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法 水 道~The Road to NORIMIZU

映画・演劇についての戯言。ブログ引っ越しの際、一部文字化けや画像の不具合が出ております旨、ご了解ください。

『きみはいい子』

2015-07-06 23:48:00 | 映画道
『きみはいい子』

2014年日本映画 121分
監督:呉美保
脚本:高田亮  原作:中脇初枝『きみはいい子』(ャvラ社刊)
撮影:月永雄太  照明:藤井勇  録音:吉田憲義
美術:井上心平  編集:木村悦子  音楽:田中拓人
メインテーマ:ヴァスコ・ヴァッシレフ「circles」
出演:高良健吾(岡野匡)、尾野真千子(水木雅美)、池脇千鶴(大宮陽子)、喜多道枝(佐々木あきこ)、高橋和也(大宮拓也)、富田靖子(櫻井和美)、黒川芽以(匡の恋人・丸山美咲)、内田慈(匡の姉・岡野薫)、松嶋亮太(神田の義父・田所豪)、加部亜門(櫻井弘也)、三宅希空(水木あやね)、浅川蓮(4年2組・神田雄太)、下川恭平(同・大熊)、真鍋和愛(同・清水宇宙)、仁木翔鈴(同・星まどか)、佐々木実琴(陽子の息子・大宮ひかる)、川村あやの(娘・大宮はな)


  

岡野は、桜ヶ丘小学校4年2組を受けもつ新米教師。まじめだが優柔不断で、問題に真っ正面から向き合えない性格ゆえか、児童たちはなかなか岡野の言うことをきいてくれず、恋人との仲もあいまいだ。雅美は、夫が海外に単身赴任中のため3歳の娘・あやねとふたり暮らし。ママ友らに見せる笑顔の陰で、雅美は自宅でたびたびあやねに手をあげ、自身も幼い頃親に暴力を振るわれていた過去をもっている。あきこは、小学校へと続く坂道の家にひとりで暮らす老人。買い物に行ったスーパーでお金を払わずに店を出たことを店員の櫻井にとがめられ、認知症が始まったのかと不安な日々をすごしている。とあるひとつの町で、それぞれに暮らす彼らはさまざまな局面で交差しながら、思いがけない「出会い」と「気づき」によって、新たな一歩を踏み出すことになる―。【公式サイトより】

呉美保監督が坪田譲治文学賞受賞作を映画化。

原作は5篇からなる連作小説で、映画化にあたって3篇が選ばれている。
新米教師・岡野のパート、娘を虐待する雅美のパート、認知症らしきあきこと自閉症の弘也のパートが平行して描かれ、それぞれのパートで登場人物も少しずつ重なっている。ちなみに岡野の先輩教師・大宮拓也と雅美のママ友・大宮陽子は夫婦のようだが、同時に出てくるシーンはない。

児童虐待や学級崩壊など、学校や家庭をめぐる事件には事欠かない昨今だが、教師、児童、保護者とそれぞれの立場が丁寧に描かれている。
中では甥が岡野を抱きしめ、「頑張って。頑張って」と繰り返すシーンがよかった。それをきっかけにして岡野はクラスに「家族の誰かに抱きしめられてくること」という宿題を出すのだが、それまで手もつけられないような状態だった児童たちが翌日、宿題をしてきた感想を報告する。
中にはこれをご都合主義だという人もいるかも知れないが、これはドキュメンタリーではなくあくまでフィクションだ。著者としては、人間、誰しもが抱きしめられることを必要としており、そんな誰かがいる限り、きっと問題は解決するということを描きたかったのであり、そこは問題となるところではないであろう。

前作『そこのみにて光輝く』で突然、化けた感がある呉美保監督が本作でも冴え渡った演出力を見せる。まずなんと言っても子供たちの自然なこと。幼児たちも小学生たちもどうやって演出をつけたんだろうと思うぐらい。高良健吾さんも恐らく子供たちの名前なんかもちゃんと覚えて役に挑んだことが判る。
その他にも空間の切り取り方であったり、余韻の残し方であったり、細部にまでこだわっているのが伝わってくる。シーンとシーンの繋ぎ目にも工夫あり。


★★★1/2


『グッド・ストライプス』

2015-06-29 22:49:00 | 映画道
『GOOD STRIPES』
グッド・ストライプス

2014年日本映画 119分
脚本・監督:岨手由貴子
撮影:佐々木靖之  美術:安宅紀史、田中直純
音楽:宮内優里  主題歌:大橋トリオ「めくるめく僕らの出会い」
出演:菊池亜希子(萬谷緑)、中島歩(南澤真生)、臼田あさ美(緑の親友・裕子)、うじきつよし(真生の父・吉村仁志)、杏子(母・女医・里江)、中村優子(吉村の恋人・工藤紗代子)、井端珠里(真生の元同級生・祥子)、相楽樹(緑の妹・桜)、山本裕子(緑の姉・美幸)、蕨野友也(真生の友達・ヤーモン)、木ノ本嶺浩(同・ホーリー)、上原拓馬(同・タケオ)、大崎章(緑の父・和男)、唐木ちえみ(緑の母・しのぶ)、sugar me(裕子の所属するバンド)、ラテ(チセ)


    
自由奔放な文化系女子の緑(28才)と優柔不断なおぼっちゃまの真生(28才)。2人の交際は4年が経ち、いわゆるマンネリカップルになっていた。8月、真生のインド出張が決まる。次に会えるのは3か月後になるというのに全く寂しそうじゃない緑。素っ気ない態度の緑に対して、ふてくされたままの真生はインドへと旅立っていく。10月、慣れない土地で血迷った真生は、緑へ毎日メールを送っていた。その都度やる気のない返信はあったが、2か月目にさしかかると、ついに連絡が途絶えた。そんなある日、緑は具合が悪くなりトイレへと駆け込む。「……妊娠したかも」と気づいた緑。思いっきり泣きはらし、気持ちが落ち着いてから久しぶりに真生へメールを送った。11月、真生がインドから帰国し、緑と病院に行く。そして真生の母・里江に緑を紹介するが、そのまま医師である里江に診察をしてもらう。「どうして5ヶ月も気づかなかったの?つわりは?出産はどこでするの?実家に帰るの?」と問いただされ、何も気づかず、全く何も考えていない緑に呆れる里江。妊娠5ヶ月目に入っている事実に愕然とする2人は、「あ……結婚……する?よね」「……うん。どうして?」「……いや……一応……」と、流れで結婚を決め、準備を進めていく。まず、緑は真生の家へと引っ越す。大雑把な緑と神経質な真生、一緒に住みはじめても全く正反対の2人は些細なことでも揉めてばかり。次にお互いの家族を紹介する。真生は幼いころに両親が離婚、長く連絡をとっていなかった、和歌山で暮らす父親の吉村に連絡をとり、仕事の都合で上京した父親と久しぶりに会う。そのまま緑の働くレストランへ連れていき紹介する。続いて真生が緑の実家へ挨拶に向かう。緑が生まれ育った昔風の日本家屋に新鮮さを感じたり、仲の悪い姉・美幸から緑がバンドをやりたくて上京したことや、金髪のヘアスタイルで口元にピアスをあけた昔のパンキッシュな昔の緑の写真を見たりと、今まで知らなかった緑の過去を初めて知る。【公式サイトより】

岨手(そで)由貴子監督、劇場長篇デビュー作。

マンネリカップルが妊娠を機に結婚するというストーリーは至ってシンプル。その中で、お互いの家族のことを知っていくうちにお互いを本当に必要としあうようになる。最後の結婚式で見つめあう2人の表情は最初のそれとは明らかに違っている。結婚の準備をする中でのあれやこれやはあるあるエピソードも満載で、終始クスクス笑っていたような気がする。
惜しいのはタイトルで、パッと見、何の映画なのかよく分からない。一応、「素晴らしき平行線」ということらしいのだが、それを聞いてもピンとは来ない(笑)。

菊池亜希子さんと中島歩さんはいかにも現代的なカップルで、2人の醸し出す空気感が心地いい。山本裕子さん扮するお姉ちゃんもサイコー。音楽もよかった。


★★1/2


『大脱獄』

2015-06-28 21:50:00 | 映画道
『大脱獄』

1975年日本映画 91分
脚本・監督:石井輝男
企画:矢部恒、坂上順
撮影:出先哲也  美術:藤田博  編集:祖田冨美夫
音楽:青山八郎  助監督:橋本新一
出演:高倉健(梢一郎)、木の実ナナ(あき)、菅原文太(国岩邦造)、小池朝雄(佐川)、田中邦衛(剛田)、郷えい治(脱走者・南川剛太)、伊藤辰夫(同・赤田)、室田日出男(同・大地)、前川哲夫(同・北郷)、加藤嘉(同・風見)、須賀不二男(松井田)、田中浩(友成)、高宮敬二(安斉)、山本麟一(梶政)、三井弘次(祐太)、中田博久(待村)、佐藤京一(加賀見)、土山登志幸(須崎)、亀山達也(毛利)、檜よしえ(時子)、今福正雄(年造)、杉山徳子(峰子)、小川レナ(ローズ)、谷本小夜子(リリイ)、河合絃司(判事)、相馬剛三(刑事)、山本清(刑事)、藤山浩二(監守)、横山あきお


   

網走刑務所を脱走した七人の死刑囚達は、猛烈な吹雪と飢え、そして仲間割れで、生き残ったのは、梢一郎と国岩邦造の二人だけだった。錠前職工だった梢は、亭主に死なれて生活に困っていた妹母子を救けるべく、極道仲間の剛田に誘われて銀行強盗の手伝いをした。ところが剛田は警備員を殺害し、自分は仲間の友成、情婦の時子らと結託してアリバイを作り、梢一人にその罪を被せてしまったのだ……。国岩と別れた梢は剛田らの消息を追って札幌へ向かった。途中、腹痛で苦しむドサ廻りのストリッパー、あきを救けた梢は、あきを駅前旅館に休ませ、宿代と医者代を稼ぐため、鉄道の除雪作業員として働きに出る。しかし現場を仕切っている梶政が大巾に日当をピンハネしているのを怒った梢は、飯場に殴り込むが、すでに脱走犯だという事がバレていたために、梶政を殴り唐オ、金を奪って逃げた。宿に戻った梢は、その夜、宿が警察に包囲されているのに驚くが、警察の目標が自分ではなく、同宿していた殺人犯のやくざ・佐川であったのでホッとする。あきの病気も快復し、梢はあきと別れて札幌へ向かった。やがて梢は時子のアパートをつきとめ、時子の案内で剛田のいる小樽へ向かうが、時子は隙を見て逃げだし単身剛田に会いに行った。しかし時子は剛田に熱湯を浴びせられ、捨てられた腹いせに、梢に、剛田の黒幕は、函館の北海興業社長・松井田で、梢を殺人犯に仕立てあげたのも、また妹母子を轢き殺したのも松井田だと教えた。函館に乗り込んだ梢は、国岩から松井田が一億円の列車強盗を計画している事を知らされた。国岩は、癌で苦しむ母親を安楽死させ、診察を断った医者を殺した尊属殺人の死刑囚として生きる望みもなくなっていた。だが梢だけが自分を友人扱いにしてくれたために、梢には命をかけて役立とうとするのだった。雪野原を驀進する列車の中、国岩の応援を得た梢は、剛田、友成を撃ち殺した。だがこの応戦中に国岩は殺された。雪原を逃がれる松井田を追って激しい銃撃戦。そして梢は重傷を負いながらも松井田に恨みの銃弾をぶち込んだ。薄れていく意識の中で、梢は汽車に乗る直前、街角で見かけたあきの初舞台のャXターに記された劇場のある方向へ、雪を血で染めながら歩いていった。【「KINENOTE」より】

昨年11月に相次いで亡くなった高倉健さん、菅原文太さん共演作。
岐阜の名画座ロイヤル劇場にて。



劇場は思った以上に大きく、まさに昭和の映画館。
作品自体は決して傑作というわけではなく、脚本に穴も多いが(あっさり脱獄しすぎとか、梢一人に罪を被せるのは無理があるだろうとか)、タイムスリップしたかのような感覚の中、大きなスクリーンで健さんや文太アニイの姿を見ることができるのだから堪らない。
上映時間が91分というのもいいねぇ。最近の日本映画は無駄に長いので見習うように(って昔の映画を観るたびに思っていることだけど)。


★★1/2


『ビリギャル』

2015-06-27 19:06:00 | 映画道
『ビリギャル  学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』

2015年日本映画 117分
監督:土井裕泰  脚本:橋本裕志
原作:坪田信貴『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』
撮影:花村也寸志  美術:五辻圭  衣裳:篠塚奈美
編集:穗垣順之助、山本清香  音響効果:猪俣泰史
音楽:瀬川英史  主題歌:サンボマスター「可能性」
出演:有村架純(工藤さやか)、伊藤淳史(坪田義孝)、吉田羊(工藤あかり)、田中哲司(工藤徹)、野村周平(森玲司)、大内田悠平(弟・工藤龍太)、奥田こころ(妹・工藤まゆみ)、あがた森魚(塾長・峰岸誠)、安田顕(担任・西村隆)、松井愛莉(友人・本田美果)、蔵下穂波(同・香川真紀)、阿部菜渚美(同・岡崎結衣)、山田望叶(小学生のさやか)、矢島健一(校長)、中村靖日(小学校の担任)、峯村リエ(玲司の母)、根本真陽(幼少期のさやか)、西川茉佑(中学生の美果)


   

名古屋の女子高に通う工藤さやかは、勉強は一切せず友達と朝まで遊びながら過ごす毎日。このままでは大学への内部進学すら危ういと心配した母・ああちゃんは、さやかに塾へ通うことを提案する。金髪パーマ、厚化粧、耳にはピアス、極端に短いミニスカートにへそ出しルックというギャル全開の姿で入塾面接に現れたさやかに一瞬面食らう塾講師の坪田。しかし、見た目は派手でも素直な性格だとすぐに気付いた坪田はさやかと打ち解け、慶應大学への受験合格を約束するのだった。ところが当のさやかの成績は偏差値30の学年ビリ。学力テストをしても聖徳太子を“せいとくたこ”と読み、高校2年生にして小学4年生の学力しかない。そんな彼女の教室大爆笑の珍解答の連続にも「君の発想は天才級だね」と坪田は褒めるのだった。どうやって生きてきたのか理解できないほど知識の欠如を抱えるさやかであったが、坪田だけはこの愛すべきアホぶりの中に凄い可能性が秘められていると踏んだのだ。当初はノリで慶應大学合格という目標を掲げたさやかは、当然、絶望的な高い壁に何度もぶち当たる。だがやがて自分のために必死になる坪田の姿を見てガッカリさせないために、そして愛情を注ぎ応援してくれる母のために、さやかファンの不良少年・森玲司の励まし、ギャル仲間の友情にも支えられ、さやかは本気で勉強に取り組むようになっていく……。【「KINENOTE」より】

実話を基にしたベストセラーを映画化。

タイトルに書いてあるから結末はもちろん分かっているし、大体のストーリーも知っていたけど、単に頑張って結果を出してめでたしめでたしという話ではなく、ここで描かれているのは人が人を信じることの貴さ。ああちゃんにしろ坪田先生にしろ、無条件にさやかを信じ、さやかもそれに応えて実力以上の力を発揮する。これが本来の子育て・教育というものだろうなぁ。

有村架純さんはまさに適役。この勢いはしばらく続くだろうな。
名古屋弁も問題なし。田中哲司さんは三重県出身だけあって一番うまかったな。
吉田羊さんも母親役を好演。

主題歌のサンボマスター&伊藤淳史さんと言えばドラマ『電車男』。そしてエルメス(祝第二子出産)の旦那の会社が作ったサンシャイン栄が何度も映るというね。ところで慶應大学文学部の受験会場で使われていたのは名古屋市公会堂だと思うのだけど、東京に行っているという設定だったからちょっと混乱。


★★★


『靴職人と魔法のミシン』

2015-06-16 22:28:00 | 映画道
『靴職人と魔法のミシン』
THE COBBLER

2014年アメリカ映画 98分
脚本・監督・製作:トム・マッカーシー
脚本:メ[ル・サド
撮影:モット・ハプフェル  編集:トム・マカードル
美術:スティーヴン・H・カーター
音楽:ジョン・デブニー、ニック・ウラタ
出演:アダム・サンドラー(マックス・シムキン)、ダスティン・ホフマン(マックスの父アブラハム・シムキン)、スティーヴ・ブシェミ(理髪店主ジミー)、クリフ・“メソッド・マン”・スミス(レオン・ルドロー)、エレン・バーキン(アパートのオーナー・エレイン・グリーナウォルト)、メロニー・ディアス(社会運動家カーメン・ヘララ)、リン・コーエン(マックスの母サラ・シムキン)、キム・クルーティエ(タリン)、ダン・スティーヴンズ(タリンの恋人エミリアーノ)、クレイグ・ウォーカー(レメ[ター・ダニー・ドナルド)、フリッツ・ウィーヴァー(ソロモン氏)、スチュアート・ルーディン(鬚の老人)、エイドリアン・ブラック(死人アルバート)、ユル・バスケス(女装愛好者マーシャ)、クリフ・サマラ(インド人男性)、スティーヴン・リン(中国人青年)、マイルズ・J・ハーヴィー(骨太の少年)、ジョーイ・スロットニック(靴を奪われる男スリック氏)、メ[ル・サド(バーテンダー)、グレタ・リー(クラブの女性カラ)、ダーシャ・ャ宴塔R(レオンの恋人メイシー)、グリズ・チャップマン(レオンの子分ティノ)、ケヴィン・ブレズナハン(パトリック)、アルバート・クリスマス(ワシントン刑事)、サルヴァトーレ・ロッシ(スケート少年)、ファブリツィオ・ブリエンツァ(アブラハムの運転手ウェブ)、ドニー・ケシャワルツ(初代ピンチャス・シムキン)、イーサン・クシドマン(ピンチャスの息子ハーシェル・シムキン)


   
ニューヨークのロウアー・イーストサイドで4代続く小さな靴修理店を営むマックスは、いつもと同じ毎日を繰り返す冴えない中年男。ある日、電動ミシンが故障し、倉庫に眠る先祖伝来の旧式ミシンで仕上げた靴を試し履きした彼は、その靴の持ち主であるレオンに変身した自分を見て驚く。ミシンにその秘密があると気づいたマックスは、中国人になってチャイナタウンを満喫したり、別人の姿で入ったレストランではトイレで元の姿に戻って無銭飲食をしたりする。ある時、近所の美人タリンが恋人エミリアーノの靴を持ってくる。マックスはエミリアーノになりすましてマンションの部屋に入ると、シャワー中のタリンに誘われるが靴を脱げないことに気づいて泣く泣くチャンスを見過ごす。次いで年老いた母の願いを叶えるべく、何年も前に家を出て行った父アブラハムになって食事をする。その翌日、母は満足したかのように天に召される。喪が明けてレオンが靴を取りにくるが、引換券がなければ渡せないと断る。明日までに捜し出さないと殺すと脅されたマックスはレオンの姿で彼のアパートへ。レオンと喧嘩別れをした恋人が出て行った後、スタンガンを触っていて気を失ったマックスは帰宅したレオンと鉢合わせ。スタンガンで気を失わせたマックスは、レオンを椅子に縛りつけるが、子分が迎えに来たため、車に乗って借金の取立てに。途中、金を持ち出して囚われの身となったパトリックの命を助けてやった後、アパートのオーナーであるエレインから住民立ち退きのための資金を受け取るマックス。女装愛好家マーシャの姿でレオンのアパートに戻ると、自由の身となっていたレオンの逆襲に遭うが、履いていたハイヒールで反撃したところヒールが喉に刺さってレオンは絶命してしまう。翌日、マックスは警察に出頭して事情を話すが、アパートにはレオンの遺体も血の跡もなかった。店に戻ると愛用のバッグが届けられていて戸惑うマックスだったが、しょっちゅう店を空けるマックスを隣の理髪店主ジミーは心配していた。その後、地区の再開発に反対しているカーメンに協力して、アパート立ち退きを迫られていたソロモン氏を助けるべく一計を案じるマックス。その結果、エレインは逮捕される。レオンの時計を恋人に返したマックスは逃がしてやったパトリックに拉致されるが、死人に変身して車を衝突させて脱出。目を覚ますとジミーの店にいたマックスは、ジミーから意外な事実を知らされる。

『扉とたたく人』のトム・マッカーシー監督最新作。

in one's shoes(~の立場になる)という言い回しがあるけど(キャメロン・ディアスさん主演の『イン・ハー・シューズ』という映画もありましたな)、本作は先祖伝来のミシンで修理した靴を履いたら持ち主本人の姿になるという趣向。
もっと寓話的な話かと思いきや、無銭飲食や靴の強奪などその力を悪用した主人公には特にお咎めがあるわけでもなく、最後は何だか親子愛に収束してしまった。父親が失踪した件とアパート立ち退きの件をもう少し絡められるとよかったのだけど。あと、マックスが靴職人という仕事に誇りを持つようなエンディングにして欲しかった。

Rotten Tomatoesでの評価がすこぶる低いのは、いつものお馬鹿なアダム・サンドラー作品を期待したファンが多かったということかな(笑)。


★★1/2