≪9/17≫
6月にDeNAから交換トレードでロッテに加入し、8月13日に出場選手登録されて以降、国吉佑樹投手は故障離脱した唐川侑己投手の穴を埋め、佐々木千隼投手、益田直也投手と強力な「勝利の方程式」を形成している。ここまでの14イニングで許した失点はわずかに2。2勝1セーブ9ホールドの活躍を見せている。9月24日に30歳を迎える右腕が覚醒した理由はどこにあるのだろうか(成績は9月15日試合終了時点)。
国吉は秀岳館高校から2009年育成ドラフト1位で横浜(現DeNA)に入団。プロ2年目の2011年途中に支配下登録され、2012年に先発ローテーションに加わり112回2/3を投げた。救援に配置転換された2014年には49試合で62回1/3を投げ、2セーブ14ホールドと活躍した。
2015年もブルペンの一角として防御率2.43をマークするも、2018年までの3年間は登板機会が大きく減少。それでも2019年に自己最多の53試合に登板して69回1/3を投げ、奪三振率10.51を記録した。昨年も42試合で10ホールド、防御率3.13と投球内容も良化。奪三振率は9.98と高い水準を維持し、ブルペンの貴重なピースとなっていた。
今年もロングリリーフとして登板を重ねたが、防御率は5.16と悪化。6月14日に有吉優樹投手とのトレードでロッテに移籍するも、故障の影響で7月までは登板がなかった。しかし、8月のリーグ再開後は戦列に加わり、セットアッパーとして素晴らしい投球を続けている。
国吉が今季が投じた球種について見ていきたい。各打者の打席の最後に投じた、いわゆる「結果球」の割合を移籍前後に分けて紹介する。
DeNA時代とロッテ移籍後で、球種配分に大きな変化は見受けられない。ただ、ロッテ移籍後はツーシームをほぼ完全に封印し、フォークの割合を少し多くしているように、細かな違いが生じている。移籍前後のどちらも、決め球でもあるフォークの割合は10%前後。ロッテ移籍後は使用頻度が若干増加している。今季は速球とカットボールを軸に投球を組み立てているが、移籍後はその傾向にやや変化が見られた。
次に、移籍前後で記録した数字を基に、各種の指標について見ていきたい。
奪三振率、与四球率ともに移籍後は低下しており、K/BBは1.63と極端に悪い数字に。ロッテで抜群の安定感を発揮しているが、指標ではむしろ、DeNA時代のほうが良いという点はやや意外だ。
移籍前は三振を奪うことを主眼に置いた投球を繰り広げていたと考えられる。一方で、移籍後に記録した内野ゴロでのダブルプレーが14試合を投げた時点で3度もある点は見逃せない。奪三振率の低下も含め、打たせて取る投球へとシフトしつつあるという点が、各種の数字からも読み取れる。
ゴロ率も奪三振率も高いカットボールはまさに「決め球」
続けて、国吉が移籍後に記録した球種別の成績を見ていきたい。
まず目を引くのが、被打率.200と抜群の安定感を誇っているカットボール。この球種は一般的には打たせて取るために用いられることが多く、国吉もカットボールで6つのゴロを打たせており、四球や犠打などを除いた打数全体のうち、ゴロが占める割合が.319に達している。
一方で、国吉のカットボールは140キロ台中盤に達する速度から鋭く曲がるため、三振を奪うための球としても頼ることができ、球種別で最多の7三振を奪っている。打たせて取る際にも、空振りを取る際にも使える、まさに「決め球」と呼ぶに相応しい球種だ。
DeNA時代の2019年に161キロを計測した快速球は、国吉にとって最大の持ち味の一つだ。しかし、移籍後は被打率.238と、3つの球種の中で最も高い数字に。速球で奪った三振が2つにとどまっている一方で、20打数のうちゴロが7つと、カットボールよりも速球のほうがゴロ比率が高くなっている。
フォークは結果球になった回数が6回とさほど多投してはいないが、うち3回が三振と、空振りを奪う球として一定の威力を発揮している。速球とカットボールの割合が多いからこそ、フォークの存在そのものが投球術の幅を広げている面もあるだろう。
ロッテはチーム全体の奪三振率が6.97とリーグで2番目に低く、投手陣全体が打たせて取る投球を展開する傾向に。国吉も移籍後は速球とカットボールでゴロを打たせており、各種の数字を見てもグラウンドボールピッチャーへのモデルチェンジが機能している。
選手の獲得や補強は対象の選手の特性や長所を調査した上で、チームにプラスになるという判断のもとで進められる。国吉と同じく昨季途中にトレード加入し、チームの2位フィニッシュに貢献した澤村拓一投手(レッドソックス)の再来のような活躍を見せる国吉の獲得は、期待通りの成果をもたらしているといえそうだ。
今季の防御率が1.88という素晴らしい投球を続けてきた唐川の離脱は、チームにとっても非常に大きな痛手となる可能性が高かった。その穴を最小限にとどめている国吉の存在は、チームが中断明けに好調を維持している大きな要因の一つとなっている。
今後も安定感のある投球を続け、チームに2005年以来となるリーグ優勝をもたらすことができるか。身長196センチの巨躯に違わぬ存在感を発揮している新戦力が、優勝争いを繰り広げるチームに勢いをもたらしているのは疑いようのないところだ。
(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)
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≪9/18≫
ロッテの「Vロード」は多彩 「ボビーマジック」に「下克上」 今季は「完全V」なるか
パ・リーグの優勝争いはロッテが頭一つ抜け出した。18日はロッテが日本ハムに勝ち、2位のオリックスが西武に敗れれば優勝へのマジックナンバー「25」が点灯する。1リーグ制では1970年以来、実に51年ぶりの点灯。ロッテファンや詳しい野球ファンでなければ「ロッテって、ずっと優勝していないの?」と勘違いされそうなので、70年以降のロッテの多彩な「Vロード」に触れておく。
70年のリーグ優勝から4年後の74年。当時のパ・リーグは前後期制だった。就任2年目の金田正一監督の下、後期優勝。前後期合わせた勝率はリーグ1位だった。プレーオフでは前期優勝の阪急(現オリックス)、日本シリーズでは中日を下し、日本一に輝いた。同年は井口監督が生まれた年。勝率1位でのリーグ制覇となると74年以降はないため、現指揮官は「金田さんが優勝してから、我々はパ・リーグで勝っていない」と、1年目の18年からリーグ制覇することを目指してきた。
74年から31年後の05年。当時のパ・リーグはプレーオフに勝ってリーグ優勝となっていた。ボビー・バレンタイン監督が率いるロッテは、レギュラーシーズンは2位で終了。それでもプレーオフで西武、ソフトバンクを破り、31年ぶりにリーグ優勝した。捕手では里崎と橋本の併用など、バレンタイン監督は競争意識と休養を与えながらシーズンで125通りの日替わりオーダーを組み、「ボビーマジック」と呼ばれた。日本シリーズでは阪神に4連勝と圧倒した。
そのバレンタイン監督が09年限りで退団し、翌10年に生え抜きの西村徳文監督が就任した。シーズンでは3位に入り、07年からセ・パで導入されたクライマックスシリーズ(CS)に進出。史上初めて3位からCSを勝ち上がり、日本シリーズに進出した。そして中日を下して4度目の日本一に輝き、「下克上」というフレーズが話題となった。
今季、ロッテがリーグ優勝すれば、1シーズン制で1位での優勝は70年以来「51年ぶり」となる。1シーズン制にこだわらず、勝率1位での優勝となると、74年以来「47年ぶり」。リーグ優勝だけで見れば05年以来「16年ぶり」となり、日本一となると、10年以来「11年ぶり」となる。「ボビーマジック」も「下克上」も印象深いが、久しぶりに1シーズンを制しての優勝を果たせるか。(記者コラム・飯塚 荒太)
(スポニチ)
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≪9/18≫
16年ぶりVにひた走るロッテ 開幕5連敗&チーム防御率5位も首位に上り詰めたワケ
2021年シーズンも終盤に差し掛かり、試合数も残り約30試合となった。ロッテは9月16日時点で2位オリックスと3.5ゲーム差で首位に立った。ここまでの戦いを振り返ってみると、開幕5連敗を喫してスタートダッシュに失敗したが、その後巻き返して前半を3位で折り返し、今月に入って首位に。ここまでの戦いを振り返る。(成績は9月16日試合終了時点)
ロッテの強さの一番の理由として挙げられるのは、圧倒的な打力だ。ここまで12球団トップの計496得点。リーグ2位のオリックスは441得点で、55点差をつけている。不動のリードオフマン・荻野貴司外野手の後にレオネス・マーティン外野手選手、中村奨吾内野手、ブランドン・レアード内野手が並ぶ打線が機能している。荻野は今季一度も離脱することなく1番に座り、リーグトップの136安打を記録。中村奨もリーグ5位タイの119安打をマークしている。
そして、マーティン、レアード、中村奨、安田尚憲内野手が50打点以上を記録しているだけでなく、得点数も荻野、マーティン、中村奨がリーグトップ5に入っており、上位が出塁して主軸が本塁にかえすという理想の形ができている。
レアードとマーティンを筆頭に長打力も上がり、昨季は120試合で90本塁打だったが、今季は111試合でリーグトップタイの104本塁打を放っている。盗塁数も断トツの93盗塁。代走出場の多い和田康士朗外野手がリーグ2位の22盗塁、岡大海外野手が11盗塁を記録しており、試合終盤の得点力アップに貢献している。
救援陣が充実、唐川が離脱も佐々木千&国吉らが穴を埋める
次に投手陣に目を向ける。チーム防御率3.76はリーグ5位だが、試合を重ねるにつれて救援陣の安定感が増してきた。佐々木千隼投手は今季、44試合に登板して8勝0敗20ホールド1セーブ、防御率1.15。球宴にも初出場するなど、5年目にしてついに“覚醒”した。6月にDeNAからトレード加入した国吉佑樹投手の存在も大きい。勝ちパターンの一角を担い、15試合2勝0敗10ホールド、防御率1.20と活躍している。
佐々木千らの台頭により、勝利の方程式を担っていた唐川侑己投手、フランク・ハーマン投手らの負担が減った。故障離脱した唐川の穴を埋められたことが、勝利を重ねた要因と言えるだろう。守護神・益田直也投手の存在も大きい。開幕戦から2連敗もその後は安定感を取り戻し、リーグ最速の30セーブを記録すると、9月8日には通算150セーブを達成。ここまで56試合1勝4敗33セーブ、防御率1.69をマークする“鉄腕”の存在は大きい。
前半戦は石川歩投手、二木康太投手、美馬学投手ら主力先発陣が本領発揮できずにいたが、岩下大輝投手や小島和哉投手ら若手が踏ん張った。後半戦に入ると、シーズン途中に加入したエンニー・ロメロ投手が4試合で1勝0敗、防御率1.54と安定感ある投球をみせ、シーズン途中に中日からトレード加入した加藤匠馬捕手もチームに大きく貢献。後半戦でスタメンマスクを被った21試合は13勝3敗5分と、新戦力がチームの起爆剤になっている。
失点をカバーする強力打線、リードを守る鉄壁のブルペン陣を武器に、ロッテは16年ぶりの優勝に手が届きそうな位置までこぎつけた。投打ともに好調をキープし、栄光をつかめるか。熱き戦いはまだまだこれからだ。
(「パ・リーグ インサイト」下村琴葉)
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≪9/18≫
春季キャンプのときに「ホームランを打ってアピールしたい」と話していたロッテの山本大斗は、9月15日に行われた日本ハムとの二軍戦で、プロ入り後初めて1試合2本塁打を放つなど、ここまでファームで4本のアーチを描く。
「自分のなかではもう少し打ちたいなという気持ちがあったんですけど、簡単には打てないんだなと感じました」。
山本はイースタン・リーグ開幕戦となった3月20日のDeNA戦、プロ初打席で田中健二朗が投じた初球のストレートをライトへ運ぶプロ初本塁打の好スタートを切ったが、その後2本目の本塁打を放つまでに時間がかかった。
「打ちたいという気持ちが強くて、技術面で自分から打ちにいった部分がありました」。
本塁打だけでなく、打率も5月が.148(27-4)、6月が打率.182(22-4)、7月が.111(18-2)と結果を残せずにいた。
福浦和也二軍ヘッドコーチ兼打撃コーチからアドバイスを受け、課題克服に励んだ。
山本の技術面を支えるうえで、重要になってくるバットも変更した。春季キャンプ取材したときには、85センチ、890グラムの重さのバットを使用していたが、「長さを1センチくらい長くしました。グリップも細いのが好きだったんですけど、太めのグリップにしました」とのこと。バットの長さを変えたことで「下半身を意識して振ったら、バットが長いので飛ぶイメージがつきました」と好感触を得た。
8月以降に調子を上げる
8月に入ると、1日の西武戦で、2-2の6回一死二塁の第3打席、12年のMVP左腕・吉川光夫が投じた高めのストレートをセンター前に運ぶ安打を放つと、4-2の8回二死走者なしの第4打席では、昨季最多セーブのタイトルを獲得した増田達至からライト前に安打。一軍で実績のある投手から安打を放ち、マルチ安打を達成した。「結果を残せたことは自信になりましたし、掴めたものもあったかと思います」。
具体的に掴めたものについて「打席に入って力を抜いて構えることの大事さがわかりました。力を抜いて打席に立つようにしました」と教えてくれた。
力を抜いて打席に立つ大切を知った山本だったが、一軍の緊張感だろうか、プロ入り後初めて一軍の試合出場となった8月8日ヤクルト(ZOZOマリン)とのエキシビションマッチでは、石山泰稚の高めのストレートに手を出し3球三振。「ちょっと打ちたいという欲がありすぎました。正直あんまり覚えていなくて、なんで振ってしまったのかなと」と反省した。
それでも、「2回目のマリンスタジアムということもあって、一軍のエキシビションマッチよりかは楽に立てました」と、8月24日の日本ハムとの二軍戦では、金子弌大から左中間を破る適時二塁打を放ち、マリンで初安打・初打点をマークするなど、プロ入り後初の猛打賞を達成。
8月は月間打率.375(24-9)、7打点と状態をあげた。9月に入ってからも好調は続く。1日のDeNA戦で開幕戦以来となる本塁打を放つと、9月8日のヤクルト戦から4試合連続安打、さらに15日の日本ハム戦では1試合に2本塁打を放った。9月はここまで、打率.278(36-10)、3本塁打、9打点だ。
「何回も対戦してくる投手になってくると、打席のなかである程度、自分で投手の球種の軌道を描いて入れるようにはしています」。試合を出場するなかで、経験値、相手投手との対戦が増えたことで、春先よりも投手のイメージができるようになったことも好結果の要因となっている。
そのなかでも、15日の日本ハム戦で吉田輝星の高めに浮いた変化球を捉え、レフトスタンドに放り込んだ本塁打は素晴らしかった。
「その日の練習でまっすぐが強いから福浦さんに、まっすぐにタイミングを合わせて、浮いてきた変化球を打っていくように言われていたので、その通りできたので良かったと思います」と、福浦コーチの助言を活かした本塁打になった。
また、ここ最近の打撃を見ていると、甘い球を1球で仕留められているように見える。本人は「甘い球がきたら仕留めにいくんですけど、最近はボール球に手も出るようになってきたので、そこは課題かなと思います」と冷静に自己分析した。
結果を残そうと、目の前の課題を一つ一つクリアしていき、また新たな課題と向き合う。シーズンも残すところあとわずか。「最後なんとかもっとバッティングで、少しでもアピールできるようにしたいです」。将来の大砲候補は、支配下選手登録、その先の一軍での活躍を目指すために、今はファームで実戦経験を積んでいく。
取材・文=岩下雄太
(ベースボールキング)
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