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Gリングモザイク画像作成計画!

2006-10-22 17:59:04 | 特集
今日は1日、土星のGリングの画像を組み合わせてモザイク画像を作成していきます!
そこで、普段はヒミツにしている途中経過を逐一報告していきまっす!

今回は土星探査機カッシーニが9月19~20日に撮影されたGリングの画像68枚を使います。
でゎ、作業開始~★


⓪目的
で、Gリングのモザイク画像を作るって一体どういうこと?っていう疑問に答えておきます。

土星の周りにはリングがありますが、土星のリングはたくさんのリングが集まってできており、それぞれのリングには名前がついています。
Gリングはその一つということです。
もともとは1980年に探査機ボイジャーによって発見されたリングです。
とても暗く淡いリングなので、現在探査を行っている土星探査機カッシーニによって観測されるまでは、詳しい構造は知られていませんでした。

今回使う画像は9月19~20日にカッシーニが撮影した画像です。
時間をおいて20時間にわたる連続撮影が行われました。
土星のリングは土星の周りを回る細かい粒子の集まりです。
この20時間というのはGリングが1回転する時間よりも少し長く、つまりGリングの全周が観測されたということになります。
そのためこれら68枚の画像を重ね合わせれば、Gリングの全周にわたる画像を作ることができるというわけです。

ただ、組み合わせるといっても、そう簡単なことではありません。
リングは斜めの角度から撮影されており、円形のリングの画像を作るには、遠近法などを考えてそれぞれの画像をリング面に垂直な方向から見た画像に再構成しなくてはいけません。
しかも、土星、リング、カッシーニは動いており、それぞれの位置関係は刻々と変わっていきます。
それらの軌道を計算し、各画像を処理・合成していかなければなりません。

じゃあ、そんなに苦労して作る意味とは?
この画像が完成すれば、Gリングの全周にわたる詳しい構造がわかります。
そうすれば、これまで報告されていない新たな発見があるかもしれません。
どんな発見があるかはとにかく作ってみなければわかりません。
何の発見もないかもしれませんwww

①画像の準備
カッシーニが撮影した生の画像は↓ここで見ることができます。
Cassini-Huygens: Multimedia-Images-Raw Images
各画像を精確に組み合わせるためには、カッシーニや土星の位置、そしてカメラの向く方向などのデータが必要です。
ところが実際にサイトを見てみると、書かれているのは撮影されたときの日付と、対象(この場合は土星)までの距離のみ…
1秒過ぎれば土星やカッシーニの位置は大きく変わってしまうので、日付は役に立ちません。
というわけで、情報は距離のみ!ってことに…orz
土星やカッシーニの軌道から、逆に撮影時刻やそれぞれの位置関係を計算しなければなりません…

②恒星の同定
じゃあカメラの向いている方向はどうやったらわかるのか…
実は画像には背景の恒星も写っています。
これらの恒星を頼りに、カメラが向いている方向を精確に求めることが可能です。
でもその前にどの星がどの星なのかが分からなきゃいけません。
しかも元の画像を見てみると、ノイズが多くて、本物の星とノイズとの見分けがつきません…

そこで複数の画像を見比べます。
どの画像にも写っているものは本物の星である可能性が高く、1つの画像にしか写っていないものはノイズである可能性が高いと考えられます。
でも、こんな無数の点を一つ一つ星かどうか確認するのはとてつもなく時間がかかる!…というより不可能ですwww

そこでこんな処理を…
画像を重ね合わせるときに、明るさを掛け算します。
次の画像を見てください。

AとBはそれぞれ同じ領域を撮影した別の画像の一部分です。
たくさんの白い点が写っていますが、その多くはノイズでAとBのいずれか一方にしか写っていません。
両方の画像の明るさを掛け算したのが右端の画像です。
黒を0とし、明るくなるにつれて数が大きくなっていくとします。
掛け算には、1よりも大きな数は掛けていく度に数が大きくなっていき、1よりも小さな数は掛けていく度に0に近づいていくという性質があります。
1つの画像では明るさが1より大きくても、他の画像では1より小さい場合、画像を重ねていく度に明るさは0に近づいていきます。
このようにしてノイズが除かれていきます。
一方、どの画像でも明るさが1より大きい場合は、積も1より大きくなり、本物の星は明るい点として残ります。
こんな風にしてノイズまみれの画像から本物の星だけを抽出していきます。

実際にはこの作業ですらかなり大変なんですけど…www

下の画像はその一部で、明るい点が恒星です。


かなり暗い恒星まで写っているので、普通の星図では対応できません!
大型望遠鏡で撮影された画像と比較しながら恒星を同定し、カメラの方向を計算していきます。

③作戦変更!!!w
上の作業をようやく終えたものの、軌道データから計算される値の誤差が大きすぎるため、作戦変更です。
しばらくあれやこれやと考えてみて、一つの方法を思いついたので、とりあえずトライ!
45枚目の画像をよく見ると、画像の端に衛星ミマスが写っています!
この偶然(?)を利用して、カッシーニのカメラの向きと土星の位置との相互関係を計算しよう、ということに…
下はミマスを含む画像です。
左下の三日月の形をした天体ミマスです。

同じ領域を大型望遠鏡の画像(下)と比較することにより、カメラの方向がわかります。

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