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腐女子&妄想部屋へようこそ♪byななりん

映画、アニメ、小説などなど・・・
腐女子の萌え素材を元に、勝手に妄想しちゃったりするお部屋です♪♪

ご愛読ありがとうございました!

2022-10-09 23:30:53 | みゅがる創作話 By nana
みなさまこんばんは。 いつもお話をご愛読いただきありがとうございます。

さて、かねてより連載してまいりました「Measure the our distance ~あなたと僕の・・・~」のお話が、
ついに完結いたしました。

桜花さまとの共作という初めての試みでしたが、私はとても楽しく書かせていただきました♪
自分だけで書くのと違い、どういう展開になるのかわからないところがすごく面白かったです。
毎回桜花さまが書かれるお話を読んで「そうきたか~!」と感心したり、そういう視点もあったか!と
目から鱗的な発見もありました。

機会があれば、また共作にチャレンジしたいと思っています!
皆さまにも楽しんでいただけたなら、嬉しい限りです☆

最後になりましたが、一緒に創作してくださった桜花さまにこの場を借りてお礼申し上げます。 
どうもありがとうございました!
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Measure the our distance ~あなたと僕の・・・~ P.34(Nana side)

2022-07-12 23:28:06 | みゅがる創作話 By nana
―—今日は、ほんとに嬉しかった。 Gulfが俺のために、Ph’iNaplanにあんなことを言ってくれるなんて。
『僕たち、付き合ってるんです。 なので、いつも一緒に居るのは当たり前なんです』
『Phi'Naplan、僕の恋人になんの御用ですか?』
今思い出しても、胸が震えそうになる。 はっきりと、自分の恋人だと宣言してくれた。
 「・・・夢じゃないよな」
ベッドに突っ伏し、枕に顔を埋めたままそう呟く。 人はあまり幸せな気持ちになると、現実味がなくなるらしい。
うつ伏せだった体をごろりと仰向けにすると、白い天井が目に映った。 真っ白なはずのその天井に、Gulfの顔が浮かんでは消える。
はにかんだような顔。 照れ隠しの少し怒った顔。 そして、とろけるような笑顔・・・。
出会った頃のぎこちなく強張った表情が、嘘のようだ。 今はこんなにも表情豊かに、俺の心を満たしてくれる。
 「――Gulf、愛してる・・・」
甘くそう呟いたのと、部屋のドアが開いたのはほぼ同時だった。 とっさにベッド上に起き上がり、ドアから室内へ入ってくるGulfを見た。
 「――どうかした?」
愛の言葉を一人口にしていた気恥ずかしさで、どうやら俺はおかしな表情をしていたらしい。 不思議そうな顔で尋ねるGulfに、それらしい言葉をかける。
 「ん、いや。 シャワー早かったな」
 「そう? いつもどおりだと思うけど」
肩にかけたタオルで髪の毛を乱雑に拭きながら、Gulfが俺の横に腰かけた。 どうやらうまく誤魔化せたらしく、それ以上追及してはこない。
心の中で安堵しながら、俺は何となくGulfを見つめた。 しばらくがしがしと髪の毛を拭くと、満足したのかタオルから手を離した。
 「・・・ほら、髪の毛がぐしゃぐしゃだよ。 梳かしてあげるからおいで」
 「えー、このままでいいよ」
 「だめだめ、明日も撮影あるだろ? ちゃんと乾かして梳かしとかないと、うまくセットできないから」
まだ不服そうにしてはいるが、それでも俺の言うことに反論はせず、渋々ドレッサーに移動した。
ドライヤーを片手に、もう片手にはブラシを持って、Gulfの髪の毛をケアしていく。
ほんの少し硬くて、真っ黒な髪。 俺の柔らかで栗色の髪とは全然違う。 
思えば、考え方やライフスタイル、趣味や嗜好など、俺とGulfには違う点がいくつもある。 だけど、お互いを想い愛する気持ちだけは同じだと信じてる。
 「・・・さ、できた」
ミラーに映るGulfが、ちょいちょいと髪の毛を触る。 にっこり笑うと、ありがと、と可愛くお礼を言った。
思わず俺の胸がキュンとなる。 大きな背をしたとびきり可愛いLover。 俺の目もとろけた。
 「――あ、そうだ」
抱きしめようと手を伸ばしかけた瞬間、ぱっと表情を変えたGulfが小さく告げた。 さっきまでの可愛い表情はすっかり消え、代わりに何か企むような目になってる。
 「おしおき、しないとね」
おしおき? なんだそれは。 虚を突かれた俺は、思わず目が点になった。
だがそんな俺の様子にかまうことなく、Gulfはスタスタとベッドへ向かい、ベッド上にうつ伏せになった。
 「何してるの? おしおきって?」
突っ立ったままそう尋ねる俺を一瞥したGulfが、呆れたようにため息を吐いた。
 「言ったでしょ、煮え切らない態度のP’Mewにはおしおきしないとって。 ほら、早くこっち来て!」
あー、そう言えばなんかそんなこと言ってた気もする。 でも本気とは思わなかったな。
でも、待てよ。 ベッドで寝転んでるGulfがおしおきだって? 一体どんなおしおきをするつもりなんだ?
俺は次第に胸が期待に膨らんでいくのを感じていた。 急に鼓動が速くなる。 否が応にも、イケナイ妄想が頭を支配していく。  
 「――ほら、来たよ。 俺はどうすればいい?」
心の中の邪な気持ちを必死に隠しつつ、何気なさを装いながら俺はベッドへと歩み寄った。
 「ベッドへ上がって、僕の体の上にまたがって」
うつ伏せのまま、Gulfがくぐもった声でそう命令する。 俺の頭の中は、もうよからぬことでいっぱいになっていた。 
Gulfの太もものあたりにまたがり、ささやかに膨らんでるお尻を両手でぎゅっと掴んだ。 すると即座に違う!と鋭い声が飛んできた。
 「そこじゃない! 腰と背中がすごく凝ってるんだ。 もっと上をマッサージして」
 「マ、マッサージ?」
マッサージだって? 突拍子もないことに、思わず俺の声が上ずった。
 「そう、おしおきに僕がいいって言うまでマッサージしてもらうから。 まずは背中からね」
 「・・・・・・・・・」
俺は全身から力が抜けそうになった。 口からは、自嘲の笑いが漏れた。 
 「――ほら、早く!」
いつまで経っても動かない俺に、再びGulfの鋭い声が降りかかる。 俺は急速に萎んでいく己の猥雑な気持ちを感じながら、のろのろと背中へ手を伸ばした。
そうして小一時間くらいマッサージし続けて、ようやく俺はお役御免となった。
 「ふぅ、スッキリした。 おかげで体が軽くなったよ」
 「そうですか・・・それはよかったですね」
一時間もマッサージし続けて普通に疲れたのと、膨らんだ期待が水泡に帰した虚しさで、俺は棒読み状態で答えた。
力なく笑った俺を見たGulfが、なぜかふっと甘い表情を浮かべながら呟いた。
 「・・・おしおきをちゃんと受けたP’Mewに、今度はご褒美をあげようかな」
 「え?」
ベッド上に起き上がったGulfが、ゆっくりと俺へと近づく。 俺の両肩をぐっと掴んだかと思うと、そのまま押し倒された。
何が何だかわからないまま目を見開いてると、吐息がかかるほど顔を近づけてきたGulfが甘く囁いた。
 「――今夜は、僕があなたをいっぱい愛してあげるよ」
その言葉の意味を理解するより先に、Gulfの唇が俺の唇に重なった。 そしてそのまま唇と歯列を割り、ぐっとGulfの熱い舌が俺の口腔内へ侵入してくる。
 「・・・ふっ・・・」
俺の頭が、一気に過熱した。 瞬く間に体温が上昇し、視界がピンク色に染まる。 互いに音を立てながら舌を吸い合い、唾液を交換する。
唇の端から透明な雫がこぼれ、唇の隙間からは熱い吐息が漏れる。 俺の体の中心が、ぐんぐんと張りつめていくのを感じた。
反射的にGulfを組み敷こうと体を動かすと、すかさず押さえられた。
 「だめ、今夜は僕があなたを抱くんだから」
耳元にそう囁きかけられ、耳朶を軽くかじられる。 その瞬間、脳天に電流が走ったような衝撃を受けた。
 「あ、P’Mewもしかして耳がイイの?」
俺の反応を見たGulfが、再度耳朶を噛む。 再度俺の体が鋭く反応する。
 「はあ、はあ・・・」
まだGulfの体を感じてもいないのに、俺はもう息も絶え絶えになっている。 耳朶が性感帯だと、今はじめて気づいた。
俺の正直すぎる反応が面白いのか、何度も耳朶を弄ぼうとするGulfをぐいっと押しとどめる。
 「だめだ、もうこれ以上は」
 「いいじゃん、もっと弄らせて」
俺の抵抗を封じようとするGulfの動きを、強制的に止める。 そしてそのまま、体勢を逆転させた。
 「あ、だめだってば!」
 「いいや、もう我慢できない。 俺はおまえで感じたいんだから」
 「あ、P’Mew!」
まだもがこうとするGulfをベッド上に押さえつけ、噛みつくような勢いで全身に口づける。 その合間に、お互いの邪魔な衣服を取り払っていく。
ようやく素肌を重ね、直に体温を感じると、俺の胸に愛しさが溢れた。
 「Gulf、Gulf・・・愛してる」
 「P’Mew、僕も・・・」
いつしか抵抗も忘れ、俺の体の下で甘い表情を浮かべたGulfが、潤んだ眼で見つめる。
その後は、もう言葉は必要なかった。 ひとつになった俺たちは、体と心で互いの愛を思う存分確かめ合った。
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Measure the our distance ~あなたと僕の・・・~ P.32(Nana side)

2022-05-26 11:13:02 | みゅがる創作話 By nana
いろいろあったけど、Dentiste社のCM撮影は結局予定より少し遅れの来週から開始することになった。
あと、当初より大幅に変わったのは、撮影場所がDentiste社じゃなくMSS社のスタジオになったことだ。
打ち合わせを重ねた結果、『フレッシュなスーツに身を包んだ二人の青年が、Dentiste社のヘルシードリンクを飲みながら颯爽と出勤する場面』でいくことに決まった。
当然ながらスーツはMSS社のものを使い、ほかにも靴やビジネスバッグなどの小物もすべてMSS社が用意することになる。
そうなると撮影準備や効率化等を考えると、MSS社で撮影した方がスムーズだということになった。
それに、これはMookさんの意見だけど、初めての場所でCM撮影をするより慣れたところでする方が、僕もMewさんもリラックスできて良い作品に仕上がるだろうと。
正直、これはありがたかった。 ただでさえプレッシャーに弱くて緊張しやすい僕は、見知らぬ場所で見知らぬ人たちと仕事をするのがすごく苦手なんだ。
CM撮影の仕事は初めてだし緊張はしてるけど、それでも場所が自社になったことで随分気持ちが楽になった。
 「——ふぅ」
無意識に安堵のため息を漏らしてると、テーブルのスマホが振動した。 ラインの着信のようだ。
Mewさんかな? 今日は土曜日だけど仕事だって言ってたっけ。 合間にラブコールでもくれたのかな?
なんて甘々なことを考えながら開くと、意外な相手だった。
【久しぶり、元気か? もし暇なら、今日昼メシでも行かないか?】
送り主は、Mildだった。 そういえば、ここ最近会ってない。 最後に会ったのは、たしか駐車場でSilviaと一緒にMewさんのことを言われた時じゃなかったかな。
 「Silviaか・・・」
あの時のことを思い出すと、何とも言えない重い気持ちになる。 でも同時に、MildたちにMewさんとの関係を打ち明けられて気がラクにもなった。
そういえばあの時、Silviaは会社を辞めるとか言ってたっけ。 あれからどうなったんだろう。
積もる話もそれなりにあるし、特に予定もないので僕はOKの返事をした。
すぐさまMildから返信があり、結局12時に会社の近くにあるしゃぶしゃぶ店に集合することになった。
でも僕が店に着いたのは、バイクタクシーがなかなか捕まらなかったせいで、約束の時間をちょっと過ぎた頃だった。
 「遅かったじゃんか」
ちょうど昼時とあって満員の客の間をすり抜けながら席に着くと、開口一番そう突っ込まれた。 
 「ごめん、バイクタクシーがなかなか捕まんなくてさ」
 「腹減ってるし、もう先に食っちまおうかと思った」
テーブルの上には、すでにずらりとしゃぶしゃぶの具材が並んでる。 先にMildがオーダーしてあったみたいだ。
 「わ、美味しそう! しゃぶしゃぶなんて久しぶりだなぁ」
 「俺たちが会うのも久しぶりだろ。 おまえが広報部へ異動してからなかなか会う機会がないよな」
 「そうだね。 あの駐車場で会ったのも、もうどれくらい前だろう」
 「・・・・・・・・・」
何気なくそう呟くと、不意にMildが押し黙った。 不思議に思って彼を見ると、妙に神妙な面持ちで僕を見てる。
 「・・・実は、おまえにずっと謝ろうと思ってたんだ」
 「謝る?」
熱々のお湯に肉を浸しながらとっさにそう訊き返す。
 「あの時、Silviaと一緒になっておまえを責めたことをさ。 CEOの嘘の噂話を真に受けて、随分ひどいことを言ったと思うから」
 「ああ・・・」
 「悪かったよ。 あの時はとにかくSilviaがすごい剣幕で、ついあいつの勢いに押されて頭に血が上っちゃったんだ。 ま、今さら言い訳だけどな」
 「・・・気にしてないから大丈夫だよ。 それに、Mewさんとのことをカミングアウトするきっかけにもなったし」
 「――今も、CEOとはうまくいってるのか?」
 「ん・・・それなりかな。 そういえばSilviaは本当に辞めちゃったの?」
 「あ・・・ああ。 あれからすぐ退職したよ。 今はもう次の仕事を見つけて、楽しそうにやってるよ」
 「そう。 ならいいけど」
案外切り替えの早い人なんだな。 もうちょっと引きずるかと思ったけど。
 「・・・なぁ。 もしかして、CEOとはあんまりうまくいってないんじゃないのか?」
 「え? なんでそう思うの」
内心ちょっとギクリとしたけど、敢えて何でもないようにそう訊いてみる。 僕を見るMildの目が、何かを探るような色をしてる。
 「おまえさ、嘘ついたり誤魔化したりするのが下手なんだよ。 さっきのおまえの態度で、何となくそう感じたんだ」
 「え~・・・」
ズバリそう指摘されて、思わず唸った。 確かにその通りだから。
心の中を見透かすようにじっと僕を見てるMildの目がたまらなくなって、僕は早々に言い繕うのを諦めた。
 「実は・・・つい昨日までケンカしてた」
 「やっぱり」
 「ケンカっていうのも変か・・・。 僕が一方的に嫉妬して誤解してただけなんだけど」
 「何があったんだ?」
こういう時のMildは、本当に鋭いし的確な意見を言う。 普段のチャラけた彼はどこかへ行って、全く違う人みたいになる。
僕はNaplanさんとのことを正直に話した。
 「――そっか、そんなことが・・・」
 「Mewさんははっきり言ってくれたみたいだし、Naplanさんが一方的にMewさんを想ってるだけっていうのもわかったんだ」
 「うん」
 「だけど、何ていうか・・・。 これで本当に終わったんだろうかって。 だってあれだけMewさんに固執してた彼女が、あっさり引き下がるとは思えないんだよね」
 「うん・・・そうだな。 人の心ってそんなに簡単には変わらないしな」
 「でも今はMewさんを信じるしかないって言い聞かせてる。 僕にはそれしかできないし」
 「・・・・・・・・・」
急に無言になったMildが、しばらくの間を開けておもむろに語りかけてきた。
 「・・・おまえさ。 もっと自分の気持ちや感情を出した方がいいよ。 CEOにも、あんまり言ってないんじゃないのか」
 「え・・・」
不意に胸にズキリと衝撃が走った。 的確に言い当てられて、思わず言葉を喪う。
 「おまえ、肝心な時に何も言わなくなっちまうだろ。 普段は何でも話すくせにさ」
 「・・・・・・・・・」
 「特にCEOみたいな人は、放っておいても相手から寄ってくる、いわゆるモテるタイプだ。 おまえがしっかり自分の気持ちや意見を伝えて繋ぎ止めておかないと、いつまたどんな妨害が入ってくるかわかんないぞ」
 「Mild・・・」
 「ま、そんな時はまたいつでも相談に乗るけどな。 恋人はいないけど、恋の相談に乗るのは得意なんだ」
 「なんだよそれ。 ちょっとおかしくない?」
 「どこが? 全然!」
おどけたように肩をすくめて両手のひらを上向きにしたMildが、さ、食うぞ!と告げる。
その声に押されて、僕も箸を握り直した。
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Measure the our distance ~あなたと僕の・・・~ P.30(Nana side)

2022-05-05 22:51:48 | みゅがる創作話 By nana
あれからMewさんと二人きりにならないまま数日が過ぎ、Dentsite社のCM打ち合わせの日になった。
今日も、Mewさんと僕は一緒にいない。 打ち合わせ直前まで別の仕事が入ってるMewさんは、その仕事が終わり次第Dentsite社へ直行することになってる。
Dentsite社の社屋前で立ち止まった僕は、何となく腕時計を見た。 打ち合わせは14時からで、今はまだ13時を少し過ぎたところだ。
思いのほか早く到着してしまった僕は、しばらくどうしようかと思案した。 あまり早くに会場へ行っても迷惑だろうし、そもそもまだ誰もいない可能性もある。
 「――確か、1Fに喫茶スペースがあったよな」
ロビー横に何台かの自動販売機と飲食スペースがあって、以前来た時そこでMewさんにコーヒーを奢ってもらって一緒に飲んだことを思い出す。
CMに出て人気が出たらどうするだとか、ギャラをもらったらどこか旅行しようとか、他愛のない話で談笑してた。 
あれからたった数日しか経ってないのに、今の僕の心境はあの時とは雲泥の差だ。
 「・・・くそ・・・」
MewさんとNaplanさんのツーショットが、今も目に焼き付いて消えてくれない。 目の前で親し気に寄り添う二人を見て、僕は何とも言えない気持ちになったんだ。
Mewさんは彼女とは何にもないって言ってたけど、でもNaplanさんを見るMewさんの目はすごく優しくて、NaplanさんがMewさんを見る目も愛しさが溢れてた・・・。
二人がかつて恋人同士だったのは、もう誰の目にも明らかだ。 あんな様子を見せられたら、否が応でも二人の過去を想像してしまうじゃないか。
 「――くそっ!」
もう一度、口の中で毒を吐く。 胸の中のモヤモヤはそう簡単には消えてくれないけど、いつまでもここに突っ立ってるわけにもいかない。
僕は盛大にため息を吐いて、のろのろと足を踏み出した。


自動販売機で缶コーヒーを買い、飲食用に置かれた椅子に腰かけてプルタブを開ける。 元々たいして美味くもない缶コーヒーだけど、今日はやけに苦く感じた。
口の中いっぱいに広がる苦味を噛みしめていると、誰かが近づいてくる気配を感じた。 反射的に振り向くと、こちらへ向かって数人の人が向かってくるのが見えた。
きっとこの会社の社員だろう。 何となく立ち上がり、スペースの隅の方へと移動する。 部外者の僕がここを利用してるのが、何だか申し訳なく感じたから。
雑談を交わしながら自動販売機でドリンクを購入する気配を背中で感じていると、不意にそのうちの一人が声をかけてきた。
 「――ねぇ、Gulfくんじゃないの?」
急に自分の名前を呼ばれて、わけもなくドキリとした。 振り返ると、缶コーヒーを片手に持った女性がこちらへ近づいてくるのが目に映る。
 「あ・・・」
僕は心臓がビクリと跳ねるのを感じた。 満面の笑顔で僕の前に立ったのは、まぎれもなくあのNaplanさんだった。
 「やっぱり! あ、私のこと覚えてるかしら?」
ニッコリと微笑む彼女から、甘いフレグランスが薫る。 缶コーヒーを持つ手首に揺れる細いゴールドのブレスレットが、光に反射して煌めく。 そして白くしなやかな指先には、綺麗に塗られた淡いピンクのマニキュア。
何もかもが完璧な女性を演出していて、僕はなぜだか眩暈がしそうになった。
 「あら、大丈夫?」
足元がふらついた僕に、少し慌てたようにNaplanさんが声をかける。
 「大丈夫、です」
不味さをこらえて飲み干したコーヒーが逆流しそうな感覚と闘いながら、僕はどうにかそう答えた。  
 「Naplan、行くわよ」
 「あ、先に行ってて。 後から行くわ」
Naplanさんの同僚だろうか。 そう短くやり取りを残して、彼らは消えて行った。
 「ね、座って。 ちょっとお話がしたいの」
椅子に腰かけ、自分の隣のスペースをぽんぽんと叩いて、僕が座るのを促す。 内心、僕はひどく戸惑った。
僕にいったい何の話があるっていうんだろう? あなたが用があるのはMewさんじゃないの??
心の中では抗議の声がわんわんと鳴り響いていたが、それらを口にすることは到底できず。 僕は情けない気持ちのまま、仕方なく腰を下ろした。
 「・・・ねぇ。 私とMewの関係、知ってる?」
 「・・・詳しくは・・・」
厭な質問を投げかけてくる彼女に、僕は俯いたまま曖昧な返事を返す。 だって本当にそうなんだから、仕方ない。
 「私たちね、学生時代に付き合ってたの。 2年くらい続いたかな」
 「そうなんですか・・・」
手にした空き缶を弄りながら、小さく相槌を打つ。 きっと僕の全身から負のオーラが出てると思うけど、それに気づいてないのか、それともそんなことはどうでもいいのか、Naplanさんは聞きたくもない話をさらに続ける。
 「自分で言うのも何だけど、私たちはお似合いのカップルって評判だったの。 とても愛し合ってたし」
 「へぇ・・・」
じゃあなんで別れたの?って突っ込みたくなったけど、藪蛇になりそうなのでぐっと堪える。
 「だけど私が留学することになって、お互い納得ずくで別れたの。 決して嫌い合って別れたわけじゃない」
 「・・・・・・・・・」
 「時を経て二人が再会した時、お互いフリーだったらまた付き合おうって約束もした。 それくらい、愛し合ってたの」
 「・・・・・・・・・」
 「留学先のパリではそれなりに恋愛もしたし、愛し合った人もいた。 だけどやっぱりMew以上に愛せる人はいなかった・・・。 Mewと再会して、改めてそれを強く感じたわ」
僕は、だんだん胸が苦しくなるのを感じていた。 Naplanさんの話を聞けば聞くほど、呼吸が浅く速くなっていく。
それでも、彼女は続ける。
 「・・・Mewは、いま恋人がいるって言ってたけど・・・私は信じないわ」
 「え・・・」
 「だって、私を忘れるなんてありえない。 今だって私のことを一番愛してるはずなの」
 「・・・・・・・・・」
それは僕に対してというより、ほぼ独り言のような呟きだった。 まるで自分自身に言い聞かせてでもいるような。
もしかして、自分でそう暗示をかけなきゃいけないほど、実は不安なんだろうか・・・?
ふとそんな考えがよぎったが、不意に彼女が強く僕を見た。
 「ね、教えて。 Mewに恋人なんていないんでしょ? ビジネスパートナーのあなたなら、本当のこと知ってるでしょ?」
 「あ・・・その・・・」
僕の目を見て強くそう訴えてくる彼女の気迫に押されそうになる。 どう答えていいかわからず、狼狽えながら口ごもる僕へさらに迫る。
 「私、今もMewを愛してるの。 どうしても彼とヨリを戻したい。 きっとMewもそう思ってるはずなの。 だから、協力してほしいのよ」
 「・・・なんで、僕に・・・」
僕の頭はもう極限に達しそうだった。 理不尽なことを一方的に聞かされ、自分の求める答えを無理やり引き出そうとする。
でもNaplanさんにしてみれば、僕の気持ちなど知る由もないんだから、彼女が悪いわけでもない。
じゃあ悪いのは僕か? はっきりしない僕が?
 「う・・・僕は・・・」
両手で頭を抱えながら、呻くようにそう吐き出す。 言ってしまえばいいのか。 言ってしまってもいいのか。
噛みしめた歯がギリリと音を立て、もう限界だと感じたその時。
 「――おい、そこで何の話をしてる?」
背後から、聞き慣れた涼やかな声が降りかかった。
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Measure the our distance ~あなたと僕の・・・~ P.28(Nana side)

2022-04-17 23:23:51 | みゅがる創作話 By nana
―—うわ、すっごいな!
Dentsite社の社屋前に立った時、僕は率直にそう感じた。 本社はもとより、その隣に累々と連なる工場群も広大な広さを誇ってる。
―—ほんとに、こんな大きな企業のCMに出ていいんだろうか・・・。
業界最大手っていうのも知ってたし、タイでトップクラスの経営規模っていうのも聞いたことはあった。
でもこうして目の当たりにすると、改めてそのスケールの大きさを思い知る。
 「・・・Gulf? どうした?」
目の前に聳えるビルを見上げたまま棒立ちになってる僕に、少し心配そうな顔でMewさんが声をかけてきた。
 「――あ、ううん・・・。 ちょっと、面食らっちゃって」
 「面食らった? なぜ」
 「ん・・・。 こんなおっきな会社のCMに出るなんて、なんか信じられないっていうか」
そう言って笑ってみせようとしたけど、うまく笑顔にならなかった。 そんな僕の肩を、優しく微笑んだMewさんがぽんぽんと叩く。
 「大丈夫。 Gulfならうまくやれるさ。 それに、俺も一緒だから」
さらに笑みを深めたMewさんが、僕の目を見つめながらそう言う。
はじめはMewさんと一緒のCM出演なんてなんだか照れ臭くて戸惑ったけど、今となってはMewさんがいてくれてほんとに良かったと思う。
僕一人だったら、プレッシャーに負けて思わず回れ右してそのまま帰ってしまったかも知れない。
 「――さ、行こう」
そう言ってMewさんが僕の背中を押し、僕たちはゆっくりと社屋の玄関をくぐった。


ロビーでフロアコンシェルジュに要件を告げると、7階の広報部へ行くよう案内された。
エレベーターを降り、廊下にずらりと並ぶドアを見ながら、広報部を探す。 途中、すれ違う人がやたらと僕たちを見ていくことに気付いた。
 「・・・ねぇMewさん、なんだかジロジロ見られてる気がしない?」
周囲に聞こえないよう、ヒソヒソと小声でそう尋ねると、なぜかMewさんがクスッと笑った。
 「Gulfはほんとに自覚がないんだね。 みんなおまえを見てるんだよ」
 「え、僕?」
 「そうだよ。 抜群のスタイル、長い手足、そして綺麗な顔。 そりゃみんな見るのは当たり前さ」
そう言われて、思わず窓ガラスに映る自分を見た。 自分がそんなに人の目を引く存在だなんて、今まで思いもしなかった。
モデルの仕事をしてる時は、選び抜かれたスーツと煌びやかな照明のおかげでそれなりにカッコよく見えるかもだけど、普段の僕は何の変哲もない人間だと思ってたから。
改めて周囲を見てみると、こちらをチラチラと見る人の表情が、心なしかうっとりとしたように見える。
でもそれは、僕だけじゃなく僕たち二人に向けられてる気がする。 いや、むしろMewさんの方が彼らを惹きつけてるように思う。
そりゃそうだよね、Mewさんはとても魅力的で紳士的で、素敵な大人の男性そのものだもの。
でも、そんな彼をいま僕は独占してるんだ。 優しい笑顔も甘い声も、いまは僕だけのものなんだ。
 「・・・ふふっ♡」
あ、やばい! 思わず嬉しくて声が漏れちゃった。 慌てて隣のMewさんを見たけど、どうやら気付いてなさそうだ。 良かった。
 「――あ、あった、ここだ」
広報部と書かれたドアを見つけたMewさんがそう呟いた。 ドアの前に立ってノックしようと手を上げた時、不意に背後から声がした。
 「――Mew? Mewじゃない?」
自分の名を呼ばれたMewさんが、反射的に声の主へ振り返る。 一瞬怪訝そうな目をしたけど、すぐにぱぁっと晴れやかな表情になった。
 「え、もしかしてP’Naplan? ほんとに?」
 「そうよ、うわぁ久しぶり! 元気にしてた?」
 「ほんと、何年ぶりだろうね。 うん、元気だったよ。 あなたは?」
 「あたしも元気よ。 相変わらずあなたは素敵ね。 変わってないわ」
 「あなたこそ。 いや、ますます綺麗になったよ」
 「ふっ! 口のうまさも相変わらずね」
P’Naplanと呼ばれたその女性は、見たところ30代半ば、すらりと背の高いスレンダーな美人だ。 この人もモデルなんだろうか。
だけどずいぶんMewさんと親し気だなぁ。 昔の友人かな? あ、でもP’って呼んでるから、先輩後輩の関係かな?
 「――こちら、どなた?」
しばし再会を喜び合ってたNaplanさんが、ふと僕を見て尋ねた。
 「あ、P’Naplanに紹介しておくよ。 こちらはGulf。 うちの会社でスーツモデルをしてるんだ」
 「うちの会社? もしかしてMewは会社を経営してるの?」
 「うん、アパレル関係のね。 でも経営してるって言っても、父から譲り受けただけだから。 それに小さな会社だし」
 「へぇ~、すごいじゃない。 そういえば昔からファッションやデザインに興味あったもんね。 夢を実現させたのね」
 「そんな大げさなものじゃないよ」
そう謙遜して笑うMewさんの目に一瞬、僕の見たことのない色が浮かんだ気がした。 それを見た瞬間、僕の胸にズキンと何かが走った。
 「・・・Gulf? どこか痛いの?」
無意識に胸元で拳を握りしめ、眉間に皺を寄せていた僕に、Mewさんが声をかけてきた。 僕は慌てて手をほどき、首を左右に振ってみせた。
 「ううん、大丈夫。 ・・・です」
いつものようにタメ口で答えようとしたけど、Naplanさんの前だと気付いて、とっさに敬語らしく語尾を付け足す。 
さすがに、他人のいるところでCEOにタメ口はまずいよね・・・。
まだ心配そうに僕を見つめるMewさんに、Naplanさんが一歩近寄って話しかけた。
 「――今日は、うちの会社にどんな用で来たの?」
 「広報部に用があって来たんだ。 ここだよね?」
 「そうよ。 誰かと約束してるの?」
 「広報部長のMookさんと会うことになってる」
そう答えたMewさんが、チラリと腕時計を見た。
 「あ、もうすぐ約束の時間だ。 P’Naplan、悪いけどもう行くよ」
そう告げて僕の背へ手をやったMewさんの腕を、Naplanさんが不意に掴んだ。
 「ね、今夜空いてる? 久しぶりに会ったし、飲みながらゆっくり話したいわ」
 「今夜・・・」
少し口ごもったMewさんが、チラ、と僕を見た。 その目がなぜか、再び僕の胸に鈍い痛みをもたらした。
 「――僕なら心配ないです。 一人で帰れますから」
とっさに口を突いて出たのは、本心とは程遠いものだった。 
ほんとなら、今夜は二人だけでゆっくり過ごすつもりでいた。 約束はしてないけど、夜は仕事は入ってないってMewさん言ってたし、一緒に過ごそうって誘うつもりだったんだ。
なのに・・・。
 「ほら、Gulfくんもこう言ってくれてるし。 ね、いいでしょ」
 「でも・・・」
まだ僕のことを気にするMewさんに、無理やり笑顔を張り付けて再度告げる。
 「大丈夫ですから、どうぞ行ってください」
それでもなかなかうんと言わないMewさんに、Naplanさんがしっかり念を押す。
 「今夜6時に、ここの玄関前で待ち合わせしましょ。 それじゃあたしは仕事に戻るわ。 また夜に!」 
結局Mewさんに反論する隙を与えないまま、Naplanさんはすたすたと立ち去って行った。
 「Gulf・・・」
 「それより、もう時間なんでしょ。 行きましょう」
申し訳ないような、戸惑うような様子のMewさんの表情が少し痛いけど、それでも僕は無理やり気持ちを仕事モードへと切り替えて、ドアをノックした。
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