すっかり冷え込む季節となった。
こうなると断然、青身魚が美味い。
やはり青身魚好きの年上の友人と「克献」にお邪魔することにした。
ここでのメインイベントであるお目当ての料理はまだ我慢して、メニューと格闘する。
手書きのメニューには、驚くほど多くの種類の品数が載っている。
この小ぢんまりした店で、よくぞここまで品ぞろえができるものだ。
しかも、どれを頼んでも驚愕的に美味いのだから。
数種が少しずつ盛られたつきだしは、いつもながらどれも手が込んでいて素晴らしく旨い。
危うくこれだけで満足してしまいそうだが、そういうわけにもいかない。
まずは「茹でアスパラ」と「ネギぬた」が登場する。
茹でただけのアスパラが、なぜこんなにも旨く、甘みがあるのだろう。
塩とレモンとマヨネーズが添えてあるが、マヨネーズはおろか塩さえつけるのが惜しまれるほどだ。
レモンだけ絞っていただいてみると、それ見たことかというほどの純粋な味が舌を喜ばせる。
ネギぬたもすごい。
まずネギの緑のあまりの鮮やかさに、目を奪われる。
そして口に入れると、熱を通しているのになお前面に出てくる清冽さに驚かされるのだ。
タコ、イカ、そしてサッと湯引きした鶏ささみが添えられ、それらとの相性は抜群。
しかし主役はあくまでネギなのである。
「上ミノ唐揚げ」もここの名物料理の一つだ。
過不足なく熱を通されたコラーゲンが、魅惑の弾力とかすかな粘りをたたえ、噛みしめた奥歯を楽しませる。
きなこの入った塩が、香ばしさを添える一品だ。
そして次に出てきた皿に、私たちは心を奪われることとなる。
「生湯葉のせいろ蒸し」だ。
「湯葉をこれにつけて召しあがってください」とまず供されたのは、とろみをつけたダシに生姜とネギの薬味だ。
この独特のとろみと質感は、葛を使っているのではないのか。
「そうなんです。片栗粉では思ったようになりませんので」
サラッと答えてくれるものだ。
このダシが、これだけで十分に上等のひと品として通用するだろう代物だ。
ショウガとネギがまた泣かせるほどの相性で、うまみと温かさが五臓六腑まで沁み渡る。
もちろん湯葉をからめたときの美味さときたら桃源郷なのだが、その湯葉の下にはほっこりと素揚げされた里芋まで隠されている。
里芋を箸で割ったときの粗造な表面に、先ほどのダシがからんだ時のたまらなさは、筆舌に尽くしがたいとしか言いようがない。
きれいにダシまで飲みつくした私たちの元へやってきたのは、待ってましたの「〆サバサンド」だ。
香ばしくトーストしたパンに、マヨネーズとマスタードを塗り、シソと一緒に浅く〆られたサバをはさんである。
旬のサバはもう極上の旨みで、一見ミスマッチに見える洋風の食材たちと何の矛盾もすることなく存在する。
私は、これより美味いサンドイッチを生まれてこの方喰ったことがない。
お腹はいっぱいになったのだが、食い意地の汚い二人はまだここの料理が食べてみたい。
そこでオーダーしたのが「大根とからすみ」だ。
この取り合わせ自体は黄金コンビであり、珍しいものではない。
だがその切り方にまず驚いた。
よくある薄切りではなく、拍子切りなのだ。
確かにこの方がからすみのねっとり感や大根の繊維が楽しめる。
「コロンブスの卵」だな。
そしてもう一つ特筆すべきは煎ったゴマがかけられていることだ。
このゴマの香ばしさが、からすみとありえないくらいに合う。
今度から、からすみを食べる時にはゴマは外せない。
すっかり満足して店を出る。
いやいや、やっぱり不満だらけだ。
食べられなかったメニューが、まだいくつもあったのだから。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
本日のお店の予算(一人分・あくまでだいたいの目安)
約4000~6000円
こうなると断然、青身魚が美味い。
やはり青身魚好きの年上の友人と「克献」にお邪魔することにした。
ここでのメインイベントであるお目当ての料理はまだ我慢して、メニューと格闘する。
手書きのメニューには、驚くほど多くの種類の品数が載っている。
この小ぢんまりした店で、よくぞここまで品ぞろえができるものだ。
しかも、どれを頼んでも驚愕的に美味いのだから。
数種が少しずつ盛られたつきだしは、いつもながらどれも手が込んでいて素晴らしく旨い。
危うくこれだけで満足してしまいそうだが、そういうわけにもいかない。
まずは「茹でアスパラ」と「ネギぬた」が登場する。
茹でただけのアスパラが、なぜこんなにも旨く、甘みがあるのだろう。
塩とレモンとマヨネーズが添えてあるが、マヨネーズはおろか塩さえつけるのが惜しまれるほどだ。
レモンだけ絞っていただいてみると、それ見たことかというほどの純粋な味が舌を喜ばせる。
ネギぬたもすごい。
まずネギの緑のあまりの鮮やかさに、目を奪われる。
そして口に入れると、熱を通しているのになお前面に出てくる清冽さに驚かされるのだ。
タコ、イカ、そしてサッと湯引きした鶏ささみが添えられ、それらとの相性は抜群。
しかし主役はあくまでネギなのである。
「上ミノ唐揚げ」もここの名物料理の一つだ。
過不足なく熱を通されたコラーゲンが、魅惑の弾力とかすかな粘りをたたえ、噛みしめた奥歯を楽しませる。
きなこの入った塩が、香ばしさを添える一品だ。
そして次に出てきた皿に、私たちは心を奪われることとなる。
「生湯葉のせいろ蒸し」だ。
「湯葉をこれにつけて召しあがってください」とまず供されたのは、とろみをつけたダシに生姜とネギの薬味だ。
この独特のとろみと質感は、葛を使っているのではないのか。
「そうなんです。片栗粉では思ったようになりませんので」
サラッと答えてくれるものだ。
このダシが、これだけで十分に上等のひと品として通用するだろう代物だ。
ショウガとネギがまた泣かせるほどの相性で、うまみと温かさが五臓六腑まで沁み渡る。
もちろん湯葉をからめたときの美味さときたら桃源郷なのだが、その湯葉の下にはほっこりと素揚げされた里芋まで隠されている。
里芋を箸で割ったときの粗造な表面に、先ほどのダシがからんだ時のたまらなさは、筆舌に尽くしがたいとしか言いようがない。
きれいにダシまで飲みつくした私たちの元へやってきたのは、待ってましたの「〆サバサンド」だ。
香ばしくトーストしたパンに、マヨネーズとマスタードを塗り、シソと一緒に浅く〆られたサバをはさんである。
旬のサバはもう極上の旨みで、一見ミスマッチに見える洋風の食材たちと何の矛盾もすることなく存在する。
私は、これより美味いサンドイッチを生まれてこの方喰ったことがない。
お腹はいっぱいになったのだが、食い意地の汚い二人はまだここの料理が食べてみたい。
そこでオーダーしたのが「大根とからすみ」だ。
この取り合わせ自体は黄金コンビであり、珍しいものではない。
だがその切り方にまず驚いた。
よくある薄切りではなく、拍子切りなのだ。
確かにこの方がからすみのねっとり感や大根の繊維が楽しめる。
「コロンブスの卵」だな。
そしてもう一つ特筆すべきは煎ったゴマがかけられていることだ。
このゴマの香ばしさが、からすみとありえないくらいに合う。
今度から、からすみを食べる時にはゴマは外せない。
すっかり満足して店を出る。
いやいや、やっぱり不満だらけだ。
食べられなかったメニューが、まだいくつもあったのだから。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
本日のお店の予算(一人分・あくまでだいたいの目安)
約4000~6000円