今日も口福 明日も口福 (きょうもこうふく あしたもこうふく)

外食率ほぼ100%、エンゲル係数は優に60%(半分はアルコール代)。そんな私の美味しい話。(おもに大阪の美味しい店)

ジビエの野生

2008-11-27 | Weblog
先日、ひいきにしているJ1チーム、ヴィッセル神戸の試合を友人と見に行った後、晩ご飯を神戸で食べることとなった。
友人に店のセレクトをお願いしたところ、彼女が選んだのが「リストランテ・エノテカ・イゾラベッラ」というお店だった。

半地下のその店は高級感溢れる内装で、心がまえができていなかったためにちょっとひるむ。
しかしスタッフさん達のフレンドリーで、それでいて洗練された客あしらいに、だんだんとリラックスしていった。
「そろそろジビエが美味しくなってきましたよ」
そんなホール係のお兄さんの言葉に誘惑され、どれを頼んでも美味いだろうと思わせるメニューと格闘した後、アラカルトで選んで全てシェアするということでようやく5品が決まった。

まずは前菜の「カキのクレープ包み」。
普通のクレープのビジュアルを想像していた私は、いきなりこのひと品に意表をつかれる。
このまん丸な形はまるで…
「はい。明石焼きに見たてて作りました」

いや、これはハナからしてやられた。
だってこの「いかにも高級イタリアン」の前菜が明石焼きだよ ? 明石焼き !!
おもろすぎやろう。その発想。
しかもダシに見たてたソースの中には、ご丁寧にも紅生姜に見たてた赤ピーマンまで浮かんでいるのだ。

しかし味は当然のように本格イタリアンの真髄をいくものだ。
サッとだけ加熱されたカキは、生の時よりも甘みと風味を増し、口中に旨みのジュースを溢れさせる。
そこにかかったポロネギのソースがこれまた激うまで、野菜の甘さが優しくカキを包む。
ふはああああ、一生食ってたいぞ。

パスタは2種類。
最初に出てきたのが「イカスミを練りこんだタリアテッレ 甲殻類のラグーソース」だ。
ソースの旨みのなんて濃いこと。
甲殻類好きにはたまらん味だ。
欲を言えば、タリアテッレがもう少しモッチリしていればもっと嬉しいが、イカスミがたっぷりの味は申し分ない。

もう一品は「キジと白菜のパッパルデッレ グラッパとタレッジオチーズのソース」。
これはもう ! もう極めつけに美味い。
キジのこの力強い肉の繊維。それと白菜をメインとした野菜が絡み合う。
普通ならこういったジビエ ( 狩猟料理 ) のソースに使うチーズなら、少し青カビの味を利かせるためゴルゴンゾーラをチョイスするのが一般的なのだが、そこであえて塩水で洗ったウォッシュチーズであるタレッジオを選ぶとは。

このタレッジオ、そのまま食べても私の一番お気に入りのチーズなのだ。
皮の部分まで食べると少しクセがあるが、中の部分はモチモチしていて非常に食べやすい。
それを使っているせいだろうか、キジの肉の味がしっかりと味わえる。
素晴らしい計算だ。

メインには「山ウズラのロースト」と「蝦夷鹿のロースト ワインビネガーのソース」を。
山ウズラもフェザンタージュ ( 肉の熟成 ) があまり進みすぎず美味しかったが、やはり何といっても蝦夷鹿ちゃんはすごい。

官能的なまでしっとりした赤い肉。
ビロードのようになめらかなのに、噛みしめると肉の弾力が心地よく歯を押し返す。
そしてその中から溢れ出す肉汁。
野生の血の味がするそれを、甘酸っぱいワインビネガーの酸味がからめとる。
両者を一緒に咀嚼するときのこの口福。

夢見ごこちのうちに、ディナーが終わった。
そうそう、この店でもう一つ特筆すべきはワインの品そろえだ。
まるで「想い出のアルバム」のような分厚いワインリストが存在している。
そしてソムリエさんが、その一つ一つについて大切に語ってくれる。
高級でも価値があると思わせる、素晴らしいイタリアン。

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本日のお店の予算(一人分・あくまでだいたいの目安)
約9000~20000円

シシャモはオスが美味いのだ

2008-11-22 | Weblog
仕事帰り、ペコペコのお腹を抱えて福島にある「石庵」にお邪魔した。
ここは熱した石の遠赤外線作用で焼くのが売りの、フランチャイズの焼き鳥屋さんだ。
福島店ではその他にもこの店限定の食材を出してくれて、これがけっこうイケる。

例えば先日などは「サンマ」だった。
肩身を4つほどに切った身を、皮目から焼く。
そうするとガス火で焼いたのと違って、皮が少しサクサクするのだ。

今日は何かとたずねると、
「シシャモのオスなんてあるんですけど、美味しいんですよ。知ってます ? 」

もちろん知っているとも。
もう何年も前のこと、ダンナが仕事で釧路に行ったことがあって、お土産にシシャモのオスを買ってきてくれたことがあった。
「えー、子持ちじゃないのぉ? 」とぶーたれた私に、ダンナは熱っぽく語ったものだった。
「ホント、絶対オスの方が美味いんだって ! 北海道じゃ、子持ちのメスよりオスの方が高いんだから。騙されたと思って食べてみてよ」

果たしてその言葉の通り、初めて食べたオスのシシャモのあまりの美味に、私はいっぺんでトリコになった。
考えてみたら、そりゃそうだ。
鯛しかり、鮭しかり、卵に栄養がいってしまって身が痩せたメスより、その旨みが全身にみなぎったオスの方が美味いに決まっている。
子持ちシシャモの美味さは、身ではなく卵の美味さなのだ。

ともあれ、さっそく注文する。
焼いた石の上にジュワッと置かれるシシャモが2匹。
皮をじりじりと焼き、熱せられたそいつをパクリ。
皮はサクサクと軽いパイ生地に似た食感で、中はほっこりしてなんともジューシーだ。
その旨みの豊かさときたら。
やっぱりシシャモはオスが美味いんだよ。

ここは注文してから炊き始めるご飯も自慢のお店だから、白ご飯も注文する。
これにはいつものように、ふわっとして肉汁たっぷりのつくねや、分厚く切ってもらった鴨ロースを一緒に。
肉汁が染みとおり、ぐびぐびと喉を通るご飯の甘みがほとんど快感だ。

いつ来ても美味い店。
その中の限定メニューが、他の店ではなかなか見かけないオスのシシャモとは。
あたしって本当に幸せ者だ。

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本日のお店の予算(一人分・あくまでだいたいの目安)
約4000~5000円

うなぎ その美味なるもの

2008-11-13 | Weblog
ここのところご無沙汰していた「美加佐」に、ようやくお邪魔できた。
のれんをくぐって顔を見せると、大将の嬉しい一声がかかる。
「これまたええ日に来はったな。りっぱな天然うなぎがおまっせ。」

それに呼応して、焼き方のお兄さんがうなぎを持ち上げて見せてくれる。
開いてなお厚みが2㎝はあろうかという大うなぎだ。
「焼いてください ! 多めで !! 」

白焼きとタレ焼き、どちらにしまっかと聞かれたが、どちらも食べたくて選べない。
でもどちらもというとお店の人の手間になってしまう。
困っていると大将がにやりと笑った。
「どっちも食べはりたいんでっしゃろ ? 両方にしはったらよろしいがな。」
えっ、いいの !?
いやーん、うれしい !!

焼きあがるまで、付きだしと野菜の煮物をいただく。
付きだしは分厚い鯖がのった押し寿司をはじめ、いくらでも食べたいほど美味い品々ばかり。
こんな豪勢な「付きだし」、他所ではまずお目にかからない。

野菜は大根や里芋、オクラなどを、一種類ずつ違う味付けに煮て盛り合わせてある。
飴色になりながら歯ごたえを残す大根、ほっこりとした里芋、美しい緑色を残したオクラ・・・どれも素晴らしい。

くぴくぴと日本酒を飲みながら待つことしばし。
焼きあがったうなぎのお出ましだ。
まずは白焼きから一切れ。
ワサビを乗せて醤油をちょんとつけると、醤油の表面にきれいな脂が広がる。

かーーーーーーーーっ、うんめえっっっっっ !!!

パリッと焼けた表面。
それを噛み進むとプリッとした身の弾力が歯を押し返す。
滴り落ちるジュース。
旨みがドドッと押し寄せてくる。

続いてタレ焼きも一切れ。

はあああああぁッ、これまたたまんねえや !!!!

これだけ身が分厚いと、タレの味が濃すぎるということがない。
タレの甘さとうなぎの脂が上手に溶け合って、もう至福の極みだ。

かなりの量をぺろりと平らげても、胸が悪くなったりしない。
脂がのっているのに全くしつこさがないのが天然うなぎなのだ。
これはもう、普段食べているうなぎとは全くの別物だな。

そこへタイミングよく、頼んでおいた釜飯が登場した。
軍鶏の釜飯に、これからが旬の牡蠣がたっぷり入っている。
こいつがまた絶品なのだ。
軍鶏の力強いダシの効いたご飯に、ジューシーな牡蠣が異なった旨みを加え、重層的な味わいになっている。

なんて贅沢な夕食だったんだろう。
残った釜飯は、折に詰めてもらってお土産に。
あとでダンナに口福のおすそ分け。

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本日のお店の予算(一人分・あくまでだいたいの目安)
約13000~15000円

奈良で大当たり

2008-11-10 | Weblog
去年着付けを習って以来、着物が大好きになった。
しかしなかなか着る機会がない。
旧くからの付き合いの友人も着物が好きなので、それじゃあ二人で着物を着てどこかにお出かけしようということとなり、着物の催し物がある奈良へとやってきた。

お昼に近鉄奈良駅に着いて、まずは腹ごしらえをする。
友人が事前に調べてくれて、駅前にある「ビストロ ル・クレール」に予約を入れておいてくれたのだ。
入り口には「本日は予約で満席です」というメッセージボードが。
おおお、人気があるんだなあ。

レストランの方が満席で、夜ワインバーとして使われているスペースに案内される。
照明の暗さもテーブルの広さも非常にいごこちのいい空間だ。
ランチは3000~5000円の3種だが、軽めでよかろうと、一番安いコースにした。
それでも非常にメニューの選択肢が広くて、かなりうれしい。

まずはアミューズ ( 付きだし ) の、チーズが練りこまれた小さなパンを出してくれる。
一見プチシューのようだが、非常に風味豊かなパン生地だ。
こいつは美味いぞ。

否応なく盛りあがる期待感。
次なる前菜に私達が選んだのは、「ウニとカリフラワーのムース コンソメジュレ添え」だった。
「すごく質のいいウニなんですが、かなり量が少ない一品なんです。よろしいですか?」
そうシェフは言ってくれたけれど、ランチの前菜としては十分なくらいだ。

北海道産のバフンウニを殻から出し、殻を器にしてまずはカリフラワーのムースを入れる。
その上にウニを戻し、コンソメジュレをかけ、アサツキを散らした一品だ。

ウニうまっっッ !!

ものすごい甘みと味の深さだ。
それを包むカリフラワーのムースがクリーミーで、これまた美味い。
その上このコンソメときたら。
ここまで質のいいコンソメは滅多に出会えるものではない。
このジュレだけで立派な一品として成立するくらいだ。

メインは2名様からのご注文という「窒息鳩のロースト」。
窒息鴨なら何度か食べたことあるけど、鳩は初めてかも。
1羽丸ごとのローストを半身ずつサーブしてくれる。

これもうんまーーーーーーーいっ !!!

窒息させることで血を体内に閉じ込め、それを旨みとしてしまうのだが、本当になんという旨みの濃さだろう。
皮はパリッと、中はレアレアに焼き上げた焼き加減も秀逸という他ない。
そして、こういった料理にありがちなのが「ソースが濃い」ことなのだが、このソースは非常にシンプルであっさりしている。
だからこそ肉の味がストレートに届くから、本当にもう美味くて美味くてたまらない。

この後のデザートは、例によってチーズの盛り合わせに替えてくれるよう頼んだ。
すると、快諾してくれたのはもちろん、お皿にてんこもりになって出てきた。
おまけにパンの追加までどっちゃり。
いや、このワンプレートだけで立派な一食になると思うんですが。

量だけではない。質も素晴らしい。
熟成の度合いがものすごく好みなのだ。
もう、ワインがクイクイ進む。

友人も甘いものはそんなに好きではないのだが、夜勤明けでこれ以上飲んでは悪酔いしそうだからと、チーズではなくデザートを頂いていた。
彼女が選んだのは「グレープフルーツのプリン」。
ひと口味見させてもらったのだが、柑橘の苦味が控えめな甘さと綺麗に調和した、大人の味だった。

失礼ながらここ奈良でこれほど美味い店に出会えようとは、望外の喜びだ。
この先奈良に観光を口実にくることが多くなるかもしれない。
今度は夜に来ようっと。

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本日のお店の予算(一人分・あくまでだいたいの目安)
約5000~8000円 ( 昼 )

白く光る宝石

2008-11-06 | Weblog
先日湯村温泉を旅行した際に途中で買い入れた、丹後産のコシヒカリの新米がある。
それをわがホームグラウンドとも言える居酒屋「きんのすず」で「米キープ」してもらっている。
食べたいときにはあらかじめ店に電話して洗い米にしてもらい、店についてから炊き始めてもらおうという寸法だ。

少し前になるが、ある日もやはり電話して、年上の飲み友達と店に訪れた。
すぐに炊き始めてとリクエストすると、小さな卓上用の釜をセットしてくれる。
炊いてから蒸らし終わるまでおよそ30分。
ああ、待ち遠しい。

その間に何か、ということで「鶏ごぼう」と「きずしの炙り焼き」を頂く。
鶏ごぼうは鶏もごぼうも柔らかく煮え、お互いにお互いのダシを与え合って、シンプルながら深い味わいだ。
アクセントに入れられた鷹の爪がピリッと辛みを与えて味を引き締める。

きずし ( 〆サバ ) はまるで生のように浅く〆られ、皮だけをサッと炙られている。
焼き目の香ばしさと、身のとろけるような脂のノリが素晴らしい。

どちらも美味い。美味いだけに、白いご飯と一緒に食べたくてたまらなくなる。
でもまだご飯は炊きあがらない。
釜からは沸騰した水分が吹きこぼれ、鍋肌に白いおネバが垂れる。
ああ、なんて扇情的な情景なんだろう。

やがて火が消え、蒸らしの時間に。
もう我慢ができない。
「マスター、なんかご飯に合うもんちょうだい ! 」

「こんなんどうや」
と出してくれたのは「海苔ウニ」。
海辺の町の土産物屋によく置いてありそうなものだが、これは上沼恵美子さんが大絶賛していた店のものを取り寄せたそうだ。
安物によくある人工的な匂いが一切せず、ウニと海苔独特の異なる磯の香りと、まったりとしたコクが素晴らしい。

タイミングよくご飯が蒸らし終わった。
ドキドキ胸を期待に膨らませながらフタを開ける。

うわああああ、きっれーーーーー !!

白い米粒の一粒一粒がピッカピカに光っている。
湯気を立ててつややかに鎮座するその姿は、あたかも小さな宝石のようだ。

噛みしめれば噛みしめるほどに、何ともいえない甘さが増す。
ホンマにもう、たまらん美味い。
お米の国に生まれてよかった。

続いて登場したおかずは「ピーマンの肉詰め」。
こいつがまたものすんごい美味い。
プリプリのソーセージのようでもあり極上のハンバーグでもあるようなひき肉がぎっしりと詰められたピーマンは、完璧な焼き具合だ。
したたる肉汁を受けとめた白ご飯をもう一口。
くくうううっ、たまんねえっ !!!

あまりにご飯が美味いので、勢いづいてもっとご飯が進む「戻りガツオのお造り」まで注文してしまった。
臭みも何にもないカツオにワサビ醤油をつけ、ご飯に乗せてパクリ。
ああ、もう、桃源郷・・・・・・

結局一人一合以上食べてしまった。
お腹いっぱいじゃなかったら、いつまででも食べていたいくらいだ。
残った分はおにぎりにしてお土産に。
帰宅後、これらはものの見事にぺろりとダンナのお腹に収まることとなる。

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本日のお店の予算(一人分・あくまでだいたいの目安)
約5000~8000円