黒チョイ 3652kmで入庫。
「交差点で停車中にストールしてそのままエンジン掛からない」ということなんですが かけつけた時、車両下回りにガソリンが散らばってました。キャブレターがオーバーフローしているので分解必至で引き上げ。その際もう1点気になったところがあったんですがそれは後述。
この車両は5/11に
タイヤ交換や各部メンテナンスで預かった車両です。その時2609km、その前が2010/12/15 2146km時に
駆動系交換メンテで入庫しています。2年半で460kmしか乗っておらず長期間放置でエンジン不安定となったわけですが、その時に比べたら3ヵ月で1000kmの使用頻度は喜ばしいです。
しかし外装はドロドロ チェーンは油ぎれで錆々。
フロントフォークのシールも近い内崩壊しますねこりゃ。
ステップボードを留めるビスが1本無くなっていて、見るとフロントカウルに割れがあるので それをぶつけたときにでも欠落しちゃったんでしょう。
オイルは汚れは勿論 量が全く足りてませんで交換。とにかく過酷な使い方が懸念されるパターンです。
キャブレターを開けてみますとボディに付着物。どうやら異物と接したメタルが腐食して形質変化した物のようです。中央のドレンも腐食してるのがわかりますね。3ヵ月前、エンジン不調の主な原因はオイル劣化とエアクリの詰まりでしたが、キャブレター内も放置期間に腐食が進行していたんでしょうね。
ジェット類は腐食こそしてませんでしたが全部目詰まりしてました。オーバーフローしたんですから当然です。エアクリがドロドロだったことから燃調が合っておらず、メインジェットすら煤けて真っ黒です。キャブクリーナーに浸けて洗浄するも詰まりが溶けきれず、取り除くのに時間が掛かりました。「駆しっていて止まった」ということですが、いきなり詰まって全閉にはならないので、多分直前までに息継ぎとか不具合はあった筈です。
洗浄・貫通は間違いなく終わったのにエンジンが掛かりません。原因にして難関となったのがこのスロットルボディ。奥側である底辺部分を筆頭に腐食が認められます。これが為か、スロットル開けてワイヤーが引っ張られたその後 スロットルが戻らないんです。
実はキャブを開ける前からスロットルの戻りが悪くって、それが最初に記した「もう1点気になる」所。引き取りの際、既に軽トラックの上に積んでくれていたんですが、荷掛けベルトの端がスロットルに巻かれてたんです。このベルトはグッとサスを沈み込ませて固定させるものだから、必然スロットルを捻った状態・ワイヤーをギュッと引っ張った状態で締め込みます。スロットルワイヤーの先に付いてるのがこのスロットルボディですが、腐食物が付いてる状態で引っ張ったからか不具合を招いたんではないかと。そもそもキャブレタートップからスムースに抜けなかったんです。固定するのに安心・楽かも知れませんが、スロットルグリップへのロープ掛けはダメ ゼッタイ。
実際細かく検証すると、なんとか差し込めるけど 引き上げた後元に戻らない。引っ掛かってバネの力で押し返せないんですね。筒側にも傷があったらキャブ全取っ替えとダメージでかいです。取り敢えずボディ部分をメタルコンパウンドで磨いたんですが全く改善されず、水研ぎ加工しました。そうして無理なくストロークするのを確認した後組み込むとエンジン掛かりました ふぅ。
キャブレターの調整をしますがエアスクリューがかなり締め込まれて全然合ってません。対してスロットルクリューは抜けそうな程で、そりゃあエアフィルターがドロドロに詰まってましたからそのままではまともにエンジン掛からないでしょうけど オーナーさん自分で弄ったのか? 振動で動いたのか? 実は引き取りの時気付いた点をもうひとつ上げると、チョークレバーが引かれたままだったんです。チョークを引いてなきゃエンジン止まっちゃう状態だったか。
故障は、使用者の使い方から不具合の原因を特定するのが近道にしてより確かな整備に繋がります。使用者の「昨日まで普通に走ってたのに止まった」「昨日までエンジン掛かってたのに今日いきなり掛からなくなった」という言葉はパソコンが「何もしてないのに壊れた」というくらい信用してはイケナイ言葉なので『整備は現場検証から始まっている』というのは結構学びましたねぇ。
組み終わってテスト走行。初夏の頃タイヤを替えて乗り心地の良くなった同チョイのテスト走行が記憶に新しいです。まだまだ暑いですがあの頃より透いた雲が季節の変化を物語っています。そしてあの時は大変嬉しい心持ちで駆しりましたが、今 見る影もありません。振動と騒音が凄くて正にガタガタ。頗る調子の良いチョイノリだったのに、たった3ヵ月でこんなボロになっちゃうなんて。整備終えた後ピカピカに磨くのが私の常なんですがフロントカウルとステップボードは汚れ傷が凄すぎて全くキレイに出来ませんでした。正直この使い方だと普通の原付奨めるなぁ。
ただ ひと月300kmくらいの使い方はチョイノリとしてピッタリの使い方なわけで、これでダメージ蓄えちゃう車種ってのはやっぱり一般の人には向かないか。今まで整備してきた大半は「乗らないから壊れる」パターンで、今回初めて 走ってて壊れるパターンでした。常に全開走行だったのと300km毎のオイル交換を怠ったってのはあるでしょうが。
思惑通りの修理が出来てよかったですが、轟音と共に駆しるチョイノリは正直乗ってて楽しくないばかりかいつ壊れやしないかと不安になります。本当はエンジン本体のメンテもしたいくらいだけど、そこまでやるとお金掛かるし乗り方変えなきゃまた一緒。その上で「チョイノリなら良いけど、他のバイクは危ないからダメ」という親御さんのお触れがあるとのこと。そういう人の意見は結構耳にしまして、だからこそチョイノリの役割って大きかったし、だからこそオーナーはチョイノリを良く分かって扱ってやって欲しいんですけどねぇ。なんにしてもこの車両、近いうちにまた会えそうな気がする。その時はお金掛かるから、廃車の憂き目も・・・ ・・・ついつい中古部品を物色してしまいます(笑