Saxophonist 宮地スグル公式ブログ

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融合という意味での「フュージョン」

2006年07月11日 02時09分08秒 | jazz
僕が青春時代だった80年代(年とったなぁ・・苦笑)、ファンクは古臭い音楽であり、これからはフュージョンだ!と皆が色めき立っていた。2006年の現在では考えられない事である。70年代ファンクは音楽的でありグルーヴィーだが、フュージョンは軽くて商業主義的で音楽的価値はまるで無いというのが現在の音楽ファンの大方の見方であろう。だが、それはあくまで今現在の「フュージョン」と言う言葉の持つ意味が形骸化しているからに過ぎず、本来のフュージョン・ミュージックが持っていたパワーを現在の若者の多くが知らない事に起因している。

確かに今、当時のフュージョンの多くを聞いても感動する事は中々難しい。逆に言うと、今聞いて感動できるものが本当にパワーを持っていたものであるといえる。現在フュージョンと呼ばれている「歌の無い歌謡曲」みたいなのがフュージョンだとは僕は思わない。(アメリカでは「スムース・ジャズ」とも呼ばれているが。) 80年代にフュージョンというジャンルが確立され雛形らしきものが出来てしまった。それがフュージョンをつまらなくしパワーをそぎ落としてしまったに他ならない。結局は当時のレコード会社の販売戦略によりこういう事になってしまったと想像できる。しかし、僕は「ジャズ」や「ファンク」というジャンルにも同様な雛形が出来てしまっていると思う。その雛形から外れたら商業的に難しいし、逆にその枠組みを意識した音楽ほどつまらないと感じてしまう。

脱線してしまったが、フュージョンとは「融合」という意味であり、音楽においては、複数のジャンルを混ぜ合わせたもののことを言う。チャーリー・パーカーの頃からジャズとラテンとの融合は試みられてきたし、マイルスはスパニッシュ・スケールに傾倒していた時期があるし、60年代に生まれ、アメリカ人にとっても大衆的になったボッサ・ノヴァはブラジル音楽にジャズ的要素がミックスされたもの。コルトレーンは黒人のアフリカ回帰をジャズで訴え、気が付いたらインド音楽との融合にはまっていた。70年代のサイケデリック時代にはビートルズだってインド音楽の影響を受けていた。これを「フュージョン」と呼ばずして何と呼ぶのだ。そこには異文化への憧憬や自分の本来持つ文化を更に発展させたいという創造力が満ちている。そこにパワーを感じるのだ。そもそもジャズだってマーチング・バンドからスタートしたんだし。

一方で例えばクラシックやジャズという伝統的なジャンルを子供達に継承していく事は既存の文化を守る上では重要であるのは承知しているのだが、絶滅危惧品種を守るかのごとき排他的な教育を子供に施すのは如何かと思う。しかしながら、クラシック界でも、日本伝統音楽業界でも、ロック寄りなアプローチがかなり多いところを見ると、遅まきながらこれらのジャンルにも融合という意味での「フュージョン」が時代の流れとして起こったとしても不思議ではない。技術が確かな分、他ジャンルにアジャストする事は全く不可能というわけではないだろうし。まぁ、ただ音楽的には今のところ、その多くは正直稚拙だと感じてしまうけれど。

僕自身の話をすると、ジャズが最も好きなジャンルには違いないけれど、毎日日替わりで色んな音楽を聴きたいというのが正直な気持ちだ。時々、わけの分からないCDを買って「失敗したぁ~!」と悔やむ事も有るけれど、常に異文化に触れていたいと思うし、その努力はしていきたい。それがダイレクトに自分の音楽に影響を与えている事に間違いは無い。「宮地はやりたい事が絞りきれてない」との意見を頂戴する事もあるが、絞りきって何が良いのだろう?と逆に尋ねたくなる。僕が毎日聞いている様々な音楽の事を忘れてウソをついて封印した様な、狭い音楽を聴いてその人は果たして楽しめるんだろうか?そんな偏った音楽の聴き方なんて、人生の半分を損してると思っちゃうし、ジャズというそれ自体「融合」の末に生まれ、発展してきた音楽の楽しみを理解されてないのでは?と思ってしまう。

生きている音楽とは、現在も成長を続け変化を厭わない。例えばもし、ウェイン・ショーターの素晴らしい音楽がジャズに聞こえなかったなら、僕は「ジャズ」に拘らず、「ウェイン・ショーター」というジャンルを歓迎し、自分もそういうジャンルを創造したいと心から願うだろう。

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