猫面冠者Ⅱ

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東洋大学野球部:戦前の試合記録補足編=大正十三年の新七大学リーグ

2017-12-24 10:46:00 | インポート
まだこのブログを始めて間もないころの記事"東洋大学野球部の歴史-戦前④大正14年春”の中で書いたように、当初東洋大が他校とのリーグ戦に参加するようになったのは大正十四年からと思っておりました。先の記事中でも触れましたが大正十三年十月に結成されたリーグ戦についての『朝日新聞』に記事には東洋協会大(現拓殖大)の名前があり、東洋大学は載っていなかったため、そのように判断いたしたわけであります。

ところが、先日図書館で閲覧した大正十三年十一月発行の『野球界』に「東京七大學リーグの組織」という小さな囲み記事があるのを見つけ、その参加校には東洋協会大ではなく東洋大学となっており、更に大正十四年一月の『野球界』にこのリーグ戦では商大(現一橋大)が優勝したとの記事がありました。

そこで、今度は『一橋大学硬式野球部五十年史』(昭和四十八年刊)を見てみましたところ、こちらには当時の部員の方の回想記に東洋大と拓殖大の両方が記載されております。

ややこしくなってしまったので、先ずは三つの当該記事を並べて見てみることにいたします。


新リーグ戦今秋から開始
今秋より現代の五大学リーグ戦にならって國學院大学、商科大学、専修大学、農業大学、東洋協会大学、宗教大学六校の野球リーグ戦を行う事になった。その第一回戦は来る十月三日から開始される筈でグラウンドは渋谷の國學院、目白の東京海上保険、石神井の商大グラウンドを使用する予定。
(『朝日新聞』大正十三年九月二十七日)


東京七大学リーグの組織
五大学(早慶明立法)以外の大学が集まって、新リーグを組織した。この新リーグに参加した学校は
 商科大学、國學院、専修大学、宗教大学、東洋大学、中央大学、農業大学
の七大学である。この中中央、農業の二大学は、選手の都合で、今秋は出場を中止し、五大学のみで対戦することになった。運動場としては、国大球場、東京海上球場、商大球場等を使用するそうである。
云うまでもなく技量は、現在行われている五大学に劣るけれ共、各校の技量が割合に匹敵しているので、相当面白いゲームが見られるだろうと云われている。現在の五大学リーグを一流とすれば、新リーグは第二流である。
(『野球界』第十四巻十四号 大正十三年十一月刊)


新大学リーグ加盟と優勝
…この頃から東京市内の大学の間に、六大学に対抗して新リーグ結成の動きがあり、その中心となったのが専修、国学院大であった。
新設ホヤホヤの商大にも加盟の呼びかけがあり、結成打合会にもたびたび出席し、結局参加と決定し秋からの第一回リーグ戦開幕となった。
参加校は、専修、国学院、農大、東洋大、拓大、商大、宗教大学(?)の七大学であった…

…敗てもともとと、無欲の気迫で第一戦に臨んだが、意外にも優勝候補の一つ国学院大に勝ってしまった。以後は勢いに乗ったというか次々に勝進み、最後に自他共に許した優勝候補の専大と優勝をかけた一戦にも勝って、全く予期しなかった優勝の喜びにひたった…
(『一橋大学硬式野球部五十年史』=新大学リーグ加盟と優勝)



各記事でバラバラの参加校を一覧にすると下記のようになります。

國學院 商科大 専修大 宗教大 東洋協会大 東洋大 農業大 中央大
朝日新聞
野球界
一橋部史


この内『野球界』は二回に亘って記事にしており、又同誌の編集主幹である横井春野は専修大学で商業史の講義を持っており、いわば"加盟校の身内”とも言える人でありますので、三つの記事の中では一番正確なのではないかと思います。
(横井春野は後の五大学リーグ(いまの東都大学野球)結成にも"産婆役をつとめた”と自身が昭和七年にまとめた『日本野球戦史』の中で語っております)

一方、『朝日新聞』の記事は文中で"…十月三日から開始される筈で”などと書かれており、記者が直接取材したものではなく、伝聞情報によるもののようです。
また、『一橋大学硬式野球部五十年史』は筆者の方が在学されていた頃から五十年ほど経て書かれたもので、記事中にも(?)を付けていることから、少々あやふやな点があることを筆者の方も認識されていたのものと思われます。

従って、東洋大が大正十三年に行われた新七大学リーグに参加していた可能性は高いのではないかと思いますが、まだ確証は得られないので現時点では"東洋大学野球部:戦前の試合記録”の補足編として別記事での紹介に留めて置くことといたしました。

商大野球部戦績
…偶々七大学リーグ戦組織の企あり、我部も誘われて参加加盟し必勝を期して陣容を整えたり。
リーグ戦績
十月  四日対宗教大学  十五対〇 勝
十月  九日対専修大学  八 A対三 負
十月十五日対國學院大学   八対七 勝
十月十六日対東洋大学  二三対一 勝

以上の結果により三勝一負となり、専大、国大、又三勝一負にして此処に三者間に決勝戦を行う事となれり。
準決勝戦
十月二十四日対国学院大学 十五対十二 勝
決勝戦
十一月 五日対専修大学 十四対七 勝

斯くてリーグ戦最初の覇権を握り、優勝カップ及優勝旗を獲得せり…
(『野球界』第十五巻一号 大正十四年一月刊)



画像

                       『朝日新聞』大正十三年十一月六日



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