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腐女子&妄想部屋へようこそ♪byななりん

映画、アニメ、小説などなど・・・
腐女子の萌え素材を元に、勝手に妄想しちゃったりするお部屋です♪♪

SOTUS・Season3(§171)

2022-09-15 20:48:40 | SOTUS The other side
季節は流れ、6月も半ばになった。
雨季真っ只中のバンコクは、連日降り続く雨のせいで空気もどんよりと淀んでいるようだ。
だがそんな中、ひときわ楽しそうにニコニコしながらデスクに座っている人物がいる。 ソムオーだ。
いつもならそんな彼女に隣席から皮肉めいたツッコミを入れるアースの姿が、今日はない。
そしてその向かいでそんな彼女たちの様子を面白そうに眺めているはずのトードの姿も今日はなく、必死に笑いをこらえるサットがいるのみだ。
 「・・・ソムオー先輩、ずいぶん楽しそうですね」
ついに我慢できなくなったサットが、プッと小さく吹き出しながら話しかけた。
 「そうなの! こないだのアース先輩とトードの結婚式がすっごい素敵だったからさぁ。 思い出すだけで幸せな気分になっちゃうの! とってもロマンチックで、私もあんな結婚式してみたいわぁ♡」
 「それにはまず相手を探さないと」
すかさず鋭いツッコミを入れてくるサットをキッと睨みつけたソムオーが、口を尖らせて応酬する。
 「だったらあなたも協力してよ。 知り合いにいない? 背が高くてイケメンで、お金持ちで優しくて・・・」
 「――現実を見ましょうね」
 「サットってば!」
それまで夢見る少女のようだったソムオーの表情が、あっという間に不機嫌になる。 あいかわらずからかい甲斐のある態度に、サットとアーティットが声を出して笑った。
 「・・・でもほんと、先輩たちすごく幸せそうでしたね。 良い結婚式だったな」
 「そうだな。 アース先輩が泣いてるの、初めて見たよ」
 「トードさんは最初から最後までずっと泣きっぱなしでしたね」
 「そりゃあ、アース先輩との結婚があいつの悲願だったからな。 ようやく願いが叶って、感無量だったんだろう」
 「今ごろはハネムーン真っ只中ですね」
結婚式で見たトードとアースの様子を思い出し、アーティットの表情が自然と緩む。 同時に、エムたちの結婚式を思い出す。
長きに亘ってメイを想い続けたエム。 その強くてひたむきな愛がメイに届き、晴れて二人は結ばれた。
そして、もうすぐ目の前のサットも幸せな結末を迎えようとしている。
幸せの連鎖。 いまそれを強く感じる。 その連鎖に、自分も入れるだろうか・・・。
いつか、グレーグライがくれた言葉。 
『我が社へ来て、名実ともにコングポップの伴侶として彼を支えてほしい』
 「・・・・・・・・・」
グレーグライの口から【伴侶】という言葉を聞いた瞬間、頭の中が真っ白になったのを今でもはっきり覚えている。
あのグレーグライが、とうとう自分をコングのパートナーとして正式に認めてくれた。
この日を、どんなに夢見ていたか。 それはもう、天にも昇る嬉しさだった。
だが、オーシャンエレクトロニック社を辞めるのは・・・。
 「――先輩、アーティット先輩?」
 「・・・えっ」
いつしか思案に耽っていたアーティットの耳に、サットの声が届く。 我に返ってサットを見ると、少し怪訝そうに自分を見つめている。
 「どうしたんですか? 笑顔だったかと思えば急に沈んだ顔になったり、黙り込んでしまったり・・・」
 「あ・・・ああ、悪い。 ちょっと考え事を・・・」
 「コングさんとは、うまくいってるんですよね。 他に何か心配なことでも?」
 「いや、そうじゃないんだ。 そういえば、おまえたちの結婚式はいつなんだ?」
 「・・・・・・・・・」
絵に描いたようにあからさまに話題を変えるアーティットをじっと見つめたサットが、ふと立ち上がってアーティットの隣へとやってきた。
ゆっくりとアースの席に腰を下ろすサットを、アーティットが不思議そうに見ている。
 「・・・先輩。 以前俺が恋人の両親のことで悩んでるとき、あなたは俺の様子を見て悩みがあることを見抜きましたよね」
 「ああ、そんなこともあったな」
 「先輩はいつも周りのことをよく見てて、さりげなく気遣ってくれる。 それはとても素晴らしいことだと思います」
 「・・・・・・?」
アーティットには、サットが何を言おうとしているのかわからない。 相変わらず不思議そうにしているアーティットを、サットが真顔で見つめた。
 「・・・だけど、あなた自身のことを、あなたはもっと考えるべきです」
 「え?」
 「もっと自分の幸せを貪欲に考えてもいいんですよ。 人に迷惑がかかるとか、周りがどうなるとか、そんなことは後回しにしてもいい時もあるんです」
 「サット・・・おまえ・・・」
サットの言わんとしていることはわからないままだが、それでも彼がアーティットに対して何かを伝えようとしていることはわかった。
 「おまえ・・・何が言いたいんだ?」
アーティットがそう尋ねると、サットがチラリと周囲を見渡した。 ソムオーは先ほどから休憩に行っていていない。 この部屋には今サットとアーティット二人だけだ。
それを確認したサットが、おもむろに口を開いた。
 「――サイアムポリマー社へ行くことを、ためらわないでください」
 「!」
アーティットの体に衝撃が走った。 驚きのあまり絶句する彼に、サットが静かに語りかける。
 「・・・俺の婚約者の父親がサイアムポリマー社の総務部長だということ、前に話しましたよね。 少し前に、グレーグライ社長からそういう話があったそうです」
 「そういう話・・・って」
 「オーシャンエレクトロニック社から、近々優秀なスタッフが来ることになるかも知れないので、新社長秘書のポストを用意しておくようにと」
 「・・・・・・・・・」
 「それで彼女の父親が俺に訊いてきたんです。 俺はすぐあなたのことだと思いました。 2年後にはグレーグライさんからコングさんに社長の座が変わるということも聞いていたので」
 「・・・・・・・・・」
 「どんな人物だと訊かれたので、素晴らしい人であり新社長のことを全力でサポートしてくれるでしょう、と答えました」
 「・・・・・・・・・」
アーティットは完全に言葉を喪っていた。 やはりグレーグライは本気だったのだ。 本気で、アーティットをコングの下へ呼び寄せようとしている。
それまでまだどこか絵空事のように感じていたのが、一気に現実味を帯び始める。
コングと自分の未来が、はっきりとしたものになっていくのを感じる。
 「――これまでここで働いてきた恩情や様々な思いもあるでしょう。 その気持ちもわかります。 でもあなたの幸せのためにも、もう迷いは捨てるべきです」
 「サット・・・」
 「それとも、心配でこんな俺たちに後のことは任せられませんか?」
 「そんなことは・・・!」
やや大げさな口調でそう言うサットに、首を左右に振りながらアーティットが否定しようとした。 まんまと誘導尋問に引っかかるアーティットを見て、サットがニンマリと笑う。
 「じゃあ他に何か心残りなことが?」
 「・・・おまえってやつは・・・」
こんなにも口の立つ奴だとは思わなかった。 そう心の中で呟いてため息を吐いたアーティットは、王手を掛けられた棋士のような心境になった。 
とうとう、決断するべき時がきたと。
迷い続けていたアーティットの心の中に、ひとつの光明が差し込んだ瞬間でもあった。
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SOTUS・Season3(§170)

2022-06-12 19:07:41 | SOTUS The other side
今夜は泊まっていきなさいと伝え、コングとアーティットを残してグレーグライが部屋を出ていった。
相変わらずソファで眠り続けているコングを、アーティットがじっと見つめる。
学生時代は小麦色だった肌が、すっかり色も褪せてアーティットと変わらないくらい白い。 少年っぽさが残っていた頬も、今はすっかり精悍な様相を呈している。
考えてみれば、コングも今年で24歳。 初めて出会った時から、気がつけばもう5年の歳月が流れていた。
社会人になってからは仕事に追われる日々が続き、いつしか時間の流れにも気づかなくなっていた。
 「・・・コングポップ」
安らかな寝息を立てて眠っているコングの傍らに跪いたアーティットが、小さく名を呼んだ。 だがコングが目を覚ます気配はない。
そっと、彼の前髪を撫でる。 自分の髪より少しだけ硬い手触り。 そしてかすかに漂うシャンプーの香りが鼻をかすめた。
不意に、愛しさがこみ上げてきた。 
 「コング・・・」
甘く囁きながら、額にくちづける。 そしてそのまま瞼、鼻、頬、唇へとアーティットのキスが移ろっていく。
うすく開かれた唇の隙間から口腔内へと侵入したアーティットの舌が、コングの熱い舌を絡めとる。 唾液が混ざり合い、どこか猥雑な水音が静かな室内に響いた。
 「ふ・・・ぅ・・・」
夢中でコングの唇を貪るアーティットの鼻から、甘美な吐息が漏れる。 ほんの少し唇が離れると、互いの唇に細い唾液の糸が絡まった。
いつしか、アーティットの理性が脆く消えそうになっていた。
普段の彼なら、コングの父親がいる時にこんなことはしない。 ましてや、パブリックな場所ともいえるこのリビングで。
深酔いしたコングを常に気にかけていたせいで、自分が酔っている自覚はなかった。
だが今のアーティットのらしからぬ様子は、やはりどう考えても酒の影響としか思えないだろう。
 「はぁ・・・はぁ・・・」
コングの髪の毛を搔き乱しながら、規則正しく上下している喉仏へとしゃぶりつく。 コリッとした触感を味わいつつ、同時に吸い上げる。
髪の中から手を抜き、もどかしげに自分のワイシャツのボタンを外したアーティットが、ほの白い上半身の裸体を晒した。
間髪入れずにコングのシャツのボタンも速やかに外して、勢いよく左右に押し広げる。 程よく筋肉のついた胸板が露わになると、今度はそこへと激しく口づけていく。
次第に体の中に熱いマグマのようなものが沸き上がってくるのを感じながら、アーティットは夢中でコングの体にキスの雨を降らせる。
 「・・・ん・・・」
ふと、コングが身じろいだ。 深い眠りについていたはずの彼の眉根が、かすかに寄せられている。 半開きの唇から、ため息とも吐息ともいえない呼気が零れた。
普段ならコングのこんな反応を見れば、すぐに我に返って彼から離れるアーティットだが、今は違う。
やめるどころか、体の中で燃え始めた妖しい炎がさらに大きくなり、より大胆な行動へと移っていく。
左手でコングの胸をまさぐりながら、右手で彼のズボンのベルトを外す。 そしてファスナーを一気に下ろした。
トランクスの布越しに、すでに熱を持ち始めているその部分を指先で感じ取る。 しばらくその感触を楽しんだ後、ぎゅっと握りしめた。
 「んん・・・っ!」
手の中のモノがビクリと硬く大きくなるのと、コングの口からくぐもった声が上がるのはほぼ同時だった。 だが、それでもコングの目はまだ開かない。
もうすでに自制が利かなくなっているアーティットが、おもむろにトランクスを押し下げた。 窮屈な布から解放されて勢いよく反り返ったソレを、躊躇なく咥える。
 「・・・・・・!」
それまで半開きだったコングの唇が大きく開き、ひゅっと息を呑む音が聞こえた。
本能の赴くままにコングの分身を激しく吸い上げるアーティットの分身もまた、熱く熱を持ち解放されるのを待っている。
じゅるじゅるという音を立てながら、自分のズボンを脱ぎ捨て、さらにトランクスも脱ぎ捨てる。
 「コング・・・コング・・・」
うわごとのように名前を呼んだアーティットが、ソファの上に飛び乗る。 そしてコングの中心に逞しく屹立しているモノへと跨り、腰を落とした。
 「あ・・・あぁ!」
いつもコングがアーティットを抱く時は、アーティットが傷つかないよう念入りにほぐして、且つ潤滑液をたっぷり塗り込んでからゆっくりと挿入する。
だが今は潤滑液もなく、充分にほぐしてもいない。 そんな状態では、コングの雄物は簡単には収まらなかった。
入り口で激しい抵抗を感じたアーティットが、一旦体を浮かせる。 だがもう快感がすぐそこまで押し寄せてきているせいで、己でほぐす時間さえもどかしい。
再度腰を落としたアーティットは、ほとんど力任せにコングのモノを体内に埋め込んだ。
 「く・・・うぅっ!」
脳天まで突き刺すような鋭い痛みが体を駆け抜ける。 だがそれでも途中でやめず、一気に根元まで吞み込んだ。
 「あぁ・・・!」
きつく目を閉じたコングが、たまらず呻いた。 顎をのけぞらせ、大きく口を開いている。
激しい違和感と痛みの嵐にもまれながらも、アーティットはおもむろに抽挿を始める。 すると、結合した部分から何か液体が流れ出ていることに気付いた。
手で拭ってみると、それは血だった。 無理やり挿入したせいで、裂けてしまったらしい。
だが血のぬめりのおかげで、却って抽挿はスムーズになった。 痺れているのか、痛みも最初ほどは感じなくなっている。
代わりに、高まりゆく快感はさらに激しくなっていく。
無意識に激しくなる腰の動きを止めることができず、アーティットは息も絶え絶えになりながらコングの感触を体全部で感じる。
アーティットの動きとリンクするように、コングの腰もまた無意識に上下していく。 そして二人の動きが最高潮に達した時、ほぼ同時に昇天した。
まるで体をえぐるように強く奥までコングを突き刺したアーティットが、ぶるぶると体を震わせて白い液体を宙に放つ。
同じく、アーティットの体内深くでコングもビクビク拍動しながら、幾度も精を解き放った。
 「・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
まさに精も根も尽き果てたアーティットが、まだ己の中で脈打っているコングのモノを吞み込んだまま、コングの体の上へと倒れ込んだ。
そのはずみで、コングのモノがズルリと抜け出た。 その先端からは、まだ白い液体がチロチロと流れ出ている。
 「ん・・・気持ち良かっ・・・」
ふと響いた声に驚いたアーティットが、ガバッと体を起こす。 眠っていたはずのコングの目が、しっかりと開いている。      
 「――え!?」
二人が同時に声を上げた。 
 「い・・・今の、夢じゃ・・・なかっ・・・」
 「~~~!」
あられもないアーティットの姿に仰天したコングが、彼を指さしながらうわごとのように口をパクパクさせている。 
もう言い訳のしようもないが、それでもコングの体から飛びのいたアーティットが、慌てて散らばった服をかき集めた。
 「う・・・その、ごめん・・・」
一気に何もかもが醒めたアーティットにとって、この状況は忍びなさ過ぎる。 穴があったら入りたいとは、まさにこのことだ。
 「え・・・と、その・・・、てっきり俺は夢の中で先輩としてるものだと・・・」 
 「・・・何も言わないでくれ・・・」
速やかに服を身に着けたアーティットが、ぼそりと零す。 そんな彼を戸惑いながら見つめていたコングが、ふと動いた。
 「・・・先輩、これ夢じゃないんですよね。 ほんとに、先輩が俺を・・・」
 「だから言うなってば!」
 「俺を・・・抱いてくれたんですよね」
 「言うなって・・・え?」
意外な言葉を聞いたアーティットが、耳を塞ぎかけていた手をふと止める。 無意識にコングを見ると、嬉しそうな笑顔を浮かべた彼と目が合った。
 「俺、嬉しいんですよ。 あなたから俺を求めてくれて、そしてあんなに感じてくれて・・・」
 「うぅ・・・言うなよ・・・」
 「恥ずかしがらないで、もっと顔を見せてください。 俺の、愛しいひと・・・」
至近距離にまで近づいたコングの手が伸び、アーティットの頬を捉えた。 大きな両手で頬を包み込み、愛し気に撫でる。
そのままゆっくりとコングの顔が近づき、アーティットの唇に重なる。
先ほどまでの熱いキスとは違い、それは甘く切なかった。
自然と伸びたアーティットの腕が、コングの背中に回る。 そうして二人は抱きしめ合い、優しいキスを繰り返した。 
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SOTUS・Season3(§169)

2022-05-08 18:38:30 | SOTUS The other side
コング宅前でタクシーを降り、相変わらずぐにゃりと重いコングを抱えたアーティットが、玄関までのアプローチをのろのろと歩いている。
 「まったく、こんなに酔っ払いやがって・・・」
誰にともなくブツブツと愚痴りながら、忌々しげにチラリとコングの顔を見た。 完全に眠りに落ちているのか、だらしなく半開きになった唇からスースーと穏やかな寝息が漏れている。
すると、不意にその口元が動き、幸せそうな表情になった。 楽しい夢でも見ているのだろうか。
ふと、先ほどの独言がアーティットの脳裏によみがえった。
(・・・けっこん・・・したい・・・)(ずっと、一緒・・・)
無意識に紡がれたコングの言葉。 無意識だからこそ、それはきっと彼の本音なのだろう。
嬉しく思う反面、複雑な気持ちにもなった。 今の自分たちには、到底たどり着けないゴールだと思うから。
手放しに屈託なく喜べるほど、アーティットはもう子供ではなくなっていた。
 「・・・ふぅ・・・」
エントランスを抜け、玄関前の階段を昇りきったところで、アーティットは大きく息を吐いた。 気を抜くと腕からずり落ちそうになるコングの体を抱え直し、インターホンに手を伸ばす。
 『はい』
 「アーティットです。 コングポップを連れて来たので開けてくれませんか」
 『少々お待ちください』
対応したのは、聞き覚えのない女性の声だった。 たぶんメイドだろうが、いつも対応してくれるプイメークはどうしたのだろうか。
ここに来る前に電話をしなかったことを悔やむ。 もしかして、プイメークもグレーグライもいないのだろうか。
 「しまったな・・・」
誰もいないことを想定していなかったアーティットは、どうすべきか悩んだ。 コングの部屋は知ってるから、部屋に彼を寝かせて、メイドに伝言を頼むか・・・。
しばし思案に暮れていたアーティットの耳に、ドアが開く音が聞こえた。 顔を上げると、そこにはグレーグライの姿があった。
 「アーティット君、すまなかったね。 コングポップは飲みすぎたのか?」
アーティットの体にだらしなくもたれかかっているコングを見て、少し眉を顰めたグレーグライがそう尋ねる。 誰もいないのではと危惧していたアーティットは、心の中で安堵しながら苦笑いしつつ頷いた。
 「まったく、世話の焼けることだ。 ひとまずリビングのソファにでも寝かせるとしよう」
 「あ、部屋まで運びますよ」
 「いや、どうせ目が覚めたらシャワーを浴びるだろうから、わざわざ重いのに2階まで運ばなくてもいいよ」
そう言いながらグレーグライがコングの片腕を取る。 そのままリビングに運び、どうにかソファに寝かせると、二人が同時に大きくため息を吐いた。
思わず顔を見合わせ、笑みが漏れる。
 「今日は、プイメークさんは不在なんですか?」
 「ああ、ちょっと友人と出かけてるんだよ。 まあ座ってくれ。 何か冷たいものでも持って来よう」
 「あ、いいですそんな。 もう帰りますので」
気を遣わせないよう、素早くアーティットがそう答える。 そのままリビングを出ようとした時、ソファに横たわったコングが身じろぎをした。
 「・・・ん・・・」
一瞬目が覚めたのかと思ったが、瞼はしっかり閉じられたままだ。 だがその唇から、うわ言のような言葉が漏れた。
 「アーティット・・・せんぱい・・・」
名前を呼ばれ、アーティットの体がピクリと反応する。
 「けっこん・・・俺と・・・」
タクシーの車内で聞いた言葉が、今またコングの口から零れた。 同時に、アーティットの背中にヒヤリとしたものが走る。
今の囁きは、当然グレーグライの耳にも聞こえたはずだ。 グレーグライが固唾をのんだような気がした。
 「一生、そばに・・・」
さらに言葉を紡ごうとするコングの口を、とっさにアーティットが塞いだ。
 「お、おい! 寝ぼけるのもたいがいにしろ。 ほら、早く起きろよ」
焦りから乱雑にコングの体を揺さぶるアーティットを、やんわりとグレーグライが宥めた。
 「す、すいません。 こいつ酔っ払って、ふざけたことを・・・」
申し訳なさから真っすぐにグレーグライの顔を見ることができず、不自然に顔を背けたまま取り繕うアーティットを、柔らかな表情のグレーグライが見つめる。
 「・・・アーティット君、ちょっと話をしよう。 かけなさい」
穏やかにそう諭され、もう何も言えなくなったアーティットが仕方なく従った。
ソファにゆっくり腰を下ろし、俯き加減のアーティットへ、グレーグライがおもむろに語りかける。
 「・・・近いうちに、コングポップを正式に我が社の取締役に就かせようと思ってる」
 「え・・・」
グレーグライの言葉を聞いて、アーティットが反射的に顔を上げた。 
いずれそうなるとは思っていたが、こんなに早くその日が来るとは思っていなかった。 アーティットの胸に、不穏な風が吹き始める。 
 「再来年度あたりに、就任式ができればと考えてる。 3年後に大きな事業を計画していてね。 それに間に合うように」
 「・・・・・・・・・」
今は3月。 再来年度なら、ちょうど2年後ということになる。
これまではっきりと見えなかったタイムリミットが、今初めて明らかになった。 これまでのようにコングのそばにいられるのは、あと2年間だけということだ。
 「コングポップにはまだ伝えていないが、そのうち言うつもりだ。 来年度いっぱいで、今勤務しているネオジェネシス社も退職することになるだろう」
 「・・・・・・・・・」
覚悟はできているつもりだった。 頭では、いずれこうなることはわかっていた。 だが今こうして宣告されると、頭ではなく心に大きな衝撃が走った。
いつしか黙り込んでしまったアーティットを、グレーグライが見つめた。 表面上では必死に冷静を装っているが、胸の内では様々な感情が吹き荒れているだろう彼を。
 「・・・・・・コングポップが取締役に就任したら、きみがコングポップを支えてやってほしい」
 「――え」
虚ろに宙を彷徨っていたアーティットの目が、不意にグレーグライを捉える。
 「以前にもお願いしたが、いま一度お願いする。 我が社へ来てくれないだろうか」
 「あ・・・」
 「我が社へ来て、名実ともにコングポップの伴侶として彼を支えてほしい」
グレーグライの口から信じられない言葉が零れ、アーティットは思わず目を見開いた。 「伴侶」、 確かにそう聞こえた。
 「あ・・・その・・・」
一気に鼓動が激しくなり、息苦しさを覚える。 胸に手を当てて動揺しているアーティットへ、もう一度力強くグレーグライが念を押す。
 「コングポップの伴侶には、君が一番相応しい。 コングポップを心から愛して理解し、寄り添ってくれる。 公私ともに君がコングポップのそばにいてくれたら、きっとコングポップはもとより我が社としても最高の力になるだろう」
 「グ・・・グレーグライさ・・・」
 「父さんだ。 そう呼んでくれと言ったはずだ」
 「お、おとうさ・・・」
熱いものが胸に込み上げ、それが瞬時に喉元まで迫り、言葉を詰まらせる。 目頭が熱くなり、鼻の奥がツンと痛む。
 「今日式で見てきたエム君たちよりも、もっと君たちは幸せになるんだ」
その言葉がとどめだった。 一気に堪えていたものすべてが堰を切り、大粒の涙がアーティットの顔をしとどに濡らした。
感謝の言葉を述べたくても、もはや口から出るのは嗚咽だけだ。 そんなアーティットを、目を細めたグレーグライが優しく見つめる。
言葉は、もう必要なかった。 温かな感情が、静かに今この場に満ちていった。  
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SOTUS・Season3(§168)

2022-03-24 21:21:33 | SOTUS The other side
 「――悪い、待たせた」
約束の時間より少しだけ遅れてやってきたアーティットが、申し訳なさそうな顔をしている。
だがコングには、それよりもアーティットのスーツ姿に目が釘付けになった。
光沢のある深緑のスーツと、胸元から覗く真っ白なドレスシャツとのコントラストが眩しい。 そしてそのシャツに見劣りしないほどの白く美しい肌。
普段はノーセットのさらさらな髪を後ろへ流し、露わになった額から眉にかけての凛々しいライン。 学生時代よりほっそりとした肢体から伸びる、タイトなパンツに包まれたしなやかな脚。
 「・・・おい、何ぼんやりしてる? 早く出発しないと遅れちまうぞ」
とっくにサイドシートに収まったアーティットが、怪訝そうに問いかける。 その声で、ようやくコングは我に返った。
 「――あ、すいません。 思わず見惚れちゃいました」
 「あ? 何言ってるんだおまえ」
 「すごく素敵ですよ。 そのグリーン、よく似合います。 まるでモデルみたいだ」
 「それは言い過ぎだ。 スーツ姿なんか久しぶりだからそう思うだけだよ」
そう言いながらも取って付けたような咳払いをするあたり、少々アーティットも照れているようだ。 相変わらず照れ屋な彼が、今また愛しく思う。
 「・・・じゃ、行きましょうか」
胸に広がる暖かくて甘い思いを感じながら、コングは静かにアクセルを踏み込んだ。 


コングたちが会場に到着したのは、式が始まる15分前だった。 遅刻したわけではないが、もっと早く来るつもりでいた2人は焦りながら駐車場から会場へと駆け込んだ。
 「お、やっと来た。 珍しいよな、いつも時間よりけっこう早く来るのに」
そう言いながら近づいてきたのは、ブライトだ。 グレー地に細い銀のストライプが入ったスーツに身を固めている。
久々に会うのと、見慣れないスーツ姿とが相まって、ずいぶん大人びて見えた。 だが、そう思ったのはブライトも同じらしい。
 「・・・なんか、みんな雰囲気違うよな。 すごく大人っぽくて、まるで別人みたいだ」
 「そういうおまえも、いつもと全然違うぜ。 なぜか賢そうに見える」
 「おい、なんだよそれ! まったく、変わったのは見た目だけで、中身は全然変わってないな!」
からかうアーティットへブライトがふざけながら近づくと、その手から逃れるように駆け出す。 屈託なく笑う二人を、コングが眩しそうに見つめていた。
 「――おっ、そろそろ時間だ。 席に着こう」
腕時計を見たブライトがそう呟き、アーティットとコングを伴ってテーブルへと向かった。
そして午前10時ちょうど、6年に及ぶエムのメイへの愛が成就する時がやってきた。
神父の面前で永遠の愛を誓い、エンゲージリングの交換をし、そして誓いのくちづけを交わす。 やがて神父が二人の婚姻が成立したことを宣言すると、それまで静寂に包まれていた室内に歓喜の声が湧いた。
 「おめでとうエム!」「おめでとうメイ!」「いつまでも幸せに!」
シュプレヒコールのように二人を祝福する言葉が幾重にもこだまする。 
最初から泣き続けているメイと、一気に涙が溢れだして顔をくしゃくしゃにしているエムを、仲間が取り囲む。
もらい泣きしながら祝福し続ける者、号泣するエムを冷やかす者。 三者三様の中、アーティットがそんな様子をカメラに収めていた。
シャッターを押す合間にエムたちに言葉をかけては、再びファインダーを覗く。 まるでこの瞬間をいっときも逃さないように際限なくシャッターを切り続けるアーティットを、コングはただひたすら見守っていた。
やがて式が終わり、お披露目パーティーが始まると、エムとメイが集中砲火のようにみんなから祝杯を飲まされる。
だがそれはエムたちだけでなく、コングたちも同じだった。 あちらこちらから酒を注がれ、グラスを空にするよう急かされる。
まるでお祭り騒ぎのような祝宴は、夕暮れが間近に迫る頃にようやく終了した。
 「――おい、大丈夫か」
数えきれないほどグラスを空けたコングが、完全に酩酊状態になってアーティットに抱えられている。
泥酔者特有のぐにゃぐにゃとした肢体は、なかなか思うように運べない。 昔ならともかく、筋力もなくなった今のアーティットには、これ以上コングを抱えて移動するのは無理だった。
どうにか会場の外まで出てきたところで、コングを縁石に座らせた。 が、そのままぐにゃりと後ろへ倒れてしまう。
 「あーあ・・・」
倒れた体を起こそうとすると、不意にコングがふふっと笑った。
 「せんぱい、せんぱ~い・・・」
楽しい夢でも見ているのか、目を閉じたまま幸せそうな笑顔を浮かべて、小さく何度も呟いている。 
 「・・・まったく・・・」
人に世話を焼かせておいて一人だけ呑気に寝言を発しているコングに、呆れたアーティットの口から思わず大きくため息が漏れた。
 「・・・けっこん・・・したい・・・」
再びコングが小さく呟く。 その言葉に、アーティットがはっとした。
 「ずっと、一緒・・・」
相変わらず幸せそうな笑みを湛えたままのコングをじっと見つめるアーティットの目が、切なく揺れた。 
コングが一番望んでいるもの。 そして、自分自身が思う最善のかたち。 
コングはいつだって正直で、素直だ。 欲しいものは欲しいと言える強さを持っている。
だが自分は。
コングを想う熱い気持ちに身を焦がす反面、そんな自分を冷静に見つめるもう一人の自分がいることに気付いている。
コングのように、何のためらいもなく自分の気持ちを吐露することができない。
それが、時にはコングを傷つけてしまうこともある。 
 「・・・・・・ごめん、こんな俺で」
コングの体を起こして自分にもたれかけさせながら、目を伏せたアーティットがぽつりと呟く。 
 「・・・でも、おまえのことを心から愛してる。 これまでも、これからもずっと・・・」
伏せていた目を開け、肩先にあるコングの顔を見つめる。 セットした前髪がひと房乱れているのを、そっと整える。 そしてそのまま、優しく髪の毛を撫でた。
 「・・・ん・・・」
不意にコングが身じろぎ、アーティットはひどく驚いた。 今の囁きを聞かれていたかもと思うと、一気に恥ずかしさが襲ってきた。
 「た、タクシー呼ばなきゃ!」
とっさにそう言いながら立ち上がる。 そのはずみで、それまでもたれていたコングの体が再びぐにゃりと倒れた。
はっとしたアーティットが様子を見ると、コングは目を覚ます気配もなく、穏やかな寝息を立てている。
安堵と落胆が入り混じった気持ちを胸に抱きながら、アーティットはタクシーを呼ぶためのろのろと車道へと向かった。
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SOTUS・Season3(§167)

2022-02-14 00:01:48 | SOTUS The other side
夕刻の渋滞する街並みを走り抜け、コングがオーシャンエレクトロニック社へ着いたのは、18時前だった。
予定よりも少し遅くなってしまったが、まだアーティットはオフィスにいるだろうか。 確認するため連絡しようとスマホを取り出すと、いつの間にか着信があったらしくランプが点滅している。
『悪い、もう少し遅くなる。 また連絡する』
メッセージの着信時刻は17時半。 遅くなったせいで待たせてしまったと思っていたコングは、ほっと安堵の息を吐いた。
サイドブレーキをかけ、エンジンを切ってシートを少し倒す。 久しぶりにバンコク市内を運転したせいか、少し疲れたようだ。
瞼を閉じると、乾燥していた目がじんわりと癒されていく。 その心地良さを味わっていると、次第に意識が遠のき始めた。
そうしてどれくらいかたった頃、コングは不意に運転席の窓を叩く音ではっと我に返った。 反射的に窓を見ると、そこには少し呆れ顔のアーティットの姿があった。
 「先輩、もう仕事終わったんですか?」
慌ててシートを立て、助手席に乗り込んできたアーティットへそう尋ねる。
 「ああ。 そうラインしたけど、一向に既読にならないから直接来た」
少し棘を孕んだアーティットの言葉を受けてとっさにスマホを見ると、確かにメッセージが届いている。
 「すいません、気が付かなくて」
 「だろうな。 気持ちよさそうに寝てた」
 「す・・・すいません」
首をすくめ、申し訳なさそうに目を伏せるコングを見て、アーティットがふっと笑いながら提案する。
 「久しぶりに運転して疲れたんだろ。 運転代わろうか?」
 「いえ、大丈夫です。 俺より先輩の方が仕事で疲れてるでしょう。 それより、何食べに行きます?」
 「そうだな、しゃぶしゃぶはどうだ? だいぶ行ってないし」
 「いいですね、行きましょう」
行き先が決まると、さっそくコングは車を発車させた。


心ゆくまでしゃぶしゃぶを堪能した二人が店を出たのは、20時を少し過ぎた頃だった。
すでに帰宅ラッシュの時間帯を過ぎてスムーズに流れる市内を、アーティットのアパートへ向けて走り出す。 
道中、会えなかった間に積もった話に花を咲かせていたおかげで、あっという間にアパートに到着した。
 「ビールを買っておいたんだ。 飲むだろ?」
部屋に入り鞄を置いたアーティットが、そう尋ねながら冷蔵庫を開けた。
 「ええ、いただきます」
 「でも2本だけな。 明日に響くといけないから」
両手に缶ビール4本を抱えたアーティットが、2本をコングへと差し出す。 礼を言って受け取ると、さっそくコングがプルタブを開けて飲み始める。
 「ふーっ、美味しい。 ビールなんて、ほんと久しぶりです」
 「俺も。 だから今日はおまえと一緒に飲もうと思ってたんだ」
明日も飲むだろうけどな、と言って笑うアーティットを、コングが少し複雑な気持ちで見つめた。
明日はエムとメイの結婚式。 大学時代から長きに亘ってメイを想い続けたエムの願いが、ようやく成就する日。 親友の幸せは、心から祝福したいと思う。
しかし反面、結婚式に参列するアーティットの心中を思うと、手放しに喜べなかった。
男女カップルの最終ゴールとも言える結婚。 だがコングとアーティットには、そんなゴールは見えない。 そもそも、タイでは同性婚はまだ認められていない。
自分たちの関係がどのような結末になるのか何も見えないまま、こうして時間だけが過ぎていく。
夫婦になれば、愛の証として子供ができる。 だがコングとアーティットには、想いという形のないものしかない。
二人が愛し合った証は、何も残らない・・・。
 「・・・おい、余計なことは考えるな」
不意に、アーティットが呟いた。 驚いたコングが顔を上げると、じっと見つめるアーティットと目が合う。
 「おまえが何を考えてるか、だいたい想像はつく。 おまえが俺のことを考えてくれてるのもわかってる。 でもな」
そこまで言うと、手の缶ビールをテーブルに置いたアーティットが、言い聞かせるようにゆっくり言葉を紡いだ。
 「たとえ結婚することができなくても、俺はおまえとの関係を後悔なんてしない。 するはずもない。 結婚だけが幸せの真骨頂なんて、誰が決めたんだよ」
 「先輩・・・」
 「愛には色んな形がある。 それがどんな形だとしても、本人たちが幸せならそれでいいだろ? 他の人間が何を言おうともな」
じっと自分の目を見てそう言うアーティットの瞳に、強く宿る何かをコングは見た。 だがそれは一瞬で、ふっと柔らかな瞳の色に戻ったアーティットが、再び缶ビールを手に取って残りのビールを一気に飲み干した。
 「・・・そうですよね。 俺たちは今のままで充分幸せだ。 それでいいんですよね」
 「そういうことだ」
空になった缶をくしゃっと握り潰したアーティットが、ニヤリと笑う。 2本目の缶に手を伸ばした彼の手を、不意にコングが握った。 
とっさに自分を見たアーティットへ、コングがとろりと微笑んだ。
 「――先輩、俺をもっと幸せにしてください」
 「え?」
目を見開いて訊き返すアーティットの手を、ぐいっと引き寄せる。 体勢を崩してコングの腕の中へ倒れ込むアーティットの手から、掴んでいた缶が床へ転がり落ちた。
 「お、おい、明日は結婚式に・・・」
 「式は10時からですよ。 それまでまだたっぷり時間はあります」
 「たっぷりって・・・おい、くすぐったいよ!」
片腕でアーティットを抱えているコングのもう片方の手が、アーティットの脇腹をすすーっと撫でた。 ぞわりと鳥肌が立ったアーティットが、たまらず叫ぶ。
 「や、やめろってば、くすぐったいって! おいコングポップ!」
どうにかしてコングの手から逃れようと体をよじるアーティットを、コングがぐいっと押し倒した。
 「――先輩。 俺、ちょっと酔っ払ったみたいです」
 「たった1本でか? そんなわけないだろ」
 「本当ですよ。 だって、ほら・・・」
そう言いながらアーティットの手を取ったコングが、自分の頬へとその手を当てた。
 「こんなに顔がほてってる。 それに、心臓も・・・」
握った手を、今度は左胸へと押し当てた。 薄いシャツ越しに、コングの鼓動をはっきりと感じる。 規則正しく脈打つそのリズムが、だんだん加速していくのがわかった。
 「・・・からだが、熱い・・・。 どうやったら、この熱っぽさが収まるのかな・・・」
体の下にアーティットを組み敷いたまま、コングがおもむろにシャツを脱ぎ始めた。 小麦色の素肌が露わになっていく様子を、固唾をのんでアーティットが凝視する。
 「先輩も、ほら・・・」
上半身裸になったコングが、今度はアーティットのシャツに手を伸ばした。
 「ちょっ・・・」
狼狽えるアーティットにかまわず、コングの手が素早くボタンを外していく。 やがてすべてのボタンが外され、アーティットの白い肌が現れた。
 「先輩の肌、綺麗だ・・・とても」
シャツを左右に押し広げ、うっとりとした口調でコングが呟く。 そしてゆっくりと、左胸へキスをした。
 「あ・・・!」
そのままダイレクトに心臓へくちづけられたような甘い錯覚を覚え、思わずアーティットの鼓動が跳ねた。 コングと同じく、アーティットの鼓動も次第に速まっていく。
それはまるで、これから始まる濃密な夜の合図のようでもあった。
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