だから、適度な運動をすると心が晴れ晴れとする。
健康のための運動で大事なことは、闇雲に鍛えることではなくて、動きを味わうこと。
心身は深いつながりがあるから、身体の動きを味わうことは、心の動きと向き合い、本来の活動を取り戻すことにつながる。
ただ、寝たきりの人や高齢者は運動をしたくてもできない。
そういう人たちに、運動の代わりに自分の心身と向き合ってもらうなら、鍼灸やマッサージのような触覚を媒介とした非言語的コミュニケーションは有効な手段のひとつだ。
触れるということで、触覚を通じて自分の身体の実在を感じ、味わってもらうことで、情緒面の安定を図る。QOLを内面から充実させるというのはそういうことだ。
マッサージは手で触れることで、鍼や灸は道具を介して触れる。
触れ方のバリエーションが多いほど、コミュニケーションにも幅が広がるから、鍼は刺すだけでなく、提鍼のように特殊な形状をしていたり、触れるだけのこともあるし、灸も高熱とは限らない。
患者との相性や施術者によって得手不得手があるので、マッサージも鍼灸も全てできればいい、というものでもない。
大事なのは、人の手を介して触れることで、生きたリズムを伝えること。
機械では効果が薄い。
ゲームだってこれだけAIが進歩した現在ですら、CPU戦より対人戦のほうがずっと面白い。それと同じことだ。
チェスや将棋では、人間より強いAIが完成しつつあるようだけれど、強いとか勝てるとかということと、面白い勝負ができるということは別だ。