ふわふわな記憶

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『俺ガイルFes.』、君がいるから『俺ガイル』。

2015-10-04 22:40:00 | レビュー
『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。続 Fes.』 感想レポート


俺ガイルFes.

 今日は、「習志野文化ホール」で開催された『俺ガイルFes.』に参加してきた。地元民としては実に嬉しい開催地である「習志野文化ホール」だけど、アニメのイベントとして施設が利用されるのは今回が初めてなのだとか。さすがは『俺ガイル』ですよ。渡先生は原作でも「千葉県民でもそのネタは知らない!」ってくらいの千葉ネタを放ってくるからね。そんな『俺ガイル』のイベントですから、やはり開催場所も千葉でなくては!


 イベントプログラム

~前半~

・「俺ガイル王決定戦」
1.『俺ガイル』川柳
→映像が流れ、各シーンのキャラクターの心情を川柳にするコーナー。審査員は渡先生。

2.やはり俺のイラストはまちがっている。
→キャスト陣が与えられたお題についてイラストを描くコーナー。1つ目のお題は「妹」、2つ目のお題はディスティニーランドの「パンさん」。


~後半~

・「ライブパート」
3.ユキトキ / やなぎなぎ
4.Smile Go Round / 結衣
5.雪解けに咲いた花 / 雪乃
6.春擬き / やなぎなぎ
7.エブリデイワールド / 雪乃&結衣
8.Wrong as I expected / 渡 航(原作者)


 記憶している限りだと、夜の部の流れはこんな感じ。まず、『俺ガイル』川柳のコーナーは6つのシーンが映像で流れ、江口さん・早見さん・東山さん・佐倉さん・悠木さん・中原さんの6人がそれぞれのキャラの心情を川柳で詠み上げるのだが、早見さんが考えた川柳がもう凄かった。

 第4話で、八幡&葉山と折本&その友達がカフェで話をしていた際に何気なく八幡が店内を見ると、陽乃さんが八幡に手を振っていたというシーン。この時の陽乃の心情について、早見さんが考えた川柳が選ばれた。


手を振って 一時間経ち 筋肉痛

 この着眼点、天才だなぁ。早見さんは何を考えて生きてるんだろうと思った瞬間だった。


 他にも審査員の渡先生の審査がガバガバで、10点満点のはずが、佐倉さんが8万点獲得したり、イラストコーナーでは「妹」というお題で、江口さんが人間に見えるかすら怪しいレベルの「小野妹子」を描いたり、もう腹筋が痛かった。

 後半のライブパートももの凄い熱量で終始高まりっぱなし。やなぎなぎさんの歌唱力は本当に凄いなって。やなぎなぎさんも言っていたけど、春擬きは「“本物”を求めて彷徨う心境」が詩に表れていて、『俺ガイル』の世界観を上手く表現しているよね。ユキトキと春擬き、セットで素晴らしい。雪が解けて春が来て、でもその春は果たして自分が求めていた“本物”なのか。そんなストーリーにマッチしたこれ以上ない曲だと、ライブを聴いて改めて思った。

 個人的に大好きな曲である『Smile Go Round』を生で聴けたのも嬉しかった。この曲の前向きさ、とても力強くて、パワーをもらえるんですよ。由比ヶ浜の芯の強さが表現されていて、素晴らしい曲。



 笑いあり、感動ありの2時間だったけど、振り返ってみると、某麦わらの海賊王が2人も出てくるし、ライブコーナーでは原作者の渡先生がガチのライブを披露したり、良い意味で高校生の文化祭のような自由さを感じさせるイベントだった。ラノベ作家のライブなんて、前代未聞どころかこれから先もお目にかかることはないだろうなぁ。

 語り切れないけど、海賊王とかディズニーを意識したネタとか編集しないとまず映像化できないだろうし、今日ありのままの出来事をこの目に焼き付けることが出来て本当に幸せだった。一生忘れられない。またいつか、『俺ガイル』という作品のイベントに参加したいものです。






 以下、原作11巻とアニメに関する感想の追記を。


 このイベントに向けて、改めて『俺ガイル』を読み返していたんだけれど、以前にも書いた通り、青春ノベルとしてはこれ以上ないくらいの作品だと思う。

<関連記事>
『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』 そうして、彼・彼女らは“本物”と向き合う

 タイトルはキャッチーで凄く「ライト」なノベルっぽいのだけど、人間の外面と内面――綺麗な部分も醜い部分も描かれていて、キャラクターそれぞれに探し求める“本物”があって、その心の内に抱えている葛藤が徐々に曝け出されていく展開には、人と人との関係について考えさせられる説得力がある。


“それでも・・・・・それでも、俺は・・・・・俺は、本物が欲しい”
第9巻P254-255



 八幡は9巻で、由比ヶ浜は11巻でそれぞれ、自分の想いを言葉にする。曖昧な答えとか、馴れ合いの関係とか、そういう微睡のなかで上手く付き合っていく関係だってある。それが楽しいことだってあるし、そういう関係が間違っているとは思わない。むしろ、そういう関係の中で上手く付き合っていくことが、「社会に適応すること」だと平塚先生も言っていた。それでも、八幡は求める。“本物”の関係を。わからないことはひどく怖いことだから。曖昧で上辺だけを掬って、わかった気になって間違える。そんな関係は嫌だと。例え、自分の求める“本物”が理想だったとしても、もがいて、あがいて、苦しんで、そんな理想を押しつけあえる関係が欲しいのだと。



“あたしは全部ほしい。今も、これからも。あたし、ずるいんだ。卑怯な子なんだ。あたしはもうちゃんと決めてる。もしお互いの思ってることわかっちゃったら、このままっていうのもできないと思う.......。だから、たぶんこれが最後の相談。あたしたちの最後の依頼はあたしたちのことだよ。ゆきのんの今抱えてる問題、あたし、答えわかってるの。たぶん、それが......あたしたちの答えだと思う。あたしが勝ったら全部貰う。ずるいかもしんないけど......。それしか思いつかないんだ......。ずっと、このままでいたいなって思うの。”
第11巻 P311-313

 
 一方で、11巻における由比ヶ浜は「ずっと、このままでいたい」と言うのだ。雪ノ下の抱えている問題は、八幡に対して抱いている好意を(由比ヶ浜に指摘されるまでクッキーを渡せなかったことを始めとして)行動に移せないこと。そして、それを知ったうえで由比ヶ浜は提案する。あたしが勝ったら貰うのだと。ずっと、このまま奉仕部として三人でいる関係を。もし、お互いの思っていることがすべてわかってしまったなら、きっとこのままの関係を維持することは出来ないから。
 

“その提案には乗れない。雪ノ下の問題は、雪ノ下自身が解決すべきだ”
第11巻 P316


 無論、八幡は由比ヶ浜の提案を否定する。それは誤魔化しで、欺瞞だと。何よりも、他人から簡単に与えられようなものは“本物”ではない。与えられるものも、もらえるものも、それはきっと偽物で、いつか失ってしまうから。簡単に与えられるものは簡単に失われてしまう。だからこそ、自分でちゃんと考えて答えを見つけるべきだと。雪ノ下の未来は誰に委ねるものでもなく、雪ノ下自身で決めるべきだと。

 そして、そんな八幡のセリフに由比ヶ浜は「.......ヒッキーならそう言うと思った」って優しく微笑み、涙を滴らせて言うんだよね。どこまでも由比ヶ浜結衣という女の子は優しいなと思う。だって、由比ヶ浜の提案では“本物”は見つからない。それを由比ヶ浜自身も知っていたからこそ自分の本音を提案し、わざと否定されたのだから。
 

“......私の気持ちを勝手に決めないで。それに、最後じゃないわ。比企谷くん、あなたの依頼が残ってる。.......あと、もうひとつ。......私の依頼、聞いてもらえるかしら”
第11巻 P318

 そして、八幡の否定を聞いて、雪ノ下もここで初めて依頼をする。陽乃と比較されるのを恐れ、自分というものを持っていなかった雪ノ下が自分の心の声を打ち明ける。八幡、由比ヶ浜、そして雪ノ下。奉仕部の全員が自分の悩みをさらけ出すことで、また“本物”に近づいていくんだろうなと思う。



 渡先生が作中でキャラの心情やセリフの意味についての「正解」を明確に提示していないのは、読み手一人一人に解釈を委ねるためなのだろう。青春ラブコメはまちがっているかもしれないけれど、読み手がそのシーン・そのセリフを見て、どう思ったか、どう感じたか、どう感動したのかは自由であっていいし、そこに間違いはないのだから。

 あくまでも、一人一人の読者、『俺ガイル』を読んでいる「君」のための物語であって、「君」以外のための物語ではないんだなと。君がいるから『俺ガイル』なんだなって。やっぱり「青春」ってそういうものなんだなって思う。12巻が楽しみだなぁ。『俺ガイル』という作品に出会えて良かったと改めて思った一日でした。


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