-----------------------------------------------------------------------Text written by man-ju*[dokumushi-no-cyacyacya]
疲れがとれません。床に就くと体じゅうが水になったように手も脚も骨の在処さえも判らなくなります。
蛍光燈から垂れているのは灯かりを調節するためのスウィッチではなくて、あれは、模様のきつい毒蜘蛛が太った尻から出した糸でぶら下がっているのです。ぶらん、ぶらん、揺れながら今にも私の頸動脈を喰い破りそうです。
耳鳴りがすると思ったのはやたら肢の多い芋虫が左耳から頭のなかへと這入りこんでゆくためでした。血膿のように腫れた体から腐ったにおいが漂います。蹠の痛痒感は幾匹もの蟻が肉の内側に潜りこんでいるためです。どうやら私の肉のあいだに巣を拵えようというのです。
起きあがって群がる蟲たちを振り払いたいのですが、水のような体はびくとも動きません。それに、放っておいてもどうせ夜が明けはじめれば蟲たちはすごすごとどこかへ姿をくらませてしまうのです。私も蟲たちの存在を忘れてしまいます。また明日の晩になるまで思いだすことはありません。
……夜が明けはじめました。とたん、蟲たちはいっせいに私の体を離れ融けるように消えてゆきます。水のようだった体には血流が戻りはじめます。何もかもが元のとおりです。
ただ。
疲れがとれません。
[fukujyou-ni-shisu]*(2006. 04. ××)------------------------------------------------------------------------------------