逍遥日記

経済・政治・哲学などに関する思索の跡や旅・グルメなどの随筆を書きます。

新型コロナウイルスと経済対策(2)―富裕税、現金給付―

2020-04-10 11:58:46 | 経済
新型コロナウイルスと経済対策(2)―富裕税、現金給付―
                                                             和洋女子大学・山下景秋

1.富裕層の社会的貢献
 4月6日に私のブログ「逍遥日記 山下景秋」に「新型コロナウイルスと経済対策―消費税引き下げ、現金給付、商品券―」という題の文章を掲載した。この文章で、消費税引き下げ、現金給付、商品券の3つの方法を述べ、この3つを比較した。
 このうちのどの方法をとるにしろ、問題は財政的制約があるということである。金額を大きくすれば効果が大きくなることは言うまでもないことであるが、巨額の財政赤字があるもとでは、その財源は国債を発行して余剰資金を吸収するしかないという制約がある。
 一方、このような財政的対策に加えて、日本などは更に金融を緩和しようとしている。しかし、金融機関はこのように経済が悪化している時期に喜んで企業などに資金を貸そうとはしない。貸したお金が不良債権になる可能性が高いからである。
 問題の根本は、企業などの事業体の製品やサービスが売れない状況にあることにある。製品やサービスの消費が増えなければ、企業は資金を借りる必要がないし、資金を借りることもできない。
 消費を増やすためには、広範な人々において資金の余裕が必要である。しかし、経営・経済が悪化している現在、それは期待できない。財政的支援にも限界がある。
 ならば、どうすれば良いのか?
 1つの方法として、富裕層の眠っている資金を活用させていただくということが考えられる。
 世界が大変困難な状況に陥っている現在、共に沈没しないためにはお互いが助けあわなくてはならない。資金に余裕がある人は資金に余裕がない人を助けてほしい。それは人道的な気持ちからであるが、資金を提供する人のためでもある。彼らが資金を豊富に保有できたのは、自らの努力もあるだろうが、(お客として、労働者として)一般の人々の助けもあったからだし、一般の人々が中心を形成する社会全体の経済状況が悪化すれば、富裕層がこれから将来に向かって利益を獲得することが難しくなるからでもある。さらに言えば、今回の新型コロナの蔓延ではまず主として貧困層(特にアメリカでは国民皆保険制度を利用できない人達)がり患し、それにより富裕層を含む貧困層以外の人達もり患するので、まず貧困層を経済的に救済することは富裕層などの人達の命を守ることにもなる。

2.富裕税
富裕税とは

 富裕税とは、富裕層が保有する資産に課す税金のことである。富裕税は純資産税とも呼ばれ、主に個人が保有する不動産をはじめとする有形資産、預金や有価証券の金融資産などを対象とし、こうした総資産額から負債額を差し引いた純資産に対して課税される。
 日本では1950年から53年まで実施したことがある。欧州では1980年代に10か国以上で導入された。80年代後半から多くの国で廃止されたが、フランス、ノルウエー、スイスでは現在でも実施されている。08年のリーマンショック後、アイスランドやスペインで富裕税が復活した。また、アメリカの民主党の大統領候補だったサンダース氏も、アメリカで導入する案を表明している。
内容
 富裕層のもつ資産の多くが、「預金やその他の金融商品に充当されており、さらにその資金は設備投資にまわる」とされている。
 いくら富裕層の資金が金融機関に供給されているとしても、消費が少なければ企業は金融機関から資金を調達しようとしない。富裕層のお金は富裕層のふところで眠っているというよりも、金融機関で眠っていることになる。
 経済を刺激する(そして富裕層の資金が有効に利用され彼らの利益がそれによって大きくなる)ためには、金融機関内の資金やその資金による設備投資だけでなく、同時に消費が増えなくてはならない。社会全体にとって重要なことは、設備投資と消費のバランスなのである。
 しかし、社会全体では、富裕層1人当たりの消費といってもその金額には限界があるし、また彼らが多額の資金を使って消費する商品は多くの場合はぜいたく品に限られている。
もっと広範な商品をもっと広範な人々が買うようになってこそ、社会全体の消費が増加し、これによって企業が金融機関からより多くの資金を調達しようとし、そしてその資金を投入している富裕層の利益も増すのである。そのためには、富裕層のお金を解放し、富裕層でない人たちにそのお金が流れるようにするのが好ましい。
 人々が国難に直面する現在、人々が経済の落ち込みを回避するためには、それが可能な者たちは自らある程度の犠牲を払わなくてはならない。そのためには、富裕層だけでなく、貧困に苦しんでいない中流上層階級も痛みを分かち合う必要があるのではないか。その1つの基準は、年収1,000万円以上の世帯かもしれない。
方法
 富裕税の実施方法の要点として次の3つが必要である。
 純資産が大きくなればなるほど税率を上げる。恒久的に実施すると富裕層の反対が大きいと思われる場合は、富裕税の徴収は経済が困難な状態にある期間に限る(つまり時限的に行う)。富裕税の金額を超える金額の寄付をした富裕者には、富裕税は課さない。
問題点
①徴税コスト

 過去において富裕税が廃止された理由の1つに、資産の把握が難しいということがある。資産の把握が正確にできることが必要である。
②株価の下落
 富裕税を課すと、富裕者が換金のために株などを売る可能性があるとされる。経済が困難な状況にある時に多数の株が売却されると株価が下落して、企業の資金調達が困難になる懸念がある。
 このような事態を避けるために、政府は富裕者から富裕税として現金を徴収するのではなく、政府が株や金融商品そのものを受け取る方法があるのではないか。政府は徐々にそれを売却し現金化する方法もあるが、政府は株(など)を売却して現金化するのではなく、受け取る株に見合った資金を財政支出し、政府が保有するこの株は将来危機から脱出する時に売れば良い。
③資産の海外流出
 富裕者が富裕税の徴収を嫌って、資産を外国に逃避させる可能性がある。タックスヘイブンに逃避させないように国際的に監視しなくてはならない。また各国間の税率が異なっていると、税率が軽い国へ資産が逃避する可能性があるので、国家間で税率を統一するように各国が協力しなくてはならない。

3.現金給付
 政府の予算から、そして富裕税などから、この危機に際し経済的に困窮している人達に経済的支援をすることが求められる。個人に対するその方法としては、消費税率の引き下げや現金給付、商品券の配布などがある。
 日本政府はこのうち、個人に対する30万円の現金を給付する方法を実施しようとしている。
①日本政府の原案
 政府の原案によると、次の(A)、(B)の方法により実施する。
 (A)給付対象は、世帯主の2月以降の月間収入が1月以前と比べて減少し、年収換算で個人住民税非課税の水準まで落ち込む場合。
 (東京23区内に住む会社員で単身世帯は年収100万円以下、専業主婦と子供2人の4人世帯では年収約255万円以下だと住民税が非課税となる。)
 一方、(B)住民税を課される収入があっても、急激な客足の減少などで月収が半減した人は給付される。収入(年収換算)が住民税非課税水準の2倍以下であることが条件とされる。
給付を求める場合は、希望者がその旨を自己申告する。
②.問題点
資産の保有者

 自己申告者のうち過去の年収が多い人の場合、資産を形成している可能性が高い。収入が落ち込んだとはいえ、彼らはその資産を取り崩してある一定期間生活できるはずである。
特に、年収がたとえば2,000万円や3,000万円などと非常に多く、高級な外国車や豪華な家に住み、宝飾品や美術品を多くもつなど、ぜいたくな生活を享受していた人たちに経済的支援することに対しての批判が多い。
 (A)の条件で、今年1月以前の個人の年収がたとえば1,000万円を超える人達には、1,000万円を超える金額が大きければ大きいほどその支援額を減らすことが必要である。
 ただ、何らかの納得できる事情・理由がある場合は考慮しなくてはならない。病気治療や介護などで多額の出費が必要であった場合などである。このような訴えがある場合は、役所の中で、複数の職員により構成される査定委員会で適否を判断することが求められる。 
所得と納税状況の正確な把握
 現金給付は自己申告で行われるが、問題は本当に申告通りの所得であるか(あったか)、税金を正確に納めていたか、支援の必要性がないぐらいの資産を保有していないかどうかなどの厳格な調査が必要である。できるだけ自己申告者の家庭の財産状況を調べることが求められる。
 特定の人達に対する現金給付を国民が納得するためには、以上のような条件が満たされなくてはならない。
自己申告の受付
 役所の窓口で、適正な自己申告のみを受け付け、不当・不法な自己申告を排除するためには、複数の職員(できれば警察出身者を最低1人含む)で対応することが必要である。なかには、暴力や脅しで不正な申告をしようとする者がいる可能性があるからである。




新型コロナウイルスと経済対策―消費税引き下げ、現金給付、商品券―

2020-04-06 11:17:27 | 経済
新型コロナウイルスと経済対策―消費税引き下げ、現金給付、商品券―
                                                     和洋女子大学・山下景秋
 

 最近の日本では上記のテーマが重要になってきたので書いてみました。皆さんの議論のたたき台として使っていただければ幸いです。
 なお、(  )内の日付は、関連した内容を私のツイート「山下景秋@kageyamashita」に掲載した日を表わしています。

1.新型コロナウイルスの拡大と経済
 当初、自国経済の維持を優先した結果、入国制限などの対策を早期にとらなかった(日本やイタリアなど)ことが、国内における新型コロナウイルスの拡がりを許してしまった。また、経済の急速な悪化を恐れて、経済を優先して非常事態宣言の発令などの感染症対策が後手になったこともある。結局、感染症対策よりも経済を優先する結果、逆にますます経済が悪化することになった。
 感染症の拡がりにより経済が悪化し、そして経済が悪化すると感染症がさらに拡大するという悪循環になる。感染症が拡がると外出が控えられ消費が抑制されるので経済が悪化し、経済が悪化して経済的に苦しい人々が増えると十分な治療が受けられなくなるし、栄養状態が悪化して免疫機能が低下するため感染症がさらに拡がるからである。
 この悪循環を断ち切るために、感染症の拡がりを断ち切る対策をとりつつ、経済の悪化を防ぐ対策も同時に行わなければならない。

2.感染症拡大下の経済対策
(1)国債発行による政府支出
 政府が国債を発行して国民の余剰資金を吸収し、その資金で企業など事業を行っている組織や個人に対する経済的支援を行うことが必要になっている。
 また新型コロナウイルス危機を根本的に解決するには治療薬と正確で迅速な検査技術(最後の5参照)の研究開発が必要である。それに加えて、医療施設を充実し、医療設備・機械(新型コロナウイルスの重症感染者の治療に必要な人工呼吸器やECMOなど)、防護服、マスク、消毒薬などの生産を増やすことも必要である。これらの生産を促すために、政府は適当な企業を選んでこれらの製品の製造を要請するか命ずるべきであり、これらの全てには巨額の資金(設備投資を支援する資金や、将来製品が売れ残った場合政府がその量を全量買い取るための資金)の援助が必要となる。(3月28日)
(これらの企業へ民間資金を融通する貸出や投資などによる民間からの支援も必要である。拙稿「コロナ研究投資信託」(3月20日の私のブログ「逍遥日記 山下景秋」)参照)

(2)企業支援と個人支援
 政府は経済的に困窮する企業などの組織を経済的に支援すると同時に、経済的に困窮する個人をも経済的に支援しなくてはならない。
 各国は金融緩和をさらに進め、資金融通の面でも経営が悪化する企業などに対する支援を行いつつある。

(3)個人に対する経済的支援
対象者 
 以下で専ら対象にしている人達は、新型コロナウイルスの影響により失業したり賃金が減るなどして収入が低下した人達と、もともと低収入でこの危機によりさらに困窮度が増している人達である(以下では、これらの人達を経済的困窮者と称することにする)。彼らこそ、危機時に支援すべき人達だからである。また、実際問題としても、財政の制約のために、影響の程度がそれほどではない人達に対する経済的支援の余裕はないかもしれない(ただし、これらの人達に対する財政支出により消費が刺激する可能性はある)。
消費税減税か現金給付か商品券か?
 個人に対する経済的支援としては、消費税を軽減する方法や、政府が各個人に現金を支給する方法や、政府が各個人に商品券(本稿では受給券と称する。後述)を渡す方法などがある。
これらの方法には効果があるかどうか問題点があるかどうかが重要であるのは勿論である。その他のポイントとして、これらの方法によって、経済的支援の対象者が絞れるか、支援の程度を決めることができるか、支援金をどの用途に使用するか(使用用途)、いつ使用するか(使用時期)、どこで使用するか(使用場所)などを決めることができるか、あるいは自由なのかも比較しなくてはならない。
①消費税(付加価値税)の引き下げ
メリット―消費の刺激
 一般に、消費税減税(あるいは消費税を0にする)は消費を刺激する。
 日本では、2019年10月1日から消費税率が8%から10%に引き上げられた。しかし、(酒や外食以外の)飲食料品には8%の軽減税率が適用されている。
 仮に消費税率がたとえば8%から5%に3%引き下げられる場合を具体的な数値例でみてみよう。
[(例)
 1個1,000円の食品があるとする。
 消費税率が8%とすると消費税額は80円。このとき、この食品の消費税を含む販売価格は1080円(=1,000円+80円)。消費者はこの消費税額80円(と本来の販売価格1,000円)を小売店に支払い、小売店はこの受け取った消費税額80円を税務署に納める。(小売店の1個当たりの売上収入は1,000円)
 消費税率が5%に下がると消費税額は50円。このとき、この食品の消費税を含む販売価格は1050円(=1,000円+50円)。消費者はこの消費税額50円(と本来の販売価格1,000円)を小売店に支払い、小売店はこの受け取った消費税額50円を税務署に納める。(小売店の1個当たりの売上収入は1,000円)
 消費税率が(8%から5%に)3%(=8%-5%)下がると、消費者の消費税支払額が30円(=80円-50円)減少し、小売店が税務署に納める消費税額も30円減少する。(この結果、政府[税務署]の消費税の徴収額も30円減少する)(このことは、政府が小売店から元の消費税80円を受け取る一方、30円の補助金を小売店に渡すことと実質的に同じであると考えることもできる)
 消費税を含む販売価格が1,080円から1,050円に下がるので、消費者はこの食品の購入数を増やす可能性がある。もし2倍の2個買うようになったとすれば、小売店の売上収入は、2倍の2,000円(=1,000円×2)に増える。
 結局、消費税が下がると、消費者の消費税の負担が軽くなるうえに、消費税を含む販売価格が下がるため消費者の購入数(小売店の販売数)が増えるので小売店の売上収入が増える可能性があることになる。
 反面政府の消費税徴収額が減少するので、消費税の引き下げは、政府が税収を減らす犠牲を払って、消費者の税負担を軽くし、小売店の売上を増やす効果があることになる。
 
 後で述べる現金給付は一部貯蓄(将来の消費のために現在消費しないおカネ)にまわる可能性があるが、消費税減税は消費を増やす効果が大きいところが異なる(ただし、高額商品の場合は後述参照。また外出規制の下では、その分消費刺激効果が小さくなる可能性がある。それを防ぐためには、宅配とセットにする方が良い。後述)。
対象
 消費税の引き下げは、経済を刺激するためには一律に引き下げるのが好ましい。しかし、社会的必要性や財政上の観点からは、経済的困窮者(前述)を対象に、必需財(必須の食料・食品、日用品など)に限定しその範囲内で行うのが好ましい。 (3月26日)
デメリット
 高額商品に関しては、消費税の引き下げを実施する前と復活引き上げ後に消費が抑制される可能性がある。消費税の引き下げが予想される場合は、人々は引き下げ後に買おうとして引き下げ前は買うことを控えるし、消費税が再び元の水準まで上がることが予想される場合は、その引き上げ前に多く買うので引き上げ後にはその分買わなくなるからである。
 ただし、最低限の生活に必須の(高額商品以外の)食料品(米・パンなど)や日用品(石鹸、タオルなど)は、毎日買わざるを得ないからそのような問題点はない。すなわち、食料品や日用品に関しては消費税引き下げの効果がある。(3月23日)
 なお一般に、消費税の引き下げは、復活引き上げ時に国民の反発をかう可能性がある。
 消費税の引き下げは、消費者(支援対象者)にとって商品の購入価格がその分安くなるという効果があるが、金額の大きい現金給付に比べれば、支援対象者が受ける恩恵度は低いかもしれない。もちろん、消費税引き下げと現金給付を合わせて行えば、効果は大きい。
方法1-食料品や日用品の一律引き下げ
 食品や日用品の消費税を一律に引き下げる。
 経済的困窮者にとって必要な商品である食料品や日用品の消費税を引き下げることによって、彼らの困窮を軽減させる。この方法は対象者を限定しないので簡単な方法であるが、経済的に困窮していない人達も恩恵を受ける。政府にとって消費税収入がその分減少するが、消費増の効果は広範な人達を対象にするので(経済的困窮者のみを対象にする場合に比べ)大きい。
方法2-消費税引き下げ券
 消費税引き下げの恩恵を受ける人達を経済的困窮者に限りたい。また収入低下幅の大きい人達や収入の水準が低い人達には、その程度に応じてより多く消費税を引き下げたい。対象商品を限定したい。そして消費税引き下げ期間を限定したい。
 このような政策的意図を含める場合は、消費税引き下げの1つの方法として、各個人に(引き下げる消費税額に相当する割引が可能な)消費税引き下げ券(たとえば、消費税3%引き券や4%引き券など)を配布するという方法がある。
 消費税引き下げの恩恵を受ける人達を経済的困窮者に限る場合は、その条件に該当する人達のみにこの券を配布する。消費税引き下げ券を保有する者は、販売側に対するその提示により対象者であることを示すことができる。
 収入低下幅の大きい人達や収入の水準が低い人達には、その程度に応じてより多くの消費税引き下げ券を渡すこともできる。
使用用途を食料品や日用品に限りたい場合は、この引き下げ券の使用をこれらの商品に限定するようにすればよい。
 この券を受け取った人達が買い物のために外出するのを控えるべきだというのならば、宅配による購入のみに使用できるという条件がついた消費税引き下げ券を配布する。(3月24日) また、この券の使用期間を券面に表示することによって、その使用期間を限ることもできる。
 この券を消費者から受け取った商店に対して、政府は引き下げた消費税に相当する金額を補助金として支給する。
 実際問題として、このような消費税引き下げ券を商店で提示する際、心理的な障害がある可能性はある。
 なお、このような消費税引き下げ券は、実質的に割引の条件がついた商品券(クーポン券)であるといえる。したがって、以下の③で述べる受給券(商品券)で代用できる可能性もある。
方法3-キャッシュレス
 商品購入代金をクレジットカードなどキャッシュレス(現金を使わない支払い)で支払う場合はどうなるか。
(クレジット―カードの場合)
 仮に消費税率が8%から5%に3%引き下げられる場合(前の例と同じ)を具体的な数値例でみてみよう。
[(例)
 消費者がクレジットカードを使って商品を購入する時、30円分安く買えることになる(現実には、消費者がカード会社に支払う金額が30円少なくなる)。
 カード会社は小売店に対してこの消費者の購入代金1,080円を支払う(この消費者のために立て替える)。後にカード会社は消費者から1,050円のおカネを受け取るが、カード会社は不足する30円(=1,080円-1,050円)を国から受け取る。
 国は小売店から8%の消費税額80円を受け取るが、カード会社に30円(補助金として)を支払うので、結局実質的に政府の税収額は50円(=80円-30円)となる。国は30円ぶん徴収する税収が減少したことになる。]

 このような仕組みを利用する場合は、まず対象者はカード会社に対象者であることを申請する必要がある。
 一定の上限金額内という制約条件のもとで、カード会社は、カード保有者のカード使用による消費金額のうち消費税減税額(たとえば3%なら、本来の販売価格×0,03)を計算し、カード保有者に対する請求額はこの消費税減税額を差し引いた金額となる。そしてカード会社は、この消費税減税額に相当する金額を政府から補助金として受け取る。
 対象商品が、たとえば食料品(米・パンなど)や日用品(石鹸、タオルなど)であるとする場合、カード会社に来る商品購入情報のうちどれが食料品や日用品であるか明確に区別できないかもしれない。その場合は、カード保有者が小売店で食料品や日用品を購入するときのみその消費税引き下げ額(と商品情報)をカード会社に伝えればよい。
 対象者を経済的困窮者に限る場合は、収入低下幅の大きい人達や収入の水準が低い人達に対して、その程度に応じて減税率を引き上げることができる。また消費税引き下げ期間を限定したい場合は、カードによる減税適用期間を決めてやればよい。
(デビッドカードの場合)
 消費者が購入すると、消費者の預金口座から即時に支払いが行われるデビッドカードのようなカードの場合はどうなるか。
 一定の上限金額内という制約条件のもとで、小売店は、カード保有者のカード使用による消費金額のうち消費税減税額(たとえば3%なら、本来の販売価格×0,03)を計算し、カード保有者の預金口座からその消費税減税額を差し引いた金額を受け取る。そして小売店は、この消費税減税額に相当する金額を差し引いた消費税額を政府に支払う。
 対象商品が、食料品や日用品であるとする場合、カード保有者が小売店で食料品や日用品を購入するときのみレジで消費税減税額を計算する。
 対象者を経済的困窮者に限る場合は、収入低下幅の大きい人達や収入の水準が低い人達に対して、その程度に応じて減税率を引き上げることができる。また消費税引き下げ期間を限定したい場合は、カードによる減税適用期間を決めてやればよい。
その他
 消費者が買い物のために外出することを制限したい場合は、消費税引き下げ券やカードによる使用を宅配による購入に限る必要がある。
 地元の小規模な商店の経営を維持するためには、宅配商品を地元の商店から購入するという制約を設ける方がよい。
消費税引き下げ券の場合は、券面に以上のような条件を記載することができる。

②現金給付
メリット
 各個人に対する政府による現金給付がその対象者を経済的困窮者に絞る場合は、収入低下幅の大きい人達や収入の水準が低い人達に対して、その程度に応じて給付する現金を増やすことができる。
 現金給付の場合は、受給した現金の使用用途と使用時期そして使用場所を個人の自由に任せることができる。ただし、現金給付の時期を分けることによって使用時期を政府がある程度管理することはできる。
 また、商品券に比べれば、商品券発行に必要な設計や印刷などに要する手間が省ける。
デメリット
 現金の使用時期が自由であるゆえに、現金が現在の消費に使われないかもしれない。経済が悪ければ悪いほど将来が不安なので、人々は現金を消費に使わず貯めようとするからである。(3月24日)
 また現金の使用用途が自由であるゆえに、本来の目的(必需財の購入や家賃や公共料金の支払い、医療費等の支払い)とは異なる用途に使われてしまう可能性がある。
 現金給付に関して自己申告制をとる場合は、本当は所得減ではない人物が申告する懸念がある。不正がないか審査を厳格に行い、本当に必要な人のみに適正に現金が給付されるようにしなくてはならない。(4月3日)

③受給券
 経済的困窮者を経済的に支援するためには、商品の購入に使えるだけである商品券よりも、家賃・公共料金・医療費・教育費などのサービスの購入にも適用できる、もっと適用範囲の広い「商品券」が必要である。本稿では、特定の商品を購入することができるだけでなく、特定のサービスをも受け取ることができる受給権を表わすものとして、受給券と称することにし、商品券と区別することにする。
 受給券は、この1枚の券によって購入できる(あるいは支払うことができる)金額が決まっている。
メリット―消費刺激効果
 消費を刺激する効果に関して、国民に現金を支給する方法と商品券を配布する方法を比べれば、財政支出額が同じなら、商品券の配布の方が良い。 (3月24日)。
 これに関しては、内閣府の検証に基づいて、島澤諭氏が政府による現金給付も商品券の配布も喚起される新規消費は同じだと主張されている。しかし、商品券の使用期限を設ければ、商品券の貯蓄化(商品券の使用の先延ばし)を防げるのではないか。
設計可能性
 受給券は、現金給付とは異なり、政府が受け取り個人の消費の内容・仕方を政府が設計することができる。すなわち、政府が配布する受給券は、使用用途と使用時期、さらには使用場所を社会にとって好ましい形に設計できる(後述)。また、受給券の対象者を経済的困窮者に絞る場合は、収入低下幅の大きい人達や収入の水準が低い人達に対して、その程度に応じて受給券の金額を増やしたり受給券の配布数を増やすことができる。
受給券の種類
 収入減に見舞われた人達が困るのは、食と住である。
 生存に最低限必要な食を確保するために、食料・食品の購入に使用できる(受給券の一種としての)食料品券や、石鹸、歯ブラシなどの日用品の購入に充てることができる日用品券を渡す。住を保証するために家賃補助が必要であるが、そのためには家賃券を渡す。もし居住する場所を失った人がいるならば、彼らに関しては、低料金の旅館・ホテルに宿泊できる宿泊券(宿泊者は宿泊施設の仕事を手伝う条件で)を渡すということも可能である。勿論、政府は食材・食品販売店や旅館・ホテルに使用受給券に該当する金額を補助金として与える。 (この両者により、食品販売店と旅館・ホテルの仕事を増やすこともできる) (3月24日)
 また経済的困窮者の生活にとって最低限、公共料金の支払い、医療費や教育費の支払いも必要である。これらのサービスの受給ができるための、公共料金券、医療費券、教育費券なども配布することが求められる。
宅配とセットなど
 食料品券や日用品券を配布することによって多数の人が商店に集中すると感染の機会が増えるので、商品購入に関する受給券はできるだけ宅配とセットにする(宅配のときに使用できるという条件を付ける)ことが必要である。
 配布された受給券の一部か全部を、受給券を受け取る人が住む地方自治体の中だけで使用できるようにすれば、自ずから住民の移動制限にも役立つ。
 なお、一定金額のうち各種受給券の受け取り割合をどのようにするかは受け取り個人に任せることもできる。(3月26日)
デメリット
 受給券の設計・印刷・配布などの準備にはある程度の時間がかかる。
 政府が恣意的に特定の受給券(たとえば和牛券)を発行する場合は、国民の反発を受ける可能性がある(畜産農家には、別途、宅配システム充実による販売維持と所得補償で対応すべきである)。
 
④対象
 政府による現金給付や受給券の配布は経済的困窮者に限るべきである。(だから和牛などの特定の品目を対象にした商品券ではなく、生存に最低限必要な食材である米などを想定した食料品券というような受給券にすべきである)(3月27日)
 収入低下幅の大きい人達や収入の水準が低い人達には、その程度に応じてより多くの現金や受給券を配布するのが好ましい。(3月24日)

⑤キャッシュレスの場合
 クレジットカードなどのキャッシュレスでも、現金給付や受給券に対応させるものを設定することができる。方法は、一定の上限金額内の制約条件のもとで、カードに貨幣情報を注入するかクレジットカードやデビッドカードを使う場合などがある。どの方法にしても、経済的困窮者のみを対象にすることが好ましい。
 一定の上限金額の貨幣情報を注入するカードでは使用使途を制限できないので、現金給付に対応する。また、クレジットカードやデビッドカードで使用用途を制限しないものも現金給付に対応する。
 どちらの方法にしても、まず対象者はカード会社に対象者であることを申請する必要がある。
(現金給付に対応―クレジットカードの場合)
 クレジットカードの場合は、カード会社は、一定の上限金額内の制約条件のもとで、カード保有者のカードによる使用額をカード保有者の代わりに支払い先に支払う。そしてカード会社は、この使用額に相当する金額を政府から補助金として受け取る。
(現金給付に対応―デビッドカードの場合)
 カード発行・管理会社(金融機関)は、一定の上限金額内の制約条件のもとで、カードによる使用額をカード保有者の預金口座に振り込めばよい。
 カード発行・管理会社は、この振込額に相当する金額を政府から補助金として受け取る。
 現金給付に対応する、クレジットカードにしろデビッドカードにしろ、対象者を経済的困窮者に限る場合は、収入低下幅の大きい人達や収入の水準が低い人達に対して、その程度に応じて補助金の上限額を増やすことができる。適用期間を限定したい場合は、カードによる適用期間を決めてやればよい。
(受給券に対応―クレジットカードの場合)
 使途を決められたクレジットカードは、受給券に対応する。
 カード会社は、一定の上限金額内の制約条件のもとで、カード保有者のカードによる使用額(食料品や日用品などの商品購入額や、家賃・公共料金・医療費・教育費等の支払い額)をカード保有者の代わりに支払い先に支払う。そしてカード会社は、この使用額に相当する金額を政府から補助金として受け取る。
 対象商品が、たとえば食料品(米・パンなど)や日用品(石鹸、タオルなど)であるとする場合、カード会社に伝えられる商品購入情報のうちどれが食料品や日用品であるか明確に区別できないかもしれない。その場合は、カード保有者が小売店で食料品や日用品を購入するときのみ、レジで対象商品の金額と対象商品であるという情報を入れてもらい、カード会社にその情報を伝える。カード会社はこの情報により対象商品の金額を計算すればよい。
 対象者を経済的困窮者に限る場合は、収入低下幅の大きい人達や収入の水準が低い人達に対して、その程度に応じて適用する上限金額を引き上げることができる。適用期間を限定したい場合は、カードによる適用期間を決めてやればよい。
(受給券に対応―デビッドカードの場合)
 使途を決められたデビッドカードは、受給券に対応する。
 カード発行・管理会社は、一定の上限金額内の制約条件のもとで、カード保有者のカードによる使用額(食料品や日用品などの商品購入額や、家賃・公共料金・医療費・教育費等の支払い額)をカード保有者の預金口座に振り込めばよい。カード発行・管理会社は、この振込額に相当する金額を政府から補助金として受け取る。
 対象商品が、食料品や日用品であるとする場合は、カード保有者が小売店で食料品や日用品を購入するときのみ、レジで対象商品の金額と対象商品であるという情報を入れてもらい、その情報を政府に伝える。政府はこの情報により食料品や日用品に関する補助金の金額を計算すればよい。
 受給券に対応する、クレジットカードにしろデビッドカードにしろ、対象者を経済的困窮者に限る場合は、収入低下幅の大きい人達や収入の水準が低い人達に対して、その程度に応じて補助金の上限額を増やすことができる。適用期間を限定したい場合は、カードによる適用期間を決めてやればよい。

その他
 消費者が買い物のために外出することを制限したい場合は、受給券やカードの使用を宅配による購入に限る必要がある。
 地元の小規模な商店の経営を維持するためには、宅配商品を地元の商店から購入するという制約を設けるのが良い。
 受給券の場合は、券面に以上のような条件を記載することができる。

⑥中央政府か地方自治体か?
 収入が低下した人達に配る受給券の発行・印刷と配布は、地方自治体に任せる方がよい。中央政府よりも、発行と配布のスピードが速いからである。ただし、受給券発行に相当する財政支出は、主として中央政府が負担する方がよい。
 また各家庭へのそれらの券の割り当て数も、地方自治体に決めさせる方がよい。地方自治体の方が低所得者を把握しやすいからである。
 それらの券の一部か全部をその地方自治体の中だけで使用できるようにすれば、自ずから住民の移動制限にも役立つ。(3月23日)

⑥実施の方法
 政府が行う経済対策として、上で述べた、消費税引き下げ(券)や現金給付、受給券配布をさまざまに組み合わせて行うことができる。
 たとえば、広範な人たちを対象にした一律の消費税引き下げを基礎に、さらに、収入の低下した人にその減収の程度に応じて受給券を配布することを加えるという方法があるかもしれない。
 また、政策実施の順番としては、準備があまりいらない現金給付を先にして、その後受給券を配布するという方法もある。
 いずれの方法にしても、各種税金の引き下げや免除なども付随する方がよいと思われる。

3.究極の方法はあるのか
 現在の新型コロナウイルスの感染症によるり患やこれによる経済悪化の問題の究極的な解決は、治療薬の開発を待つしかないのかもしれない。
 その他にも、もし仮にこの感染症の検査が短時間で行われかつ100%正確であり、またもし仮に病院に人々が殺到して院内感染や医療崩壊を起こさないような検査制度が完備されているならば、そして感染者が病院や自宅、ホテルなどに適正に収容・隔離されているならば、その他の未感染者は、感染を恐れることなく、自由に外出し、仕事をし、買い物ができるかもしれない(ただし、隔離された人々を区別・差別することは厳に戒まなくてはならない)。しかし、現実にはこれらの条件はそろっていない。
 我々は医療崩壊が起こらないように注意深く行動しなくてはならない。政府は経営の悪化した中小企業・各種事業体や個人を支援しながら、我々も少しでも工夫しながら、耐えて努力していくしかない。
 やがてこの苦しい事態は必ず終息する。それまでお互い頑張りましょう!

(近日中に、「新型コロナウイルスとマスク問題―買い急ぎ、買い占め、転売―」と「新型コロナウイルスと世界の経済・政治」をブログに掲載する予定です。)










新型コロナウイルスと各業種の対策

2020-04-04 08:26:15 | 経済
新型コロナウイルスと各業種の対策
                                                           和洋女子大学・山下景秋


 小売り業や飲食業、旅行業、ホテル・旅館などの業種を中心に経営が悪化しています。
 これらの業種の対策について私が最近投稿したツイートの内容をまとめて整理しました。
 私自身は各業種・業界に関して全くの素人なので、頓珍漢な内容も多いと思いますが、これを1つのきっかけにさまざまな活性化案がたくさん提起されることを望みます。ネットで多くのアイディアを募集すればどうでしょうか。
 ただし、この原稿を最初に投稿(4月4日)してから少し時間が経過して事態が深刻化したので、内容が現在では相応しくないものも含まれています(4月6日現在)
 なお、(  )内の日付は、私のツイート「山下景秋@kageyamashita」に掲載した日を表わします。
1.各業種の対策
小売業
 新型コロナウイルス対策として外出しない人が増えたので、様々な業種の経営が難しくなりつつある。消費者が商品を買いに販売店に行くのではなく、販売店側が消費者の住まいの近くに行って売ること、すなわち現代版御用聞きや行商が必要になってくる。(3月11日)
食材
 日本の牛肉「和牛」の味は世界最高峰である。外国でWagyuのメニューがあるぐらいである。その和牛が最近売れなくなっている。スキヤキ味、焼き肉味などの味のついた冷凍肉や缶詰にして、世界中に対して宅配で販売できないだろうか。(3月31日)
 和牛だけでなく、農家、畜産農家、漁家、道の駅、農協、漁協、旅館、地方自治体などが協力して、地方の食材を都会に配送するビジネスに力を入れてもらいたい。
飲食業、ホテル
 客が店内に入ることをためらうのであれば、客が料理自体を自宅に持ち帰るテイクアウトや、店側が注文に応じて客の方に料理を運ぶデリバリー(出前・配達)、そして高級店やホテルの調理場で調理した複数の豪華な料理や飲み物を自宅や職場、あるいは少人数の会場などに運び配膳するケータリングが可能である。その際、飲食店やホテルであたかも実際に食べているかのような雰囲気を味わうために、飲食店やホテル内の飲食用スペースや調理場を動画や写真にしてそれを付けて宅配する(あるいはYouTubeで流して、宅配先にその動画を紹介する)こともできるかもしれない。
 さらに、飲食店で仕事の減った料理人や、失業した料理人やスタッフが、客の自宅などに出向いてそこで(宅配された食材を使って)料理を作り配膳・給仕することも考えられる(3月24日、28日)。家庭に出向いた料理人が、家族に料理の方法を教えたり、家族と一緒に調理を楽しむということも考えられる。ただし、人が家庭に出向くのは、感染状況が深刻化すると難しくなる。出向く場合は、マスクは勿論、十分な手洗い、消毒が必要になる。
 飲食店が提供する料理自体を(味が少し落ちるかもしれないが)冷凍の弁当や缶詰にして、世界から注文を受け、世界の家庭に配送することはできないだろうか。 (3月31日)
 ただし、腐敗して食中毒をおこすと信頼が低下してこの仕組みが維持できないから、食の安全には十分注意しなくてはならない。
旅行、旅館・ホテル
 現在でも、車で国内旅行に行きたい人は多くいるはずである。客数が激減した旅館・ホテルは、消毒を徹底し、部屋の宿泊は連日ではなく隔日にしたり、各宿泊部屋を離したり、食事は部屋食などにし、それをアピールしてはどうか。(3月24日) ただし、事態が深刻になり外出が規制されると、旅行に出かけるのは難しくなる。緊急事態の期間は、旅館・ホテル、旅行業への政策的支援が必要だ。
 旅館・ホテルは、(低料金施設)貧困者の(補助金による)宿泊券により、(高料金施設)感染避難場所として(ただし、地方の人達からの批判がある)、あるいは逆に、未症状・軽症の感染者収容場所として宿泊客を獲得してはどうだろうか。(3月23日)
 東京都内のある企業が、都の外出自粛の要請を受けて、社員が都内のホテルに宿泊するようにした。満員電車で通勤する必要がなくなるし、ホテルの経営を救うことにもなる。(3月27日)
旅館・ホテル
 我々が各地に旅行・観光に行くのはその地特有の景色や雰囲気や料理・食材を楽しむためである。その地方特有の珍しい食材があるのなら、その地の食材自身や、それを調理した料理を都会の消費者に宅配したらどうか。旅館・ホテルが提供する料理自体を(味が少し落ちるかもしれないが)冷凍の弁当にしたり、 旅館・ホテルの料理そのものを缶詰にできないのだろうか。
食材や料理だけではない。旅館自慢の温泉水そのものや、温泉の水を取り除いた温泉の素を宅配で販売できるかもしれない。(3月31日)。
 ある観光地では、その地の空気を缶詰にして販売したこともある。ならば、その地のおいしい水を宅配で販売することも可能ではないか。またお土産を売ることもできるだろう。
それらのものを都会の消費者に送る時、その観光地の風景や生活や料理、温泉などを動画や写真にしてそれを付けて宅配する(あるいはYouTubeで流して、宅配先にその動画を紹介する)こともできるかもしれない。
交通機関
 人の移動が制限され始めたので、航空機、列車、バス、船などの客数が顕著に減少している。これらが人の移動に使えないならば、これらの交通機関の一部をモノの運搬に使えるように変更できないだろうか。(3月23日)
 空港には、減便により飛べず止まっている飛行機が多数ある。航空会社の収入も落ちている。一方、海外からの帰国者は公共交通機関を使わず2週間人とは触れず待機しなくてはならない。未使用の飛行機を彼らのための宿泊所として使えないだろうか。(4月1日)
 現在のような事態になると、クルーズ船の航行は中止すべきである。その代わりクルーズ船を病院船として使用できないだろうか。勿論、医療スタッフによる感染防止の強力な管理が必要である。(3月24日)
ネットによるビジネス
 今や先進国の産業の中心は情報関連である。新型コロナウイルスが蔓延し外出が規制されている現在、ネットで仕事を人々の間で融通したり分担したりすることが必要である。また在宅の人々に娯楽や気晴らしをネットで提供するビジネス(ヨガの指導など)も求められる。(3月28日)

2.宅配の必要
ネットによるサービスの提供・管理
 新型コロナウイルスが猛威をふるっている現在、外出が困難な状況であるので、各種商品を各家庭に配送したり、ネットを通じて各家庭にサービスを提供することが求められている。どの家庭でどんな商品やサービスを求めているのか、またその必要をどのようにして満たすのか、それらの情報をネットなどで整理・管理するビジネスが求められる。(3月28日)
宅配
 その情報に基づいて、商品を各家庭に配送する宅配の仕事に従事する人が多く求められている。
 宅配する人がウイルスをうつす可能性やうつされる可能性がある。宅配する人や宅配商品の消毒は十分に行う必要がある。支払いにはおカネや紙媒体の商品券をできるだけ使わず、ネットで支払ことができるならそうした方がよい。また宅配商品の受け渡し時、宅配スタッフと商品を受け取る家庭の人の間の距離をとって渡す(商品を庭先や玄関に置くなど)ことが必要になる。
宅配に従事する人は、危険を伴うのでその分高い賃金で雇わなくてはならない。

3.生産と雇用
生産の変更
 売れない製品が増えてくる一方で、タブレットなどの情報機器や、人工呼吸器やECMO、マスク、消毒剤など医療関係の製品の需要は増えている。
 需要の減った製品から需要の増えた製品へ生産を切り替えていかなくてはならない。そのためには、政府はそれらの製品を生産するための設備投資に資金を援助することが必要である。また、生産された製品のうち将来売れ残るかもしれない場合には、政府はその全量を備蓄用に買い取ることを生産企業に保証しなくてはならない。 (3月31日)
雇用対策
 新型コロナウイルスの蔓延により仕事が失われる。特に、小売り、飲食、旅行・観光、ホテル・旅館などの業種の仕事が減っている。
 一方で、マスク、消毒剤などや買い占め対象商品は生産増が必要になる。また外出せず自宅に居らざるをえない人々にとって食料・食品や日用品などは必要なので、それらを宅配する人が必要になる。これらの生産やサービスの提供に関わる雇用が必要とされている。
 また、在宅の新型コロナなどの患者を世話する人や、街の消毒用の要員も必要になる。
 何よりも情報関連の仕事が激増する。ネットを使って自宅で仕事や学習をする人が増え、ネットで商品を注文する人が増えるからである。
伝染病が拡散する期間、職を求める人々をこれらの仕事の方向に誘導する政府や民間組織の活動が求められる。(3月28日)。


(続いて近く、この私のブログ「逍遥日記 山下景秋」において、「新型コロナウイルスと経済対策―現金給付、消費税引き下げ、商品券―」、「マスク問題―買い急ぎ、買い占め、転売の問題―」、「新型コロナウイルスと世界の経済・政治」という題のブログを掲載する予定です)