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知らないことや気になることをいろいろと調べて記録していきます
 




スカイツリーが東京の新名所としてすっかり定着した感がある。ご存知のとおりスカイツリーは高さ634mで自立式電波塔としては世界一の高さである。しかし、ドバイのブルジュ・ハリーファという160階(!)建ての高層ビルが高さは828mなので、スカイツリーは人工構造物としては現在世界第2位となる。




さて、世界一高い建築物の推移を調べてみると、これはなかなかおもしろい。

ブルジュ・ハリーフは建設中の2008年から世界一だが、その前はアメリカのノースダコタ州ブランチャードにあるKVLY-TV塔(629m)が世界一だった。(現在は第3位になっている) このKVLY-TV塔は1963年に完成当時も世界一であったが、その後1974年にポーランドのワルシャワラジオ塔(646m)にその座を譲り、また1991年に世界一に返り咲いている。なぜならワルシャワラジオ塔は倒壊したからだ。

ワルシャワラジオ塔
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AF%E3%83%A9%E3%82%B8%E3%82%AA%E5%A1%94

ワルシャワラジオ塔(ポーランド語:Maszt radiowy w Konstantynowie)はかつてポーランドのマゾフシェ県プウォツク郡ゴンビンのコンスタンティヌフという集落にあった高さ646.38mの電波塔。1991年8月8日、支線の設置に伴う補修中の人為的ミスにより倒壊した。ブルジュ・ハリーファが建築中の2008年5月19日に649.7mに達するまで、人工建造物としては史上最高の記録を保持していた。
1970年7月に建造開始され、1974年5月18日に完成した。はしごとエレベーターを備えていたが、エレベーターで最上部に上るには30分を要した。自立型の塔ではなく、3角柱の鉄塔を3方向に設置された支線(ワイヤー)の張力で固定する方式(支線型)の塔であったが、補修中の作業ミスにより支線の張力のバランスが崩れて倒壊した。


この倒壊の瞬間というのはさすがに映像がないが、倒壊後の映像 (現地のドキュメンタリー?) があったので見てみよう。



このように世界一高い建築物の高さは、1963 - 1974年 629m、1974 - 1991年 646m、1991 - 2008年 629mと後戻りしたことになる。人類の技術は必ずしも進化するだけではない、ということを示しているようだ。
実は、高層建築物に関して、このような後退現象は中世にもあったようだ。この時代の世界一高い建築物はいずれも教会だが、以下のように推移している。

世界一高い建築物の変遷
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%96%E7%95%8C%E4%B8%80%E9%AB%98%E3%81%84%E5%BB%BA%E7%AF%89%E7%89%A9%E3%81%AE%E5%A4%89%E9%81%B7

1311 - 1549年 160m イングランド・リンカン リンカン大聖堂 1549年に嵐により尖塔が崩壊
1549 - 1625年 159m エストニア・ターリン  聖オーラフ教会 1625年に落雷により尖塔が崩壊
1625 - 1647年 151m ドイツ・シュトラールズント 聖マリア教会 1647年に落雷により尖塔が崩壊
1647 - 1874年 142m フランス・ストラスブール ストラスブール大聖堂
1874 - 1876年 147m ドイツ・ハンブルク 聖ニコライ教会
1876 - 1880年 151m フランス・ルーアン ルーアン大聖堂
1880 - 1884年 157m ドイツ・ハンブルク ケルン大聖堂

このように、世界一の高さの教会の尖塔が崩壊するという事態が続いた結果、世界一高い建築物の高さは三度にわたって後退している。結局1311年に完成したリンカン大聖堂の160mという高さを超えたのは、1884年にアメリカ・ワシントンDCにできたワシントン記念塔(169m)であり、実に573年もの間高さの更新がなかったことになる。

さて、そのリンカン大聖堂は、1072年にウィリアム1世の命令により建設が始まり1092年に最初の聖堂が完成したが、その建物の多くは火事や地震で崩れてしまい、1185年の地震を機に大幅に建て直されたという。そして1311年に中央の塔が完成し、その当時は尖塔が載っていたとのことだ。



Lincoln Cathedral - History
http://lincolncathedral.com/building/history/

It was in 1092 that this first Cathedral at Lincoln built by Bishop Remigius was consecrated. Remigius, a Benedictine monk was the first Norman Bishop of the largest diocese in medieval England, extending from the Humber to the Thames. The cathedral of this diocese had been at Dorchester, near Oxford, but in 1072 William instructed that the Bishopric should be moved to Lincoln.

A castle had already been established in Lincoln by William, located in the south-west corner of the old Roman upper city. The new cathedral was built of Lincolnshire oolitic limestone opposite the castle in the south-east corner.

In 1141, or possibly earlier, there was a fire which severely damaged the Cathedral. An earthquake caused structural damage to Lincoln Cathedral in 1185. St Hugh (Bishop of Lincoln, 1186-1200) began work on reconstructing the Cathedral in 1192. He used the Gothic style, where pointed arches, ribbed vaults and flying buttresses made it possible to make larger windows (for stained glass) and larger roof spans.

Between 1307 and 1311 the central tower was raised to its present height. Then around 1370 to 1400 the western towers were heightened. All three towers had spires until 1549 when the central tower’s spire blew down. It had been the tallest building in the world.



さて、未来に目を向けると、現在のブルジュ・ハリーファの世界一時代は比較的短いかもしれない。まず今年2013年に中国湖南省長沙市で838mの「空中城市」と呼ばれるビルが建設される予定だ。このビルは工期が3ヶ月とか7ヶ月とか言われている。
さらに、クウェートの「ブルジュ・ムバラク・アル=カビール」(1,001m、2016年竣工予定)、バーレーンの「ムルジャン・タワー」(1,022m)、ドバイの「ナキール・タワー」(1,400m)、サウジアラビアの「キングダム・タワー」(1,600m)、さらにドバイの「ドバイ・シティ・タワー」(2,400m)といった高層ビルの計画があるという。
高さだけを競うよりも、歴史にならって一歩後退したり、のんびりと世界一更新を目指すような大らかさがほしいものだ。



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