あめつちの詩

「あめつち」に響く歌声の持ち主「にいや」こと「新屋まり」が奮闘の日々を綴る。

墓守りのお役目

2024-08-26 | 田舎暮らし

寂しいお盆休みだった。

子供の頃は親戚が大勢来て

酒盛りするのが常だった。

我が母には多少苦痛だったかも

しれないと思う。

料理が苦手で社交的なタイプ

ではない。

スーパーやコンビニがない時代

にも来客はあった。

祖母の時代には行商の人が

魚や海産物を勝手に冷蔵庫に

入れて帰り盆暮れに集金に来ていた、

と母から聞いたことがある。

池の鯉を料理し、飼っていた

鶏の首を絞めて調理していた。

小学生の頃、私も手伝った。

外の七輪で肉を焼いたり

ジャガイモの皮をむいていたっけ。

ご馳走といっても知れていたが、

野山や畠を駆け巡り集めた

食材で調理する。

あれが本当の「ご馳走」というものだ。

盆暮れは年々寂しくなり、

今年は誰も訪れない事態になった。

もっとも私と母がコロナで

食事も弟夫婦とは別々だった。

寝たり起きたりするのが

精いっぱいでお墓掃除を妹に

頼んだ。

お墓掃除は母から受け継いだ私の

役目と思っているが仕方ない。

我が家のお墓は2か所ある。

一つはお寺の敷地内の墓地。

父と父の兄弟が共同で建てた。

歴代の墓所は裏山にあって

竹藪に囲まれている。

小高いところにあるので

脚の不自由な母はお参りに

行けなくなった。

何年か前に弟が屋敷の敷地内に

降ろそうかと思うと言っていた。

お墓の場所を利便性で決める家も

多くなったが私は何となく

違和感を感じる。

その頃、親交のあった方は

お墓問題が得意そうだったので

聞いてみた。

「そこは鬼門じゃない?

ダメダメ、家が傾く。」

「(ご先祖が)今の場所が

居心地が良いし気に入ってる

って言ってるよ。」という

回答だった。

弟を「その手の話は大嫌いだ」

と激怒させた。

あれから何年も経つが墓所を

移動させる気配なし。

どの道、目の前にお墓があっても

手を合わせるのは年に1度あるか

ないかだろうね。

しかしながら歴代の墓には

誰が入っているかの名前もない。

それはまずいと件の人から

聞いたら気になった。

私にできる範囲で実にささやかな

銘を置いてもらい、

長年の雨で流れた土砂を

足してもらった。

その時に墓石屋さんに

「これ以上は骨が入らない」と聞いた。

墓石を動かしてもらい覗いたら

なるほど骨が穴をふさぐほど

もういっぱいで地面と同じ

高さになっていた。

順当にいけば次にお墓に入るのは

母だ。

2か所の墓所のうちどっちに入るか

とお盆に確認した。

竹藪の方だと答えた。

「お母さん、もう骨がいっぱいだよ」

というと「えっと取らんのんよ!」

という。

「えっと」とは「たくさん」

という意味。

焼き場で白骨に対峙すると

ついつい壺にぎっちりと

詰め込んでしまう。

その勢いでみんなが骨を取れば、

お寺の方も満杯になりかねない。

”骨は1本あれば良い”を我が家の

家訓にしよう。

家長不在で母と長女で決めた(笑)

で、嫁ぐあてのない私の骨は

どうなるか不安になり家長に

聞いた。

お寺のお墓に入る権利があるそうだ。

これで後生の大事は安堵だ。

そんなことを思いながら、

このお盆はほぼ天井を眺めて

過ごした。

2か所の掃除の確認とお参りには

何とか行った。

で、お盆も終盤の午後、

ソファでダラダラしていら突如

「竹藪のお墓に行かねば」と思った。

「通達が来た」というこの感覚は

私自身にしか分からない。

だるい身体を起こし墓所へ。

小さな墓石が点在していて

それらが伸びて来た薮の中に

埋もれそうになっている。

裏の竹が伐採されたらどんどん

墓所に生えて来た。

ほかの枝も伸びていて

あと2、3年で墓石が藪に

埋もれてしまうだろう。

いかにも哀れだ。

こんな墓所の家が発展する

はずはない。

他家の墓所だったらば見た瞬間に

そう思う。

ちゃんと工事をした方が良いかも

と前から考えてはいたがお金が

掛かる。

屋敷の敷地に降ろす降ろさない

とまた蒸し返すことになるかも

しれない。

かといってお墓が荒れて行くのは

忍びない。

ご先祖に申し訳ないな~と

墓石を眺めていたら

「倶会一処。土に還るんだから

問題ない。」と聞こえた。

「家に縛られる時代は終わった。

自由になりなさい」

「自分たちも自由になる」

という言葉が胸に降りて来て

私はオイオイ泣いた。

ご先祖は素晴らしい魂の

持主だったと知る。

この家系に生まれて有難いです

と言いながらまたオイオイと泣いた。

母に墓所が荒れていることを

報告した。

「でも土に還るんだけぇ

気にするなって。」と言う。

「誰に聞いたんか?」といぶかる母。

「ご先祖さまに聞いた。」と

答える変わり者。

内心「あなたが産んだんだからね。」

と思った。

家族の為、家の為にと

奮闘の人生を歩まれた

歴代のご先祖の尽力があって

私は生かされている。

魂の真の解放に向かって

この感覚を研ぎ澄ます。

そんな生き方を貫きたい。

ご先祖にOKを頂けるはずだ。

 

 

 

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