------------------------------------------------------Text written by man-ju*[hoshi-no-yono,yukidoke-no-asano]
星の奇麗な夜でした。
小さな雪だるまは窓辺に立ち、心地よさそうに睡るまりちゃんの姿をいとおしそうに見守っていました。
小さな雪だるまは、今朝まりちゃんにつくってもらったばかりでした。かわいらしい巻き毛を揺らしながら真っ白い雪を掬って自分をつくってくれるまりちゃんの姿を見ているうちに、小さな雪だるまはいつの間にかいっぺんにまりちゃんのことが大好きになってしまったのです。柔らかいまりちゃんの手が自分の頬っぺたやおでこを撫でてくれるのがくすぐったくて仕合わせで、小さな雪だるまは、まりちゃんには聴こえない声で思わずくすくす笑ってしまいました。
まりちゃんは、ぼくのことをどう思っているのかなあ。
小さな雪だるまはまりちゃんに撫でてもらったおでこをぴったり窓にくっつけて、かわいらしいまりちゃんの寝顔をじっと見つめました。クリスマスの夜をパパとママとおおはしゃぎで過ごしたまりちゃんは、疲れてしまったのでしょう、小さな雪だるまを窓辺に置くとすぐにすやすやと睡りについてしまったのでした。きっと愉しい夢を見ているのに違いありません。時折、嬉しそうに口許をほころばせています。
どうにかしてまりちゃんにぼくの気持ちを伝えることが出来ないかなあ。
小さな雪だるまは、仕上げにまりちゃんが被せてくれた赤い毛糸帽を大切そうに揺らしながら、まりちゃんの寝顔を見つめ続けました。
空ではきらきら、星がまたたいています。
翌日は晴天でした。
眠い目をこすってベッドから起きだしたまりちゃんは、ふと、昨日の雪だるまはどうしたろう、と気にかかりました。こんなによい天気では、小さな雪だるまのことですから、溶けてどうにかなってしまっているかもしれません。
まりちゃんは窓辺に駆け寄りました。
「まあ、不思議」
それからこんな声を上げました。
小さな雪だるまは、可哀相に、思ったとおり溶けて元の形をなくしていました。まりちゃんの赤い毛糸帽が窓辺に投げだされています。けれどもどうしたことでしょう、溶け残った雪はそれは見事なハートの形をしていたのです。まりちゃんが窓を開けて覗きこむと、お日様の光を浴びた雪はいっそうぴかぴかと輝きだします。
「本当に不思議なこともあるものだわ」
まりちゃんはもう一度独り言して、落ちていた赤い毛糸帽をハート型の雪にきちんと被せ直しました。それからちょっぴり、微笑みました。
昨晩は、本当に星の奇麗な夜でした。
[fukujyou-ni-shisu]*(2004. 0×. ××)------------------------------------------------------------------------------------