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mtchiba world

投資、読書、車、旅行、いろいろなことに興味を持つmtchibaが、脈絡なく語ります。

徳川将軍家の演出力by安藤優一郎

2007-02-19 22:08:03 | 
時代の移り変わりがそれほどすんなり行かないのは
歴史が証明しています。
同じ武家社会でも、鎌倉時代から室町時代へ移るの
に途中南北朝もはさみ随分時間がかかっています。

それなのに、武家社会からまるで違う社会になった
明治維新は大きな変化の割にはスムーズだったよう
に思います。
江戸に住んでいた人にとっては、幕府が滅んで薩長
中心の軍隊が進駐してきたわけですから、占領軍の
ようなものです。

この本では、将軍の権威を保つためにどういうこと
が行われていたのかが実例で紹介されています。
将軍拝謁といっても実際には顔を上げられなかった
ので、直接見ることはできなかったことや、「シー」
という掛け声を先導に城中を進む御三家や御三卿が
別格扱いであったこと、とにかく静謐が重んじられ
たことなどがよくわかります。

また、江戸の庶民も将軍ブランドをありがたがって
いたり、うまく商売に結び付けていたこともわかり
ます。
江戸の人間には馴染み深かった将軍があっという間
にいなくなってしまい、天皇を頂点にした支配に変
わった明治になって、江戸の人間には不思議な感覚
はなかったのでしょうか。

大名の江戸城への登城回数もかなり多かったことも
わかります。
江戸時代はかなり文書が残っていて詳しいことまで
分かっていますが、当時の町人の価値観はどのよう
なものだったのかを知りたいと感じました。

徳川将軍家の演出力 安藤優一郎 新潮選書

インテリジェンス武器なき戦争by手嶋龍一 佐藤優  

2007-02-18 15:17:00 | 
真面目にやっていても信頼を得るのは難しいですし、
ましてや人に評価してもらうなどというのはとても
並大抵のことでは無理でしょう。
それが、何か悪いことをしたり裁判で有罪になって
いるのに、それ故評価が上がるという人がいるのが
不思議です。

佐藤優氏は外務省に勤務していたとき、これほど多
くの人が知る人物ではなかったでしょうし、そのま
ま外務省に勤務し続けたら一人の外交官として終わ
っていたのかもしれません。

元NHKの手嶋龍一氏との対談形式なのでテンポよく進
んでいきますが、どうしてもこの手の本は途中で飽
きてきてしまいます。
外交の裏舞台の一面を覗かせてくれるのですが、ま
だまだ明らかにできない部分のほうが多いでしょう
し、佐藤氏は裁判中の身でもあるので、自分に有利
になるような発言も多いでしょう。どこまでが本当
なのかはよくわかりません。
でも、とても複雑で難しいそうな世界だということ
はわかります。

日本は情報を集めるにしても縦割りで、集めた情報
が生かされていないという指摘があります。確かに
こうした縦割りの弊害は多いわけで、たとえばあれ
だけ騒いだ国勢調査ですらそのデータを他で利用す
ることがないそうですから、機密性のある情報なら
なおさらでしょう。

帯に「日本存亡の鍵は、スパイが握っている。」と
あります。スパイの力は表には出ないので計り知れ
ませんが、多分すごい力があるのだろうと思います
が、そう思わせているだけで実際はたいしたことが
ないかもしれませんし、そのよくわからないところ
がすごそうと感じさせるのでしょう。

インテリジェンス 武器なき戦争  
           手島龍一・佐藤優  幻冬舎新書

構造改革の真実by竹中平蔵

2007-02-17 15:34:48 | 
竹中さんという人が確実に歴史に名を残す人だと思っ
たのは、りそなの処理のときです。公的資金を使った
金融危機の処理などで、随分批判も浴びていましたが、
打たれ強い人でもあると思います。

経済財政諮問会議の際に民間委員と事前のすり合わせ
をして、一つの主張を何人もで行い、最終的には小泉
総理のバックアップで進めるというやり方だったよう
ですが、会議の進め方としてはごく当然とも思えたの
ですが、こういうこともやらずに会議に臨んでも思い
通りには行きません。それをきっちりやったというの
がすごいのかもしれませんが、へえと感じました。

小泉首相のバックアップが随分効いていたというのも
わかりますが、逆に言うとこれだけの力がありながら
その力を発揮できない首相がほとんど、ということに
もなるわけです。

まだこの時期では書けないこともたくさんあるのでしょ
うが、それでもかなり具体的な話で、こうやって国の
政策が決まっていくのかというダイナミックな様子を
うかがい知ることができました。

構造改革の真実 竹中平蔵 日本経済新聞

超・格差社会アメリカの真実by小林由美

2007-02-15 22:03:32 | 
292ページにわたってびっしり書かれた本は、読むのに
かなり骨が折れました。
この本を読むきっかけは、著者がNHKラジオに出ていた
からです。通勤帰りの車で、たまたま聴いたのですが、
話の内容が面白く読んでみることにしたのです。

「アメリカでは経済力が唯一の価値基準」だそうで、
そして四つの階層に分かれていると言います。
「特権階級」「プロフェッショナル階級」「貧困層」
「おちこぼれ」の四つです。
この基準で言えば私は「貧困層」になるわけですが、
アメリカでは「特権階級」「プロフェッショナル階級」
あわせた約5%の層に60%の富が集中していて、このあた
りが題名の「超格差社会」になっていくわけです。

そしてこの超格差社会を世界モデルとしているところ
が怖いところで、こういう本がもっとメジャーになっ
て欲しいと思います。

超・格差社会アメリカの真実 小林由美 日経BP

考具by加藤昌治

2007-02-13 22:13:06 | 
「考具」はアイデアと企画を生み出すための知的道具。

こうしてスタートしたこの本は、広告代理店に勤める
著者がいかに仕事をしていくのかを、考え方やアイデ
アの出し方から順々に進めていく内容です。

うまい具合に本の内容もステップアップしながら進ん
でいきます。ここまでできたらじゃあ次ぎ、それもで
きたら今度はこれ、そこまでいったらこれでどうだ、
という感じでぽんぽん進んでいくので、読むのには苦
にはなりません。
でも、こんなに次々とレベルを上げていくことができ
るのかな、と疑問に思います。

実際にアイデアを出している部分など、うまく考えて
いるなと思うのですが、それがそういう風に考えられ
ないんだよ、とも感じてしまいます。

マンダラを利用してアイデアを出していく説明が詳し
く出ていますが、ここは参考になります。代理店の仕
事とは縁もゆかりもない仕事をしていますが、マンダ
ラは知っていました。ただ知っているだけで、使った
ことがなかったのですが、これから機会があれば使っ
てみたいなと思います。

「考具」 加藤昌治 阪急コミュニケーションズ

Jポップの心象風景by烏賀陽弘道

2006-09-09 17:08:15 | 
05年7月22日のブログで『Jポップとは何か』とい
う本を取り上げましたが、同じ著者の本を読んでみ
ました。

『Jポップとは何か』はなかなかいい本で、ブログ
でも
「音楽を取り巻く環境の変化から、日本の音楽産業
全体を俯瞰した本として、興味深い内容が多く、得
をした気分にさせてくれました」
と書きました。

そしてこの本を読んでみたのですが、内容的にぶっ
飛びました。
取り上げられた八組のアーチストがなぜうけるのか、
それを音楽業界とはまったく異なる世界から説明し
ようというものです。

たとえばサザンとユーミンは、盆と正月に回帰する
先祖の霊魂をもてなすための、民俗芸能の延長だと
書かれています。B'zが「パクリ」でも評価される
のは、そもそも日本は「模倣」の文化の国なので、
「パクリ」ということ自体にさほど罪悪感もなく、
うまくパクレばそれが評価されるというわけです。

かなり強引な解釈だなと思うところも多いのですが、
説得力はあります。とくに「日本的共同体とアメリ
カ-桑田佳祐(サザンオールスターズ)」と「文明
と闘うサイボーグ戦士-浜崎あゆみ」の章はなるほ
どと思わせました。

桑田佳祐は欧米の外来文化と、海上他界信仰の土着
文化の両方に影響を受けたと指摘します。そして、
彼が英語で歌ったりしながらも茅ヶ崎のコンサート
では地縁共同体への感謝を盛んに表明したりする行
動から一つの人格に二つの文化が混在すると分析し
ています。すっきりといく説明です。

本全体を読み通すのはかなり大変だと思います。全
部ではなく、一部だけを読むつもりであればいいか
もしれませんが、それでもなかなか難解で時間がか
かる本でした。

Jポップの心象風景  烏賀陽弘道  文春新書

成功への情熱

2006-09-08 21:51:44 | 
<一日一日を一生懸命に生きれば、未来が開かれてく
るのです。正確に将来を見通すということは、今日
を努力して生きることの延長線上にしかないのです。>

<物事をあるがままに見て、さらに自己犠牲を払って
でも成し遂げようという心構えができていれば、結
局は克服できない問題などないのです。>

こんな言葉の連続でした。
さすがに大経営者にして宗教家ということで、もう
誰の書いたものかはおわかりでしょう。

稲盛和夫という人物を名前くらいは知っていました
が、実際に書いたものを読んでみました。それもPHP
から出ている本で、自分とは肌が合わないのは目に
見えていました。

稲盛さんほど筋金入りではなくても、経営に成功し
た人はにわか哲学者やにわか宗教家になって、人生
訓を語るのが不思議でした。経営と人生は表裏一体
なのかもしれませんが、あくまでも表と裏は別物で
す。

経済力や知名度で出版できるという強みもあるので
しょうが、そうした本をありがたく読む人がどの程
度いるのかは分かりません。

前に読んだ御立さんの「使う力」ではないですが、
大経営者らの言葉をいくら拝聴してもそれを実践に
使えなければ意味がないわけで、ほどほどがよろし
いようで。

成功への情熱 稲盛和夫  PHP

戦争の常識by鍛冶俊樹

2006-09-04 23:21:32 | 
どうも題名が先に与えられて書いた本のようです。
それなので内容とあまり一致していません。

軍隊・軍備などの百科事典的な内容で、基本的な用
語の解説で成り立っています。テレビや新聞に出て
くる言葉で分からないことがあったときに利用でき
るかもしれませんし、熟読しておけば理解も深まる
でしょう。

この本を読んでこれは、と思ったのは徴兵制のとこ
ろです。
いまや世界で徴兵制の国は数少ないですが、軍は徴
兵制を維持したいのだと思っていました。しかし実
際は軍もそれを望んでいないということです。どう
せ二年程度で軍からいなくなってしまう人間を教育
するために人手を割かなくてはいけませんし、武器
も複雑になりまともに使えるようになる前に除隊で
は話になりません。
それよりもやる気のある人間をビッチリ鍛えたほう
がいいということです。なるほど。

戦争の常識 鍛冶俊樹 文春新書

使う力by御立尚資

2006-08-22 23:00:51 | 
あまり実践的な本ではないようです。
知識だけいくら学んでもそれでは一種のオタクにな
ってしまう。「知識」×「使う力」で勝負が決まる、
ということが大きな主張で、その「使う力」を定義
したり身につけたりできるようにと言う内容なので
しょうが、よくわかりませんでした。
結局「使う力」と言うのは自分で何とかして高めて
いくしかないということのようです。

一番参考になったのは、明日の十時までに販売促進
企画を作ってきてくれというとき、とりあえず引き
受けたり、無理と断ったりするのではなく、なぜ明
日の十時までなのかを確認すると言うところです。

大体こういうときは一応引き受けて、やっつけ仕事
で提出と言うのが多いのかと思いますが、きちんと
背景を知った上で、どの程度の資料を作るのかを考
えたり、見通しをはっきりさせたりということが重
要だということがわかりました。

使う力 御立尚資 PHPビジネス新書

日本の名列車by竹島紀元

2006-08-20 15:15:50 | 
著者は「鉄道ジャーナル」の編集長をしている方で、
思わず買ってしまいました。
65年から2004年まで、鉄道雑誌に載ったものをまと
めたものに、多少書き下ろしを加えたものです。

著者は編集長としてものすごいプライドを持ち編集
に当たっているようですが、この本はちょっとよく
ないところがあります。
写真のキャプションや列車愛称名の説明に間違いが
あります。これらは著者が書いたのではなく、この
本の編集者が書いたのだろうと推察できますが、そ
れでもこういうところまで目配りはできなかったの
でしょうか。やや残念です。

相当古い時代も扱っているので、ファンでなければ
読み通すことすら難しい本ですが、それを読み終え
たと言うことは私もファンの一人なのでしょう。
鉄道の趣味はなかなかいい趣味だと思っています。
マイペースで続けられますし、社会に迷惑をかける
わけでもありませんし、ファンの人たちは地味な感
じの人が多く、なんら問題がありません。
でも、何となく大きな声で鉄道が趣味とは言いにく
いのは、電車の先頭に陣取って運転手の操作をじっ
と見ているような人とは自分は違うのだと言う意識
なのでしょう。

写真も豊富でいい雰囲気にできているのですが、最
初に指摘したような問題もあるので、改訂版を出し
てほしいと思います。

日本の名列車 竹島紀元 祥伝社新書