↑写真:中日新聞より
日本酒で有名な「太田酒造」(草津市)は、隣の栗東市の「琵琶湖ワイナリー」・「栗東ワイナリー」でワインの醸造も手掛けている。ブドウ畑や専用の工場を構え、近年では県内を中心にホテルやレストランで取り扱われ、人気を集める。ワイン醸造の許可を取ったのは、戦後間もない1959年(昭和34年)。先々代の思いを引き継ぎ、太田精一郎社長らが力を入れている。
ワイナリーの前に広がる斜面に立つと、風の音しかしない。太田社長の祖父・敬三さん(故人)の思いを秘め、ブドウの木々が眠っているかのようだ。
敬三さんは、第二次大戦中に、軍からブドウ栽培を指示された。ブドウに含まれる酒石酸が、軍事利用できるためだ。戦後の深刻な食料難で、貴重な米を日本酒にすることに抵抗があり、ワイン造りを本格的に始めた。敬三さんが荒れ地だった土地を開墾し、今では8ヘクタールで、白ワイン用に6種類、赤ワイン用に3種類のブドウを栽培している。
ワイン用のブドウは、欧州では乾燥した気候の下で栽培される。一方、栗東市の土地は粘土質で、雨も多く湿気も強い。栽培にはあまり向いていない土地だ。しかし、太田社長は「祖父の苦労には感謝してもしきれない」との思いから、栽培を続けている。雨よけを設置し、風通しを良くするための除草を丁寧に行い、労力を惜しまない。
太田酒造のワインが注目されるきっかけは、10年前の方針転換にあるという。それまでは、観光客らのブドウ狩りのため、生食用も栽培していたが、ワイン造りに集中しようと、大部分をワイン専門の品種に移行。畑に隣接して工場も建設した。ここ10年で、栽培から醸造まで一括して担当するワイン専門の人材も育ってきた。
太田酒造では、自社のブドウだけで手掛けたワインを、滋賀県栗東市浅柄野の地元の地名「浅柄野(あさがらの)」というブランドで販売している。中でも人気なのは、ヤマブドウとカベルネ・ソーヴィニヨンを掛け合わせたブドウ「ヤマ・ソーヴィニヨン」を使った赤ワイン。野性を感じさせる強い酸味が特徴で、カモ肉などとの相性が抜群という。
「地元のブドウで地元の人間が造ってこそ、地ワインだと思う」とこだわりを見せる太田社長。「日本人に合ったものを造り、増産していけたらうれしい」と願っている。
問い合わせ:
栗東ワイナリー
栗東市荒張字浅柄野1507-2
栗東ワイナリー: 077(558)1406、
太田酒造: 077(562)1105、0120-008-474
<中日新聞より>