貧者の一灯 ブログ

掲載しているお話は、当ブログには著作権はありません。
掲載内容に問題がある場合は、お手数ですが ご連絡下さい。

韓信 [シリーズ] 砂漠を行き、草原を駈ける・関外追放

2021年05月31日 | 流れ雲のブログ










歌:中尾ミエ
作詞:なかにし礼:作曲:穂口雄右

△好きなら 好きだと 言いなさい
言わなきゃ なんにも 分からない
▲出会ったばかりで いきなり好きとは
言い出しにくい
それよりひとまず ビールかなんかで
乾杯しよう
△女を 酔わせて どうするの
あなたも 案外 古いのね
△出会ったばかりで いきなり好きよと
言われてみたい
▲出会ったばかりで いきなり好きだと
言えないわけは
△本当の恋ならば
▲本当の恋だから
△言葉が大切 ちゃんと言葉で言って!
▲言葉に出せない気持ちが 分からないか
◎たった一言 好きと一言 なぜ言えぬ
△いつも女は 愛の言葉を 待っている
▲いつも男は 愛の言葉が 苦手だよ
◎見栄や誇りや変なプライド捨てないと
男と女はすれちがう
△欲しいと言いたいわけでしょ
▲欲しいと言ってもいいかな
△欲しいも好きよも同じよ
▲欲しいも好きよも同じか
△欲しけりゃ あげましょう
▲欲しいよ 大好きさ













韓信 [シリーズ]
砂漠を行き、草原を駈ける ・関外追放


「……今朝ほど、お父様のもとに皇帝陛下からの使者が
参りました。

それによると……将軍さまは敦煌を立ち去らなければ
なりません。陛下はひどくお怒りのようで、将軍さま
のことを玉門関から西へ追い出せと……

だから私は西域で何があったのかを知りたいのです」

「敦煌を立ち去れだと? ……陛下は……無慈悲だな」  
それきり李広利は考え込むように黙ってしまった。

言葉が出てこず、頭を抱える。彼にとってこれは想定外
の仕打ちだった。

敗戦の罪を問われるとすれば、長安へ赴いたときに
皇帝から直接罰を言い渡されるものと思っていたが、
自分には帰還さえも許されないという。

玉門関の外へ出て行けということは、事実上彼は追放
されたも同然の処置を受けたということであった。

「なんとか釈明をすることはできないのでしょうか。
戦いに敗れたことが罪になるというのなら、
軍人を志す者はこの世にいなくなりましょう。

死力を尽くしたことを陛下にご説明できれば……」  
欣怡は励ますような口調で李広利を慰めた。しかし、
それに対して李広利は「無駄さ。無駄だよ」
と言って取り合わない。

すでに彼の表情には諦めの色が浮かんでいた。
「君が傷んだ髪を切ったことでお父上に叱られたの
と同じようなことだ。

私の行為は状況を考えれば仕方の無いことであったが、
結果としては負けたことしか残らない。

死力を尽くしたが負けた……そのような結果より、
怠けていたが運良く勝った、その方が陛下はお喜びに
なるのだ」

「そんな……」
「もとより私の軍の兵たちは、私個人が所有している
ものではない。陛下からお預かりしているものだと
考えれば、その多くを失った責めを負わなければ
ならない。

その覚悟はしていたつもりだが……」
「ですが、夫人さまの件もあります。情状酌量の余地
はあるように思うのですが……」

「その件に関しては、私の認識が甘かったと言わざる
を得ない。陛下は妹が死んで、もはや愛などの感情は
失せたのだろう。

もとより私や延年を重用したとしても、妹が生き返る
わけではない。国の重大な決断事項を一身に任されて
いるお方だ。そのような個人的感情で人を優遇したり
するわけにはいかないだろう」  

驚くことに、李広利は皇帝の処置に理解を示した。
物わかりのよい態度を示したと言えばそれまでだが、
まったく不満がなかったと言えば嘘になるだろう。

彼は欣怡に対して次のような言葉を付け足した。
「これでも温情的措置がなされているのかもしれぬ。
本来であれば有無を言わさず首をはねられていても
おかしくなかった。

妹がむざむざ死んでいくのを救えなかった陛下に
対しては、正直なところ……恨んでいるが、それと
これとは話が別だ」

では彼は関外の地で野垂れ死ぬつもりなのか……。
それを聞きたく思った欣怡は、問い詰めるような口調
になることを抑えることができなかった。

「おわかりのことだと思いますが、玉門関から西は
化外の民が住む場所です。そんなところでどうやって
一生を暮らすおつもりですか。

そのまま漢には戻らずに、西域で一生を終える
おつもりなのですか」  

問い詰められたところで李広利には将来のことなど
わからない。ただ、情勢が変化することを待つだけ
であった。

希望が持てる点としては、皇帝がただ一度の失敗で
西域の覇権を諦めることはないだろう、ということ
だけである。

「……いつか、この私が得た経験と知識が、皇帝陛下
に必要となる時期が来るだろう。そのときが来るまで
待つしかない」

「そんなぁ……本当にそれでいいの?」  
欣怡は思わず李広利の腕を掴み、そのような声をあげた。

「将軍、私の口からは申し上げにくいことですが……
ここから立ち去っていただかねばなりません」  
太守の尹慈は申し訳なさそうな口ぶりで告げた。

我々は等しく落胆していたが、公には不満を表すことが
できない立場である。

敦煌退去が皇帝の勅令であるならば、従うより他に
道はなかった。

「つきましては、玉門を出た僅かの距離に塞とりで
(長城)がございます。ご一行はそちらを目指して
いただき、そちらに起居していただくのが良策かと
存じます。

新設の塞でありますので、清潔で安らかに過ごせ
ましょう。食糧などは可能な限りこちらから供給
いたします」

「ありがたい。太守どの、感謝申し上げます」  
長城にまともな寝所などあるのだろうか……

無ければ作るしかないし、食糧に関しても供給を
受けるとはいえ、それにすがってばかりいることも
好ましくない。

種や苗などを仕入れて屯田することも考えなければ
ならないだろう。

しかし、玉門周辺は砂漠のただ中である。そのような
土地で作物が育つのかどうかも不安であった。

「娘の欣怡を定期的に赴かせます。女官も同行させ
ますので、その際には身の回りの世話をお申し付け
ください。

そして……くれぐれもお諦めなさらぬよう……
復権の機会はいずれ必ず訪れます」

「うむ……そう願おう。それがいつの日になること
やら見当もつかぬが」  

このときの李広利には尹慈の励ましに力強く応える
余裕がなかった。妹の弔いも済ませていないうえに、
彼に向けられた仕打ちはあまりにも非情な「入国拒否」
である。

「無理もなかろう」尹慈は娘を相手にそう呟いた。
欣怡もそれに対して、「はい」とだけ返した。

快活な彼女も、いまや言葉少なげであった。

……













猫の寄生虫に感染すると反射神経が鈍くなる

もしもあなたが猫から寄生虫をうつされると、
交通事故にあいやすくなったり、犯罪の道に走ったり、
自殺したくなったりするかもしれません。

これはウソのようですが本当の話です。

猫の寄生虫である「トキソプラズマ原虫」に感染すると、
原虫に脳が占拠され、マインドコントロールのような
状態になることがわかってきました。

この原虫は、マラリア原虫の親戚筋にあたります。
トキソプラズマは、動物に寄生する単細胞の微生物、
原虫の一種です。

DNAを解析した結果、人の行動を左右するドーパミンの
合成に関係する遺伝子が含まれていることが
わかりました。

トキソプラズマによる奇妙な振る舞いに最初に気が
ついたのは、チェコの進化生物学者、ヤロスラフ・
フレグル教授。

自分が感染していることを知った直後から、不注意な
行動が増え、反応時間が遅くなるなど不可解な現象が
起き、原虫の感染によるものではないかと
ひらめいたのです。

「原虫の感染により人間の行動が変わる」という仮説を
発表したところ、「UFO目撃」並みに扱われ、まったく
相手にされなかったそうです。

現在では、多くの研究者がこの仮説を信じ、関連の論文
も多数発表されるようになりました。

感染すると反射神経が鈍くなるのと同時に、リスクを
恐れなくなるため、交通事故にあう危険性が高まる、
という調査もあります。

新しいテーマは自殺との関係です。

2012年の「精神臨床医学誌」に、トキソプラズマ感染者
の自殺率は、非感染者の7倍になるというデータも
発表されました。

先進国の人口の約3分の1がトキソプラズマ原虫に感染
しています。人への感染は、汚染された食肉や猫のフン
を介した経口感染が一般的です。

起業とも関係あるようです。

2018年、チェコの研究者がこんな発表をしました。
感染した起業家は「失敗を恐れず」「起業の意欲が高い」
こともわかってきました。

研究者は「金持ちになるために感染することはやめて」
と警告しています。

発展途上国では現在でも流行する「狂犬病」

2020年6月、愛知県で入院していた患者が狂犬病で亡く
なったというニュースが流れました。直前にフィリピン
から入国しており、海外で感染し、帰国後に発症したと
みられます。日本における狂犬病での死亡は14年ぶりです。

日本では半世紀以上前に根絶しましたが、狂犬病予防法
が制定される1950年以前は、多くの人が感染し死亡
していました。

感染した犬にかまれると、ウイルスが神経系を介して
脳の神経組織に達し、水や風を怖がる、唾液(だえき)
や汗などの分泌が増加する、マヒ、幻覚を起こしたり、
犬の遠吠えのような唸り声を上げる場合もあります。

猫由来の感染症、トキソプラズマと同様、微生物が
人の脳まで支配するという例です。

発展途上地域では現在でも狂犬病の流行が続き、世界で
年間約5万9000人もの人が死亡しています。発症すると
致死率はほぼ100%とされています。

途上地域の奥地を旅行する場合は、ワクチンを必ず接種
すべきです。

トキソプラズマも狂犬病も、日本では感染する可能性が
少ないと思われますが、人間が性格まで操られるという
のはホラー物語ではないでしょうか。

日本人に最も身近な感染症「ピロリ菌」

人体は「常在菌」と呼ばれる1000種以上の微生物で満ち
あふれています。胃の中にいる常在菌の一つが
「ヘリコバクター・ピロリ」、通称ピロリ菌です。

多くの人が持っている菌であり、健康診断で、菌の検査
や除菌を勧められた人も多いのではないでしょうか。

19世紀以来、胃の中に螺旋(らせん)状の尾を持つ細菌
がいることはわかっていましたが、たまたま居合わせた
ものと信じられていました。

胃液の主成分は塩酸です。空腹時にはpH1~2という
強酸性になります。 このような強酸性の環境に生きて
いる細菌がいるとは考えられず、胃炎や胃潰瘍
(いかいよう)はストレスが原因とされていました。

その後、オーストラリアの大学教授がピロリ菌の培養に
成功。胃がんや十二指腸潰瘍、慢性胃炎を引き起こして
いることがわかってきました。

古くから人びとを悩ませてきたらしく、5300年前の
氷漬けのミイラの胃の中からもピロリ菌の遺伝子が
見つかっています。

ピロリ菌をもっていない人は食道炎や十二指腸潰瘍に
悩まされることがあります。

ピロリ菌は過剰な胃酸を中和して、胃液の逆流を防ぐ
効果があり、アレルギーを抑える、という研究者
もいます。意外に役に立っている面もあるのです。
・・・







名古屋市熱田区の大西隆信さん(64)は定年退職後、
社会へのささやかな恩返しとしてシーン・ボイスガイド
のボランティアを始めた。

視覚障がい者が映画を楽しむためのお手伝いをする活動だ。
スクリーンが見えないので、画面の風景や俳優のしぐさ
などをマイクで説明する。

映画の中の会話とダブらないように、簡潔で的確な言葉
が求められる。そのため、大西さんが参加している団体
「ボイス・ケイン(声のつえの意)」では大勢のメンバー
で手分けし、何度も練り直して台本を作る。

ある映画鑑賞会で66歳の男性を会場まで案内したとき
のこと。

とてもお元気そうで、よく笑う人だったので
「本当に明るい性格ですねー」と話しかけた。
「能天気ですから」という返事。

ところが、しばらく歩いているとこんな話をされた。
「僕は20年くらい前、医者から1年以内に失明します
と宣言され、その通りになってしまった。

失明するまでの1年間は本当に悩み抜いたんだよ。
つらかった。だけど、失明してから、ある日突然気が
付いたよ。

いくら悩んでも解決できないことはもう悩まないって。
そこで吹っ切れて人生が変わったみたいだ」

だから今は、毎日楽しく生きているし映画も何度も
見に来るのだという。

大西さんは無意識に「ありがとうございます」と口に
していた。障がい者を案内して、自分のほうが人生を
教えていただいた。

ボランティア活動は、あくまで「させていただく」
という謙虚な姿勢が必要だと強く思ったという。

「これからも『気付かされる』貴重な体験の場にしたい」
とおっしゃった。 ・・・

author:中日新聞掲載