
このブログは2008年5月に始めて10年目を迎えている。その初期にクリケットについて取り上げ、インドで初めてのプロスポーツとしてインディアン・プレミアリーグ (Indian Premier League) が始まったことを記した。そのインディアン・プレミアリーグも今年このブログ同様に10年目を迎えた。「同期」の10年を簡単に振り返ってみよう。
インディアン・プレミアリーグ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%9F%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B0
インディアン・プレミアリーグは2008年に発足。シーズンは全60試合であり、毎年4月の上旬頃に開幕し、5月の下旬頃に閉幕する1ヶ月半程度の期間である。レギュラーシーズンは各8チームがホーム・アンド・アウェーの2回戦総当りで14試合行ない、上位4チームがプレーオフに進み、優勝チームを決める。 クリケットのプロリーグとしては世界最大の規模を有する。2015年シーズンの観客動員数は約171万人であり、1試合当たりの平均観客動員数は約2万8500人である。同シーズンのリーグ売上高は115億ルピー(約210億円)であり、サッカーのJ2リーグよりやや小さい規模である。チーム総年俸の上限金額を規定する制度であるサラリーキャップを導入しており、2015年シーズンでは6億3000万ルピー(約11億円)としている。また、2015年の最高年俸はマヘンドラ・シン・ドーニの300万ドル(約3億6000万円)である。選手は原則1ヶ月半のシーズン期間のみの短期雇用契約となっている。
最初のシーズンの2008年はラージャスターン・ロイヤルズ (Rajasthan Royals) が優勝、総選挙の配慮で南アフリカで開催された2009年はデカン・チャージャーズ (Deccan Chargers)、2010年と2011年はチェンナイ・スーパーキングス (Chennai Super Kings) が連覇した。
2012年はコルカタ・ナイトライダーズ (Kolkata Knight Riders) 、2013年はムンバイ・インディアンズ (Mumbai Indians) が優勝した。
しかし、2012年と2013年にインディアン・プレミアリーグは八百長問題に揺れる。
Controversies involving the Indian Premier League
https://en.wikipedia.org/wiki/Controversies_involving_the_Indian_Premier_League
2012 spot-fixing case
On 14 May 2012, an Indian news channel India TV aired a sting operation which accused 5 players involved in spot fixing. Reacting to the news, Indian Premier League president Rajiv Shukla immediately suspended the 5 uncapped players. The five players were, TP Sudhindra (Deccan Chargers), Mohnish Mishra (Pune Warriors), Amit Yadav, Shalabh Srivastava (Kings XI Punjab) and Abhinav Bali, Delhi cricketer. However, the report went on to claim that none of the famous cricketers were found guilty. On the reliability of the report, Rajat Sharma, the editor-in-chief of news channel India TV quoted that the channel had no doubts about the authenticity of the sting operation and prepared to go to court.
Mohnish Mishra who was part of Pune Warriors India team for the season, admitted to have said that franchises pay black money, in a sting operation. Mishra was caught on tape saying that franchisees paid them black money and that he had received ₹15 million (US$230,000) from the later, among which ₹12 million (US$190,000) was black money. He was also suspended from his team.
2013 spot-fixing and betting case
On 16 May 2013, 3 players of Rajasthan Royals were arrested by Delhi Police on charges of spot fixing. The three players were Sreesanth, Ankeet Chavan & Ajit Chandila . All three Players were suspended by BCCI until the inquiry in case is completed by the police. Fresh details emerged later.
On 24 May 2013, Gurunath Meiyappan, a top official of the Chennai Super Kings franchise and son-in-law of BCCI president N. Srinivasan was arrested in Mumbai by Mumbai Crime Branch in connection with illegal betting.
On 25 March 2014 Supreme Court of India told N. Srinivasan to step down from his position on his own as BCCI president in order to ensure a fair investigation, else it would pass verdict asking him to step down.
Facebook 週刊エコノミスト編集部 2013年6月3日
https://www.facebook.com/economistweekly/posts/627022657309945
インドで熱狂的な人気を誇るクリケット。そのプロ・リーグであるインディアン・プレミア・リーグ (IPL) が八百長事件で揺れている。
リーグ所属の3選手が賭博業者から金を受け取り、試合中に不正を行ったとして5月中旬に逮捕されたことに始まり、有力チームの代表も賭博への関与で逮捕された。この代表がインド・クリケット協会 (BCCI) のシュリニヴァサン会長 (写真右) の娘婿であることから、会長も休職に追いこまれた。
クリケットの八百長事件は初めてではないが、今回の事件はIPLで起こったことに問題がある。6年前にスタートしたIPLは、それまで国代表チームが中心だったクリケットに初めて都市別のフランチャイズ制度を導入した。ビジネス面も革新的で、大企業や映画スターがチームのオーナーになり、高額年棒で世界の有名選手を集めて華やかなプレーを展開した。IPLは急成長するインドを象徴する新しい試みだった。だが、そのIPLも不正を免れていなかった。
日頃から政治家や役人の汚職や不正を嫌というほど見ているインドの人々は、IPLという娯楽の世界でも不正を見ることになった。今回の事件への反応は怒りや失望を通り越し、もはや諦めの感すらある。

この事件を受けて2015年6月に、優勝経験のあるラージャスターン・ロイヤルズとチェンナイ・スーパーキングスの2シーズンの活動停止が発表された。そして代わりにグジャラート・ライオンズ (Gujarat Lions) とライジング・プネー・スーパージャイアント (Rising Pune Supergiant) が期間限定チームとして結成され、8チームでのリーグが維持されている。八百長は様々なプロスポーツで起きているが、選手、チームだけでなく、リーグ全体を滅ぼしかねない。
2014年 (シーズン序盤はU.A.E.で開催) はコルカタ・ナイトライダーズ、2015年はムンバイ・インディアンズ、2016年はサンライザーズ・ハイデラバード (Sunrisers Hyderabad)、そして今年2017年はムンバイ・インディアンズが3度目の優勝を果たした。

今年のPlayer of the seriesはライジング・プネー・スーパージャイアントに所属するBen Stokesで、ニュージーランド生まれのイングランド代表選手だ。所属選手はもちろんインドの選手が多いが、イングランド、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド、スリランカ、ジャマイカ、トリニダード・トバゴなど多岐にわたっている。

そして、インディアン・プレミアリーグのブランド価値は年々高まっており、ダフ・アンド・フェルプスによるとUS$5.3 billionに及ぶと推測されている。
驚くべきはGlobal Sports Salaries Survey 2016 (7スポーツ、13ヵ国、17リーグ、333チーム、9776選手が対象) において、インディアン・プレミアリーグのAverage Salary Rankingが世界で第3位とされていることである。

https://www.globalsportssalaries.com/GSSS%202016.pdf
もちろんサラリー総額はアメリカ4大プロスポーツやヨーロッパサッカーと比べると低いのだが、インディアン・プレミアリーグは期間が短いのでWeekly Averageをもとにした計算だと大きく跳ね上がる。また高給と低給の差の割合は1.5 : 1で、総じてサラリーが高い。
即ちクリケットのトッププレーヤーにとっては、毎年数か月で大きく稼げる場ということになる。
この経済力はタイトルスポンサーやテレビ放映権で支えられている。
2008~2012年までタイトルスポンサーはインドの不動産開発のDLF社で、当時のスポンサー料は1年あたり₹40 crore (40000万ルピー、約US$6M) だったが、2013~2015年のPepsi社は1年あたり₹79.2 croreと上がり、2016~2017年の中国の携帯電話メーカーVivo社は₹100 croreとなった。更にVivo社社は2018~2022年まで5年間のタイトルスポンサー権利を1年あたり₹439.8 croreで取得した。これは開始当初の10倍以上で、2013~2016年のBarclays社による英サッカー・プレミアリーグのスポンサー料よりも高いという。
またテレビ放送は、ソニー・ピクチャーズ・ネットワークスとワールドスポーツ・グループの提携により、2008年からの10年契約をUS$1.03 billionでしていた。 ソニーは国内テレビを担当し、WSGは国際配信を担当していた。
そして2017年9月に、21st Century Foxの子会社のStar Indiaが2018年からはじまる5年間の放映権をUS$2.55 billionで取得した。これはクリケット史上最も高い放映権である。
これはもう観るしかない。情けないことに未だにクリケットのルールがよくわからないが、You Tubeのチャンネル登録をして、来年からはリアルタイムで追っていこう。
https://www.youtube.com/channel/UC0AZMFSDAOq76aIQ-BRkgTw
ということでもはやインディアン・プレミアリーグは、経済発展めざましいインドを象徴するプロスポーツとして、世界でも注目される存在となった。しかし、八百長問題で2チームが活動停止に追い込まれたように盤石ではない。選手や関係者が自覚して臨まなければ、築き上げているものを一瞬にして失うことになってしまう。
このブログと並行して引き続きインディアン・プレミアリーグに注目していきたい。
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