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今年9月とても驚くべきニュースが流れた。

msn産経ニュース 2011/9/24 光速超えるニュートリノ 「タイムマシン可能に」 専門家ら驚き「検証を」
http://sankei.jp.msn.com/science/news/110924/scn11092400300000-n1.htm

名古屋大などの国際研究グループが23日発表した、ニュートリノが光よりも速いという実験結果。光よりも速い物体が存在することになれば、アインシュタインの相対性理論で実現不可能とされた“タイムマシン”も可能になるかもしれない。これまでの物理学の常識を超えた結果に、専門家からは驚きとともに、徹底した検証を求める声があがっている。
「現代の理論物理がよって立つアインシュタインの理論を覆す大変な結果だ。本当ならタイムマシンも可能になる」と東大の村山斉・数物連携宇宙研究機構長は驚きを隠さない。
アインシュタインの特殊相対性理論によると、質量のある物体の速度が光の速度に近づくと、その物体の時間の進み方は遅くなり、光速に達すると時間は止まってしまう。
光速で動く物体が時間が止まった状態だとすると、それよりも速いニュートリノは時間をさかのぼっているのかもしれない。すると、過去へのタイムトラベルも現実味を帯び、時間の概念すら変更を余儀なくされる可能性もある。


その後この内容に異論を唱える論文が発表されたり、再実験でも超高速が確認されたり、と慌しい動きになっている。

しかし私のようにサイエンスに疎い人間にとって、このニュースは今ひとつよくわからない。なぜ超光速とタイムマシンが関係するのだろうか。そのあたりを真貝寿明著「図解雑学 タイムマシンと時空の科学」(ナツメ社)を参照しながら素人なりに調べてみた。

時間は宇宙のどこでも一様に刻まれていく、すなわち絶対時間が存在する、という考え方はとても自然な考え方で我々の感覚と合うが、アインシュタインは1905年に発表した相対性理論でこの世で最も早いものは光であり、誰から見ても同じ速度である」ことを出発点とし、「時間の進み方は観測する人の運動状態によって異なり、光速に近い運動状態ほど遅くなる」と唱えた。

この理論によると未来へのタイムトラベルは可能で、光速近くで飛ぶロケットで宇宙旅行をして帰ってくると、光速近くで運動した宇宙飛行士は時間の進み方が遅くなるので、例えば3年間光速に近いスピードで宇宙旅行をすると地上では300年が経過することになる。これを「ウラシマ効果」という。竜宮城がほぼ光速で動くロケットだったと考えればわかりやすい。現実の世界でも、光速の10万分の2.6で動く国際宇宙ステーションでは1年で0.01秒ほど時間が遅れるそうだ。

では過去にいくタイムトラベルは可能だろうか。これには3つのタイプの提案がされている。「回転時空型」「宇宙ひも型」「ワームホール型」の3タイプだ。

「回転時空型」は、過去と未来をつなぐ光円錐(以下の図参照)は静止している時空では直立しているが、回転している時空では光円錐が斜めに傾き、時空が光速で回転している地点では、光円錐が横倒しになるのでObserverは時間ゼロで過去の領域に到達できるというものだ。そして全宇宙がゆっくり回転しているなら、中心(回転軸)から離れるほど回転のスピードが速くなるために光速を超えるスピードの場所ができ、そこでは光円錐が横倒しになり、タイムトラベルが可能になるというものだ。しかし、現実の宇宙はそのような動きをしていないので、あくまでも理論モデルである。



光円錐
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%89%E5%86%86%E9%8C%90

「宇宙ひも」とは宇宙の初期にできて現在は宇宙空間に漂っているかもしれないひも状の重力源であり、その巨大な重量によって時空の一部が切り貼りされたような状態になり、360度未満で1周できる、すなわち時空の近道ができた状態になるというものである。しかし宇宙ひもは現在ではまだ見つかっていない。



宇宙ひもを利用したタイムマシン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%A0%E3%83%9E%E3%82%B7%E3%83%B3#.E5.AE.87.E5.AE.99.E3.81.B2.E3.82.82.E3.82.92.E5.88.A9.E7.94.A8.E3.81.97.E3.81.9F.E3.82.BF.E3.82.A4.E3.83.A0.E3.83.9E.E3.82.B7.E3.83.B3

「ワームホール」とは、時空のある一点から別の離れた一点へと直結する空間領域でトンネルのような抜け道であり、入口も出口も私たちの宇宙なら、ワームホールは2地点を時間ゼロで結ぶ近道になる。そこでワームホールの一方の口を地球に置き、もう一方の口をロケットに置いて、そのロケットを光速に近い速さで宇宙旅行をすると、ロケットが地球に戻ってきたときに2つの口の間には時間差 (以下の例では地球は4時で、ロケットは2時) ができることになり、4時の地球の人が2時のロケットにあるワームホールの口へ行きその中に飛び込めば、その人は2時の地球に出るすなわち過去に旅したことになる、というものだ。
このタイムマシンの仮定を整理すると、(1) ワームホールが存在して、(2) そのワームホールが通過可能で、(3) 人がワームホールを通過可能で、(4) ワームホールを都合のいい場所につくれて、(5) ワームホールの一方の口を光速近くで動かせて、(6) タイムトラベラーが別ルートで同じ場所に戻れれば、タイムトラベルが可能となる。但しこれはワームホールで旅行をはじめた時(2時)までしか遡れないし、そもそもワームホールがまだ見つかっていない。



相対性理論における時間と宇宙の誕生 タイムマシン
http://www.um.u-tokyo.ac.jp/publish_db/2006jiku_design/satou.html#003


ドラえもんを通じてタイムマシンに親しんできた我々からすると、いずれも何とももどかしい印象で、年月日時そして場所を指定して自由に過去・未来を行き来できるタイムマシンはできないのかと嘆いてしまうが、やはりそれだけタイムマシンは実現が難しいということだろう。

そしてタイムマシンを考える上で技術・原理と併せて因果律について考えなければならない。タイムマシンがあって過去に戻ることができたら因果律は破れてしまう。例えば、自分が生まれる過去に行った際に何らかの理由で自分の親を殺してしまったら、自分は生まれないことになる。これが「親殺しのパラドックス」である。また、連載小説家がタイムマシンで未来に行って発売されている自分の作品を現在に持ち帰ってそのまま書き写して発表したとすると、その作品は誰が書いたことになるかわからなくなる。これは作者不明のパラドックスである。タイムマシンを実現可能にするのならば、このパラドックスを説明する論理が必要となる。

このように様々なハードルがあることを考えると、光速超えるニュートリノは大きな一歩ではあるが、まだまだほんの第一歩ということになりそうだ。


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