原発記事を連載の頃、坂の途中のアパート・205号室に住んでいた。外階段を上がるとそのまま2階の廊下、部屋の入口が6つならんでいる構造。
その日、23時ころ、自宅に帰ってきた。2階の廊下に上がると、奥の私の部屋の前に3人の男がいた。全員、180センチ以上の長身だった。
大柄で態度がでかいので最初は刑事かと思った。しかし、時刻は23時。刑事ではないだろう。3人は、明らかに205号室前にいて、待ち伏せをしている。顔ははっきり見えないが、3人が私を凝視している。
このままでは何かがおきる。すぐにでも引っ返したかった。しかし、そうすれば205号の住人だとバレる。
ゆっくりと205号に向けて歩いた。204号で表札を見るような偽装をして、205号室の前についた。自分の部屋だが、3人の大男が進路をふさいでいた。
「そこ通りますので」と言って、連中の間をすり抜けた。隣の206号の先に非常用の細い階段がある。走りたいのを我慢して、その階段をゆっくり降りた。
1階に降りて、外の道路に出たとき、後ろで階段を降りる音がした。追いかけてくるのがわかった。
アパートのある丘は、道路から離れると迷路のようになっている。自転車でも通れない細い道、階段の道などがあり、夜は、知っている人だけが歩ける裏道。私はそこに走り込んで、丘を降りた。
駅近くの深夜営業のスーパーに入って、その後、24時間営業のファミレスへ。夜中の2時頃、アパート隣の敷地から連中がいないことを確認して、そうっと自室に帰った。その夜は電気をつけずにシャワーを浴びて、そのまま寝た。
これで難を逃れたが、まさか数年後に、生死をさまよう事態になるとは思ってもいなかった。いま、生きているのは、ただただ幸運だったからだ。
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