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【ヴァギナ・デンタータ】

瞼を閉じれば見えてくるものこそ本当の世界――と、信じたい私は四六時中夢の中へ。

不発に終わった夜遊びの咄

2005年09月23日 02時09分14秒 | テクスト

-----------------------------------------------------Text written by man-ju*[fuhatsu-ni-owatta-yoasobi-no-hanashi]

 空に向かい、ひゅう、と矢を射る。流れ星をつくりたいので。矢は矢のまますっくりと細い放物線を描くだけで、星になることはけっしてない。何度やっても同じこと。
 腹が立ったのでめためたに乱射する。と、あっちゃこっちゃに飛び散った矢のうちの一本が月をかすった。
「ア痛ッ」
 頭の上から不機嫌そうな月の声。あっけにとられていると、月はそのまま不機嫌に僕を叱り始めた。
「おい、君、まったくとんだことを仕出かしてくれたね。私の顔が台無しじゃないか。この責任をいったいどうやってとってくれるつもりだい」
 あんまり頭にきた所為か、かすった矢の摩擦でか、いつの間にやら月はごうごうと音を立てて燃えだしている。僕は何も答えられずに、ぽかんと口を開けたまま。
「素直に反省するんなら私だってお月様だ、君を赦してやらないこともない」
 月が喋るたび、燃えた顔からぷうぷうと炎が飛び散る。火の粉がぽつッと頬に落ち、熱さに僕はようやく正気に返った。それから謝罪もそこそこに、くるりと月に背を向けた。慌てたのは月のほう。
「君は薄情だな、え、吃驚だ。私をうっちゃり、なぜどうして立ち去る」
「こんなに明るくなっちゃっちゃあ、流れ星なんてもう無意味だからさ」
 僕はぺろりと舌を出す。
「それじゃさよなら」
 逃げるが勝ちだ。僕は手を振り、明るい夜径をとっとことっとと駆けだした。

[fukujyou-ni-shisu]*(2005. ××. ××)------------------------------------------------------------------------------------