原節子さんの訃報に際し、いろいろ思いをめぐらせています。
私の考えは鑑賞者よりも、やはり演じる方の視点に立ってしまうのですが、彼女に何が起こったのか?引退を決意させたきっかけは何か?本人の口から対外的に出てくる理由はきっと、「別に。ただ、まあいろいろあって、もういいかなって思って」といったところだったんだろうなと推測します。
それが証拠に、誰も彼女の引退の理由はこれだ!と断言した人はいません。
原節子さんのような引退の仕方をした女優だと、真っ先に思い出すのが、グレタ・ガルボです。そして、歌手だと、やはり、ちあきなおみでしょうか?
私は、彼女たちが綺麗なうちに、全盛期のうちに一線を引いた、というのは観賞する側の憶測だと思っています。
きっと彼女達の中で、『何かが死んだ』のだと思うのです。 いままで、創造の活力になっていた何か、将来の展望を形成する発火点になっていた何か。 それが創造の源であり、助けであったパートナーの死なのか、時代の急激な変化なのか、そういったものが、彼女達に引導を渡したのかな。
演じたり歌ったりというのは、いろんな奇跡の上で成り立っているな、とつくづく思います。人間は生身でできているし、本人は健全で、新しいことに挑戦する気満々だったとしても、活動の障害となるいろんな外的トラブルに見舞われ、活動に影響することだって多々あったはずです。
そんな微妙なバランスの中で成り立っていたものが、何か一つの要因が崩れて、彼女達は引いたのではないでしょうか? それこそ、バタフライ・エフェクト級の何か。
でも何をもってバランスだったのか、その中で何が崩れたのか、本人達にとって具体的に言葉に表して理解を得る必要もないので、他人には、共感は難しいんだと思います。
そういえば、男性で、そういう引き方した人、意外と思い当たらないんだよなあ。新しい時代がやってくる前に亡くなった人は思い当たるけど(例えば、フランス俳優のジェラール・フィリップ。ヌーヴェルヴァーグが到来する前に亡くなったので、彼の印象は今でも端正で穢れのないイメージのまま…)。
最近見つけた動画です。この人、素敵だわあ。
『日本人離れ』、そう、原節子さんもそんな風に形容されていたっけ。もうこの言葉自体、当時ほど有難がる人もいなくなりましたよね。