失敗。田舎暮らし ブログ

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小さな秘密、尾行した男

2020年12月30日 01時54分39秒 | 日記

福島の原発事故より前、原発問題の記事を連載していたときの話。

仕事を終えて、自宅アパートに帰宅して電気をつけると、すぐ電話がかかってくる。電話に出ると、耳が痛くなるほどの怒鳴り声が続くのが普通の毎日だった。怒鳴っているのがわかるだけで、何を言いたいのかなど、まったく理解できない内容だった。

このころ、反原発の市民運動に参加している人たちは、大規模な嫌がらせの被害を受けていた。私はただのフリーランスの記者だったが、原子力村の敵とみなされていたのだろう。毎夜、罵声電話が続いていた。

誰にも言っていなかったが、私は、取材で外出している時などに時間が空くと、百貨店のアパレルショップを見て歩くのが好きだった。百貨店の紳士服売り場のフロアにある好みのアパレル店を順番に見て歩き、たいていは何も買わずに帰る。それが、趣味というか、リラックスできる時間だった。最初は気づかなかったが、それを尾行されていた。

尾行を知ったきっかけは、一本の電話だった。

「ご注文の商品ができ上がりました」と百貨店から連絡があったからだ。

誰かが、私と偽って商品を注文して、出来上がったら電話するよう店員に頼んでいた。市民運動をしている人たちも似たような被害にあっていた。

だが、尾行されていたのは意外だった。「どうして?」と思うと同時に、アパレル店巡りという、小さな楽しみを奪われた気がして「尾行したのはどこの誰だろう?」と考えるようになった。

ある日、事務所のすぐ近くに、立ち食いの蕎麦屋ができた。2回目ほど昼飯をそこで食べた。ただ、その店の主人の目つきが悪いのが気になっていた。蕎麦もマズイし。

その日も蕎麦を食べて、もうこの店はやめておこう、と思って事務所に戻った。部屋に入って椅子に座った直後、激痛が! 耐えられない痛みで、救急車さえ呼べない激痛だった。

そのまま失神、というか「死」だった。意識がなくなるのがわかり、もうダメなんだな、と思った瞬間、誰かに背中を蹴られたような衝撃があり、心臓の拍動を感じた。

「ああ、いまは死ぬ直前だったんだな」と知った直後、そのまま事務所の床に倒れて、夕方まで眠っていた。蕎麦屋は、数日のうちに閉店し、その形跡さえなくなった。

その日から体調が悪くなり、仕事ができなくなった。うまく言えないが、事務的な仕事さえも無理になった。事務所を閉鎖して、仕事の質を変えようとしたが、体調は悪くなるばかり。ついに、静養のため故郷に戻った。

故郷に戻っても体調不調の原因がわかるまで、長い時間がかかった。最終的には、心臓の不調がわかって、2度の手術で状態がよくなった。

「そうか! あれは狙われたのだな」と、いまでもそう思っている。

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●noteと連動、記事を投稿しています。

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