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(た)のShorinjiKempo備忘録

※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。

上受突

2024年11月19日 | 剛法
備忘録、という事で今まで少林寺拳法(以下SKと略す)について考えてきた事を、自分がボケる前に記しておこうと思うのですが、ブログの説明に書いてある通り、

※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。

SKの技について考察はするのですが、もし本部の公式見解と矛盾していたら、私の方が間違っていると考えて頂いて差し支えありません。個人の備忘録ですから。。

     ◆     ◆     ◆

上受突は、旧・科目表では6級科目の最後に習う法形で、仁王拳(上段への単撃に対する攻防をまとめた拳系)の法形でした。まず上受突(表)、次いで上受突(裏)です。
外押受突のところでも述べましたが、「ナンバの動き」を用いて<表>側に差替足を入れながらの突きという、SKとしてはかなり特殊な動きであり、それを初級からやらせる事には少々驚きます。

「上受突(表)の体捌きは実は上受投のベースになっている」というのはそうなのですが、そうでなくともSKには攻者の表に出て反撃する技が少なくありません。横転身蹴(旧・2級科目/三合拳)なども、私なんかは毎回裏に捌いてしまいたくなります。

格闘技的には、敵の裏側に捌くのが大原則にも思えます。背中には目はないし、手足も出せないし、後ろからならバランスを崩し易いからです(首も絞め易いです)。でも開祖は「敵だってそうそう裏には回らせてくれんゾ」と仰りたいのではないでしょうか。また打撃のよく効く急所は身体の前面に集まっている、という話も聞きます。(逆に、我々はつい亀のポーズになって身を守ろうとしがちですが「背中側にも急所はいくらでもあるゾ」と仰る先生もいました)

内受突ではまず正面から飛んでくる直突に対して「<裏>に捌く」という概念を学び、次に上受突では真上から打ち落とされる攻撃に対して「<表>に捌く」という事を学びます。基本法形では手刀打ですが、これは棒や竹刀など得物での打ち込みも想定されているのでしょう。

空手では基本の手刀打と言ったら、左右へのこめかみへの水平方向からの打ち込みなのではないでしょうか(大山館長が麦酒瓶の首を刎ねてましたよね…)。真上からの手刀なんて非現実的だ、という話も時々聞きます。
そうです非現実的です。これは表裏どちらへの回避も同条件にする為に真上からなのだと思います。単に基本法形ゆえの設定です。
基本法形では外押受突とは「攻撃法が全く違う」という事で別法形ですが、実際には両者の中間の曖昧な攻撃に対しても修練した方がいいと思います。
→クラヴマガの360°ディフェンスという事です。

因みに、教範では上受突(表)の攻撃は「振突 or 打込み」だという事は知ってましたか? 直突でもなく、かなり思い切りブチ込んで来る攻撃なのです!(そうするといよいよ外押受突との違いは?という事になりますが...)

上受突は<表>に大切な要素が沢山入っているので先にやり、<裏>はオマケな訳ですね。これを逆に配置したら、<表>が全然出来ない拳士が増えるでしょうね…(苦笑)。

上受突(裏)上受蹴(表)上受蹴(裏) Short Ver.:連続複数法形修錬 (金剛禅総本山少林寺 公式YouTubeチャンネルより)
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転身蹴

2024年11月18日 | 剛法
備忘録、という事で今まで少林寺拳法(以下SKと略す)について考えてきた事を、自分がボケる前に記しておこうと思うのですが、ブログの説明に書いてある通り、

※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。

SKの技について考察はするのですが、もし本部の公式見解と矛盾していたら、私の方が間違っていると考えて頂いて差し支えありません。個人の備忘録ですから。。

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転身蹴は、旧・科目表では6級科目で習う仁王拳(上段への単撃に対する攻防をまとめた拳系)の法形でした。まずこんがらがるのが、「転身蹴」という言葉は三合拳の法形にも出てくるのですね。三合拳にある「転身蹴」は、横転身蹴・半転身蹴・逆転身蹴の3つです。三合拳とは、手または足による中段攻撃に対して手で受けて足で反撃する攻防を集めた拳系です。

仁王拳(上段攻撃):転身蹴
三合拳(中段攻撃):横転身蹴・半転身蹴・逆転身蹴

この「転身蹴」全体の分類と解釈には、私はちょっと他の方とは違う意見があるのですが、そこには今回は触れないようにします。
現行の仁王拳の転身蹴は、本部のやり方としては大きく2つの方法があります。対構えで布陣したのであるなら、両者左前とすると(攻者:左中段構え/守者:左一字構え)、
(1).横蟹足を用いて左横へ転位し(横転身)、右逆蹴を中段に入れる。連反攻をしないのであれば、そのまま順退りして左一字構えで残心。(下受蹴の感覚に近い)
(2).横蟹足を用いて左横へ転位しつつ前鈎足となり、右廻蹴(orやや斜めの蹴上げ)で反撃。連反攻をしないのであれば、十字足退り又は蜘蛛足退りして右一字構えで残心。
という2法です。

教範にも転身蹴は「他の受けと併用する場合が多い」とありますが、この(1)(2)法はその儘外受蹴の動きのベースにもなっています。(即ち、外受蹴にも逆蹴-順退りの方法と、廻蹴-十字足退りの2法があります)
「図解コーチ」(成美堂出版)の解説にもある通り、修行の順序として(1)→(2)の順で取り組み、両方が馴染むように修練した方がいいでしょう。間合いで考えると(2)法が合理的ではあるが、タイミング的には(1)法が速い、みたいな事も述べられてます。
「図解コーチ」では「別々の法形があるという意味ではなくて解釈の提案です(汗)」みたいな事を書いてますが、まぁ実際2種あると覚えてしまった方が話が早いでしょう。というのは審判員がこれを理解していないと、また「その方法は聞いた事がない、間違いだ!」等と言い出しかねないからです。 

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もう一つ仁王拳の転身蹴で注意すべきは、同じ仁王拳の「流水蹴(前)」との違いを明確にする。という事です。これはしっかり覚えた方がいいので、修練時に最初に説明してしまった方がいいと思います。前流水蹴は旧・5級科目なので、前流水蹴を修練する際にも、再度同じ話をして確認させます。  
両者は「転身蹴=運歩(ステップワーク)で避けて蹴り反撃」「前流水蹴=流水受(体捌き)で避けて蹴り反撃」という定義上明確な違いがあるのですが、特に子供では見た目に同じになってしまいガチなのです。それを指摘して、やってみせる事で違いを完全に覚えさせます。        
実際の攻防では何をやろうが構わないのですが、体捌き重視のSKでは前流水蹴がただの転身蹴にならないようにする事は大切です。また昇級試験がありますから「試験官にもハッキリ判るようにしないと不合格だよ!」と発破をかけています(笑)。              

【宗門の行としての少林寺拳法】仁王拳 転身蹴 金剛禅総本山少林寺 公式YouTubeチャンネルより
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小手抜

2024年11月16日 | 柔法
備忘録、という事で今まで少林寺拳法(以下SKと略す)について考えてきた事を、自分がボケる前に記しておこうと思うのですが、ブログの説明に書いてある通り、

※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。

SKの技について考察はするのですが、もし本部の公式見解と矛盾していたら、私の方が間違っていると考えて頂いて差し支えありません。個人の備忘録ですから。。

     ◆     ◆     ◆

小手抜は、旧・科目表では6級科目であり、最初に習う龍王拳(抜き技)でした。
5級科目の寄抜は「片手寄抜」であるのに、どうして「片手小手抜」ではないのか、と思った事はありませんか。寄抜には「片手」以外に「両手」がありますが「諸手」はありません。小手抜には「両手」も「諸手」も無いから「片手小手抜」と呼ばないのです。(私自身は時々呼んでますが)
小手抜と同じく、攻者が対の手(守者の右手に対してであれば右手)で掴んでくる切返抜の場合、「両手」は無いですが「諸手」はあります。なので「片手切返抜」です。

対の手で掴んでくる技で攻者が両手で掴もうとすると「バッテン(X)に掴む」事になるので、起こりにくい状況であるとして、SKでは「対の手攻撃に対する両手技」はありません。

「諸手」について考えると、小手抜+寄抜(巻抜)の形になるのです。「諸手小手抜⇔諸手寄抜」なので、技の名前も変わります。即ち、「諸手輪抜」若しくは「諸手巻抜」となります。

(追補:名称について、小手抜に関しては上記で良いとも思うのですが、他の龍王拳については整合性が取れない?ものもあるようなので、後日機会があったらまた考えたいと思います...)

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小手抜でまず学ぶべきは、兎にも角にもSK柔法の大原則「鉤手守法」です。合気道や他の柔術系のひとに尋ねれば「我々にも同じ技法はある」とか言われるのかも知れませんが、私が知る限り鉤手守法こそが、開祖が発明したSKの特徴であり且つ技法の基盤だと思います。

引き崩してくる攻撃に対し、まず守り反撃の体勢を作る(絶対不敗の体勢)。
まずは「五指を開くこと」「肘を前三枚に固定すること」を徹底させます。最初は遅くても硬くなっても構いません。握られたら一足入れて一拍で鉤手守法になれるように繰り返し修練します。

指導する側が次に気をつけるべきは、「間違った小手抜」をさせないという事だと思います。道院でも大会でも動画でも、間違った小手抜をしばしば見掛けます。龍王拳の基本原則を理解していない小手抜です。
小手抜で、抜いた瞬間に抜いた攻者の手を下に叩き落とすようにはたいてから裏拳を打つ拳士をよく見掛けます。それはやりたければ(出来るなら)やれば良いのですが、それに重きを置き過ぎて、肘を出す事を疎かにしている拳士が(子供を中心に)沢山います。最悪、鉤手から手掌を下に返して突抜のように下に押し抜いている者までいる始末です。
子供では手をブン回して抜いている場合も多いです。
龍王拳の基本原則は「抜く場所は動かさない」です。それによって梃子の原理を用いる事が出来るのです。抜く場所が回転の中心ならなければなりません。
「間違った小手抜」を粘り強く注意し、修正する事で、まずは充分だと思います。

抜いた腕を弾き出した方が良いのは、その腕が次の反撃の邪魔になる時です。小手抜であれば裏拳打の邪魔にならないのであれば無理してはたき落とす必要性はないのです。その次の逆中段突の邪魔になる事はあるのですが、その対策としては小手抜の抜き方を変えるのではなく、運歩と振り身より位置取りを変える事で対応する方が基本です。

(*偉い先生が行なう破・離の小手抜については別件です。私が考察しているのは基本の小手抜です。因みに、私はSKは基本の技術がキチンと出来れば、護身にはそれで充分だとも思っています)

小手抜 片手寄抜 巻抜(片手) Short Ver.:連続複数法形修錬 (金剛禅総本山少林寺 公式YouTubeチャンネルより)
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内受突

2024年11月14日 | 剛法
備忘録、という事で今まで少林寺拳法(以下SKと略す)について考えてきた事を、自分がボケる前に記しておこうと思うのですが、ブログの説明に書いてある通り、

※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。

SKの技について考察はするのですが、もし本部の公式見解と矛盾していたら、私の方が間違っていると考えて頂いて差し支えありません。個人の備忘録ですから。。

     ◆     ◆     ◆

内受突は表裏2形あり、内受突(裏)は旧科目表では6級科目で2番目に習う法形でした。ハッキリ言えば、SK剛法の中でも最も簡単な技と言えます。ここで習得すべき第1の基本は、「横振り身受」だと思います。

「振り子」はSK技術の中でも間違いなく核心の一つです。基本法形では、攻者の逆上段突の攻撃線上から前足側に体重移動しつつ身を躱し、前手で内受をします。「攻撃を受けたら同じ場所にはいない」「攻撃線上から居なくなる」というのがSK剛法の大原則です。とは言え攻防が速くなれば、攻撃線から居なくなるなんて無理になります。それでも基本法形で体重移動を意識した体捌き(=振り身受)を一生懸命修練する事により、攻防が速くなって避けきれなくなったとしても、攻撃をいなす効果は得られるのです。

内受はを入れる事を意識します。手先で受けても受けに力強さが出ません、肘を入れる、とは即ち肩を入れる、という事になります。受け手と反対の腕は、肘は前三枚に固定し脇を締め、拳は軽く引き寄せるように握ります。前の肩肘を入れ、後ろ手を引きつける事で、上体そのものが躱せます。
この時、前手(受け手)の尺骨側の線と後ろの肩を結んだ線が、攻撃線と並行になる位回転出来ていれば、その突き攻撃が自分に当たる事はない訳です。

上体の回転の返しで逆中段突きをします。

ですから内受突(裏)でまず意識すべきは、攻者の攻撃線を読む事、左右の足の間での振り子(=体重移動)を意識し横振り身で体を躱す事、更には内受と逆の腕の引き付けで上体を捻って躱す事、上体の返しで逆中段突を放つ事、です。

最初は「後の先」での修練で充分だと思います。

慣れてきたら早い段階で連反攻を加えた方がいいと思います。それも「順中段突」「順上段突」「逆廻蹴」などバリエーションを用意し、色々やらせてみるのがいいと思います。格闘技未経験者が多い為か、どうもSK初心者は決まった動きしか出来ないばかりか、それでいいと思い込みガチなので、連反攻をさせる事で「動き続ける事の大切さ」を教えるべきだと思います。

     ◆     ◆     ◆

内受突(表)は、旧科目表では2級科目でした。裏-表で随分と資格が離れていると思いませんか。燕返千鳥返ほど見た目に違いがなくとも、それだけの違いがあるのだという事です。

内受突(後)は基本的には「後の先」で成立する技法ですが、内受突(表)ではいよいよ「対の先」という事を意識した修練が必要になります。攻者の表に捌く技法では、のんびりしていれば反対の拳で殴られてしまう訳です。

因みに、外受突は表裏共に旧・科目表の4級科目であり、4級科目の最初が「外受突(裏)」次いで「外受突(表)」、続けて「外受蹴(裏)」「外受蹴(表)」でした。4級科目の後半では「打上突(裏・表)」「打上蹴(裏・表)」となっており打上げ受系は表裏が分かれてすらいません。

外受突(表)・打上突(表)は、後ろ手で受け前手で突き反撃する技なので、まだ良いのです。表に捌く以上「対の先」を目指すべきではありますが、前手で反撃する分、後ろ手の受けと同時に出し易いし、いざとなれば前手で守れるのでリスクは小さいです。内受突(表)こそ、いよいよ本当に「対の先」を真剣に考えなければならないのです。
(外受け系・打上げ受系4技に関しては、表裏の違いよりも、4技を全て4級科目として修練する事で、「突き技と蹴り技の構造と使い分け」「外受と打上げ受の違い」を理解させる事が目的なのだと思います)

攻者の突き攻撃の間に反撃の逆中段突を入れるという事は、必然的に前手の内受と逆中段突の動きを重ねていかなくてはならなくなります。(1)-(2)の動きではなく、内受から逆中段突が完全に一つになった動きを研究しなくてはいけない、という事です。

もう一つ内受突(表)で考えなくてはならないのは、(これは外受突(表)や打上突(表)など表に捌く技一般に言える事でもあるけれど)攻撃線を出来るだけ小さく躱す研究です。攻撃を裏に捌く技では、捌き過ぎのリスクは少ないです。もし背中まで回り込んでしまったら後刈倒なども出来る訳です。しかし表に捌く場合、常に連撃のリスクがあります。捌き過ぎる事は、わざわざ攻者の反対の拳に近づく事を意味します。
最低限の躱しで攻者の上段突(初撃)を逃れ、且つ自分の逆中段突の間合いに入る事が必要です。

更に言えば、攻者の上段突の表側に捌くという事は、攻者の攻撃線がやや曲線を描いた場合は追い込まれる方向でもあります。つまりしっかり避けないと当たるのです。これは矛盾してるとも言える難問です。

なので私が考えるのは、攻者の突きの攻撃線の内側に滑り込むようにして正中線を取る、という事です。よく本部の山崎先生が柔法で「正中線を取る」という事を仰っていたと思いますが、剛法でもそうですよね。他の武道でも「正中線を取る」という言葉を聞いたように思いますが、内受突(表)はまさにその修練のような気がします。 

内受突 外受突 開身突 Short Ver.:連続複数法形修錬 (金剛禅総本山少林寺 公式YouTubeチャンネルより)
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指導者の責任と武道の目的

2024年11月13日 | その他
ご存知の方もおられるかと思いますが、今月3日に宮崎市で開かれた小学生の空手大会で、試合中に背後から後頭部を蹴られる動画がSNSに投稿され、波紋を呼んでいます。

事実関係(更には背後関係)については勝手な憶測からの中傷も行われているようで注意を要するのですが、動画を見てほぼ間違いない(一目瞭然)と思われる事を述べますと、①A君がB君の顔面に当ててしまったらしく(反則かどうかは不明)、主審が「止め」を指示して両選手は一旦分かれ、B君は中央に背を向け(自分のセコンド側に?)歩きだす。②A君のセコンド側から「行け!」と指示が出て、直後にA君が背を向けたB君の後頭部に上段蹴りを入れ、B君はそのままうずくまってしまう。③主審はA君を制し、旗を持った副審2名が出てきてコート中央で協議を開始。その間、その場に倒れたA君は放置される。というものでした。

重要な問題点は2つ、(1).背を向けた相手の後頭部を蹴るという危険行為、(2).負傷した選手を放置して協議していた審判団、です。空手会には相当な衝撃が走ったようで、様々な意見表明や、先程も述べましたが「勝手な憶測からの中傷」も行われているようです。

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空手界の方々としては、外部の人間がこの事件に色々言うのは本心としては「黙っててくれや」というところだと思いますし、こうなった以上、空手界として何らかの判断はなされるのだと思います。しかしこれは武道・スポーツ全体の問題でもあり、特に格闘系武道(空手・柔道・合気道・SK 等)の指導者であれば意見を求められても当然な案件ではあります。

「武道にあるまじき行為」「これは武道ではない」という意見はよく見るのですが、武道の技術そのものは格闘術であり、自分を護る事が出来る反面、相手を破壊する事が出来る技術です。武道をやってさえいれば善人になる筈もなく、寧ろ技術を得て強くなる事で傲慢になり、より凶暴化する人間も少なくないと思います。

以前亀田兄弟の父ちゃんが試合中に息子に言った事がマイクに拾われてしまって大問題となり、父ちゃんはしばらく追放処分になりました。N大アメフト部で、指導者が危険タックルを指示した事件を思い出した方もいるのではないでしょうか。私は映画『ベストキッド』の「コブラ会」を思い出しました。「ついエキサイトして」ではなく、どんな武道・スポーツでも、勝負至上主義はこうした事件を生み出す可能性はいくらでもあるのです。

私はSK以外の武道や格闘技選手の方々とのお付き合いも何度かありますが、正直な事を言いますと、技術的に優れた諸先輩の言動に、他人への侮りや傲慢を感じる事が何度もありました。(逆説的になりますが「技術を得た事による自信」「指導者としての社会的な地位」が、逆に彼らを抑止している面すらあるのではないかと感じた程です) 力道山も刺されて死にましたし、「格闘技をする事で自分がより危険な場所に近づく事になったり凶暴な人間になるのなら、やる意味があるのか」と考え修行を止めようかと考えた事もあった程です。

しかし格闘技に関係なく、この世には理不尽や暴力が存在するのも事実です。体格的に劣るひとや女性など、肉体的に不利な人々がこの世の中で明るく生きていくには、何らかの自信の源が必要です。弱者がSKの修行で強者にも勝てる技術を獲得出来れば、それはそれで素晴らしいでしょうが、そうでなくても人間社会を生きていく精神的な強さを得る事は出来ると思っています。

暴力的な人々は、精神的な弱さを肉体的優位で補って(隠して)いるようにも見えます。

「弱者の護身術」であること、開祖の言葉を借りるなら「勝たなくてもいい、負けなければ良いのだ」というのが、私がSKを選んで続けている最大の理由です。

     ◆     ◆     ◆

負傷者を放置して協議を続けた審判の行動は理解し難いものではありますが、主審としては「試合という形式を完結する」という自分の仕事に頭が一杯になっていたのかもしれません。自分は行なわれた行為の評価を決定しなければならない、その間蹴られた選手の方は「誰かが面倒を見てくれるだろう」と期待したのではないでしょうか。

B君が倒れたのは恐らく自分のセコンドの目の前ではあったのですが、B君側の大人たちも「自分が助けに入って(介入して)いいのだろうか」と躊躇して対応が遅れたように見えます。ひょっとしたらここにも、勝負至上主義の落とし穴があったのかも知れません。

頭部に打撃を受けて倒れた選手がいたら、その選手の治療を全てに優先しなければなりません。

ボクシングでは、パンチを貰ってグロッキーになった選手に対しては、更に攻撃を畳みかけてトドメを刺す事が普通です。観客は「チャンスだ行け!」「相手はもうヘロヘロだぞ!」と叫び、時には後頭部にパンチが入る事もあります(本当は反則ですよね?)。ボクシングは或る程度それを覚悟して行なっている危険なスポーツであり、レフリーにはより高度で迅速な判断が求められます(レフリーストップに「もっとやらせろや」なんて言ってはいけませんね)。

SKでもここ数年の審判講習会では、演武中の危険な頭部打撲を繰り返し取り上げ、主審は「何を置いてもまず演武を中止し安否確認」と強く念押しされています。

今回は少年大会での事件だっただけに反響も大きかったようですが、どんな武道・スポーツでも事故は起きて欲しくないものです。

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