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コンスタンチン・ツィオルコフスキーとロバート・ゴダード
自然・科学
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2018年06月30日
以前このブログで、最初の映画として1895年の『
工場の出口
』を取り上げ、その中で1902年の『月世界旅行』を紹介し、「これは画期的な作品で、僅か7年で映画は物語を持つようになり、ドキュメンタリーからアートへの一歩を踏み出した言えるだろう」と既述した。
この映画の原作はフランスのSF作家で「海底二万里」や「八十日間世界一周」の著者でもあるジュール・ヴェルヌ (Jules Gabriel Verne, 1828~1905) によって描かれたものだが、原作中の砲弾宇宙旅行を科学的に検証すると以下のようになる。
月世界旅行 科学検証
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%88%E4%B8%96%E7%95%8C%E6%97%85%E8%A1%8C#%E7%A7%91%E5%AD%A6%E8%80%83%E8%A8%BC
作中で提示される、月まで投射物を到達させるために必要な初速や、その際の飛行所要時間など、天体力学的な理論面にはおおむね不備がない。着陸時にロケットを逆噴射する構想などにも先見性が見られる。
しかし270m程度の距離内で第二宇宙速度近くまで加速を行う場合、砲弾にかかる加速度の平均値は約2万Gとなり、人体は絶対に耐えられない。作中で言及がある「対ショック姿勢」や緩衝材も、これほどの大加速度には無意味である。ただし前述の通り、この箇所についてはミスではなく意図的な考証無視である。
また砲身内の空気が一瞬では砲口から排出されないため砲弾は前方の空気と後方の火薬ガスに挟まれて潰れてしまうという問題がある。それが解決されたとしても、大気圏を抜け出る前に砲弾は空力加熱で融けてしまう。
無重力状態が月=地球の重力均衡点 (ラグランジュ点参照) でしか実現されないという描写も正しくない。推進力を発揮せずに宇宙飛行する (自由落下する) 砲弾の内部は、常に無重力となる。
ということで宇宙開発の観点からはこの映画の内容はまだまだ不充分なのだが、実際にはその時代に充分な研究が行われており、映画公開の翌年の1903年に、ロシアのコンスタンチン・ツィオルコフスキーによってロケットで宇宙に行けることが証明された。
コンスタンチン・ツィオルコフスキー
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%81%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%84%E3%82%A3%E3%82%AA%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%95%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC
コンスタンチン・エドゥアルドヴィチ・ツィオルコフスキー(Константин Эдуардович Циолковский, 1857~1935) は、ロシア帝国イジェフスク生まれのロケット研究者、物理学者、数学者、SF作家。
10歳の時に猩紅熱に罹り、耳が聴こえなくなってしまう病に侵されながらも独学で数学や天文学を学び、1903年に発表した彼の代表的な論文である『反作用利用装置による宇宙探検(Исследование мировых пространств реактивными приборами)』の中で人工衛星や宇宙船の示唆、多段式ロケット、軌道エレベータなどの考案や、宇宙旅行の可能性としてロケットで宇宙に行けることを証明した業績から「宇宙旅行の父」と呼ばれる。
1897年には「ロケット噴射による、増速度の合計と噴射速度と質量比の関係を示す式」である「
ツィオルコフスキーの公式
」を発表し、今日におけるロケット工学の基礎を築いたが生涯の大半はカルーガで孤独に暮らしていたため、存命中にツィオルコフスキーの業績が評価されることはなかった。
ツィオルコフスキーは晩年、「スプートニク計画」の主導者となったセルゲイ・コロリョフらによってようやく評価されるようになり、1957年10月4日にバイコヌール宇宙基地から打ち上げられた世界初の人工衛星である「スプートニク1号」は、ツィオルコフスキーの生誕100週年記念と国際地球観測年に合わせて打ち上げられたものである。工学者のみならずSF作家としても『月世界到着!』などの小説を著している。
そして、実際に液体燃料ロケットを打ち上げたのはアメリカ人のロバート・ゴダードで、1926年のことだ。
ロバート・ゴダード
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%B4%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%89
ロバート・ハッチングズ・ゴダード(Robert Hutchings Goddard, 1882~1945) は、アメリカの発明家・ロケット研究者。「ロケットの父」と呼ばれる。ロケット工学草創期における重要な開拓者の一人だが、彼自身の非社交的な性格もあって、生前に業績が評価されることはなかった。
1926年3月16日にマサチューセッツ州オーバーンで最初の液体燃料ロケットを打ち上げた。その歴史的な出来事を彼は日記に簡潔に記入した。「液体推薬を使用するロケットの最初の飛行は昨日エフィーおばさんの農場で行われた」。“ネル”と名付けられたロケットは人間の腕くらいのサイズで、2.5秒間に41フィート上昇した。それは液体燃料推進の可能性を実証した重要な実験だった。
1929年に行われた実験の際、多くの野次馬が集まり、消防署に通報される騒ぎとなった。やってきた新聞記者に対してゴダードはあまり大げさにしないように頼み込んだのだが、ウスターの地方紙は「月ロケットは238,799.5マイルの目標を失った」との見出しで、月を目指したロケットが失敗して空中で爆発したという内容の記事を掲載した。実際には新聞記者が見たロケットの残骸は落下したロケットが地面に激突したことによるものであり、なおかつロケットは予定の高度に達して実験は成功していたのである。ゴダードはその事を必死に説明したのだが、後の祭りであり、これがきっかけとなってマサチューセッツ州内でのロケット発射実験を禁止された。
第二次世界大戦が始まると、ゴダードはアメリカ海軍のためにロケット工学の研究を行ったが、海軍はその研究の価値を理解できなかった。ゴダードが考案・発明した特許は214にのぼるが、ほとんどは彼の死後に与えられたものである。
彼の研究は時代を先取りしすぎていたため、同時代人からはマッドサイエンティスト扱いされ、しばしば嘲笑の対象になった。ゴダードは他の科学者やメディアから受けた不当な評価のため、他人を信用しないようになり、死去するまで研究は単独で行った。
彼の死後、ロケットの重要性が認識されるにつれゴダードの業績が脚光を浴び、1959年に設立されたゴダード宇宙飛行センターは彼にちなんで命名された。1969年に、アポロ11号の月着陸の前日、ニューヨーク・タイムズ紙は49年前に発表したゴダードについての社説を撤回した。またアポロ11号が月に到達した時、SF作家のアイザック・アシモフはすでに世を去ったゴダードに向かって、「ゴダードよ、我々は月にいる」という言葉を送った。
このようにツィオルコフスキーとゴダードも、当時は世間から注がれる目は冷ややかなものであった。彼らの業績が評価されるのは、結局は第二次世界大戦という戦争を通してであった。すなわち「ロケット研究は純粋に科学的なものである」という立場は、国家の軍事や権威によって侵されてしまうという現実である。
宇宙旅行とロケット工学が人気だったドイツで、1927年にロッケト愛好家団体として宇宙旅行協会(Verein für Raumschiffahrt - VfR)が設立されたが、開発資金の援助をドイツ軍が行ったことで軍事色が強くなっていった。
協会は1933年に解散するが、その後ドイツ軍は1942年10月3日にA4(Aggregat 4)ロケットの打ち上げに成功し、初めて宇宙空間に到達した初の人工物体となった。国家・軍事と絡むことで開発のスピードやレベルが飛躍的に向上した。
その後A4ロケットは実用兵器化されてV2 (Vergeltungswaffe 2) ロケットとなり、世界初の軍事用液体燃料ミサイル・弾道ミサイルとなった。大戦末期にはイギリスやベルギーの目標に対して発射されている。
大戦後に米ソ両国が冷戦状態になると、国家的プロジェクトとして弾道ミサイルや人工衛星など、軍事的利用が可能な技術の研究が競われる「宇宙開発競争」が展開されたことは誰もが認識している。
『月世界旅行』に見られる人類の宇宙旅行像は、ツィオルコフスキーとゴダードという2人の専心的な科学者によって具現化されたが、その後の展開は本人たちの考えていたものとは異なるだろう。後世での彼らの評価は本人たちにとって本当に喜ばしいものであっただろうか。
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