goo blog サービス終了のお知らせ 

腐女子&妄想部屋へようこそ♪byななりん

映画、アニメ、小説などなど・・・
腐女子の萌え素材を元に、勝手に妄想しちゃったりするお部屋です♪♪

SOTUS・Season3(§127)

2021-03-07 00:34:08 | SOTUS The other side
<おはようございます。 今日は久しぶりに出かけませんか? ちょうど見たい映画があるので一緒にどうですか?>
起きてから30分ほどアーティットへの連絡をどうするか悩んだ挙句、ようやくコングはメッセージを送信した。
しばらくそのまま画面を見つめていたが、一向に既読にならないのを確認すると、小さくため息を吐いて携帯をベッド上へ置いた。 時刻は8時すぎ、きっとまだ眠っているのだろう。
我ながら、姑息な考えだと思った。 外出を提案したのは、少なくとも彼の部屋にいるよりもじっくりと話す時間が減るから。
そんなことをしたところで、単なる時間稼ぎにしかならないのはわかっている。 だがそれでも、一刻でも長くこの仮初めの平穏を守りたかった。
一旦起こした体を再びベッドに横たえ、苦く目を閉じる。 
アーティットに会いたい気持ちと、会うのが辛い気持ちがせめぎ合い、自分でもどうしていいかわからなくなる。
そうして悶々とした時間を過ごしていると、不意にライン着信音が鳴り響いた。 閉ざされたカーテンで薄暗い中眩い光を放つ携帯を手に取ったコングは、恐る恐るメッセージを開いた。
『珍しいな。 いいよ、任せる。 何時にする?』
メッセージに隠した己の邪な思惑を見透かされるのでは、と密かに危惧していたコングだったが、意外とあっさりしたアーティットの返事を見て少々気が抜けた。
無意識のうちに手からすり落ちた携帯を握り直し、再び短く返信する。
<じゃあ11時に迎えに行きます>
今度は送信してすぐに既読になった。 それを見届けたコングは、大きく息を吐いて目を閉じた。
すると、静かな部屋のドアをノックする音が耳に飛び込んできた。
一瞬グレーグライかと思って身構えたが、ドアの外から聞こえてきたのは母プイメークの声だった。
 「コング、開けてちょうだい」
おそらくグレーグライから中国行きがなくなったと聞かされたのだろう。 心配そうに佇む母の姿が目に浮かぶようで、コングは口の中に広がる苦さを噛みしめながら、ゆっくりとドアへと向かった。
 「お父さんから聞いたわ、中国行きがなくなったって。 本当なの?」
ベッドに並んで腰かけたプイメークが、戸惑いながら尋ねる。 予想どおりの展開に、密かに苦笑いを噛み殺したコングが頷いてみせた。
 「どうしてなの? お父さんは理由を聞いても言わないって怒ってたけど・・・」
 「・・・・・・・・・」
不安と心配が入り混じった表情で答えを待つプイメークに対し、コングが困惑した表情を見せる。
ふと、母にだけは本当の理由を話そうかという誘惑にかられた。 父とは違い、いつもコングの心に寄り添ってくれる母なら、本当のことを話しても良いような気がした。
何より、こうして一人で抱え込むにはもう限界がきていることも大きかった。
 「・・・父さんには言わないって、約束してくれますか」
 「え? あなたがそう言うなら、言わないわ。 だから正直にお母さんに話してちょうだい」
一瞬戸惑いの表情を浮かべたが、すぐに真剣な眼差しに戻ったプイメークが、コングを促す。
やがてコングがおもむろに口を開いた。
 「・・・実は、俺の恋人が同性っていう話が社内に広まって、それが上層部の耳にも入ってしまって」
 「え、それってアーティットさんのことよね?」
 「ええ。 うちの会社は同性愛に対して強い偏見があるみたいで。 同性愛者が中国へ行って、中国側の関係者にそれがバレたら、最悪の場合
  プロジェクト自体にも悪影響が出る恐れもあるっていう理由で、中国行きのメンバーから外されました」
 「そんな・・・」
口に手を当てて驚きと悲しみの混じった目でコングを見つめ、言葉を失うプイメークにコングがさらに続ける。
 「思えば、これまでが恵まれすぎてたんです。 少なくともバンコクにいた頃は、同性愛に対してみんな寛容な人ばかりだったから」
そこまで言ったコングが、何か思い出したのかふと苦笑いを零した。
 「・・・あ、一番身近にいる父さんだけは、そうじゃなかったんだった」
自嘲にも見える笑いを張り付け、独り言のように呟くコングに、プイメークが話しかける。
 「・・・でも、今はお父さんもあなたたちのこと認めてると思うわよ。 それはあなたもわかってるでしょ?」
 「そうですね。 今回の中国行きの任務を無事に終えることができたら、俺とアーティット先輩のことを正式に認めてくれるようなことを言って
  ましたから」
 「お父さんがそんなことを・・・」
意外そうに呟くプイメークに、なぜかふ、と鼻で嗤ったコングが吐き捨てた。
 「だけど、もうそのチャンスもなくなった。 それに何より、このことをアーティット先輩にどう言えばいいのかわからない。 本当のことを言え
  ば、きっと先輩は自分を責めてひどく傷ついてしまう!」
アーティットに対する思いが一気に溢れたのか、急に頭を両手で抱えてそう叫ぶコングを、プイメークが痛ましそうな目で見た。
 「・・・コング、落ち着いて。 今はとても辛いと思うけれど、あなたたちが信頼しあっていれば、きっとうまく乗り越えていけるはずよ」
 「・・・・・・・・・」
ぐしゃりと髪の毛を掴んでいた手をほどき、ゆっくりとコングがプイメークを見る。
 「アーティットさんに本当のことを話すかどうかは、あなたが決めること。 でもひとつ言えることは、誤魔化してその場を凌いだとしても、いつか
  きっと事実は明るみになるものよ」
 「・・・・・・・・・」
 「アーティットさんはもちろん、お父さんにもね。 だからよく考えて、どうするか決めなさい。 私が言えるのはそれだけ」
じっと自分の話に耳を傾けているコングの髪に手を伸ばし、優しく撫でる。 そして最後にひとこと、プイメークが言葉をかけた。
 「・・・愛しい私の息子。 私はいつでも、あなたの幸運を祈ってるわ」
ゆっくりとコングの頭を引き寄せ、そっと額にキスすると、優しく微笑んだプイメークが立ち上がった。
 「もう朝食の支度できてるわよ。 お父さんは今朝早く出かけていないから、食べに来なさい」
そう言い残して、プイメークが部屋を出て行った。
一人残されたコングは、先ほどの母の言葉を思い返してみた。 真実は遅かれ早かれ、いつか必ず明るみになるもの。
その通りだと思う。 頭ではわかっているのだが、いざアーティットを前にしたら、真実を告げる自信がない。
彼の傷ついてひどく落胆する様子を、目の当たりにする勇気がないのだ。 
 「・・・・・・・・・」
堂々巡りの思考にいい加減嫌気がさしたコングは、大きく深呼吸してやにわに立ち上がった。 
食欲はほとんどないが、それでもせっかく母が用意してくれた朝食をとるために部屋を出た。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

SOTUS・Season3(§126)

2021-03-07 00:33:34 | SOTUS The other side
結局理由が見つからないまま、コングは年末休暇でバンコクへと帰省してきた。
自宅のガレージに停めた車の中で、シートに体をもたれ目を閉じたコングが、ふーっと大きく息を吐く。
とうとうこの日がきてしまった。 理由も言わずに中国行きがなくなったと言っても、きっと父は納得しないだろう。
それを承知で、父の激しい追及にも心折れることなく無言を貫き通せる度胸が、果たして自分にあるだろうか。
 「・・・・・・・・・」
父を落胆させてしまうこと。 アーティットとの関係を認めてもらえるチャンスが、水泡に帰したこと。
様々な思いが心に襲来し、思わず胸元で拳を握りしめる。
そんな時、不意にポケットの携帯が静かな車内に鳴り響いた。 ラインの着信を知らせるランプが光っている。
『今日帰省してくるんだったよな? もうバンコクに着いたか?』
アーティットからのいつもの問いかけが、コングの胸に新たな錘を落とした。
最大の問題であるアーティットへの言い訳も、やはりまだ見つかっていない。 何も解決しないまま、時間だけが刻一刻と過ぎていく。
アーティットへの返信が、なんだかとてつもなく難しいミッションのように思えて、コングの手が何度も画面の上で止まる。
それでもどうにか、短く返事を返す。
<たった今着きました。 また明日連絡します>
送信ボタンを押して、ひとつため息を吐く。 
明日彼に会えば、必ず中国行きの話が出るだろう。  いっそのこと、仮病でも使って会えないと言ってしまおうか。
だがそんな俄仕立ての考えは、すぐに消し去った。 明日会わなかったところで、いずれ結果は同じこと。
遅かれ早かれ、中国行きがなくなったことは伝えなければならないのだ。
 「・・・・・・・・・」
三たび、ため息を吐く。 そしてなぜか、自嘲の笑みが漏れた。
自分はこんなに優柔不断で臆病な人間だっただろうか。 
少なくとも大学時代は、こんな風ではなかった。 思ったことは何でも言えたし、たとえそれで意見が衝突したとしても、正しいと思うことは臆せず反論したものだ。
だが今はどうだ。 中国行きがなくなったというたった一言の事実を言えずに、こうしていつまでもうだうだ悩んでいる。
それはすべてアーティットのためでもあり、アーティットのせいでもあった。
彼と出会ってから、こうして悩んだり迷ったりすることが多くなった。 だがそれは裏を返せば、彼を失いたくない一心に他ならない。
仕事よりも何よりも、アーティットを失うことこそが、コングにとって一番恐ろしいことだった。
心から誰かを愛するということは、まるで諸刃の刃のようだ。 時には自分を強くもするし、こうして弱くもする。
こんなに深く誰かを愛するのは初めてで、それだけに戸惑うことは多かった。
 「・・・・・・・・・」
やはり、真実を告げるわけにはいかない。 もう覚悟を決めて、父と同じように無言を貫くしかない。
ただ中国行きがなくなったと、結果だけを伝える。 その理由についてどんなに追及されようとも、決して口を開くまい。
無意識に、拳をぎゅっと握る。 強く目を閉じて心の中でそう誓ったコングは、すべてを振りきるように再び目を開けるとドアに手をかけた。

 「・・・ただいま帰りました」
そう告げながらリビングのドアを開けると、ソファで寛いでいた父のグレーグライが笑顔を向けた。
 「おお、おかえり。 久しぶりだな」
 「そうですね、なかなか帰ってこれなくて」
 「だが今回はゆっくりできるだろう。 年末まではこちらに居られるんだろう? 確か中国行きは年明け早々だと言ってたな」
何気ない父の言葉に、コングがピクリと反応する。 ゴクリ、と唾をのんだコングが、ゆっくりと持っていた荷物を床に置き、グレーグライの向かいに腰を下ろした。
 「・・・父さん、話があります」
 「ん? 改まってどうした」
父の問いかけに、うつむき加減だった顔を上げ、コングが正面を向く。 やがておもむろに口を開いた。
 「・・・中国行きは、なくなりました」
静かな口調で、だがしっかりと目を見てそう言うコングを、グレーグライが一瞬呆けたように見た。
 「なに? どういうことだ」
 「言葉どおりです。 中国へは、別の社員が行くことになりました」
 「おまえ・・・」
 「ですから、お正月もこっちに居られますよ」
何でもないように飄々と話すコングを、信じられないものを見るような目でグレーグライが凝視する。
 「こんなことなら、家族旅行行けばよかったですね」
どうでも良いようなことを話し続けるコングを目前にして、次第にグレーグライの中で怒りが募り始めた。
 「おまえ、さっきから何を言ってる? 中国行きがなくなったなんて、これはとんでもないことなんだぞ。 いったい何が原因なんだ」
 「・・・・・・・・・」
さっきまでの薄っぺらい饒舌さが、一瞬にしてなくなる。 黙り込んでしまったコングに、苛立ちも露わにグレーグライが恫喝する。
 「黙ってちゃわからないだろう!? 何が原因か言いなさい! おまえが何かしたのか!?」
 「・・・・・・・・・」
 「コングポップ!」
それでもまだ口を開こうとしないコングに、ついにグレーグライの怒りが爆発した。 テーブルをバン!と叩き、コングに向かって身を乗り出す。
すると、下げていた視線を上げたコングが、ゆっくりと口を開いた。
 「・・・俺が悪いんです」
 「だから何をしたんだ! よっぽどのことがなければこんなことにはならないはずだ!」
 「とにかく、俺の責任です。 この不始末は、今後の仕事で挽回します」
そう言って立ち上がろうとするコングに、自身も立ち上がったグレーグライが叫ぶ。
 「どこへ行く!? まだ話は終わってないぞ。 そんな理由で納得できるか!」
厳しいグレーグライの怒号を浴びながら、それでもコングはそれを振り切って強引にリビングを出た。 ドアを閉めた後も、グレーグライの怒声はまだ聞こえている。
だがそれを振り切って、一気にコングは階段を駆け上がり、自分の部屋へと駆け込んだ。
後ろ手にドアを閉めて鍵をかけると、そのままベッドへとうつ伏せに倒れ込む。
とうとう、言ってしまった。 もう後戻りはできない。
今はこうして逃げたが、これからグレーグライの厳しい追及が始まるだろう。 だがそれでも、ひたすら耐えるしかない。
帰省してくる息子のために用意してくれたであろう、糊のきいた真新しいシーツをぎゅっと握りしめたコングは、祈るような気持ちできつく目を閉じた。 
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

SOTUS・Season3(§125)

2021-03-07 00:32:54 | SOTUS The other side
翌日の土曜日。
13時を少し回った頃から、オーシャンエレクトロニック社の購買部にいつものメンバーが顔を出し始めた。
普段なら9時頃から休日勤務を始めるのだが、昨日慰労会があったため、今日は午後からの勤務としたのだった。
14時になる頃には、アーティット、トード、サットの3人全員が揃った。
 「う~、頭いてぇ・・・」
出勤してきたばかりだというのに、いきなりデスクに突っ伏したトードが情けない呻き声を上げる。
 「明らかに飲みすぎだな。 自業自得だ」
向かいの席からアーティットが冷たく言い放つ。 昨日のトードの酒癖には、さすがのアーティットも少なからず手を焼かされた。 恨み言めいた口調になるのも無理はない。
 「出勤できたくらいなんだから、大したことないだろ。 ほら、うだうだ泣き言言ってないでさっさと仕事に取りかかれよ」
 「ちぇ、相変わらず冷たいなぁ・・・」
ぶつくさ言いながらものそりと顔を上げ、何気なくアーティットを見たトードが、何かに気付いて声を上げた。
 「おい、その手首どうしたんだ?」
そう言われて反射的に自分の手首を見たアーティットが、しまった、という顔をした。 とっさにサットに目配せをして、余計なことは言うなと念を送る。
その瞬時のやり取りを見たトードが、何か怖いものでも見たような顔になる。
 「・・・おまえら、昨日あの後どこで何してた・・・?」
慰労会終了後先にタクシーで帰ったトードは、他のメンバーがその後どうなったか知らない。
アーティットの白い手首にくっきりと残る赤い痕は、まるで誰かに強く握られたような、あるいは何かで縛られたような痕跡のようにも見える。 
良からぬ想像が、トードの脳裏に浮かんでは消えた。 知らず知らず、顔が引きつる。
 「まさか・・・サット、おまえ・・・アーティットを」
のろのろと上げた手でサットを指さし、その先を言うのが憚られるように言葉を途切れさせる。 たまらず、サットが吹き出した。
 「先輩、なに考えてるんですか! まだ酔っ払ってるんですか?」
けらけらと笑いながら冷やかすサットに、焦ったトードがあたふたと弁明する。
 「だっておまえ、どうやったらあんな痕つくんだよ。 じゃあ本当の理由は何なんだよ?」
そう突っ込まれ、今度はアーティットが焦った。
 「そ、それは、その・・・」
無様に狼狽える己を自覚するが、嘘をつくのも誤魔化すのも苦手ときては、どうしようもない。 こんな状態で何もなかったと言ったところで、信じるのは子供くらいだろう。
すると、助け船のごとくサットが口を開いた。
 「アーティット先輩、トード先輩には話しておいた方がいいんじゃないですか 」
 「え・・・」
 「これからも彼女と一緒に仕事をしていくメンバーなんだし、下手に秘密にするよりは」
 「・・・・・・・・・」
サットの提案は、理に適うものだった。 今後もリーザと顔を合わす機会は多々ある。 何も知らないトードが彼女の地雷を踏んでしまう可能性があるかもしれない。
それよりは、あらかじめ顛末を話しておいた方が、禁句を口にしないよう自衛できるというものだ。
 「おい、秘密ってなんだよ? おまえら二人が知ってて、俺だけ知らないことがあるなんて嫌だぞ!」
ずい、と身を乗り出して不満を口にするトードを見たアーティットが、大きく息を吐いて頷いた。
 「・・・わかったよ。 実は昨日、慰労会の帰りにリーザさんが暴漢に襲われたんだ」
 「え! マジか!?」
身を乗り出したまま、驚きのあまりトードの動きが止まる。 目を見開いて自分を凝視する彼に、アーティットが続ける。
 「俺とサットで何とか未然に防いだけどな。 でもリーザさんは足を痛めて。 それにやっぱり少なからずショックも受けてた」
 「・・・・・・・・・」
 「しかも相手は・・・同じ会社の社員で。 リーザさんもよく知ってる男だったんだ」
 「・・・そんな・・・」
 「どうやらそいつはリーザさんに恨みを持ってたらしくて、それで腹いせに襲ったようだ。 俺はそいつを取り押さえて、そのまま警察に通報するつもりだったんだけど・・・」
 「え、通報しなかったのか?」
 「・・・リーザさんが拒否したんだ。 サイアムポリマー社の社員がこんな問題を起こしたことがバレたら、色んなところに影響が出るからって」
 「・・・・・・・・・」
トードの表情が、険しく変化した。 
普通なら、自分を襲った相手を即座に警察に突き出したいと思うだろう。 だが彼女は、そんな私的な欲求よりも会社の体面を優先した。
そんな彼女の考えが、トードには理解しがたかった。
 「・・・リーザさんは、本当にそれでいいのかな。 だって女性を襲うなんて、完全に犯罪じゃん。 泣き寝入りなんて、彼女らしくない気がする」
 「泣き寝入り・・・っていうのとは、また違う気がする。 でもとにかく、彼女が無事でよかったよ。 手首のこの痕は、犯人と揉み合った時にできたものだ」
そう言って、握りしめた拳を目の前にかざして見せる。 それを見つめるトードが、複雑な表情をした。
 「でもおまえ、おまえだって一歩間違えりゃ危なかったんだろ。 そもそも、なんでおまえらがリーザさんのそんな危機を救えたんだ?」 
 「若い女性が夜に一人で歩いて帰るなんて、危ないだろ。 本人は送ってくのを拒否したけど、だからってそのままほっとくわけにもいかないから、彼女に気付かれないようについてったんだよ。 そしたら偶然そんな場面に出くわしちまったってわけさ」
アーティットの説明を聞いて、トードの表情がますます険しさを増した。
自分が泥酔して何も知らずにタクシーでさっさと帰宅している間に、アーティットとサットがそんなことをしていたとは。
思わず、己のしでかしたことが恥ずかしくなった。
考えてみれば、昨日のメンバーの中で女性はリーザ一人だけだった。 そんな彼女を送っていくのは男として当然の義務だと、今なら思える。
だが昨日の自分は酒にのまれて、そんな当たり前のことすら全く頭になかった。
 「・・・ごめん。 おまえたちがそんなことしてたのに、俺は酔っ払ってさっさと帰っちまって・・・」
 「いや、本当ならサイアムポリマー社の人間が送ってくのが筋だと思いますよ。 誰も送らないなんて、そっちの方が問題だと俺は思いますけど」
それまで黙って聞いていたサットが、思いを吐き出すように零した。
 「まあ、彼らはリーザさんの性格をよく知ってるから、まともに送るって言っても拒否されるのわかってるからじゃないか?」
苦笑いしながらマックスたちのことをフォローするアーティットを、ため息を吐きながらサットが見た。
 「アーティット先輩、あなたはほんとにお人好しですね。 だったら俺たちみたいに気付かれないよう、追いかければいいだけじゃないですか」
苦々しそうにそう言い放つサットは、なぜかとても不服そうだ。 不思議に思ったアーティットが尋ねる。
 「おまえ、なんで怒ってるんだ? 何が気に入らないんだよ」
 「先輩が危険な目に遭ったからですよ。 下手したら先輩まで怪我する危険性もあったんですよ? なんでそんな呑気でいられるんです」
 「呑気・・・」
 「もし本当に先輩が怪我してたら、俺はトゥルク部長に直訴しますよ!」
感情的に息巻くサットを、アーティットが呆気に取られて見つめる。 こんなに激しいサットは、これまで見たことがない。
サイアムポリマー社の人間がすべきことを自分たちがしたことについては、確かに腑に落ちない部分もあるかもしれない。 だがそれにしても、サットの態度は少々度が過ぎるようにも思う。
すると、横からトードがぼそりと口を開いた。
 「・・・サット、おまえやっぱり・・・」
 「え? なんですか?」
 「やっぱり、アーティットが好きなんだろ」
 「なに!?」
真っ先に声を上げたのは、アーティットだった。 妙なことを言い出すトードを、目を丸くして凝視する。
 「前から思ってたんだよ。 おまえ絶対アーティットのこと好きだって。 じゃなきゃあんなに怒らないだろ」
興味深いような、しかし怖いような、何とも言えない表情でそう話すトードを、真剣な目でサットが見つめる。
やがて、おもむろにサットが呟いた。
 「・・・ええ、そうです。 俺はアーティット先輩が好きですよ。 でもそれは、いわゆる恋愛感情とは違うと思います。 一人の人間として尊敬してるんです。 それに」
俺には彼女がいますから、と付け足したサットが、少し照れ臭そうに頭を掻いた。
 「なんだ、おまえ彼女いたのかよ。 せっかく面白くなりそうだと思ったのに」
 「おまえな!」
すかさずアーティットがじろりと睨む。 まあまあ、と宥めるトードの表情は、安堵したような、落胆したような複雑なものだった。
 「とにかくトード、このことは誰にも言うなよ。 もちろん、リーザさん自身にもだ。 これからは口を滑らせないよう、せいぜい気をつけろよ」
 「大丈夫だよ、俺怖くて彼女と話なんかできないもん」 
 「ほんとかよ。 今いち心配だな」
 「大丈夫大丈夫、俺を信用しろって」
ドン、と胸を叩いて笑うトードを、まだどこか胡乱そうにアーティットが見つめる。 だが小さくため息を吐いて諦めたように首を左右に振ると、ようやくアーティットは仕事に取りかかった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

SOTUS・Season3(§124)

2021-03-07 00:32:18 | SOTUS The other side
リーザの部屋は、コンドミニアムの2階にあった。
ドアを解錠して中へ入り、アーティットに介添えされながら椅子にゆっくりと腰を下ろす。
「ちょっと足を見せてください」
そう断りを入れてから、アーティットが痛めた足首を観察する。見たところ腫れている様子はなく、変色もない。
「・・・軽い捻挫かも知れませんね。今夜一晩冷やして様子を見てください。痛みが引かないようなら、病院で診てもらった方がいいかも知れません」
大学時代SOTUSで経験した応急措置のスキルが、こんなところで役立つとは思わなかった。
その厳しさゆえに賛否両論あったが、やはりSOTUSという制度は、決して無益なものではなかったと改めて思う。
ふとアーティットは、見つめていたリーザの足が微かに震えていることに気づいた。よく見ると顔も青ざめて、両腕で自分の体を抱えながら震えを堪えているように見える。
「・・・・・・・・・」
アーティットの目が、痛みを感じたように細められた。
いきなり男に押し倒され、公衆の面前で襲われそうになったのだ。いくら気が強くて男勝りなリーザであっても、本能的な恐怖には勝てないに違いない。
すると、それまで黙っていたサットが不意に口を開いた。
「・・・リーザさん。少し他人に対する態度を改めた方がいいと思いますよ。あなたは女性なんだから、男に力ずくで襲いかかられたらひとたまりもありません」
何のてらいもなくストレートに意見を言うサットを、アーティットがギョッとした目で見た。当のリーザは、目を見開いてサットを凝視している。
即座に、アーティットが牽制した。
「おいサット、それは言い過ぎだ」
「でも、本当のことじゃないですか。この先同じような目に遭わないためにも、必要なことだと思います」
「そうかも知れないけど、おまえが言うべきことじゃない」
「どういう意味ですか?」
なかなか引き下がろうとしないサットに苛立ちを覚えたアーティットは、小さく舌打ちをすると、まだ何か言いたそうな彼を強引に後ろへと下がらせた。
「すいませんリーザさん、とにかく大事に至らなくて良かったです。今日はゆっくり休んでください」
そう言いながらリーザに向かって一礼すると、ほら行くぞ、とサットを急かして玄関へと向かった。
「あのっ・・・」
背後からかけられた声に、アーティットが振り返る。戸惑うような、そして不安げな表情のリーザが、何か言いたそうに口を薄く開いている。
いつもの勝ち気で高慢そうな彼女とは全く違うその様子が、アーティットの目に鮮やかに焼き付いた。
とっさに呼び止めたものの、次に続く言葉が出てこず、結局リーザは首を左右に振って呟いた。
「・・・いえ、何でもありません」
ぽつりと雫すその言葉とは裏腹に、彼女の目は不安げに揺らいでいる。だがアーティットは敢えて何も言わず、微かに会釈を残してサットとともに部屋を後にした。
エントランスを出て公道まで出ると、満を持したようにサットがアーティットに問いかけた。
「先輩、さっきのはどういう意味ですか」
「え?」
「俺が言うべきことじゃない、っていうのは」
「ああ・・・」
サットとしては極めて真っ当なことを言ったつもりだったのに、アーティットがそれを牽制したのが納得できないようだ。
こういう良くも悪くも真っ直ぐなところは、コングとよく似ている。
初めてコングと出会った頃を思い出し、思わずアーティットがクスッと笑った。
SOTUSの厳しすぎる指導に納得できず、居並ぶ上級生を前に自分の意見をはっきりと述べた。それが原因で集中指導されることになっても、結局最後まで意思を貫き通した。
目の前で曇りのない目をして自分を見つめるサットに、当時のコングの面影が重なって見えた。
「・・・何がおかしいんです?」
怪訝そうに尋ねるサットに、綻んでいた頬を引き締めたアーティットが首を左右に振る。
「いや、何でもない。俺が言ったのは、リーザさんの気持ちを考えろってことだ」
「リーザさんの気持ち?」
「彼女は人一倍プライドが高い人間だ。そんな彼女が、取引先のしかも年下の人間にあんな風に言われたら、どう感じると思う?」
「それは・・・」
「深く傷つくだろうし、逆恨みされる可能性もある。そうなったら、今後の仕事や人間関係にも影響が出るかも知れない」
「・・・・・・・・・」
先ほどまでの不審も顕わだったサットの表情がすっと解れ、神妙な面持ちに変わった。
「おまえの言ったことは正しいよ。俺も同じ気持ちだ。だけど彼女にそれを言ってもいいのは、きっと彼女が尊敬できる人物だけだ」
「・・・・・・・・・」
いつしか考え込むように黙り込んだサットの肩に、アーティットが軽く手を置いた。
「・・・彼女のためにも、このことはもう忘れよう」
肩に置かれた手の温もりを感じなから、サットが小さく頷いた。それを見たアーティットがゆっくり手を離そうとした時、不意にサットがその手を掴んだ。
「先輩、これどうしたんですか?」
掴まれた手首を見ると、赤い痣のようなものが浮かんでいる。よく見ると、腕にも痣がいくつか見て取れた。
「多分あの男と揉み合いになった時にできたんだろう。大したことない・・・」
そう言って笑おうとした時、不意に視界がぐらりと傾いた。急に足元が不安定になり、思わずその場に崩折れそうになる。
「先輩!?」
前のめりに倒れそうになったアーティットの体を、とっさにサットが受け止める。
「大丈夫ですか?」
サットのがっしりとした腕に抱えられたアーティットが、たまらず苦笑いを漏らす。
「悪い・・・。なんか今になって、急に酔いが回ったみたいだ・・・」
緊張が解けたからか、一気に体じゅうの力が抜けてしまったようだ。
「あそこにベンチがありますよ。少し休みましょう」
そう言いながら、サットがアーティットの体を抱えて歩き出す。サットの手を借りてゆっくりとベンチに腰をおろしたアーティットが、口を開いた。
「おまえは先に帰れよ。もう遅いし」
「いえ、俺も一緒にいます。先輩が心配だから」
心配だから、という言葉になぜかドキリとする。焦ったアーティットが、とっさに叫ぶ。
「俺は大丈夫だ!」
「先輩の大丈夫はアテになりませんから」
しれっと宣うサットに、もう無駄な抵抗をするのが馬鹿馬鹿しくなったアーティットが、これ見よがしに大きなため息を吐いた。
クスッと笑ったサットと、唇を尖らせたアーティットを、夜風が優しく吹き抜けていった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

SOTUS・Season3(§123)

2021-03-07 00:31:48 | SOTUS The other side
足早に歩いていくジェーンの後を、アーティットとサットが付かず離れず追いかける。
女性にしてはかなり早いそのスピードは、酔いが回ったアーティットには少々荷が重かった。
普段なら全く問題ないが、足元がやや覚束ない今は、彼女の姿を見失わないよう着いていくのに必死だ。
そんなアーティットの様子を見たサットが、話しかけてきた。
 「先輩、先輩はここで待っててください。 俺が彼女を追いますから」
それは自分を気遣っての言葉であり、その気持ちはアーティットにもわかった。 だがアーティットは首を左右に振った。
 「大丈夫だ。 俺のことは気にせず、おまえは先に行け」
話している間にもどんどん遠ざかっていくリーザを指さし、ほら早く、と急かす。 しばしリーザとアーティットを戸惑いながら交互に見たサットだったが、やがて小さく頷くと再び足早に歩きだした。
それを見届けたアーティットが、舗道の柵にもたれていた体を起こしてその後を追う。
じわじわと引き離されていくサットの後ろ姿を見つめながら、こんなことなら酒を控えるべきだったな、と心の中で苦く呟いたアーティットの視界に、一人の男の姿が映った。
サットと自分の中間あたりにいるその男は、やけに辺りを気にしながら足早に前方へと向かっている。 この暑い中ニット帽を被り、マスク姿のいでたちだけでも充分怪し気だが、その挙動は更に不自然で、思わずアーティットの目が釘づけになる。
サットの背中と男の姿を交互に見ながら、彼らの後をひたすら追いかける。
そうして15分ほど歩いただろうか。 表通りを離れ、アーティットたちは閑静な住宅街へと入ってきた。
依然として、あの怪しい男も視界の中にいる。
相変わらずあたりをキョロキョロと窺いながら、それでも真っすぐにリーザとサットの後を着いて行く。
これはもう、たまたま行き先が同じという単なる偶然ではない。 どう考えても、リーザかサットを尾けているとしか思えない。
不穏な予感を感じつつ、密かにアーティットは歩速を上げた。
細い路地を曲がった突き当りに、真新しいコンドミニアムが聳え立っている。 どうやらここがリーザの家らしい。
エントランスから少し離れた場所の物陰で、サットがリーザを見守っている。 その後方の木陰には、例の男がやはりエントランスへ向かうリーザをじっと見据えている。
それを見たアーティットは、彼の標的がリーザであることを確信した。
 「・・・・・・・・・」
男の十数メートル後ろで、息をのんで男の様子を凝視する。 張りつめた空気があたりに充満している。 無意識に、アーティットがゴクリと唾をのんだ。
やがてリーザがエントランスの自動ドアをくぐろうとした、その時。 やにわに、男が駆け出した。
 「!」
脱兎のごとくリーザへ向かって走る男を、アーティットも瞬時に追いかける。 目の前を駆け抜けて行く二人を、サットが目を見開いて見た。
そして男の手が、リーザの腕を掴んだ。  とっさに振り向いたリーザを、男が地面へ引き倒す。
悲鳴を上げかけたリーザの口を、素早く男の右手が覆った。 仰向けに倒れた彼女に馬乗りになって、男が左手でブラウスの襟元を引き裂いた時、背後からアーティットが男の腕を強く掴んだ。
 「何してる!」
男の左手を力任せに引っ張りながら、アーティットが大声で叫ぶ。 見知らぬ人間に阻止された男は、一瞬驚愕の表情を浮かべたが、すぐに憤怒の形相になった。
 「誰だおまえ! 邪魔するんじゃねぇ!」
言いざま、アーティットに向かって殴りかかろうとした。 が、すんでのところでアーティットの体がぐいっと後方に引かれ、男の拳が宙を切った。
 「先輩、大丈夫ですか!?」
アーティットの体を背後から抱えたサットが、悲痛な声をあげる。 だがアーティットはサットの腕を振りほどき、再び男に掴みかかった。
 「彼女から離れろ!」
激しく男と揉み合うアーティットを見て、呆然と立ちすくんでいたサットも慌てて加勢する。
さすがに二人がかりで攻撃されては、男に勝ち目はなかった。 サットに両手を後ろ手に締め上げられた男は、ようやく観念して大人しくなった。
男の手から解放されたリーザは、驚愕と恐怖に目を見開いたまま、動くこともできずにしゃがみ込んでいる。
そんな彼女のそばへ跪いたアーティットが、静かに話しかけた。
 「・・・大丈夫ですか? 怪我はありませんか」
 「あ・・・」
引き裂かれた襟もとを握りしめ、言葉を失う彼女に、アーティットが羽織っていたシャツを脱いでそっと掛けた。
 「くそっ、離せ!」
サットに羽交い絞めにされている男が、激しくもがいた。 だが上背のあるサットの方が力も強く、振りほどくことはできない。
無様に抵抗する男のところへやってきたアーティットが、おもむろに尋問する。
 「おまえ、自分が何をしたかわかってんのか? このまま警察に通報してやろうか」
 「俺はこの女に恨みがあるんだ! 復讐の邪魔をしやがって!」
 「恨み?」
ふとアーティットがリーザを振り返る。 リーザも、男の台詞に反応している。
すると、不意にサットが男の帽子とマスクを引き剥がした。 思わず顔を背けようとした男の顔を見て、リーザがあ!と声を上げた。
 「あなた、ライアンじゃないの!」
男を指さして叫ぶリーザを、アーティットとサットが驚いて見る。
 「え、知り合いなんですか?」
思わず尋ねたアーティットに、リーザが頷く。
 「うちの会社の人間です。 以前私が在籍してた品質管理課の社員で、私の後任なんです」
 「後任・・・」
 「私の後を引き継いでもらったんだけど、全然仕事ができなくて・・・」
リーザのその言葉を聞いたライアンが、カッとなって叫んだ。
 「それ! おまえのその物言いが気に入らねえんだよ! 人のこと馬鹿にするのもいい加減にしろよ!」
 「何よ、本当のことでしょう! おまけに重大なミスまで犯すし、いつになったら自分の無能さに気が付くのよ!」
にわかに激高する二人を、アーティットが宥める。
 「リーザさん、落ち着いてください。 ここは人の目があるので、ひとまず部屋へ行きましょう。 送りますから」
そう言いながらリーザの腕を取って立ちあがらせようとすると、不意に彼女の表情が歪んだ。
 「痛・・・っ」
とっさに右足首を押さえて、その場に蹲る。 どうやら足首を痛めたようだ。
 「大丈夫ですか、歩けますか? 良ければ俺に掴まってください」
 「でも・・・」
 「ちょっと、失礼します」
ためらうリーザの腕を取って自分の首にかけさせたアーティットが、ちらりとライアンを見た。
 「・・・あの男・・・ライアンでしたっけ。 どうしますか? やっぱり警察に突き出しますか?」
アーティットの言葉に、リーザもライアンを見る。 しばしじっと彼を見据えた後、リーザがぽつりと言った。
 「・・・いえ、もういいです。 うちの会社の人間だし、他の社員の目もあるから・・・」
 「本当にいいんですか? あなた襲われそうになったんですよ」
 「・・・いいんです。 ライアン、このことは忘れてあげるから、あなたも余計なこと言わないでよ。 もし口外したら、あなた自身が会社にいられなくなるわよ」
 「・・・・・・・・・」
苦虫を噛み潰したような顔でリーザの言葉を聞いていたライアンだったが、もう何も言わなかった。 彼をどうすべきか戸惑っているサットに、アーティットが告げる。
 「・・・ということだから、サット、そいつを離してやれ」
アーティットの言葉を受けて、サットがゆっくりと手を離す。 素早く身を翻したライアンがチラリとリーザを見たが、すぐに目を逸らすとあっという間に走り去って行った。
 「・・・おまえも、一緒に来い。 リーザさんを部屋まで送り届けよう」
 「はい」
サットの返事を確認すると、ようやくアーティットはリーザを抱えて歩き出した。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする