『2℃危機説』と米国7州の排出権取引とNEDの排出権1億トン公募の関係
という硬い内容ですが、興味がある方は読んでみてください。きっと・・。
▼ 気温2℃上昇で27億人が水不足、2億3000万人がマラリアのリスクに・・
昨年7月の英国で開かれたG8以降、地球温暖化に関して「2℃危機説」が
騒がれ始めています。それも最速で行くと2028年との予測があります。
これは日本で開発された「地球シミュレーター」で計算したもので、他
の予測モデルに比べると比較的温度上昇が高く出るきらいはありますが
世界に何十とある気候予測モデルでも全て2026年~60年の間に入ります。
人類に残された時間は決して多くありません。
では、平均気温が温暖化の影響で2℃上昇すると地球はどうなるのか?
影響には2つあります。自然への影響と、食料や水、健康被害など人間
の社会・経済への影響です。
1.5℃の上昇でグリーンランドの氷床の融解が始まり、全面融解すれば
地球の海面水位が7m上昇します。よって、2℃の上昇では世界の生態系
の多くが消失し、10億~28億人が水不足にさらされる可能性があります。
また、2℃を境目に森林がCO2の吸収源から放出源に転じます。
人間にもたらす影響については、水不足やマラリア、食料不足、沿岸洪水
の影響を受けるリスク人口が2℃を境目に急増します。冒頭にあげた数字
がそれです。27億人が水不足、2億3000万人がマラリアのリスクにさらさ
れるのです。
結論付けると、人間の社会・経済活動の点から、2℃前後が分岐点になる
ということです。
このような状況が最速で2028年にくるとして、これを避けるためにはどう
すればいいのか!結論は、温暖化ガスの排出量を今まで以上のペースで
減らすことしかありません。
現在、地球の大気中のCO2の濃度は380ppmです。今のペースでは2100
年に720ppmになります。昨年の英国の会議では2℃の上昇はこれを475
ppm以下に安定させなければ回避できないと報告されています。
そのためには、世界の温暖化ガスの排出量を1990年度比で50%削減、日本
では同じく60~80%削減を達成しなければなりません。京都議定書で課せ
られた先進国の削減目標は僅か5%(日本はマイナス6%)です。これでは
2℃回避に殆んど効果がありません。先進国の中でこのあたりの取組みが
もっとも進んだドイツでも550ppmが政策の長期目標の状況です。
このような状況を受けて、これからは世界は「2℃」「475ppm」をキー
ワードに動き始めます。この数字がポスト京都のターゲットになります。
そして、世の中には温暖化加速のデータが続々登場し、ポスト京都の動き
に拍車が掛かります。
そんな中、アメリカでも新しい動きが出てきました。『米北東部7州排出
権取引制度(RGGI)』というものです。京都メカニズムと欧州排出
権取引制度(EUETS)の経験を踏まえた仕組みになっており、既に
アメリカにあるシカゴ気候取引所(CCX)を中心にした自主的な排出
権取引と比べて制度としても裏付けがしっかりしており、いずれこちら
に取引の中心が移る可能性を十分秘めています。
このことの持つ意義は2つあります。京都議定書を批准しなかったアメリカ
での動きであることと、CO2排出大国での動きであるということです。
以下が、世界のCO2排出量ランキング(年間)です。
1位 米国 69億2810万トン
2位 中国 49億3770万トン
3位 ロシア 19億1520万トン
4位 日本 13億1600万トン
5位 カナダ 6億8020万トン
★RGGI9州 5億9480万トン
6位 韓国 5億2090万トン
7位 フランス 5億1340万トン
★RGGI7州 4億9260万トン
8位 オーストラリア 4億9090万トン
(比較上、2000年、2001年の数字で統一)
見てください。アメリカの凄さを!(中国も凄いですよ。年率で2桁これが
伸びて来ます。アメリカを抜くのも時間の問題です!)ですから、東部の
7州(コネチカット、ューヨーク、バーモンド、デラウェア、ニュージャー
ジー、ニューハンプシャー、メイン)だけでもあの広大なオーストラリア
1国を上回る世界第8位のCO2排出量です。
これに2008年度までには参加することを表明しているマサチューセッツと
ロードアイランドの2州を加えたRGGI9州では、これも広大な隣国である
カナダ1国に次ぐ世界第6位になります。
彼らが削減のターゲットにするのは、2500万kW以上相当の化石燃料を使う
燃焼施設で、7州で640余りの施設が対象になります。そして、目標は2009年
~2014年の第1期に1990年レベルに抑え、2015年~2019年の第2期末に同10%
削減です。『2℃危機説』を回避するには全然ですが、7州や9州と言えども
その排出ボリュームで世界のトップ10以内に位置するグループが取組みを
始めたことに意義があり、京都メカニズムと欧州排出権取引の経験を踏ま
えた仕組みとなっているところに実効が期待されます。
仕組みの詳細は省きますが、電力料金の上昇もきちんと予測に織り込んで
います。また、京都議定書やEUETSの排出権の活用も視野に入れて
あります。
きちんと機能をし始めれば、オブザーバー参加のペンシルバニア、メリー
ランドにとどまらず、関心を寄せているカナダの一部の州もこれに加わり
カナダ、メキシコあたりの温暖化ガス削減事業もRGGIに流れる可能性
が高まります。
このように、RGGIの進展はアメリカの温暖化対策や、2013年以降の
国際的な枠組み(ポスト京都)に大きな影響を与えることは間違いあり
ません。経済的な負担と温暖化対策を両立できれば、アメリカの京都議
定書への復帰の可能性すら出てきます。暫くは目が離せない動きです。
一方、日本でも動きはあります。こちらは京都議定書を確実なものにする
動きです。「NEDが7月から排出権1億トン公募」というもので、排出権
ビジネスに弾みを付けるものです。7月に公募開始、今秋の契約を目指して
います。
内容としては、企業が発掘した海外での温暖化ガス削減事業にNED自らが
投資したり、排出権を保有する企業などからNEDOが排出権を買い取ると
いうもので、意義としては、これまで将来の転売目的で温暖化ガス事業に
自主的にh投資してきた企業が、排出権の売却先にめどをつけられるように
なったことです。
背景としては、政府は京都議定書の目標達成に必要な排出権の量を、1990年
排出量の1.6%、CO2換算で2000万トンと見込んでいました。つまり、第一
約束期間である(2008年~20012年までの)5年間では2000万トン×5年=1億
トンの排出権の確保が必要となるということです。2006年度に54億円を確保し
122億円分の契約を結べるようになっています。
但し、ハードルは高く、相変わらず大企業中心の施策です。
NEDOが事業者として参加する場合は、5年間の排出権の量が1案件あたり
25万トン以上。NEDOが転売契約を結ぶ場合は、同50万トン以上。さらには
いかに早く排出権を引き渡せるか、加えて排出権の「補てん義務割合」(排出
権が用意できなかった場合に事業者が補てんする割合)も評価の対象になって
います。
つまるところ、理想を追っています。形式に拘るあまり必要量を確保できない
結末が見えます。何度か説明会を繰り返す気がします。(それも行政コスト
ですが・・・・。)
徹底的に安い価格で大量の排出権をかき集める、その中にリスクを読み込む
のか確実な事業、企業から目標通りの排出権を確保するのか。やってみない
とわからないのが本音でしょうが、「機動的に制度や公募要領の見直しを続
けていく。臆せず奮って提案して欲しい。」といっているNEDOそのものが
機動性が小さい組織であることが心配なところです。RGGIの仕組みは善く
できています。このあたりも参考にしていただきたいところです。
また、東京都あたりにもRGGIの制度作りにリーダーシップを取ったニュ
ーヨークをならって色々と動く中で、都のさまざまな環境行政の一本化を
図って欲しいものです。色々な施策をやっている割にわかりにくい。わかり
にくいと都民(就業)として何からやっていっていいかわからない。また
やったことの効果がわからなければ、次の行動に結びつかない。
日本は世界第4位のCO2排出国です。その中で東京都が占める割合は人口比
を確実に超えています。オリンピックを誘致するなら、RGGIに負けない
動きの中心になって、CO2が出ないオリンピック誘致都市としてエントリー
するくらいのインパクトが必要な気がします。
ちょっと気合が入りすぎました。まじめに考えています。
Mr.削減
という硬い内容ですが、興味がある方は読んでみてください。きっと・・。
▼ 気温2℃上昇で27億人が水不足、2億3000万人がマラリアのリスクに・・
昨年7月の英国で開かれたG8以降、地球温暖化に関して「2℃危機説」が
騒がれ始めています。それも最速で行くと2028年との予測があります。
これは日本で開発された「地球シミュレーター」で計算したもので、他
の予測モデルに比べると比較的温度上昇が高く出るきらいはありますが
世界に何十とある気候予測モデルでも全て2026年~60年の間に入ります。
人類に残された時間は決して多くありません。
では、平均気温が温暖化の影響で2℃上昇すると地球はどうなるのか?
影響には2つあります。自然への影響と、食料や水、健康被害など人間
の社会・経済への影響です。
1.5℃の上昇でグリーンランドの氷床の融解が始まり、全面融解すれば
地球の海面水位が7m上昇します。よって、2℃の上昇では世界の生態系
の多くが消失し、10億~28億人が水不足にさらされる可能性があります。
また、2℃を境目に森林がCO2の吸収源から放出源に転じます。
人間にもたらす影響については、水不足やマラリア、食料不足、沿岸洪水
の影響を受けるリスク人口が2℃を境目に急増します。冒頭にあげた数字
がそれです。27億人が水不足、2億3000万人がマラリアのリスクにさらさ
れるのです。
結論付けると、人間の社会・経済活動の点から、2℃前後が分岐点になる
ということです。
このような状況が最速で2028年にくるとして、これを避けるためにはどう
すればいいのか!結論は、温暖化ガスの排出量を今まで以上のペースで
減らすことしかありません。
現在、地球の大気中のCO2の濃度は380ppmです。今のペースでは2100
年に720ppmになります。昨年の英国の会議では2℃の上昇はこれを475
ppm以下に安定させなければ回避できないと報告されています。
そのためには、世界の温暖化ガスの排出量を1990年度比で50%削減、日本
では同じく60~80%削減を達成しなければなりません。京都議定書で課せ
られた先進国の削減目標は僅か5%(日本はマイナス6%)です。これでは
2℃回避に殆んど効果がありません。先進国の中でこのあたりの取組みが
もっとも進んだドイツでも550ppmが政策の長期目標の状況です。
このような状況を受けて、これからは世界は「2℃」「475ppm」をキー
ワードに動き始めます。この数字がポスト京都のターゲットになります。
そして、世の中には温暖化加速のデータが続々登場し、ポスト京都の動き
に拍車が掛かります。
そんな中、アメリカでも新しい動きが出てきました。『米北東部7州排出
権取引制度(RGGI)』というものです。京都メカニズムと欧州排出
権取引制度(EUETS)の経験を踏まえた仕組みになっており、既に
アメリカにあるシカゴ気候取引所(CCX)を中心にした自主的な排出
権取引と比べて制度としても裏付けがしっかりしており、いずれこちら
に取引の中心が移る可能性を十分秘めています。
このことの持つ意義は2つあります。京都議定書を批准しなかったアメリカ
での動きであることと、CO2排出大国での動きであるということです。
以下が、世界のCO2排出量ランキング(年間)です。
1位 米国 69億2810万トン
2位 中国 49億3770万トン
3位 ロシア 19億1520万トン
4位 日本 13億1600万トン
5位 カナダ 6億8020万トン
★RGGI9州 5億9480万トン
6位 韓国 5億2090万トン
7位 フランス 5億1340万トン
★RGGI7州 4億9260万トン
8位 オーストラリア 4億9090万トン
(比較上、2000年、2001年の数字で統一)
見てください。アメリカの凄さを!(中国も凄いですよ。年率で2桁これが
伸びて来ます。アメリカを抜くのも時間の問題です!)ですから、東部の
7州(コネチカット、ューヨーク、バーモンド、デラウェア、ニュージャー
ジー、ニューハンプシャー、メイン)だけでもあの広大なオーストラリア
1国を上回る世界第8位のCO2排出量です。
これに2008年度までには参加することを表明しているマサチューセッツと
ロードアイランドの2州を加えたRGGI9州では、これも広大な隣国である
カナダ1国に次ぐ世界第6位になります。
彼らが削減のターゲットにするのは、2500万kW以上相当の化石燃料を使う
燃焼施設で、7州で640余りの施設が対象になります。そして、目標は2009年
~2014年の第1期に1990年レベルに抑え、2015年~2019年の第2期末に同10%
削減です。『2℃危機説』を回避するには全然ですが、7州や9州と言えども
その排出ボリュームで世界のトップ10以内に位置するグループが取組みを
始めたことに意義があり、京都メカニズムと欧州排出権取引の経験を踏ま
えた仕組みとなっているところに実効が期待されます。
仕組みの詳細は省きますが、電力料金の上昇もきちんと予測に織り込んで
います。また、京都議定書やEUETSの排出権の活用も視野に入れて
あります。
きちんと機能をし始めれば、オブザーバー参加のペンシルバニア、メリー
ランドにとどまらず、関心を寄せているカナダの一部の州もこれに加わり
カナダ、メキシコあたりの温暖化ガス削減事業もRGGIに流れる可能性
が高まります。
このように、RGGIの進展はアメリカの温暖化対策や、2013年以降の
国際的な枠組み(ポスト京都)に大きな影響を与えることは間違いあり
ません。経済的な負担と温暖化対策を両立できれば、アメリカの京都議
定書への復帰の可能性すら出てきます。暫くは目が離せない動きです。
一方、日本でも動きはあります。こちらは京都議定書を確実なものにする
動きです。「NEDが7月から排出権1億トン公募」というもので、排出権
ビジネスに弾みを付けるものです。7月に公募開始、今秋の契約を目指して
います。
内容としては、企業が発掘した海外での温暖化ガス削減事業にNED自らが
投資したり、排出権を保有する企業などからNEDOが排出権を買い取ると
いうもので、意義としては、これまで将来の転売目的で温暖化ガス事業に
自主的にh投資してきた企業が、排出権の売却先にめどをつけられるように
なったことです。
背景としては、政府は京都議定書の目標達成に必要な排出権の量を、1990年
排出量の1.6%、CO2換算で2000万トンと見込んでいました。つまり、第一
約束期間である(2008年~20012年までの)5年間では2000万トン×5年=1億
トンの排出権の確保が必要となるということです。2006年度に54億円を確保し
122億円分の契約を結べるようになっています。
但し、ハードルは高く、相変わらず大企業中心の施策です。
NEDOが事業者として参加する場合は、5年間の排出権の量が1案件あたり
25万トン以上。NEDOが転売契約を結ぶ場合は、同50万トン以上。さらには
いかに早く排出権を引き渡せるか、加えて排出権の「補てん義務割合」(排出
権が用意できなかった場合に事業者が補てんする割合)も評価の対象になって
います。
つまるところ、理想を追っています。形式に拘るあまり必要量を確保できない
結末が見えます。何度か説明会を繰り返す気がします。(それも行政コスト
ですが・・・・。)
徹底的に安い価格で大量の排出権をかき集める、その中にリスクを読み込む
のか確実な事業、企業から目標通りの排出権を確保するのか。やってみない
とわからないのが本音でしょうが、「機動的に制度や公募要領の見直しを続
けていく。臆せず奮って提案して欲しい。」といっているNEDOそのものが
機動性が小さい組織であることが心配なところです。RGGIの仕組みは善く
できています。このあたりも参考にしていただきたいところです。
また、東京都あたりにもRGGIの制度作りにリーダーシップを取ったニュ
ーヨークをならって色々と動く中で、都のさまざまな環境行政の一本化を
図って欲しいものです。色々な施策をやっている割にわかりにくい。わかり
にくいと都民(就業)として何からやっていっていいかわからない。また
やったことの効果がわからなければ、次の行動に結びつかない。
日本は世界第4位のCO2排出国です。その中で東京都が占める割合は人口比
を確実に超えています。オリンピックを誘致するなら、RGGIに負けない
動きの中心になって、CO2が出ないオリンピック誘致都市としてエントリー
するくらいのインパクトが必要な気がします。
ちょっと気合が入りすぎました。まじめに考えています。
Mr.削減