今日も口福 明日も口福 (きょうもこうふく あしたもこうふく)

外食率ほぼ100%、エンゲル係数は優に60%(半分はアルコール代)。そんな私の美味しい話。(おもに大阪の美味しい店)

食いしん坊道中・その四

2006-09-29 | Weblog
小鍋は「秋鮭とキノコの鍋」。
鮭から出る旨みを、舞茸やシメジ、そして松茸などのキノコが吸い込み、キノコのダシを秋鮭がまとう。美味しい相乗効果。
そして何よりここの料理は、基本になる吸いダシが非常に素晴らしいのだなあ。

天ぷらは4種盛り。
海老しんじょの団子に、レンコン、小ナスにししとう。
どれも旨いが、やはりレンコンの美味さは特筆ものだ。

ようやくご飯物に辿り着く。
松茸ご飯に、キノコの赤だし、香の物。
さすがにお腹いっぱいで、少し手をつけた程度でご飯は残してしまったが、最後までどれも美味しかった。

そしてデザート。
「黒ごまのブラマンジェ」に梨と柿だ。
果物は食べられたが、ブラマンジェは一応ひと口入れてみたものの、お腹いっぱいなのと、もとより甘いものが苦手なのでちょっと無理。
でもきっと甘い物好きにはたまらないのだろう。
ひと口食べただけで、香ばしいゴマときな粉の香りが、口いっぱいに広がった。

「なら、俺が食べるー!」
とダンナが二人分食べてくれる。
ありがたいけど、君もさっきまで「お腹いっぱいで苦しい」って言ってたんじゃなかったの。
「甘いものは別腹」ね。はいはい。

残したご飯がもったいないので、お握りにしてもらえませんかと頼んだのだが、
「お夜食なら別にご用意してございます」
といわれ、びっくり。え!? まだあるの!?
籐で出来た蓋つきの入れ物の中には、おいなりとカッパ巻きと昆布が入っていた。

翌日の朝食がまた豪勢。
部屋食ではないものの、温泉の湯を使った湯豆腐「荒湯豆腐」やカレイの干物、出し巻きなどすごい種類で、夕食と言ってもいいくらいの量だ。
しかも美味い。
熱いものは熱く、冷たいものは冷たく。当たり前のようでありながらなかなかできない配慮が行き届いている。
ご飯も普通のご飯かおかゆか選べるようになっているなど、本当にいたせりつくせりだ。

最後まで仲居さん達のサービスも気持ちよく、また泊まりに来たい、しかも連泊でゆっくりしたいと心から思った。
でも断言してもいい。
ここに1週間逗留したら、体重は確実に5キロは増えるだろう。

食いしん坊道中・その参

2006-09-28 | Weblog
さて、お待ちかねの夕食がやってきた。
ここの料理長は、昔「料理の鉄人」に出たこともあるという。
そうでなくとも、今上天皇も泊まったことのある宿だ。いやがおうにも期待が膨らむ。

食前酒の山ぶどうカクテルでのどをしめらせた後、出てきた前菜は7種盛り。
生春巻き、菊の花のおひたし、鯖の押し寿司、タイの子の寄せ固め、山芋の田楽、もみぢ麩、野菜のぬた和えと、どれをとっても味のセンスがいい。
素材を損なわず、上品な味付けで、滋味深い。
ここを勧めてくれた居酒屋「T」のお母さんが言っていた、「料理も抜群やでー」という言葉は本当だった。

お造りは4種盛り。
タイに帆立に甘エビ、トロだ。
もちろんすべて近海物ではなかろうが、どれも新鮮で旨みがある。
安い宿だと、小細工の効かない造りでお里が知れるものだが、ここらへんはさすがだ。

お造りと一緒に酢の物も出された。
「さんまのたたき みぞれ酢掛け」だ。
まだ少し暑い気候を配慮してか、少し酸っぱめのみぞれ酢がかかっている。
そのために、脂ののったさんまがきわめてさっぱりといただけて秀逸。

「お凌ぎ」として、「荒湯蕎麦」。
温泉であげた暖かい蕎麦だ。もちろん手打ち。
温泉の効果か、コシがあるのに表面だけがぬるっとしていて不思議な食感だ。
お昼にあれだけお蕎麦をいただいたというのに、ペロッと入ってしまう美味しい蕎麦。

そして焼き物は「丹波牛のロースステーキ。」
なんと、料理長みずから部屋に来てくれて、フランベしてくれた。
スノッブと笑わば笑え。私はこういうのに弱いのだ。
お肉は文句なく美味しい。
ただやはり私たちは「肉の脂嫌い」。正直あまりたくさんは食べたくない。
ありがたいことに、量はさほど多くなく、美味しく味わうことができた。
それに、つけあわせのレンコンがめちゃくちゃ美味い。
このへんですでに結構満腹なのだが、夕食はまだまだ続くという。


食いしん坊道中・その弐

2006-09-26 | Weblog
今回こそは「井づつ屋」のご飯について書こうと思っていたが、写真の処理が間に合わなかったので、またまたサイドストーリー(?)だ。

途中出石のそばを食べたりしていたので、大阪を出発してからたっぷり5時間たってようやく宿に到着。
チェックインを待ちながら出された和菓子つきの「おうす」が、けっこう旨い。
部屋に案内されると、12畳と4畳半の二間続きの部屋で、かなりゴージャスだ。
なんてったって、今回は贅沢にも、露天風呂つきの部屋を頼んだんだもんね。

部屋付きのお風呂は、二人でもゆったり入れるくらいの大きさでなかなか。
でもまずはやっぱり大浴場でしょう。
聞けば屋上と地下の2ヶ所に大浴場があるという。もちろんどちらも入るとも。

まずは地下のお風呂へ。
泡風呂、打たせ湯、露天風呂とオーソドックスに嬉しい風呂がたくさんある上に、温泉熱を利用した岩盤浴まである。
わーい、うれしーーーっ
先日初めて体験したのだけど、岩盤浴ってお腹がぽかぽかして、いっぱい汗が出るから大好きなんだよなあ。サウナより息苦しくないし。

風呂から上がって男女共同のお休み処で休んでいたら、冷たいお茶と和菓子がサーブされた。午後6時までのサービスだそうだ。
その他にも、セルフサービスで黒豆茶が一日中飲み放題。
すごいな、この宿。風呂でのタオルも使い放題だし、致せり尽くせりだ。

午後6時までなら、屋上の風呂の休み処ではビールや純米冷酒をサーブしているという。
もちろんレッツゴーゴーだ。
「俺は部屋に帰ってるよ」とトーンダウン気味のダンナを尻目に、屋上へ突進する。
屋上はひとつしか湯船がないが、ゆったりしたヒノキ風呂の露天。これはこれで趣がある。
ここでも懸命に汗を出す。もちろん休み処のためだ。

さすがにどちらもとは言えないので、断腸の思いで冷酒をあきらめ、ビールを選択。
くはああああああっっ、たまんねーーーーっ!!
風呂あがりでビール。文句がつけられるもんならつけてみろってんだ。

夕飯まで間があるので、二人で浴衣姿の散策に出かける。
坂の下に源泉があって、無料の足湯場所も設けられている。
その横には調理場があって、近くの土産屋で卵やとうもろこし、サツマイモなどを買ってゆでられるようになっている。
本当は全部試してみたいが、せっかくの夕飯が入らないではもったいないので、三つ入りの卵だけ買ってみる。
土産屋で指示された時間で卵をゆでる間、足湯を楽しんだ。
ものすごく気持ちいい。それに卵の出来ばえにわくわくだ。

足湯を終え、卵を食す。
ちゃんと半熟で旨いなあ。
ここは硫黄泉ではないので、ヘンな匂いもしなくていい。

土産屋とコンビニで地酒やつまみも買い込んで、夜の飲み会に備える。
毎日が家庭内宴会の私達だから、日本酒二本は要るよね。
その前に夕食だから、それまでにもう一度お風呂で卵の分を消化しなくちゃ。
もちろん、屋上の風呂にもう一度入って、湯あがりに冷酒を頼んだのは言うまでもない。
美味しい夜は、まだまだ続く。

食いしん坊道中・その壱

2006-09-25 | Weblog
すっかり涼しくなってきた。
温泉の恋しくなる季節だ。
夏に行った伊香保温泉の宿は、お湯はよかったが食事があんまりだったから、それ以来私の「温泉欲」は宙ぶらりんで、旅に出たくて仕方ない。

そんな事を行きつけの居酒屋「T(仮名)」でもらしていたら、お母さん(おかみさんのこと)がアドバイスをくれた。
湯村温泉の井づつやはエエでぇー! 私らもあちこち行ったけど、お湯といい料理といい、あそこはピカイチやなあ。」
おまけに、「T」の常連仲間が、
「おれ、実家が鳥取で、秋のお彼岸の連休に帰るねん。湯村温泉は途中やし、その日やったら行きも帰りも車で送ったるでー」
とありがたいお言葉。
ダンナもその日はあいているという。さっそく宿の予約を取った。

宿の詳細は次回以降にまわすとして、まずはその日のお昼ご飯の話。
乗せていってくれた常連仲間が、
「湯村に行くんならお昼は絶対ここやで!」
とイチオシの蕎麦屋に行く。
出石(いずし)町の「出石手打ち皿そば・おうち」。

出石そばといえば確かに有名で、名前だけは聞いた事がある。
マンガ「センゴク」の主人公である仙石氏の子孫が、後年信州から出石にお国替えになった時に、そば職人を連れてきたのが始まりだとされているそうだ。
そばの実を丸曳きした、自然な色と香りがする蕎麦が、これまた特産だという白磁の出石焼の、10㎝ほどしかない小さな皿に盛られて供されるという。

常連仲間が、「出石中の店を色々回ったけど最終的にここに落ち着いた」と言う「おうち」は小ぢんまりとした清潔な店だった。
一人前は5皿で、薬味がついて850円。追加の蕎麦は5皿単位で頼まねばならない。
「10皿は軽いって!」と言われたのだが、量が分からないので、私達はとりあえず一人前ずつ注文。
常連仲間はいきなり20皿注文している。

先にそばつゆと薬味が出された。
ワサビとネギとおろした山芋、それに小ぶりの生卵だ。
初心者用に「食べ方指南」が壁に書いてあったので、それに従ってみる。

なになに、まずはつゆをそのままひと口。
へええ。ダシが効いてて美味い。
もちろんそのままゴクゴクとはいかないが、つゆそのものの味を知って欲しいというのは、店側の自負だろう。

まもなく蕎麦があがってきた。
ラーメン屋の岡持ちのような縦長の入れ物が、棚のようにしきられていて、そこに皿蕎麦が入っている。
食べ方その2はネギとワサビでシンプルに、とある。
おお、美味しい蕎麦だ。まだ新そばが出る前の端境期だというのに、わずかに甘味を感じるほどの風味。喉ごしもいい。

あっという間に5皿平らげてしまった。
追加注文し、今度は食べ方その3、とろろ芋を加えて食す。
これはこれでまったりした旨み。
箸休めに出された沢庵も、滋味あふれるいいお味だ。

生卵はあまり溶きすぎるとダメだという常連仲間のアドバイスに従い、崩さず一気にそばとかきこむ。
個人的にこれはウズラ卵の方が嬉しいかな。

そして食べ方指南の終わりは、もちろん「蕎麦湯を入れて飲む」だ。
見る見る上等の吸い物の出来あがり。
ああ、美味かった。

「関西で食べたそばで、初めて心から美味しいと思った」
とはダンナの談だが、同感だ。
気がつけば15皿平らげていた。さすがにお腹いっぱい。
ところが聞いたところによれば、出石町が行なった「そば食い大会」で1位は98皿。しかも女性だという。
食いしん坊はどこにでもいるもんだ。それにしてもすごい。
膨れたお腹をさすりながら、感心しきりでまた車に乗りこむ私達だった。

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本日のお店の予算(一人分・あくまでだいたいの目安)
約1000~2500円

分厚くて美味なる舟

2006-09-22 | Weblog
実は他の店に行こうと思っていた夜。
お目当ての店はあいにく満席で、どうしようかと迷った挙げ句、「うなぎと和食 和心料理 いとう」(大阪市淀川区西中島4-7-20 TEL/06-6886-8678)へ足をむけた。
お勧めメニューがすっかり秋色になっていて、少しゴキゲンになる。
うん、あの店が満席でよかったかも。

食べ物はやはり旬。
「カツオのたたき」をまずは頂く。
ウナギの時と同様、注文してからカツオを炙り始めた。
やっぱりね。この店ならこうしてくれると思ったんだ。

玉ねぎや茗荷など、たくさんの刻み野菜の上に鎮座ましますカツオ様。もちろん美味い。
臭みなどみじんもなく、ただただ旨みのぎゅっと詰まった脂の乗りがたまらない。
悔しいのは、次の日仕事なので、ついていた刻みニンニクを食べられないことだ。
今度は休みの前に来なくちゃ。

その他にも定番を色々頂いたのだが、この日の一番星はなんてったって「ばってら」。
ばってらとは大阪特有の押し寿司にした鯖寿司を、普通は呼ぶ。
だがここのはまるで違う。
まるきり「鯖の棒寿司」だ。

「もともとは『ばってら船』ってのがありましてね。」
と説明してくれた大将の言によれば、腹を裂いて内臓を掃除した魚を逆さまにすると船のように見えるので、その腹の部分にすし飯を詰めたものをもともとは「ばってら」と呼んだそうだ。

しかしすごい。
厚みが1.5cmくらいあるよ、この鯖ったら。
切り口がてらてらと玉虫色に輝いている。「鯖の身に虹が立ち」とはよく言ったもんだ。
ひと口では絶対に食べられないそのばってらを、口いっぱいに頬ばる。
浅めに〆られた鯖の綺麗な脂が、ぎゅっと詰まった酢飯と混ざって、なんという至福。

「好き嫌いがあるんですけどね。私は鯖好きなんで、このくらい分厚くて浅く〆たのが好きなんですよ。」
大将、私もです!! こんな分厚い鯖なんて、本当にたまらん。
「寿司専門の方は一年中出すんでしょうけど、私は旬のこの時しか出さないんですよ。」
そうか、まさに秋鯖だもんね。

あとから店に合流したダンナも無類の鯖寿司好き。
店に入るなり、絶対これは食べろと迫る。
あまりの美味さに、彼の顔がたまらずほころぶのを見ながら、米焼酎をもう一杯。
日本の旬は本当に素晴らしい。
絶対近いうちにもう一度来なくっちゃ。
当たり前だけど、「旬」は一年に一度しかないんだから。

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本日のお店の予算(一人分・あくまでだいたいの目安)
約2500~4000円

野に下った高級料理

2006-09-18 | Weblog
ようやく二人揃っての休みがやってきた。
約束のダンナのバースデイディナーだ。
私たちは二人とも服とかカバンとかという意味での物欲がないので、互いの誕生日には美味いものをご馳走しあうか、旅行に連れて行くかしている。

今回のダンナのリクエストは「美味い天ぷらが食いたい」。
天ぷらかあ。けっこう守備範囲外だなあ。
もともと揚げ物があまり好きでない上に、ゴマ油が苦手なんだよねえ。
どうしようかと考えあぐねていたのだが、彼にはちゃんと目星がついていたらしい。店の指定もしてくれた。

その店は、JR福島駅近くにある、「ふる田」。
幸い日曜日も開いているとのこと。
ネットで調べていたら、あまから手帳のページにも名を連ねていた。

「あまから手帳」は私が唯一信頼している食の紹介雑誌だ。
好みの差があるから、すべて劇ウマの店だと感じないのはしょうがないが、少なくともこの雑誌に載っている店で「劇マズ」のところに当たったことはない。
なんだか楽しみになってきたぞ。

夕方5時から開店ということなので6時に予約して行ってみると、開店一時間にしてほぼ満席だ。
店にはもちろん油のにおいがするが、胸焼けのしそうなほどの強さではまったくない。
そのうえ、ごま油の匂いじゃない。
この店は、ごま油ではなく綿実油を使っているのだ。

ダンナの好きに頼んだらいいよというと、彼は
「かき揚げが食べたいから」
と、安い方の5500円コースを頼んで後で足らなければ単品で足したいと希望した。
飲み物はビールで唇をぬらした後、店の名前がついた純米酒をオーダーする。

まずは海老が二匹出てくる。
すごい。天ぷらってこんなに美味しいものなんだ。
衣は薄く、あくまでサクサク。まったくしつこくない。
海老の身はプリプリ。尾は香ばしく、一流の煎餅店の海老煎餅のようだ。

続いてアスパラ、キス、シイタケの海老スリ身詰め、レンコン、アナゴ・・・・・・と次々供される天ぷらは、どれも素晴らしい。
衣の蒸し焼き効果でどれもほっこりしていて、食材の旨みと香りが全部中に閉じ込められている。

「そんなに見つめても、これは他のお客さんのですよ。」
あまりにも物欲しそうな顔をしていたのだろうか。大将に笑いながらからかわれた。
最初は無愛想に(失礼!)見えた大将も、実はざっくばらんで面白い方だ。
一席を除くすべてがカウンターなので、隣の客の食材や反応が見えて楽しい。
何より天ぷらと寿司は出来たてが一番だ。カウンター万歳!

手元に出されたのは天つゆと抹茶塩とレモン汁だが、どれも美味しい。
特に抹茶塩のこの細やかさと丸みといったら、特筆ものだ。

「これでコース一通り終わりで、あとかき揚げとご飯なんですが、もうお腹の具合はいいですか?」
え? もう??
考えたら確かに品数はかなり食べている。だけどぜんぜん胃にもたれていない。
天ぷらなのに!

ダンナはもちろんまだ食べる気満々だ。
結局彼は全種類を制覇。私もそこまではいかないまでも近いところまで食べた。
最後はかき揚げを使って、天丼か天茶かご飯と別に食べるかの選択があったが、
「二人なら天丼と天茶ひとつずつがお得かな」
という大将のアドバイス通り、ひとつずつお願いする。
どっちもうまーーーーい!!
ペロッと食べて、ダンナのみならず私も大満足のバースデイディナーが終わった。

実はこの店、以前は老舗プラザホテルに入っていたという、評判の店だったらしい。
ホテルがつぶれたことで同じ福島のこの場所に移転したとのこと。
有名ホテルにあるから美味いとは言わないが、その看板にたがわぬこの美味さ。
天ぷらをここまで素晴らしい料理だと思ったのは生まれて初めてだ。

ホテルにあるときは、結構敷居の高い高級店だったそうだ。
今もすごく安いとは言わないが、この内容からしたら破格だろう。
下野した高級店。味は天上の口福。

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本日のお店の予算(一人分・あくまでだいたいの目安)
約8000~10000円

いっぱいいっぱい

2006-09-17 | Weblog
土曜日はダンナの誕生日。
とはいえ、当然のように二人とも夜まで仕事。
本格的なお祝いの食事は日曜日にするとして、当日は心ばかりのニョーボの手料理でお祝いだ。

お祝いだから鯛のお頭つき・・・ではあまりに芸がないので鯛のアクアパッツァくらいにして、手間をかけずに豪華なメニューを目指していた。
それなのに、こともあろうに「エシュゾー」のグランクリュが手に入ってしまった。
まだ若いし、グレート・ヴィンテージじゃないからお手ごろ価格、とはいっても普段飲みワインなら1ダースは買える値段の赤ワインだ。
メニューの変更を余儀なくされてしまった。

夜帰ってきてから作るんだから、前菜とメインのせいぜい二品。
メインはやっぱり肉だよな。
エシュゾーって初めて飲むけど、ブルゴーニュだしグランクリュだし、若いとはいえそんなゴツゴツしてない・・・よね? (←自信なし)

悩んだ末に、以前「グルメミートショップ」で購入していたダチョウ肉をセレクト。
ソースは何にしようかなあ。
本来、肉料理担当はダンナなんだけど、さすがに今日は彼に作らせるわけにいかないし。

そのとき、オビ・ワン・ケノービよろしく「ビストロ・ダ・アンジュ」のソムリエ・井上さんの声が聞こえた気がした。
「フォースを信じろ」
いやいや、
「ブルゴーニュの美味しいのって、秋のキノコにホントに合いますよねえ」

ブラウンマッシュルームを中心としたたっぷりのキノコを、ニンニク・セロリと一緒にバターでいため、ローズマリををふりかける。
赤ワインで煮詰めて塩コショウで味を調えて、ミキサーでピュレ状に。
これでどうだっ!

前菜にはやっぱり「めでたい」の鯛を使いたいなあ。
フンパツして買った天然鯛の切り身を焼いて、フュメ・ド・ポワソンとコンソメと鯛から出た骨のスープで煮た、色とりどりの野菜と一緒に、スープごと寒天で固めて冷やす。
それに生うにをトッピングしてみた。
おっ。われながら、なんか美味しそうだぞ。

なんとか出来上がった料理をダンナと二人で食べてみた。
まずエシュゾーをひとくち。
うめえええええ。
2001年とまだ若いのに、柔らかく優しくて、少し酸味があって、上品なブルゴーニュの持ち味を見事にすべて持っている。
もちろんもっと寝かせれば美味いのだろうが、これはこれですごく美味しい。
このワインに合わせるなんて、なんだか料理に自信がなくなってきた。

寒天寄せは魚介メインだが、ワインが若いのが幸いしたのか、ウニをトッピングしたのがよかったのか、結構合ってる。
野菜の優しい味とタイがいい相性。狙い通りでホッとする。
でももうちょっと寒天を少なくして柔らかいジュレ状にすればよかった。くそう。

そしてダチョウ肉。
一応レアに焼けている。素材の肉はいいはずだから、後はソースなんだが。
「すげえっ! 美味いよッッ」
ダンナが叫んで、すごいスピードで平らげてくれた。

「オレが作るソースより断然美味いよ!!」
ホント? ホントか??
うん、でもそれがお世辞だったとしても、がんばったニョーボへのねぎらいだったとしても嬉しいよ。
「おめでとう」を形にしたい気持ちの、これがいっぱいいっぱいだから。
ダンナ、誕生日本当におめでとう。

煩悩のランチ

2006-09-16 | Weblog
人生には「モテ期」なるものがあるらしい。
私にとって、それはきっと今だ。
ただし、男性にではなく、女友達にというあたりがなんとも…いや、もちろんありがたい話だが。
ご無沙汰だった友人達から、なぜか最近次々と連絡を受ける。
先日も、2年以上逢っていなかった大学の同級生から「会おう」とお誘いを受けた。

この彼女にも小さいお子さんがいるので、夜ではなくランチにする。
「最近子供とファミレスばっかりで」という彼女のために美味しいランチを。
ということで、珍しく昼に「ビランチャ」へやってきた。

この店のランチは900円、1500円、2500円のA、B、Cコースに、4000円のシェフ特選コースがある。
から考えれば4000円でもかなりお得なのだが、相談の末2500円のCコースをチョイス。
まずは前菜として野菜のグリル。
お皿の上にてんこ盛りになっていて、これだけでけっこうお腹が膨れる。

次がパスタ。
「自家製パスタ タコのアラビアータ」だ。
幅広のタリアテッレがモチモチして美味しい。
でもトマトソースがちょっと濃過ぎかな。

そしてメイン。
「鴨のロースト マロングラッセとカプチーノソース」
名前だけ聞いた時には「ええ !? なんかゲテモノっぽい」と失礼ながら思ってしまったのだが、とんでもない。ドえらい美味い。

レアレアに焼いた後、大きなサイコロ状にカットされた鴨肉が、アンディーブの葉を皿代りにして盛りつけられている。
そしてその上に小さく切ったマロングラッセ、さらにはカプチーノコーヒーの上に乗っている泡状の生クリームがかかっている。
マロングラッセはほぼ栗の甘さだけのあっさりしたもの。ホコホコした食感がなんとも言えないアクセントとなって、鴨肉に合う。
ちょっと柔らかくてわずかに甘いナッツのようだ。

そしてその栗と、何より鴨肉とに嘘のようにマッチする生クリーム。
それら全てををみずみずしく、ほろ苦く受け止めるアンディーブ。
奇をてらった料理のように見えるが、すべてが計算し尽くされている。
何よりこの鴨肉の絶妙な加熱具合!!
肉の繊維を噛みしめるたびに、肉汁があふれだす。
やっぱりビランチャは美味いなあ。

これで2500円とはなんともお得。連れの彼女も気に入ってくれたようだ。
また昼にも来たいなあと思いつつ、壁の黒板に書かれたアラカルトのメニューを見て、やっぱり高くても夜かしらんと思い悩む。
嗚呼、果てしない煩悩のランチ。

冷凍麺はエラい! 3

2006-09-12 | Weblog
毎月届くベルメゾンの「生パスタの会」が今月も届いた。
有名イタリアンのパスタが2種類・2食ずつ冷凍で届くもので、うちの休日のブランチとしては定番になりつつある。

今月は「トラットリア パッパ」というお店。
へえ、この店大阪にあるんだ。
寡聞にして知らなかった。

2種類あるうちの「帆立と野菜のトマトソースのタリアテッレ」をチョイス。
いつものように、お湯が沸いたら5分強で本格パスタの出来あがりだ。

うわあ、こりゃまた美味い。
もっちり幅広のタリアテッレに、野菜で優しく甘味のついたトマトソースがまったりとからむ。
太麺好きにはたまらないこの歯ごたえ。

パプリカや玉ねぎなどの野菜の中に、それらとは異質な食感と甘味を持つ帆立の貝柱がサイコロ大で混じっている。
そのコントラストの見事なこと。
そして、どこまでもどこまでも優しい味だ。
噛みしめると、貝の弾力ある肉質がなんとも心地よい。自分で作っといてなんだけど、これで冷凍だなんて嘘だろう?

こんなお店が大阪にあるのに、知らなかったとは不覚。
ホームページを見てみたら、魚料理に力を入れているお店らしい。一度行ってみよう。
家にいながらお店の開拓。なんて贅沢なブランチ。

ブラボー!! 和のジビエ

2006-09-10 | Weblog
以前誕生日を祝ってくれた、私の一番旧い友人は九月生まれだ。
今度は私が彼女を祝うべく、連絡を取ったところ、彼女のリクエストは和食だった。
祝いの和食とあらばここだろう。法善寺横町の「美加佐」(大阪市中央区難波1丁目1-20 TEL 06-6211-6665)だ。

前回行ってからまだ半月。
ここは決して安くない店なので、ずいぶん贅沢なようだが、友人の祝いとあらばやむをえまい。
というのは単なる口実で、本当は私が行きたいだけなのだが。

今日はさすがに天然すっぽんはなく、通常のラインナップ・・・と思いきや、特別な食材があるという。
猟が趣味の常連客が撃ってきたという、鹿肉だ。

鹿! 鹿だよ!! 冷凍じゃなくて生だー!!
主役であるべき友人を差し置いて、私が大はしゃぎをしてしまった。
何しろ、私の中で肉の1、2位を常に争うのが鹿肉なのだ。(ちなみに争う相手はダチョウ肉)

見るからに美味そうな、きめ細やかな肉質。しっとりしていながら、余分な脂肪分がまるでない。
走りまわる野生動物は、本当に美しい肉をしている。

どうやって調理するのかと思ったら、ごく普通にステーキにして供された。
いつもは軍鶏につけて出されるカラシや味噌が添えられる。
このシンプルな料理が、とんでもなく美味い。
見た目どおりに美しくクセのない肉汁が、噛みしめた奥歯から流れ出す。
誕生日のお祝いにと、大将からプレゼントされたワインで飲み下すと、至福そのものだ。
友よ、誕生日ありがとう。いや、「おめでとう」だった。

「これを撃った方は本当に肉の処理がお上手で、肉が上質に保たれるんで、余計な手間をかけない方が美味しいんですよね」
とは焼き方のお兄さんの言だ。なるほどである。
ジビエといえば、いつもはフレンチで食べている。
肉の熟成を見極め、豊潤なタンパクの味を濃厚なソースでもっと膨らませるあのフレンチジビエとの対極にある「和のジビエ」。ブラボー!!

この鹿を撃ったお客さんに感謝だねえ、と話していたところ、当のご本人が来店された。
隣に座ったその壮年の男性に心からの賛辞を送ると、彼は誇らしげに猟の様子を語ってくれた。

「初心者なんかだと打ちやすい腹を狙うんやけどね。それやと内臓に当たって肉が台無しや。」
だから頭や首を狙わなきゃいけない、と語る彼に、
「フレンチのジビエでも、散弾銃があたった場所で肉の価値が変わるって言ってました。」
と言うと、
「散弾銃!? アホなこというたらあかん!! そんな大ざっぱなもんで撃たへんで、日本人は。」
そうなんだ。恐れ入りました。
フランス人にも負けない、相当な矜持だが、決して厭味な感じはない。
何よりこの肉の美味さが、彼の矜持を自惚れにしていない。

また美味しいのお願いしますと言うと、彼は少し得意げに笑ってうなづいた。
年上の方に失礼だが、ちょっとかわいらしい。
最後の乾杯は彼の「偉業」に。ごちそうさまでした。

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本日のお店の予算(一人分・あくまでだいたいの目安)
約13000~15000円