビの本質は、既に『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド/死霊創世記』(1990)に於いて、正当に描かれている…。


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