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【福島第一原発事故】放射線被曝を考える①

2011-08-31 22:57:12 | 
何を隠そう、私は福島県の農家の出身です。一方で私は放射線業務従事者として、それを本職としています。そして幼い2人の子供を育てる親でもあります。事故からもうすぐ半年が立とうとしています。そのような立場の人間として日々原発事故とその影響について考えてきました。
半年が過ぎようとしていてもなお、世の中は冷静さを取り戻せずにいます。いまだ原発事故が収束しておらず、いつ収束するのかも定かではない状況が、国民を不安にさせているのは言うまでもありませんが、それに加えて放射線に対する理解や認識が足りないことも要因の一つだろうと思っています。今回は、私の立場から意見を述べるのではなく、少しでも放射線被曝に関する理解を深めるきっかけになってほしいと願って書いていきます。


自らを、そしてこの国を守るために

福島原発で水素爆発が起こった日、仙台市内で普段測定している空間線量率が普段より一時的に桁違いに上がったのを確認し、私自身衝撃を受けました。まだライフラインの遮断、食料不足で、毎日必死に過ごしていたあの頃、原発事故の重大さを十分に認識できていませんでした。
それから原発事故による汚染が深刻になり、自分自身がこの問題についてどのような情報を発信していくべきなのか、悩み始めました。しかし、ネットという世界中の誰もが見ることができる世界で、曖昧な情報を流せば誤った情報が広がりかねないし、あるいは流した情報が意図しないような形で受け止められてしまうかもしれないし、安易に情報を発信することを避けていました。その一方で、世間で広まっている誤った認識によって、差別や風評被害が今なお拡大していることに、危機感を抱いていました。
ここではあえて特定の機関や団体に対して批判をするつもりはありませんが、情報を配信すべきところから適切な情報公開が行われなかった部分があるのではないかと思います。また、専門家の方々がよく出てきますが、「放射線の専門家」と言っても非常に幅が広く、やはり被曝による人体への影響についての専門家と言えるのは、「放射線医学」や「放射線生物学」を専門としている方々だと思います。結局、一般の方々はどこからの情報を信じればよいのか判断に苦しんだのではないでしょうか。
恐れる必要のないことに気を取られ、本当に恐れるべきことには無関心になってしまうようなことは避けたいものです。しかし、放射線の人体への影響については科学的にもまだまだ未知の部分もあるわけで、明確な答えがあるわけではありません。結局、最も大事なのは、多くの情報を鵜呑みにするのではなく、自分自身で考えることです。自ら考えることなく情報に流され、他人に責任を負わせていては、自らを守ることはできません。自らを、そしてこの国を守るために、一人一人が自分で考え、責任を持つことが大切だと思います。考えるためには土台となる正しい知識、正しい理解が必要です。私が書く内容も「信用できない」数多くの情報の一つに過ぎませんが、少しでも正しい知識をもってもらい、自分自身で考えるための材料になればと思います。


放射能と放射線の違いは?ベクレルとシーベルトの違いは?

放射性物質は、放射線を出します。例えれば、放射性物質と放射線の関係は、電球と光のような関係です。被曝とは人体が放射線を浴びることですので、人体に影響を及ぼすのは放射性物質ではなく、そこから放出される放射線です。放射性物質は、放射性元素(放射性同位体)からできています。放射性同位体は、放射線を出すと、別の同位体に変化します。この現象を崩壊といいます。
一方、放射能とは放射線を出す性質のことです。放射性物質は放射線を出すので、放射能をもちます。
最近毎日耳にする、ベクレル(Bq)とシーベルト(Sv)。さらにあまりニュースでは出てきませんが、グレイ(Gy)という単位があります。これらを混同しないように気をつけて下さい。
まず、ベクレルとは放射能の単位、つまりどれだけ多くの放射線を出すかを表しています。具体的には、1秒間に崩壊する放射性同位体の数です。1回の崩壊で、放射線が1回放出されます。そのとき放出される放射線の種類やエネルギーは関係ありません。
グレイは放射線の強さを表す単位です。正確には、放射線が当たったことで物質が受けたエネルギーの大きさです。これは放射線の種類やエネルギーによって変わります。
つまり、電球と光に例えれば、ベクレルとグレイは、電球のワット数と実際に物が照らされる明るさの関係のようなものです。当然電球から離れれば明るさは暗くなりますし、電球の種類によって明るさは変わります。ベクレルとグレイは1対1の関係ではありません。


シーベルトはややこしい

シーベルトもグレイと同じように放射線の強さを表しますが、シーベルトは人体への影響の大きさに基づいています。つまり、被曝の大きさを表す単位ともいえます。放射線が人体に当たるとき、人体への影響の大きさは放射線の種類によって変わります。放射線の種類を加味したのが等価線量です。さらに、同じ種類・同じ強さの放射線を浴びても、その影響は体内の臓器ごとに異なります。そのような臓器や組織ごとの影響の違いまで加味したのが実効線量です。実は等価線量の単位も、実効線量の単位もシーベルトですが、ニュース等で話題になるのは主に実効線量だと思って下さい。
したがって、シーベルト単位の実効線量を求める方法は非常に複雑です。放射線の種類ごとに決まった係数や、臓器ごとに決まった係数をかけ算して、グレイからシーベルトに変換しなくてはなりません。
例を出してみます。例えば100mGy (=0.1Gy)のγ線が皮膚に当たったとします。まず、γ線の放射線荷重係数(放射線の種類によって異なります)は1なので、1をかけ算します。すると、皮膚に当たる等価線量は100mSvとなります。さらに皮膚の組織荷重係数(臓器や組織によって異なります)は0.01なので、0.01をかけ算します。すると、実効線量は1mSvとなります。全身の実効線量を求めるには、このような放射線の種類ごと、臓器や組織ごとに計算した値を、全て合計しなければなりません。体の表面と深部では到達する放射線の強さも異なるので、その影響も考慮しなければなりません。とにかくとても面倒です。
するどい方はもう気付いたはずですが、厳密に言うと、同じ放射線を浴びても実効線量の値は人によってそれぞれ異なります。それは、各臓器に当たる放射線の量はその人の体形によっても違うし、さらに男性と女性とでは異なる臓器があります(精巣と卵巣)。そこで、通常は平均的な人体のモデルを使って実効線量を求めています。最近簡単に測定できる線量計が出回っているようですが、そうした「裏」の事情を知らずに一般の方が線量計を使うのは少々無謀です。ここでは詳しく説明しませんが、目的に応じて適切な検出器を選び、正しい使い方で測定しなければ、何の意味もありません。線量計を使って測定したい方は、必ず専門知識を身に着けるか、専門の人から指導を受けながら使うことをお勧めします。


こんな感じで何回かにわたって、一般の方々が疑問に思っていることや、誤解が多い部分について、解説していきたいと思います。
次回は、非常に重要かつ誤解が最も多い、放射線被曝と発癌について、書きたいと思います。


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