今日も口福 明日も口福 (きょうもこうふく あしたもこうふく)

外食率ほぼ100%、エンゲル係数は優に60%(半分はアルコール代)。そんな私の美味しい話。(おもに大阪の美味しい店)

美味しいノンジャンル

2009-08-28 | Weblog
少し前の話になる。
ダンナと二人で夕飯を食べに、自転車にて塚本へ向かった。
目指す先は、ネットで検索した「かずん」という居酒屋だ。

居酒屋というよりカフェのようなレイアウトの店内。
けれど、すでに美味しい食べ物の匂いは漂っている。
メニューを見ると和食っぽいのから洋食屋さんのメニュー、イタリアン、フレンチとジャンルを越えたラインナップだ。

まずは「豆腐とザーサイのサラダ」をいただく。
大豆の味が濃くする豆腐に、ザーサイの酸味と歯ごたえが好対照で美味い。
何気ないひと品だが、こういうものを出してくれる店は期待できる。

さらに物色したメニューに、気になるものを見つける。
「げんげの一夜干し」だ。

「げんげ」とは「幻魚」と書く。
富山県は氷見でとれる深海魚で、身は白身、体表をコラーゲンのぬめりで覆われた珍味だ。
昔はほかの魚の漁の際の外道とみなされ、「下の下」といわれたところから来た名であるらしい。

昔、氷見に旅行した際に鍋でいただいたことがあるが、正直さほど旨いとは思えなかった。
だがどうしたことだろう。
なんだかこれは美味しい予感がする。

果たして焼きあがったそれは、絶品の珍味。
噛めば噛むほど旨みが出る。
こんな濃厚で魅惑的な味をしていたのか、この魚は。

気を良くして、ここの名物だという「ダチョウ肉のたたき」もいただく。
あっさりした赤身のダチョウ肉は、私の大好きな食材の一つであるが、保存の仕方が悪いと臭みが出たりするものだ。
だがここのは全くそんなものはなく、しっとりとした肉質が心地よいばかりだ。

先ほどから気になった「ビーフシチュー」も注文。
すごい。
肉が箸でほろりとほどけるくらい、柔らかく煮込まれている。
デミグラスも随分煮込まれたのだろう。
素材の味が完全に一体化して、素晴らしく深いあじわいだが、クドすぎたりはしない。

勢いに乗って「鮎のから揚げ」までいただく。
ニジマスほどもあろうかというほど大きな鮎は、それでいて大味などではなく、繊細な肉質と香りがカラリと揚がった皮に閉じ込められている。
トロッとしたあんかけのソースがまたニクい。

さすがにお腹がいっぱいになってきて、もうひと品くらいが限界だ。
ダンナとさんざん迷った末に、「イカ墨のパスタ」をチョイスした。
これがまた、たまらん絶品だ。

どこまでも濃厚で、旨みの洪水ともいえるイカ墨ソース。
それがまったりとからんだパスタは、もう、一生食っていたいほどだ。
具として入っているイカも加熱の頃合いが絶妙で、噛むごとに中のジュースが出てくる。

何を頼んでも旨いこの店。
リピートは必須だ。
こんな美味しいノンジャンルは、嬉しいばかりだねえ。

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本日のお店の予算(一人分・あくまでだいたいの目安)
約3000~5000円

げに愛らしく されど儚く

2009-08-25 | Weblog
お盆明けからネットのトラブルで更新できずにいたが、ようやく復活の兆しが見えた。
まずは取れたてほやほやのこのエピソードから。

お盆明けで初めて、行きつけのバーに顔を出した。
私の大好きな、常連仲間の年上の友人が来ていて、楽しく話しこんだ時のこと。

「あなたが今日来てくれて、本当に良かった」
そう何度も何度も言ってくれるので、どうしたのかと思いきや、
「お盆に郷里の岡山に帰ってきて、桃をお土産に買っていたものだから」
とのこと。

私はケーキなどのスイーツは苦手なのだが、果物やサツマイモや栗などの自然の甘みは大好きだ。
特に桃には目がない。
よく熟れて、かぶりつくと汁がしたたり落ちるようなのを、キーンと冷やして食べる時のあの至福ときたら。

さっそく店の帰りに、そこから程ないところに有る彼女の家へ寄らせてもらい、桃を頂いて帰った。
もしかしなくても、人様から桃を頂くのはこれが人生初かもしれない。
しかも岡山の桃だよ。
ひっひっひ。

はやる心を押さえつつ、帰宅するや否や箱を開けてみる。
空けた途端に広がる、桃の甘い香り。
これだけで、もうたまんねえ。
そしてそのいでたちといったら !!

黄色がかった白を基調として、ところどころ薄く紅を刷いた肌。
その色味といい、細かなうぶ毛をたたえた柔らかそうな肌つやといい、まるで赤ん坊のお尻のようではないか。
思わず頬ずりして、甘く噛んでやりたくなる。

さっそく一つ皮をむいていただいてみる。
ここいらで買う物より滑らかな食感。
あふれんばかりの果汁。
豊潤な蜜が喉をひたす、この快楽。
「甘露、甘露」とはまさにこのことだ。

餓鬼のようにむしゃぶりついて、あっという間に食らいつくす。
ああ、1個なくなっちゃった。
でもまだ1個ある。いや、「もう一個しか」か。

夏休み旅行 その2

2009-08-17 | Weblog
うちのダンナは無類の歴史好きだ。
私も人には歴史に詳しいと言われるほうだが、彼はレベルが違う。
どのくらいかって、たとえば徳川15代の全将軍の名をよどみなく言えるくらいだ。

というわけで、うちの夫婦の旅行の行き先は、私の愛する温泉か、そうでなければ歴史スポットであることがほとんどだ。
今回のメインイベントも、実は高級ホテル宿泊ではなく、二日目に行った国宝・犬山城と明治村だった。

小ぢんまりとしているが機能美に満ちた犬山城も、ライトの設計した帝国ホテルの初代建築など、明治時代の貴重な建物が並ぶ明治村も非常に興味深くて見どころ満載だ。

電車でわずか30分ほどの犬山から名古屋に戻ったのはもう夕方で、昼をまともに食べていないため、お腹もすいてきた。
なのに名古屋で食べることなく、そのまままっすぐ帰阪もせずに、晩ご飯のためにわざわざ立ち寄ったのが、ダンナも私も愛してやまない「京極寿司」さんのある長浜 ( そういえばここも歴史スポットだ ) だった。

お店に着いて、まずはお任せで焼き物とお造りを、とお願いする。
焼き物として出てきたのが、「さんまの炙り」だ。
さっと皮目だけを炙って身はほとんど生のそれは、焼き目の香ばしい匂いがたまらない。
皮のすぐ下にある分厚い脂も、炙った熱で程よくとろけて甘みさえ感じる。
はあああ、のっけから美味い。

「〆サバを入れて」とリクエストした造り盛り合わせはバラエティー豊か。
いつもながらここの〆サバは秀逸だが、普段ならその上にトッピングしてくれる土佐酢ゼリーが品切れとのことでガックリだ。
こいつがまた絶品なのに。

すべて素晴らしいお造りだが、中でも白眉はのどぐろだ。
プツン、と魅惑の弾力で噛みきれる皮がついた、もっちりとした白身が、なんて味わい深いのだろう。

お寿司にいく前にお腹がいっぱいになってはいけないので、私はここでもう握ってもらおうとしたのだが、ダンナが鰆の西京焼きを食べたいという。
味噌の香ばしい匂いを漂わせながら供されたそれを、私も我慢できずにひと口いただく。

これがまた美味いこと !!
鰆の味を持ち上げてかつ殺さない、絶妙の味噌のしみ具合。
こんな美味い西京焼きは生まれて初めてかもしれない。

ああ、もう我慢が出来ない。
握りが食べたいぞ。
勢い込んで、若大将に注文する。

まずは大阪ではめったに美味いのにあたらない「こはだ」を。
暑い時期だからといつもより強めに〆ているこはだは、やはり絶品。
綺麗な酸味が通ると、のどがキュンと鳴るようだ。

蒸し海老をとお願いすると、なんとそこから車海老をゆでてくれる。
茹でたての海老が、美味くないはずもない。
この甘み。この弾力。
すでにもうメロメロだ。

どれも美味しそうにガラスケースの中で鎮座するネタたちの中で、ひときわ「いい顔」をしていいるのは青身の魚たちだ。
先ほどの「さんま」を今度は握りでいただくことに。

こいつがまた旨ーーーーーーいっっっっ !!

余分な水分を出すために、ほんの少し塩をして酢にさっとくぐらせたというさんまは、生よりも生らしい。
塩や酢を感じさせず、旨みだけがギュッと凝縮しているのだ。

小ぶりのサバほどもあろうかというほど大きなアジは、うれしいことに目の前で皮を引いてくれた。
さんまと同じ手法で仕事をされたそれは、もうプリップリの弾力だ。
同じ青身でも、サンマよりずっとさっぱりしていて、いくらでも入ってしまいそうだ。

ホッキ貝も、ものすごい分厚さだ。
表面だけさっと炙って、香ばしさを出すとともにジュースを中に閉じ込める。
噛みしめると、磯の香りで口中が洪水状態だ。

マグロの赤身で作ってもらった鉄火巻もたまらない。
しっとりとした身は旨みとさわやかな酸味をたたえ、香り高い海苔とこの上ない相性だ。

他にもいろいろと頂いただけでは飽き足らず、鉄火巻をお土産にして帰った。
いつもいつも思うことなんだけど、なんでこの店近所にないかな。
ダンナいわく「銀座の寿司より美味い」名店は、私たちをためらいなく長浜に途中下車させてしまうほど、トリコにしている。

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本日のお店の予算(一人分・あくまでだいたいの目安)
約5000~8000円

夏休み旅行 その1

2009-08-14 | Weblog
ダンナの休みが取れるかどうかわからず、ギリギリまで予定の立たなかった夏休み。
何とかダンナが時間を空けてくれて、一泊旅行とあいなった。
行き先は名古屋方面で、夕方についた私たちは、そのまま名古屋駅直結の「マリオット・アソシア」にチェックインした。

いつもダンナの多忙のために大好きな旅行にもロクに行けず、不満を漏らしている私を喜ばせようと、彼は「コンシェルジュ・フロア」という特別フロアを予約してくれていた。
といっても某ネットショッピングサイトのポイントがたまっていたことで、半額オフという破格の値段だったらしいが、部屋もサービスも素晴らしくて大感激だ。

晩ご飯はやはり土地ならではの美味しいものを、と思い、ホテルのコンシェルジュさんに相談した。
そこで紹介してもらったのが、自ら所有する養鶏場からの名古屋コーチンを食べさせてくれるという「鶏三和 菊井町本店」だ。

少し迷ったが、電話でお店の人に道を聞きながらたどり着くと、店の前で店長さんらしき方が心配して待っていてくださる。
嬉しくなりながら通された店内は、小ぢんまりとした店構えながら、居心地のいい空間。

まずは数品お願いする。
「ササミの霜降り」はさっと湯通ししただけの、ほぼレアなササミのことだが、しっとりあっさりで喉の通りが良い。
やはりササミはレアに限るなあ。

「名古屋コーチンの卵の厚焼き」もほっこりとした焼き上がりで味わい深い。
「砂肝とネギの塩だれサラダ」は、しゃくしゃくした砂肝とネギに、あっさりしつつもコクのある、黒コショウの効いた塩だれが素晴らしい相性で、いくらでも入りそうだ。

すっかり興がのって串焼きも注文。
つくねは軟骨が入ったコリコリタイプで、野趣あふれる味だ。
ねぎまもせせりもうまーーーーーーーいっっっ!!!

そして、一番のヒットは「鶏レバーと心臓の付け根の炒め物 コーチン卵の黄身がけ」だ。
素晴らしいレアに仕上げられ、柔らかな食感のレバーに、コリコリと弾力のある心臓の付け根の肉が、魅惑的な好対照。
甘辛いタレで仕上げられたそれに、濃厚な卵の黄身がかかって、いくらでも酒を呼ぶ一品だ。
これ、毎日でも食べたいよう。

〆にお願いした「鶏の太巻き」も素晴らしい。
酢飯ではなく、普通の白ご飯に巻かれているのは、鶏肉のたたきに酸味のある青菜の漬物、そしてカリカリと奥歯で噛み潰す感触も小気味よい、香ばしい天かすだ。

はああ、美味かった。
店員さんの対応も終始気持ち良い、いい店だ。
名古屋の一夜は、この上なく快適に過ぎていった。

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本日のお店の予算(一人分・あくまでだいたいの目安)
約3500~5000円






酒をいざなうたくらみ

2009-08-09 | Weblog
少し早めに仕事が終わった夜のこと。
久々に「美加佐」へ立ち寄ることが出来た。

蒸し暑さに吹き出る汗がようやく落ち着く頃合いに出された付きだしは、「ツブ貝の旨煮」と「うなぎの佃煮」だ。
うわあ、のっけからやられた。

ツブ貝は薄味で、自らのダシの中にひたひたと浸り、噛むとジュースがほとばしる。
そのワタがまた甘くてコクがあること !

さりげなく皿に乗せられたうなぎは、実は天然もの。
それを佃煮なんてもったいないと思いきや、この店のは一味違う。
分厚く、弾力をたたえるその身は甘辛いタレで煮詰められたにもかかわらず、それを跳ね返すような力強い旨みを主張している。
これは贅沢極まりない「付きだし」だ。

お造りを何か盛り合わせで、とリクエストすると出てきたのは、「玉美鯛のお造り」に「スズキの洗い」、それに「鱧の落とし」だった。
初めて頂く玉美鯛は実は鯛とは違う種類の魚らしいが、もっちりとした白身で味わい深い。
スズキは洗いにすることで、旨みを残しながら脂が適度に抜けてさっぱりといただけ、弾力が素晴らしい。
鱧はさっと湯にくぐらせるだけなので、生の食感や味を残していてこれまた旨みたっぷり。
あいかわらず、さりげない料理の中に技の光る店だ。

「これどうでっか」
と大将がにっこり笑って出してくれたのは、冬瓜の冷たいお吸い物だ。
透明のガラスの器に入れられ、目にも涼しい。
冬瓜を噛みしめるとジュワッと広がるこのおダシが、またたまらなく美味い。

久しぶりにここの名物の軍鶏焼きが食べたくなって注文する。
焼いてくれたのは、モモ肉と手羽、それにぼんじりの部分だ。
モモ肉は半生で、素晴らしくジューシー。
普通脂っこくなりすぎなぼんじりも、なんでここのはこんなにあっさりしていて美味いのか。
それにこの手羽 !!
骨の周りの肉は美味いものと相場が決まっているとはいえ、ここまで味わい深いと次元が違う。

けっこうお腹がいっぱいになっていたら、大将がニヤリとたくらんだように笑って小さな小鉢を二つ出してきた。
入っているのは「ばくらい」と「塩ウニ」だ。

うわあ、もう勘弁して。
お腹いっぱいで食べられないからじゃない。
美味そうすぎるからだ。

実はここのところ飲みすぎの感があったので、それまでこの店でいつも頼む日本酒を頼まず焼酎の水割りを飲んでいたのだが、ここでついに陥落してしまった。
だって、この二つは日本酒でいかないと犯罪だろう。

「ばくらい」はホヤとコノワタを混ぜた塩辛だが、磯の香りが立っていていくらでも日本酒がいける。
塩ウニはねっとりと羊羹のような硬さと食感で、ウニの旨みがギュッと凝縮している。
これまたひとなめで日本酒がどこまでも進むのだ。

ああ、またやられた。
人のよさそうな笑顔をした大将の、老獪なたくらみに。
しかしこのたくらみ、べらぼうに美味いから困りものだ。

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本日のお店の予算(一人分・あくまでだいたいの目安)
約13000~15000円

夏は端境期にあらず !?

2009-08-04 | Weblog
暑い。
こう暑いと、帰りにどこかによる気力さえなくしてしまいそうだ。

さっぱりしたイタリアンが食べたくて、心斎橋の「アルバロンガ」を訪れた。
ここなら魚介がウリなので、ぴったりだろう。

「とにかくさっぱりと」
という私のリクエストに応じて、まずは白ワインが供される。
このワインはビオだというので、ビオ臭が苦手な私としては身構えたが、飲んでみると変な匂いはまったくなく、香草のようなさわやかな香りがする。
微発泡で、口の中をシュワッと通り抜ける感じも心地よい。

待つことしばしで出てきた「前菜盛り合わせ」は五種。
ヨコワのカルパッチョはショウガが効いていて、スズキはウイキョウの上にトッピングされ、サラダ風に。
このショウガやウイキョウの香り高さが、前述のワインと素晴らしい相性だ。

ヤリイカはさっと炙って、細かく刻んだキュウリやパプリカといただく。
小エビのフリットがトッピングされた桃のガスパチョ、カリフラワーのクレマと和えられた蒸しアワビと、どれも味わい深いが、夏バテ気味の喉をするりと通ってくれる。

「実はメニューにはないんですが、今サマーポルチーニが入荷しておりまして」
テーブル係の女性が、そっとささやく。

なんだって ? ポルチーニ !?
この夏の最中に、あの素晴らしいきのこが食べられるというのか。
聞けばほぼ生の、半冷凍の状態で届いているという。
それは食さずばなるまい。

さて何と組み合わせるか、と思案する私の心を見透かしたように
「生のズワイ蟹がロシアから届いているんですが、それと併せてトマトソースのパスタでいかがでしょう」。
もう、それよそれ。

しかし生のポルチーニとズワイ蟹って、晩秋からあとが旬のものなのに。
今は八月だぞ ?

運ばれてきたそのトマトソースのキタッラは、香りだけでもワインが一杯飲めそうな代物だ。
口に含むと、生特有のしっとりさをたたえたズワイ蟹の甘さが、口いっぱいに広がる。
それとともに、ポルチーニの濃厚なダシが洪水のように押し寄せてくる。

はあああああぁ……ッ、たまらん旨い……ッ !!!

「夏バテ気味」などどこへやら。
旨みをまとった、弾力たっぷりのキタッラをペロッと平らげ、メインを待ちわびる。

メインは国内でとれたクエだ。
本来なら生ハムで巻いてソテーし、フォンドボーをベースとした濃厚なソースでいただくサルティンポッカで供するところを、さっぱりとした香草焼きに代えてくれるという。

フォークを跳ね返しそうなほどのプリップリの身。
食べてみると、白身魚ながら脂が乗って、素晴らしい味わいだ。

正直今までクエ鍋などを食べても、この魚が高級魚という値打ちがもう一つわからなかった。
美味いっちゃあ美味いが、大枚はたいて食べるほどではないと思っていたのだ。

しかしこれは違う。
上等なタラとスズキのいいとこどりをしたような味わいと食感。
これがこの魚の真骨頂だったのか。
分かる。
これなら大枚はたきたくなるよ。

本来なら夏は食材が少ない。
もちろんハモやスズキといった旬の食材はあるが、ほかの季節と比べれば格段に数に劣るのは否めない。
だから、和洋問わず夏は飲食店にとってメニューの組み立てに苦しむ端境期であるはずなのだが。

どうもこの店では勝手が違うらしい。
「クエでも蟹でもキノコでも、いいものでなければ仕入れませんよ」
誇りを持って、植田シェフは言う。
なんとも心強い、夏の料理人だ。

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本日のお店の予算(一人分・あくまでだいたいの目安)
約7000~13000円