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深海都市と宇宙ホテル
自然・科学
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2014年12月28日
ゼネコンの清水建設が、新しい技術へのさまざまなチャレンジや未来構想を「シミズ・ドリーム」として紹介している。
そのひとつとして、2014年11月に深海未来都市構想「OCEAN SPIRAL」が発表された。
清水建設 シミズ・ドリーム OCEAN SPIRAL ~人類はまだ、深海のポテンシャルを知らない~
http://www.shimz.co.jp/theme/dream/oceanspiral.html
毎日新聞 2014年11月18日 深海未来都市:5000人規模の構想を発表 建設費3兆円で2030年にも実現可 清水建設
http://mainichi.jp/feature/news/20141118mog00m020011000c.html
水深3000~4000メートルの深海に資源開発工場を設置し、らせん状のチューブで海面近くの球体居住区(直径500メートル、5000人収容)とを結ぶ。建設には5年かかり、建設費は3兆円というが、2030~50年には実現可能という。
清水建設によると、固化時間が早い樹脂コンクリート、透明アクリル板、繊維強化プラスチック(FRP)など現在使われている資材を活用。浮力と重力のバランスを等しくすることなどで位置を安定させる。津波、台風などの災害時は居住区を水面下に沈下させ、波浪を避ける仕組み。
研究施設、ホテル、深海探査船の補給基地なども盛り込んだ。海底資源の採掘や養殖漁業のほか、深海の温度差を利用した海洋発電、深海の圧力差を利用した浸透膜による海水の淡水化処理、海底メタンによる二酸化炭素 (CO2) のメタンガス転換などが期待できるという。
ネックは3兆円と算出した建設コスト。それでも、清水建設は「世界の約7割は海。人類社会の持続性向上にとって、深海の利用は必須です」と意気込んでいる。
これは未来構想としては夢があり、技術的な課題を掲げて、建設会社の将来の究極の目標を目指すという点では好ましいのだが、経済的な点を差し置いても実現の現実味はない。OCEAN SPIRALの紹介の中で読者をミスリードしているのは、以下のような深海プロムナードやセントラルプラザのイメージで、そもそも深海が明るく輝いているとことが大きく現実離れしている。
深海の実態については、以下の記事のほうがより正しい記述であろう。
マイナビニュース もしも科学シリーズ(30) もしも深海で暮らすなら
http://news.mynavi.jp/c_career/level1/yoko/2012/12/30_2.html
地球の表面のおよそ71%は海だ。平均水深は3,800mと深く、地球のほとんどは深海が占めている。
水深200mまでは浅海(せんかい)、それよりも深いと深海と呼ばれる。海岸や大陸棚(だな)の浅い部分にあたる浅海は海底面積のわずか8%しかなく、残りはすべて深海だ。71%の92%だから地球の65.3%が深海となる計算だ。さらに海水の95%が深海にあるというから、この面積と空間が活用できれば地球は巨大な惑星になるのだが、生物を拒絶するかのように、過酷な条件がそろっている。
もしも深海で暮らしたらどうなるのか? 2℃足らずの水温と細胞も破壊する水圧におびえながら、漆黒の世界でじっとし死ぬのを待つしかなさそうだ。
水深150~200mに届く光は海面のわずか1%にすぎないため、深海では光合成をおこなう植物やプランクトンは生息できない。水深1,000mを超えると完全な暗闇となり、目が退化する、自ら発光する、望遠鏡のような筒型の目を持つなど、生物は独特な進化を遂げる。深海では落ちてくるプランクトンや魚の死骸から始まり、それを食べる生物、その生物を捕食する生物と、独自の食物連鎖がおこなわれているのだ。
最大の脅威は水圧だ。海水の重さが圧力となり、すべてを押しつぶす。深く潜るほどに水圧は増し、およそ10m深まるほどに1気圧高くなる。水深100mまで潜れば10気圧、厳密には海上の1気圧とあわせて11気圧かかり生物の細胞をも圧縮する。
人間は300気圧が加わると細胞の破壊、神経障害、さらには身体を構成するたんぱく質さえ変性するというから、生身で泳げば水圧だけでも危険にさらされるので、潜水服か潜水船に頼るしかない。
潜水調査船・しんかい6500は、その名の通り水深6,500mまで潜航できる。搭乗員は厚さ73.5mmのチタン合金の球に守られながら潜航し、140mm厚のメタクリル樹脂の窓から外をながめることしかできない。もしも外壁や窓に亀裂が生じたら、浸水してまたたく間に圧死する。強度が足りなければ、搭乗員ごと圧潰する。
植物のない深海でも、大地の恵みで生きるたくましい連中がいる。海底火山から吹き出す硫化水素をエネルギーとするバクテリアだ。昨今の調査では、体内に硫黄酸化細菌と呼ばれるバクテリアを取り込み、海底火山の有毒ガスをエサにして生きる生物が多数見つかった。
人間には有毒な硫化水素を利用して、鉄と硫黄でできたウロコを足にまとい、100℃近い噴火口で生息する巻き貝・スケーリーフッドなども発見されている。硫化水素の恩恵を得られない生物は、乏しいエサを逃さない工夫が必要なため、全長18mにも巨大化したダイオウイカ、あごと牙が発達したキバハダカ、死肉を食らうヌタウナギ、自分よりも大きな相手も飲み込むアンコウなど独自の進化を遂げている。
もしも潜水服が完成しても、一人で外出するのは無謀だ。エネルギーを浪費しないように身をひそめながら、エサであるあなたが近づくのを、深海生物たちが待ち構えているのだから。
同様に、シミズ・ドリームの「宇宙ホテル」構想にも、厳しい現実が立ちはだかる。
清水建設 シミズ・ドリーム 宇宙ホテル -宇宙観光旅行-
http://www.shimz.co.jp/theme/dream/spacehotel.html
宇宙ホテルは、エネルギー・サプライ、客室モジュール、パブリック・エリア、プラットフォームの4つの部分で構成されている全長240mの大型宇宙構造物です。低軌道に浮かぶ宇宙ホテルでは、訓練を受けていない一般の人々が宇宙旅行を楽しむことができます。
宇宙旅行の最大の目的は「地球を観ること」です。旅行客は透明なブルーに輝く地球、薄い大気のベール、美しい雲、地球の夜明けを見ることができます。
また、天体観測や無重力空間でのスポーツや食事、地球との交信などをして過ごします。
マイナビニュース もしも科学シリーズ(18) もしも宇宙旅行にいくなら
http://news.mynavi.jp/c_career/level1/yoko/2012/11/18_2.html
もしも宇宙旅行にいったら、どんなに楽しいだろう。そんな幻想も発射台までだ。加速G、宇宙酔い、放射線、スペースデブリや病気におびえ、二度と来るか!と思うに違いない。
打ち上げ時は3G強の加速度が15分ほど続く。NASAは誰でも耐えられるというが、体重の3倍は少々キツい。周回軌道上では約50分で地球を一周する。地球の表情は刻々と変わるが、あと2~3周もすれば飽きるだろう。シャトルのトイレは微小重力状態でも使える吸引式で、身体にあてたアダプタからホースで吸い取る仕組みだから、かなりのストレスを感じるに違いない。
翌朝、頭に血が上ったようなぼんやり感と、吐き気やむかつきで目が覚める。典型的な宇宙酔いだ。重力が弱い宇宙では上下の区別がない。これが人間の感覚器官を狂わせ、乗り物酔いのような症状を引き起こすのだ。
宇宙酔い以外に、筋力の低下、体重の減少、血液の減少、背が伸びるなどが起きる。深刻なのは貧血と、ホルモン異常によるカルシウムの減少だ。数日なら大事に至らないが、50日以上滞在すると、地球に戻っても完治するのに数ヶ月かかる。虫歯も大きな脅威だ。重力から解放されたバクテリアは、地上の40~50倍速で増殖しあっという間に歯をむしばむ。
宇宙酔いに苦しみながら、翌日の船外活動に向けて減圧が始まる。シャトル内は地球と同じ1気圧だが、船外活動宇宙服(EMU)内は0.27気圧の純酸素しかないので、急激な気圧変化で体液中の窒素が泡だち、減圧症を起こしてしまう。そのため12時間以上かけて少しずつ気圧を下げ、その後は1時間ほど純酸素を吸って窒素を追い出す。着替えるだけでも1時間はかかるからというから大変な労力だ。
減圧が終わったら、人類に残された最後の開拓地、宇宙を満喫しよう。残念ながらEMUの遮蔽性はあまり高くないので、シャトル内よりも多くの放射線を浴びることになる。
恐怖から心拍数ははね上がり、意識がもうろうとする。おまけに、目標物のない宇宙空間では、自分がどこにいるのか分からずパニックを起こしやすい。決してシャトルから目を離さずに、落ち着いて行動しよう。
最終日は帰還の準備で忙しい。血液の減少と降下時の体液シフトで失神しないよう、塩の錠剤と多量の水を飲んでおこう。
逆噴射のあとは、地表面に対し機首を約40度上げた体勢となり、尻もちのような感覚で落ち続ける。大気圏再突入時、シャトルの速度はマッハ24(音速の24倍)!機体は1,600℃に達し、高温イオン化粒子の影響で無線が使えないブラックアウトがしばらく続く。
大気中で十分な揚力を得られないスペースシャトルは、旅客機では墜落といえる角度と速度で降下する。着陸したらパラシュートで急制動だ。緊張と恐怖は限界を超え、薄れる意識のなかでこうつぶやく。モルディブにすれば良かった、と。
もっとも宇宙ホテルは、ロシアOrbit Technologies社が2016年にオープンさせるという計画が2011年に報道されるなど (但しその後の情報がないが)、技術的な観点からは近い将来に実現するかもしれない。
Gigazine 2011年08月19日 宇宙から地球を見下ろせるホテルが2016年にオープン予定
http://gigazine.net/news/20110819_space_hotel/
夢に対して現実を示すのは自分としても大人気ないとは思うが、我々が生身の人間である以上やはり然るべき活動の舞台がある。深海は明らかに人間にふさわしくないし、宇宙も現時点では搭乗員は相当なトレーニングが必要だ。まずは足元をしっかり固めて、高い技術力をこの地上をよりよいものにしていくかに向けていこう。
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