11月1日に開かれた熱田神宮(愛知県)から伊勢神宮(三重県)までの8区間106.8キロを走る全日本大学駅伝に初出場し、1本のたすきをつないで19位(関西出場チームでは立命館大、関西学院大に次いで3位)でゴールした「びわこ学院大」。

滋賀県東近江市の地方の大学から大学長距離界に風穴を開ける一歩が踏み出された。
高校生男子の長距離選手は、5000mの自己記録が実力の物差しとされる。
日本記録は、東京五輪マラソン代表の大迫傑選手が持つ13分08秒40。高校生は、13分台を出すと世代のトップランナーと注目される。
正月の箱根駅伝は、関東地区のローカル駅伝だが、高校球児にとっての甲子園のように学生ランナーのあこがれの的だ。
高校時代に14分台前半までの記録を持っている選手の殆どが、関東の大学に勧誘され、地方を離れる。14分台を持っていないと、競技継続が選択肢に入らない選手が多いのが現状だ。
びわこ学院大の選手のほとんどは、入学前の持ちタイムが15分台。「監督に声をかけられていなかったら続けていなかった」という選手もいる。
吉岡幹裕監督は、「箱根もないし、大学の知名度もない」と割り切って勧誘活動をしたという。持ちタイムだけでなく「どういう環境でそのタイムを出したのか」に注目し、選手の伸びしろを見極めた。
15分台の選手が集まったチームが今年、全国の限られた学校にしか出場権がない駅伝に出場したことは快挙だ。吉岡監督は「高校の時に15分台の選手にとって夢と希望のあるチームになりたい」と話す。
関西では、立命館大、関西学院大、京都産業大が三強とされている。だが、駅伝の日本一を決める全日本大学駅伝の結果は、25チーム中14位までを関東の大学が占め、実力差は明らかだ。
全日本を走り終えた選手が口々に言った。1区の井上亮真選手(3年)は「ここからが自分たちのスタートライン」。4区の多賀井悠斗選手(1年)は「自分たちの代で、関西で1番になって全日本で戦えるチームになりたい」。びわこ学院大が下から突き上げて関西のレベルを上げていこうと意気込んでいる。
吉岡監督は「箱根駅伝とは別の道筋でもアスリートとしての希望はある」としている。駅伝で上位に入ることはチームの大きな目標になるが、駅伝がゴールにはならない。
湯川達矢選手(4年)は「駅伝でもトラックでも記録を出したいのは同じ」と話す。小松原遊波選手(4年)は「卒業後も競技を続けてマラソンに挑戦したい」といい、原陽宏選手(4年)も「就職しても市民ランナーとして走りたい」とそれぞれがアスリートとしての道筋を描いている。
吉岡監督の「アスリートとしていろんな選択肢がある」という言葉が、選手の選んだ道からもうかがえる。
全国レベルの駅伝で戦い、それぞれがアスリートとしての道を歩む。学生ランナーが輝ける場所は箱根だけでないと証明するために、これからもびわこ学院大の躍進は続く。
応援して盛り上げて
箱根駅伝常連校の卒業生である私は、駅伝といえば関東というイメージがあり、選手にとって箱根が特別な存在なのは当たり前に感じていた。
びわこ学院大の取材を通して、箱根のほかに選手が目指せる選択肢は沢山あるのだと気付かせてもらった。記録を持っていない高校生の希望になるだけでなく、箱根以外の選択肢に魅力を感じて地方に残る学生が増えて欲しいと思う。
その一助となれるよう、この地で頑張るアスリートの努力を発信していく。応援する人も一緒に盛り上げて、関西のチームを強くして欲しい。 (石曽根和花記者)
応援して盛り上げて
箱根駅伝常連校の卒業生である私は、駅伝といえば関東というイメージがあり、選手にとって箱根が特別な存在なのは当たり前に感じていた。
びわこ学院大の取材を通して、箱根のほかに選手が目指せる選択肢は沢山あるのだと気付かせてもらった。記録を持っていない高校生の希望になるだけでなく、箱根以外の選択肢に魅力を感じて地方に残る学生が増えて欲しいと思う。
その一助となれるよう、この地で頑張るアスリートの努力を発信していく。応援する人も一緒に盛り上げて、関西のチームを強くして欲しい。 (石曽根和花記者)
<”湖国の現場2020”-中日新聞より全面転載>