仮面ライダーゼロワンの最終回を観た。
特撮ドラマでは、絶対的な悪者が正義の味方に倒されるのが一つのお約束だが、実は悪者とは、何だかよく分からない場所から湧いてくる異形の者ではなく、誰の心にも在るモノだ。
特にこのドラマでは「悪意」と表現していたが、この悪意とは「他者の力を減じようとする攻撃的な意志」であり、それは他者に怯える弱さから生じている。
そういう意味では其雄氏の「本当の強さとは、心の強さ」という台詞は正にその通りである(自分で書いていて耳が痛い)。
アークワンは或人の心の弱さの象徴であり、それを滅に止めてもらった後、今度は或人がゼロワンリアライジングホッパーに変身して滅を止めた。
つまりこのドラマは、登場人物達が「仲間の力を借りつつ、自らの弱い心を乗り越えていく」姿を描いたのだと思う。
最後に放ったリアライズインパクトが痺れるほどカッコよかったのは、そこまでのドラマがちゃんと積み上げられていたからだろう。
ちなみに私個人が特に引っ掛かったのは、最後にイズが復元されてからの顛末である。
このイズはデータのバックアップが無いので、復元されたのは外見のみである。
そこで或人に対して「以前のイズと同じように育てるつもりですか?」という問いがかけられ、或人はそれに頷き、イズのラーニングを始めるところでドラマが終わるのだ。
…いや、「同じように育てるつもりですか?」って、そんな質問出来ないでしょう普通。
でも、ひょっとしたら脚本家は、このエピソードを入れずにはいられなかったのかもしれない。
或人君は「夢に向かって飛べ!」「夢は信じれば必ず叶う」とドラマの中で発言していた。
まあヒーロー物ではよくある台詞である。
だが現実はそうではない。
オーズの映司君は、アンクを復活させるつもりだし、それは叶うかもしれない。
でもイズはそうはいかない。イズはもう戻ってこない。
実はそれを一番よく分かっているのは或人君自身で、その思いは新しいイズのラーニングを進めれば進めるほど強くなりそうな気がする。
でも、それでも何とかなるのもまた現実なのだ。
人は叶わない願い、届かない想いがどれほどあろうと、少なくとも充実した時間を過ごすことが可能である。
脚本家は、視聴者にそういうことをチラッと考えて欲しかったのではなかろうか。
或人君だって、「もうイズは戻ってこない」という気持ちが日増しに募っても、それはそれで何とかなるだろう。
彼の周りには頼りになる仲間が大勢いるからだ。
だからまあ一視聴者として、せめて「或人君はイズとの想い出を悲しさだけで塗りつぶしたりしない」と思える程度の心の強さ、というか優しさを持ちたい(さすがに特撮ヒーローの主役を張るほどの強さは望むべくも無いし)と切に思う。
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