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法 水 道~The Road to NORIMIZU

映画・演劇についての戯言。ブログ引っ越しの際、一部文字化けや画像の不具合が出ております旨、ご了解ください。

燐光群『屋根裏』

2015-05-26 23:16:00 | 演劇道
燐光群『屋根裏』



【名古屋公演】
2015年5月26日(火)・27日(水)
七ツ寺共同スタジオ
前売:3,300円  当日:3,600円

作・演出:坂手洋二
照明:苧ム功(龍前正夫舞台照明研究所)  美術:じょん万次郎
舞台監督:大川裕  衣裳:大野典子  美術協力:加藤ちか
音響:じょん万次郎、内海常葉  音響協力:島猛(ステージオフィス)
舞台協力:森下紀彦  宣伝意匠:川名潤(prigraphics)
文件侮閨F清水弥生、久保志乃ぶ  進行助手;長谷川千紗、川崎理沙
制作:近藤順子、鈴木菜子

出演:
円城寺あや(刑事1/素浪人1/死体/息子/青年/戦闘服1)
中山マリ(父/女/婦人/ウメさん)
鴨川てんし(刑事2/素浪人2/戦闘服2)
川中健次郎(中年男/紳士/主任/母/タケさん)
猪熊恒和(兄)
イ・ジュウォン(帽子の男)
東谷英人(ハセガワ/若い男/マッちゃん)
杉山英之(つなぎの男/松葉杖の男)
武山尚史(少年/赤い帽子の若者)
松岡洋子(キャスター/先生)
樋尾麻衣子(若い女/白い女)
田中結佳(女/青い帽子の若者/ぬいぐるみの女)
宗像祥子(少女)
宇原智茂(バイヤー)

狭く天井の低い、閉ざされた空間「屋根裏キット」。これを使って人々は危険な現実から身を守ろうとする。不登校やひきこもりの子供、張り込みの刑事、新撰組の動きを探る素浪人。山では避難小屋に、戦場では防空壕になる。だが、自殺や監禁を引き起こすとして屋根裏は発売禁止となり……。【ハヤカワ演劇文庫『坂手洋二Ⅰ 屋根裏/みみず』より】

2002年初演以来、国内外で何度も上演されている燐光群の代表作。

本作を観るのはその初演以来だが、テレビで放送された際にも見ているし、戯曲も読んでいるので、そんなに久し振りという感じはしない。
本作のほとんどは屋根裏キットと呼ばれる狭い空間の中で展開される。屋根裏キットで弟が自殺したことを受けて、兄が開発者を探すエピソードを軸に、人や場面が入れ替わり立ち替わり変化していく。
これぞまさに発明とも言うべき舞台で、小さな空間が無限の広がりを見せる。

初演時にはコイズミ首相だった箇所が今回はアベ首相となっており、これが思わぬ皮肉をもたらしていた。とりわけ、「アベが切れた。……日本は鎖国した」「俺たちの国がひきこもった」「在日米軍は沖縄に集め、県に自治権を与え、手を引く」といった台詞には苦笑せざるを得なかった。


刈馬演劇設計社『モンスターとしての私』

2015-05-23 22:29:00 | 演劇道
刈馬演劇設計社 PLAN-07
『モンスターとしての私』




2015年5月23日(土)・24日(日)
名古屋市千種文化小劇場
一般:2,500円

作・演出・舞台美術:刈馬カオス
演出助手:後藤章大(廃墟文藝部)、井上尚子(試験管ベビー)
舞台美術:岡田保(演劇組織KIMYO)
舞台監督:柴田頼克(かすがい創造庫/電光石火一発座) 映像:田中博之
照明:村瀬満佐夫(劇団翔航群) 照明オペ:平野行俊(劇座)
音響:エスパー渡辺(演劇組織KIMYO) 宣伝美術:おぐりまさこ(studiomaco)
イラスト:柚木昌幸(mooncalf) 小道具・SNS:森菜摘(名古屋市立緑高校演劇部)
出演:
鈴木亜由子[星の女子さん](モンスターと呼ばれた女・三神葵)
田口翔大[演劇組織KIMYO](映画を撮る男・村本心一郎)
中村繁之[フリー](村本の友人・瀧沢良介)
元山未奈美[演劇組織KIMYO](村本の姉・林田幸)
大屋愉快[劇団あおきりみかん](保護観察官・大井美晴)
二宮信也[スクイジーズ](大井の上司・辻善之)
岡本理沙[星の女子さん](カートを引く女・佐々木那津実)
藤村昇太郎[牛乳地獄](葵の兄・三神孝太郎)
大野ナツコ[フリー](被害者・東笑子の姉・東莉子)

兄のナイフを学校に持ち出し、同級生を殺害した三神葵。7年後、少年院仮退院が認められ、名前を変え、保護観察官の大井美晴と暮らし始めた彼女は、動物園の跡地に忍び込んで映画の撮影を行っている村本、瀧沢、そして村本の姉・林田らと出会う。そこにはカートを引く謎の女・佐々木那津実の姿もあった。そんな中、葵は被害者の姉・東莉子に謝罪に向かうが――。

第18回テアトロ新人戯曲賞佳作作品。
メガトン・ロマンチッカー時代の初演から10年ぶりの再演。

モチーフとしては、佐世保の小6同級生殺害事件と酒鬼薔薇聖斗の少年院仮退院。
その後の10年間にも同じ佐世保で同級生を殺害した女子高校生の事件があったり、名古屋大学の女子学生が知人女性を殺害し、高校時代にも同級生を殺害しようとしていた事件があったり、この手の話題には事欠かない。
サイコパス、ソシオパスといった傾向が見られるこれらの現実のモンスターに比べれば、本作の葵はいたってまともというか、社会生活を普通に営めそうな人物である。その辺りは作者の願望も込められているのかも知れない。
初演でも印象的だった机に突き刺さったナイフに当てられた真っ赤な照明や、キャンドルに早替わりする林檎は再演でも健在。終盤、隅に張られた数本の鎖が一挙に音を立てて外されるのは初演にもあったっけ?

この日はアフターシアターとして短編劇「スリーピング・ダーティー」の上演あり。
出演は岡本理沙(参考人・ツキオカホノカ)、元山未奈美(刑事・キクイナオミ)、二宮信也(刑事・ヤツハシケイジ)、長嶋千恵[劇団B級遊撃隊](刑事・ゴンドウサン)。取調べの最中に眠ってしまう参考人の話で、こちらもなかなか面白かった。


地点『かもめ』

2015-05-09 22:48:00 | 演劇道
愛知県件p劇場ミニセレ
地点『かもめ』

Чайка



【名古屋公演】
2015年5月9日(土)~11日(月)
愛知県件p劇場小ホール
一般前売:3,000円 当日:3,500円

作:アントン・チェーホフ  末F神西清
演出:三浦基
舞台美術:杉山至  衣装:堂本教子  音響:堂岡俊弘  照明:藤原康弘
舞台監督:世古口善徳(愛知県件p劇場)  特殊装置:石黒猛
宣伝美術:松本久木  制作:小森あや、田嶋結菜

出演:
窪田史恵(女優イリーナ・ニコラーエヴナ・アルカージナ)
小林洋平(その息子コンスタンチン・ガヴリーロヴィチ・トレープレフ)
安部聡子(若い処女ニーナ・ミハイロヴナ・ザレーチナヤ)
河野早紀(ソーリン家の支配人の娘マーシャ)
石田大(文士ボリース・アレクセーエヴィチ・トロゴーリン)
小河原康二(教員セミョーン・セミョーノヴィチ・メドヴェージェンコ)

大女優のアルカージナは恋人で人気作家のトリゴーリンを伴って湖畔の屋敷に戻ってきている。革新的な作家になることを志す息子のトレープレフ、女優を夢見るその恋人ニーナ。若いふたりによる劇が仮設舞台で上演される。トレープレフに片思いするマーシャ、マーシャに求婚しているメドヴェージェンコの姿もそこにはある――。【「シアターガイド」より】

京都を中心に活動する地点、初の愛知公演。
ロシアでも上演された『かもめ』の決定版。

舞台上には長いテーブルの上にサモワールと大量のコップ。上手奥にも小さいテーブル。
客席は舞台を囲むように配置され、客入れ中からニーナ役の安部聡子さんがティーサービスとのことでお茶とお菓子を配りつつ、本作のあらすじや登場人物紹介、初演時のエピソードなどを説明。
こういった演出は決して珍しくはないが、ここも含めての作品だと思うので、今後、地点の作品を観に行く方は開場時から入場することをお勧めしたい。

もはや古典とも言うべき『かもめ』を大胆に編集してあるが、本篇自体はさほどインパクトはなかった。というより、元々の『かもめ』を知らない人がこれを観て、果たしてどこまで筋を理解できたのかが疑問なのだが…。


劇団離風霊船『夜が明けたとしても…』

2015-05-05 20:59:00 | 演劇道
劇団離風霊船
『夜が明けたとしても…』




【名古屋公演】
2015年5月5日(火・祝)
愛知県件p劇場小ホール
指定席:3,800円  学生:3,000円

作・演出:大橋泰彦
舞台監督:青木睦夫  照明:川俣美也、塚原佑梨  音響:飯嶋智
衣裳:柿野あや  宣伝美術:カノデザイン事務所
出演:
松戸俊二(純平の上司・真木ヨウゾウ)
石沢拓弥(五十嵐純平)
進藤理恵(純平の元婚約者・北川さゆり)
瀬戸純哉(地域振興課・橘)
伊東由美子(市長・小早川よし江)
山岸諒子(ブティック・島崎)
小林裕忠(時計店・五十嵐/純平の父)
栗林みーこ(八百屋・小嶋)
江頭一晃(酒屋・関口)
橋本直樹(床屋・土田)
松延春季(蕎麦屋・黒澤)
中谷双葉(元OL・武藤ミエコ)
平塚慧佳(武藤の後輩・古川ミカ)
湯口智行(元カフェ店員・八木)
柳一至(カフェの客・佐伯)

所宮市のラジオ局に勤める純平はさゆりとの結婚を控えていたが、直前になってドタキャン。仲人を頼んだ上司の真木とさゆりが関係を持ったことが原因だった。傷心の純平は寂れた商店街で時計店を営む父のもとに戻るが、反発して出て行く。一方、商店街では若い住民を集めるべくプロジェクトが発足し、元OLの武藤と古川、元カフェ店員の八木とその客の佐伯がやってくる。当初は地元住民とも交流を持とうとしない若者たちであったが、それぞれ商店街にファンシーショップとカフェをオープンする準備を始める。ところが、プロジェクトリーダーとして町に現れた純平は常軌を逸した命令を出して、住民たちを当惑させる。その裏では市長の愛人・真木が暗躍していた…。

劇団離風霊船、実に8年ぶりの名古屋公演。

前半は寂れた商店街の再建話がメインで、離風霊船、とりわけ大橋泰彦さんも作風が変わったのねと思いつつ観ていたが、純平が再登場したあたりから様相が一変する。
この作品はまさに第二次安倍政権になって以降、昨今の社会情勢が作らせた一本と言ってもいいだろう。知らず知らずのうちに監視され、コントロールされる社会。それは決して絵空事ではない。
真木が追い出されてめでたしめでたしかと思いきや、最後に真木がそれもまた作戦のうちだとばかりに官房長官と電話で話すシーンには背筋が寒くなった。
ド派手な舞台転換こそなかったが、見応えはたっぷりでベテラン劇団の面目躍如といったところ。是非、今後も間を置かずに公演に来て欲しい。

キャストでは中谷双葉さんという方が目に留まった。離風霊船所属というわけではなく、オーディションで選ばれたようだけど、今回が初舞台だとか。今後の活躍に期待。


激嬢ユニットバス『シュレディンガーの猫たち』

2015-05-04 23:56:00 | 演劇道
激嬢ユニットバス第2回公演
『シュレディンガーの猫たち~8つの魂、荒ぶる、女ぶる~』

SCHRÖDINGER'S CATS



2015年4月30日(木)~5月5日(火・祝)
サンモールスタジオ
前売:3,800円  当日:4,000円

演出・補作:大森博(東京ヴォードヴィルショー)
脚本:ビーグル大塚(チャリカルキ)
舞台監督・舞台美術:佐藤秀憲(ステージメイツ) 舞台監督:山本愛
照明:金英秀(文学座) 照明オペ:江花明里
音響:吉田文菜(エスイーシステム) 宣伝美術・写真:古田亘(goggle)
ヘアメイク:TAKEA  演出助手:石川琴絵
出演:
有栖川ソワレ(漫画家・芦原樹)
今井和美(保育士・芦原樹)
今村美乃(風俗嬢・芦原樹)
うえのやまさおり(CA・芦原樹)
関根麻帆(探検家・芦原樹)
傳田圭菜(編集者・芦原樹)
日和佐美香(大工・芦原樹)
南かおり(主婦・芦原樹)
大関真[劇団SET・日替わりゲスト](保育士の恋人マナブ/風俗嬢の恋人マナブ)
その日、私、芦原樹は窓も鏡もない奇妙な館で目覚めた。扉はあるのに出ていけないこの館で、容姿も性格も違う7人の「芦原樹」と共に。ここはどこか?私達は誰か?ドタバタな時間の後、私達は気づく。私達はそれぞれの世界を生きる、「芦原樹」だと。そして全員に届くメモ「悔んだら、消える。」…。平行世界に生きる八人の「同一人物」が、古めいた館で繰り広げるコミカルでサスペンスな幻想劇。【「Confetti」より】

8人の女優からなるユニット・激嬢ユニットバス第2回公演。

舞台は二段組。壁には8人ゆかりのものが飾られ、1人減るたびに物が消えていく。
奥の壁やや左寄りには女性の肖像画があるが、1人を除いて心当たりのある者はいない。
下手手前、上手奥、手前にそれぞれの部屋へと通じる出入り口。

「シュレディンガーの猫」というのは量子力学におけるパラドックス。
ちょっと小難しいタイトルがつけられてはいるが、要はパラレルワールドもの。
とある館に集められた8人の女性は容姿や職業はバラバラだが、みな同じ芦原樹。
色々と話し合っていくうちに、人生の様々な分岐点での選択の結果が、それぞれの職業となって現れているということらしい。彼女たちは一人、また一人と悔やむことで成仏?していく…。
複数の俳優が一人の人物を演じるという設定自体はさして珍しいわけではないが、ワンアイディアのみに終わることなく、8人の女優の個性を活かしつつ、90分という上演時間でうまくまとめていたと思う。

旗揚げ公演では病気のため降板した関根麻帆さんがよかった。