貧者の一灯 ブログ

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貧者の一灯・妄想物語

2022年11月20日 | 貧者の一灯
















これは、私が大学4年生の時の話です。

当時化学系の学部に所属していた私は、
卒業論文発表まで3ヶ月を切っており、
研究室へ寝泊まりしながら実験を行う日々
を送っていました。

その日は私以外の学生はおらず、研究室
には1人だけ。夜の11時を過ぎる頃には、
もはや建物に私だけという状況になりました。

ふと時計を見ると、12時半ごろ。ひたすら
実験室で化学反応の実験をしては、
フラスコに試薬を添加していました。

研究室の間取りなのですが、パソコンなど
で事務作業を行う部屋と、ドラマで見るような
実験室が壁を挟み隣同士になっています。

壁にはドアが1つあるだけです。各部屋には
外の廊下へと繋がるドアが付いていますが、
これが古いせいなのか開け閉めすると「ギィー」
と大きな音がするため、どちらの部屋に
居ても誰かが開けたなと分かります。

突然「ギィー」という音が聞こえました。

私はてっきり「先輩か誰かが来たのかな」と
思い、さほど気にはしませんでした。

というのも私も含め理系学生は夜型人間
が多く、夜12時を過ぎてから来る大学院生
の先輩もいるくらいです。

とりあえず挨拶はしておくかと思ってパソコン
の部屋を覗いたものの、誰もおらずシーン
と静まり返っています。

「あれ?」とは思ったのですが、最近ずっと
徹夜続きだったので聞き間違いかな、くらい
にしか思いませんでした。

それから1時間くらい経ったでしょうか。
「ギィー」音がまた聞こえました。

今度こそ誰か来たのかと部屋を覗いても、
やはり誰もいません。

2回も異変が起きたので、さすがに私も怖く
なり実験を辞めて帰ろうかと考えます。

しかしここで辞めたらまた最初からということも
あり、それでは締め切りに間に合いません。

気分転換でもしようかと、自分のパソコン
で動画の実況を見て気を紛らわせながら
作業を進めていきます。

3時前になって実験結果の確認と片付けを
行い、うまくいった安堵感に加えて恐怖心
も薄れてきました。

あと少しで朝を迎えるのなら、このまま研究室
で仮眠した方が良いなと思った私は、
ソファーでブランケットを被り目を閉じます。

どのくらい寝ていたのか分かりませんが、
私は「キィキィ」という音で目が覚めました。

何だと思い周囲を確認すると、真っ暗な
部屋で作業着のようなものを着ている男が
座っていました。

状況が呑み込めない私は、緊張で硬直します。
するとその男は立ち上がり、ドアを開け廊下
へ出ていきました。

私は勇気を振り絞りって

「オイッ、待たんかい!」と叫んで後を
追いますが、男の姿はどこにもありません。

廊下も真っ暗だったので、明かりを点ける
べくスイッチを押そうと階段の方に向かって
歩きます。

すると廊下の奥で何か動く者が見え、
目をこらすとあの男が立っていました。

私がギョッとすると同時でした。

その男は私の方に向かって歩いてきます。
いや、歩くというより滑るような感じで、
スーっと結構速いスピードで迫ってくる
ではありませんか。

私は逆方向に向かって走り、普段は使わ
ない非常階段を駆け下りてアパートに逃げ
帰ると布団にくるまって震えていました。

朝になって9時頃に研究室へ戻ると、何事
も無くいつもの日常でした。

私は先輩に夜中にあったことを話すと、
そのような男を目撃した人は他にもいて、
先輩の先輩にあたる方も分析機器の
前に立っている作業着の男を見たの
だそうです。

その後、私はどれだけ忙しくても夜の
9時前、他の学生がいる間に帰宅する
ことにしました。

卒業式のコンパで教授に男の話をした
ところ、大学は元々炭鉱があった場所に
建てており、そこで亡くなった方なので
はないか、と言っていました。 …












今、ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻
が続いています。 …



昔、ソ連邦に属していてソ連の崩壊と共に
独立した「ウクライナ」と言う国がある。


北海の沿岸に位置し、ロシアとしては南で
土地も肥沃で、小麦はとれるし、石油は
豊富、おまけにソ連時代の軍事基地があり
原爆まで持っている。

それでも日本にとってはあまりなじみの深い
国ではなかったが、大統領選挙の混乱で、
マスコミの話題に乗るようになった。

それは、野党からの大統領候補ユシシェンコ
氏が毒薬を盛られて顔が変わったこと、
その理由が「ダイオキシン」のようだという
スイスの病院の発表でさらに世界的な関心
が集中している。

ウクライナは草原の広がるのんびりした
雰囲気の国だが、もともと農村であったこと、
ソ連時代に世界と隔絶した環境にあった
ことから、まだ「前近代的」な社会が残って
いる。

たとえば、共産党時代の名残で、権力が
中央に集中してトップの同意なしにはなにも
動かないということ、

それが原因して経済活動を行うシステムも
改善が進んでいない。そんな中で政権の
腐敗は酷く、世界でもナイジェリアにつぐ
腐敗国家とも言われている。

前大統領、前首相など指導者が軒並み
裁判やそれに準じる糾弾を受けている。

権力の腐敗は民主化の遅れや司法、立法、
行政の三権が分立していないことも原因して
いるが、全体として共産主義から民主国家に
変化する過程で起こる問題・・・

国民が「仕事をしなくても生活したい」という
習慣からの脱皮が難しいこと・・・も大きい。

それに加えて、旧共産国に共通したことだが、
共産主義の間にすっかり国際競争力を失って
いるので、「自由化」をして国を開放すると
安い外国製品にすっかりやられてしまう。

つまり長い期間を考えれば、鎖国状態を
続けているわけにはいかないから、貿易を
自由化しなければならない。

そうすると外国製品で国内の企業がつぶれ
て失業者がでる。・・・こんなことなら前の
共産主義の方が良かった・・・ということになる。

共産主義の時代の非能率のつけは何時
かはウクライナの国民が支払わなければ
ならない負債であるが、それはできるだけ
先送りしたい。

できれば自分の世代ではなく、子どもの
世代にその負債の支払いを伸ばしたい・・・
人間はそう思うのである。

このようなウクライナの不安定な状態の中で、
大統領選挙が行われた。

候補者は、現首相と前首相。

前首相は野党から出馬したユシシェンコ氏
である。彼はなかなかの男前で選挙戦も
有利と予想されていた。

ところが選挙戦中盤に突然、急病になり、
入院した。幸い、選挙戦を戦う程度には
回復し、戦いに復帰したもののその顔相
は一変していた。

選挙は現首相が僅かな差で勝利したものの、
大規模な不正が発覚し、ウクライナ社会は
争乱状態になり、最高裁判所が選挙の
大規模不正を認めて選挙のやり直しを命じた。

そしてスイスの病院で診察を受けた
ユシシェンコ氏の血液から通常の6,000倍
の濃度のダイオキシンが検出された。

日本のテレビや新聞は、一斉に「ユシシェンコ
氏、猛毒のダイオキシンで毒殺をはかられる」
と報道された。

ユシシェンコ氏の血液から通常の6,000倍の
濃度のダイオキシンが検出されたのだから、
自殺を企てることは考えられないので、
おそらくはユシシェンコ氏に恨みを持つ
ものか、政治的な理由で毒殺を測ったこと
は大いに考えられる。

彼の顔の「ぶつぶつ」は塩素座そうと言わ
れるニキビの酷いもので、このような酷い
ニキビは塩素系の毒物によって引き起こ
されることも判っている。

だから「猛毒」のダイオキシンが原因している
可能性もある。しかし、そのように考えるのは
少し慌て者と言われても仕方がないかも
知れない。この事件はもう少し奥が深い。

このニュースを考える前に二つの仮定を
おいてみよう。
1) ダイオキシンが無毒の場合
2) ダイオキシンが猛毒の場合

まず考えやすい「ダイオキシンが猛毒」と
いうのから取り組む。

ユシシェンコ氏を亡き者にしようと企み、
食事や飲み物のダイオキシンを入れる。

ダイオキシンは無臭で無味なので、
普通には気がつくことはない。

ダイオキシンはかつて「青酸カリの6万倍
の毒性」と言われたぐらいである。

青酸カリがごく僅かで即死するぐらいだから、
6万倍というと見えないぐらいの量で死ぬ
はずである。

しかしユシシェンコ氏は通常の6,000倍の
血中濃度になったが、一命は取り留め、
顔にぶつぶつがでただけだった。

顔は政治家にとって大切だが、命を失わ
なかったことから考えると、たとえダイオキ
シンが猛毒だったとしても、大した毒では
ないことがわかる。

醤油でも砂糖で6,000倍にもなったら死ぬ。
だからダイオキシンは醤油より弱い毒性
とも言える。

次に第二の仮定「ダイオキシンは無毒」
を考えてみよう。

ユシシェンコ氏の顔が変わった。
血液からダイオキシンが検出された・・・

この二つのことからダイオキシンの有毒性
が証明されたように感じるがトリックという
のはいつもこのような形で姿を現す。

ダイオキシンが無毒の場合、次のような
経過でつじつまはあう。

ユシシェンコ氏に盛られた毒物は「農薬」
だった。

日本でもかつてダイオキシン入りの農薬
が使われていたように、ダイオキシンは
普通、塩素系農薬の中に含まれる。

そして農薬は人間が直接、飲んだり食べたり
すれば有毒だ。ときどき、殺人にも使われる。
ちなみにダイオキシンはこれまで殺人には
使われていない。

ユシシェンコ氏が飲んだとすると、その中に
ダイオキシンが含まれている可能性が高く、
血中のダイオキシン類を測定すると観測
される。

つまり「ユシシェンコ氏の顔を変えたのは
農薬だったが、その農薬の中に含まれて
いる無毒のダイオキシンの濃度を測定した」
ということの可能性が高いのである。

科学とは難しいものである。

一般の人が科学に弱いことを利用して
いままでもあくどいことをしてずいぶん
儲けた人もいる。

このケースが悪意があったかどうかは
別にして、ユシシェンコ氏が病気したこと、
血中からダイオキシンが検出されたことと、
ダイオキシンが有毒であることは直接的
な因果関係があるわけではないのである。

ダイオキシンは気をつけていなければ
ならないものの一つであるが、「猛毒」
でないことは確かである。

だからダイオキシンで人を殺すことは
難しい。今度のユシシェンコ氏の事件は
それを端的に示している。

日本のマスコミは「猛毒のダイオキシン」
などと真実ではない報道を控えた方がよい。

この深刻な話にはオチがある。

ユシシェンコ氏が毒を盛られたその日、
ユシシェンコ氏は彼の奥方とキスをした。

そして奥方は普段には感じられない異様な
「キスの味」がしたと言っている。

ダイオキシンには味がない。。…