井上もやしの日常

ほぼ「つぶやきの墓場」となっております。ブログやSNSが多様化して,ついていけないのでございます。

映画「アブラクサスの祭」 ~地元民の視点~

2010-10-25 21:51:12 | Weblog
 23日(土)が勤務日になったので、今日はその振替休日。

 お天気が良ければ、今が紅葉真っ盛りの中津川渓谷あたりに行こうかと思ったものの、晴天とは言えず、国道115号線を登るにつれて、雲が厚くなり、小雨も降り出した。これは行ってもいい写真が撮れないと、若干行き先を変え、耶麻郡磐梯町の慧日寺(えにちじ)へ。ここは、奈良時代から平安時代の初めに掛けて活躍した僧の徳一(とくいつ)が開いたとされる寺だ。徳一は東大寺で修行して東国で多くの寺院を建立したとされる。

 慧日寺は数年前に金堂が昔ながらの工法で再建されたということを聞いていたので、ここを訪れてみた。門と金堂は再建されているが、講堂や食堂は当時の土台が残っているだけである。小雨が降る中で写真を何枚か撮って、福島市へと戻った。

 約1時間半掛かって福島市へ戻ると、次は福島フォーラムの「アブラクサスの祭」へ。全国で公開されるのは暮れ頃かららしいが、福島県で撮影したということで県内では10月9日から先行上映している。

 筋を一言で言うと、うつ病の坊さんが日頃の煩悩や身近の人の死などを乗り越えて自分の住む町でロックのライブを行う話だ。ラストのライブシーンに向けて徐々に盛り上がっていくところは、映画「ソラニン」を彷彿とさせた。また、5年前に見た短編集「Jam Films S」の「α」で「個性」とは何かを演じていたスネオヘアーが「自分」とは何かを演じているのが面白い。

 物語の舞台は福島県にある「春見町」という架空の町。種明かしをすれば、ロケを行った伊達郡国見町と田村郡三春町をミックスしたものだ。国見町は私の住んでいるところから比較的近いので「ああ、これは龍雲寺(←主人公・浄念がお勤めしている寺)から東北道を見下ろしたシーンだ。」と分かるし、三春町のシーンでも「看板に『郡山信用金庫』って書いてあるから、これって三春だ。」と気付く。私の頭の中では50km以上離れている別の町だから、ちょっぴり混乱を呼ぶ。

 方言もそうだ。舞台が福島県だから、もちろん中通り(福島県を縦に三つに分けた中央の地域。)の方言が使われているが、地元の私たちが聞いたらちょっと変。寺の住職・玄宗(小林薫)は間違いなく福島弁の言葉を話しているが、アクセントがとっても軽い。「美しすぎる福島弁」だ。地元に根ざした龍雲寺の住職なのに惜しい。それに引き替え、菓子店店主役のほっしゃん。は福島弁をうまく使いこなしていた。お笑い芸人の勘のよさをまた痛感した。

 ストーリー的に無理が無く、とても分かりやすいが、もう少し浄念の悩みの根源やその解決の過程を詳しく説明してくれたらよかったのにと思った。収穫としては、ともさかりえの自然な演技だ。彼女はどんな役をさせても極々自然に演じることができる。困ったときの右側が上に上がるくちびるもご愛敬だ。


 ☆ 総合評価  80点