毛利正道のブログ

これまでの「OCNブログ人」から、OCNの都合で、「Gooブログ」に引っ越しました。今後ともよろしく。

憲法9条が地球人類を救う 「平和の種」5月15日号掲載版

2022-06-04 18:57:34 | 日記

     憲法9条が地球人類を救う                   

「平和の種」98号2022年5月15日号所収     

 毛利 正道(弁護士・岡谷市在住)

 

著者注 この論稿は、今年4月18日付でこのブログで公表した、本稿と同名のタイトルの論稿が

    「厳しい」校正を経て完成体になったものです。

 

「21世紀型戦争」の恐怖

私にとって連日約2か月間に亘(わた)って「体験」したロシアのウクライナ侵略戦争は、「21世紀型戦争」を脳裏に焼き付けるものとなった。戦後の国際秩序は、2度に亘る世界大戦の教訓として国連憲章が全ての武力行使を違法とする大原則を定めたところから出発している。その、あくまで例外として、個別的自衛権の他に、「主権国家からの要請」があることが証明された場合にのみ、集団的自衛権の行使としての武力反撃が認められるに過ぎない。今回は、この要件を欠いていることが明らかであるにも拘(かか)わらず、少なくともこの原稿が完成した4月18日まで延々と戦争を続けている。

そこでは、真に必要な対応を遅らせる、虚実(きょじつ)いずれとも容易に判断しにくい電子戦的情報が乱れ飛び、連日のようにおびただしい人々が、高度な殺戮(さつりく)兵器による卑劣な戦争犯罪の犠牲になっている。

核兵器・大量殺りく兵器の使用やその威嚇(いかく)、原発武力攻撃までが再三なされ、それらが使用された疑いがあってもこれを直ちに断罪(だんざい)することはすこぶる困難な中、第3次世界大戦に拡大する危険性が皆無(かいむ)とは言えないまま推移している。戦争とその準備・訓練による温室効果ガス大量発生も無視できない。

 

プーチンには、これも戦後国際秩序の出発点である、独立国相互の国境線を遵守(じゅんしゅ)する原則より、国境線を超えても同一のロシア民族をまとめ上げていくという民族意識が強い。ジョージア・ウクライナで留(と)まるであろうか。

また、彼にはこの戦争を早期に終わらせる意思が見えず、2035年まで13年間続くという説もあるほどであり、経済制裁等もあって兵士・民間人を問わず世界中の民衆の生存権が脅(おびや)かされていく。

 

今後のあるべき国際秩序を模索する場合に、ロシアも介入して現在まで10年以上続く間に50万人が犠牲になっているシリア内戦、或いは台湾統一を一国内の問題に過ぎないとする中国の姿勢なども気になる。世界の「内戦」にも注視が必要である。

ロシアで、戦争に関する虚偽情報を流した者を最大15年の拘禁刑(こうきんけい)に処する法律が制定されたが、重要なことは、ロシアに限らず、戦争ないし戦争の方向に進むことに対する民衆の目耳口を塞(ふさ)ぐ攻勢が世界中で強まっていることである。

 

戦争で人類破滅

今回の侵略戦争を許すとなると、上記の如く、国連で拒否権を持つ大国による武力行使、自衛権行使の要件を欠く武力行使、フェイクも横行する電子情報戦、連日繰り返される残虐な戦争犯罪、ありうることを前提とする核戦争、発電をやめても永久に攻撃の的(まと)になる世界437基の原発、内戦名目の武力行使などを包含(ほうがん)する戦争が多発していく恐れがある。温暖化対策こそが緊急に求められている地球人類へのダブルパンチにもなりかねず、このような、力による「21世紀型戦争」に何としても終止符を打たねばならない。国連憲章に団結することにより、世界から戦争をなくして、平和に生きる権利を初めとして、豊かに人権を発展させていく方向をとることが、第二次大戦後77年にして人類に課せられた試練である。

 

 とりわけ、現在、日本で声高(こわだか)に論じられている、専守防衛否定論、敵国中枢(ちゅうすう)攻撃能力保有論、核兵器共有論、対中国軍事対抗論、憲法9条改定論などに示される軍事力拡張論が、世界に与える影響を注視する必要がある。

「唯一の被爆国」日本が核兵器を持つとなったら、近隣韓国・フィリピン始め世界中の国々が核武装を競うようになるだろう。むろん、中国・北朝鮮・ロシアは核戦力含む一層の軍拡を行ってくるに違いない。そうなると、今回プーチンが再三言及しているように、通常兵器による攻撃を回避するために、先に核兵器を実際に使用する国が出てこない保証はない。ここ日本での軍事力拡大が、一層の危(あや)うい世界を造り出す引き金になる恐れが強い。

 

憲法9条を生かし、地球上で全武力行使禁止を

 人権の深化と種(しゅ)の保存を求める人類として、対抗策があるか。ある。

地球上から一切の武力行使を厳禁することである。

それには自衛目的の戦争も内戦も含む。

世界は、人類に対する原爆投下の翌年に、その直前に制定された国連憲章の域を遥かに超えた、一切の戦争を禁止する日本国憲法を生み出した。人類は、核兵器を含む戦争に、人類を根絶やしにする危険があることを察知(さっち)し、そのような世界出現を阻(はば)むために、侵略戦争による夥(おびただ)しい破壊を生んだ日本に、世界をリードして武力紛争亡き地球を生み出す一大事業を託したのである。

 その決意さえあれば、方法は無数にある。軍隊のない世界23か国や国連、世界のNGOとも大いに協調することはむろんである。内戦を含む一切の武力行使禁止国際条約を、既に発効した核兵器禁止国際条約に学んで、世界に提起していく道もあろう(本年4月10日付毛利正道のブログ「地球から全ての戦争をなくすために、戦争禁止国際条約を」参照)。

 

この3月27日投票の兵庫県西宮市長選では、維新の会候補が3割しか得票できずに落選、市議補選でも2名とも落ちた。維新は、「天から地に落ちた」と自評したが、そこには市民の、核共有論への批判のエネルギーがあった。

一切の武力行使禁止の実現は、軍事力拡張によって人類を滅亡させることよりは遥(はる)かに困難を伴うであろうが、しかし、人類を救うという夢と名誉がそこにはある。戦争か平和かを巡るこの地平に立ち、心ある人類同士、さあ夢を語り合うところから始めよう。

 

軍事同盟解体、「地域的取り極め」で地球を覆いつくす

地域的取り極めに基づく集団安全保障とは、国連憲章に規定されているもので、当該(とうがい)地域の全国家が加入して、その中で紛争が起きた場合に武力紛争に移行発展しないように、当該(とうがい)地域全体で対応するというものだ。

これに対し軍事同盟は、同盟国でない国から攻撃されないように集団を形成するというもので、地域的取り極めのような国連による規制が働かないため、いわば無秩序に自国らの利益を追求し、武力行使もその一環として安易になされる危険がある。

今回の場合、NATOの東方拡大によってロシアが受けた脅威をロシア侵攻の原因として重視する声もあるが、ロシア側にもロシア・ベラルーシを含む6か国で構成されている集団安全保障条約機構(CSTO)という、1992年に結成された軍事同盟があり、ロシア軍がベラルーシ国内から自由にウクライナに進撃ないし攻撃出来てこそ、首都キーウ総攻撃も可能であった。この点一つとっても、軍事同盟なくしてロシア侵攻がありえなかったことが分かる。

振り返って、ここ東アジアにおいても、日米軍事同盟がなければ、日本が北朝鮮から攻撃されるかもと心配する必要はなく、台湾有事に関しても、日本が軍事協力しなければ、米国に中国と戦争する能力はなく、沖縄県含む日本領土が中国から攻撃され、国民が逃げる場を失うことを心配する必要もない。

 

この時、改めて「地域的取り極めに基づく集団安全保障」が想起(そうき)されるべきである。近くは、類似(るいじ)組織として東南アジア地域全10か国によって1967年に結成されたASEAN(アセアン・東南アジア諸国連合)があり、互いに戦争し続けていた地域が、結成以来年間1000回に及ぶ各種会合を重ねるなかで、55年間戦争ゼロを更新して来ている。中国・韓国・ロシア・米国・日本もそのASEAN主導の東アジアサミット参加国であり、平和創造力を思いきり吸い込める立場にいる。

 

模範的な地域的取り極めであるアフリカ連合は、1963年に前身が結成されて以来59年経過し、アフリカ大陸の全55か国が加入する組織であるが、多くの紛争の武力化ないしその激化を防いできている、

そして、ロシアを含むほぼ全欧州57か国で結成されている欧州安全保障協力機構(OSCE。これも地域的取り極めの類似組織)も、1975年に地域紛争の平和的解決等を掲げた「ヘルシンキ最終文書」を採択して発足したが、以来47年間、多くの紛争の沈静化(ちんせいか)に尽力してきている(ロシアについては、2008年ジョージア紛争・2014年ウクライナ紛争などから内部での関係悪化が指摘されている)。

あらゆる軍事同盟を解体して、地球を国連憲章で謳(うた)う「地域的取り極め」で覆うことは、内戦を含む全ての武力紛争を一掃するうえでも必要不可欠である。

 

平和を破壊する「敵国中枢攻撃能力保有論」

従来、専守防衛の日本では、相手方が日本の(領海・領空を含む)領土に攻め込んできた時に、これを領土外に押し返すところまでが防衛力として適法というものであった。その後、2015年以降、米国に対する武力攻撃を日本への攻撃と見做(みな)して対応できる安保法制が整備されてきた。その任を実行できる防衛力として「敵基地攻撃能力保有論」が展開されている。

これは、本原稿執筆中の最新情報では、自民党安保調査会による、政府の外交・安全保障政策改定に向けた提言原案の全容が、本年4月15日に判明した。そこでは、今後保有する敵基地攻撃能力は、大要(たいよう)、「ミサイル技術の急速な変化・進化により迎撃は困難になっている。専守防衛の下、弾道ミサイルを含む我が国への武力攻撃を抑止する。対象は、指揮統制機能等も含む。相手方から武力攻撃を受けて初めて行使し、先制攻撃はしない。」とあるという。

この「先制攻撃はしない」ということが、信用できるであろうか。

 この「敵基地攻撃能力」は、台湾有事に、自衛隊が米軍と一体になって中国に向かっていくために必要な武力を備えることを、狙いのひとつとしている。今後もどんどん高性能化していく日米と中国側双方のミサイルが飛び交うことが想定される。

そこでの悩ましい問題は、先に攻撃したほうが圧倒的に有利になるものの、先に攻撃したと判断されると、国際法上、米国と日本国がプーチン同様違法な侵略をなしたとして断罪(だんざい)されるとともに、その指導者の一人たる内閣総理大臣が戦争犯罪としての侵略の罪(終身刑あり)に問われることになりかねないことである。

そこで、先制攻撃との評価を受けることを避けつつ、なるべく効果的に攻撃するためには、先に手を出したか否(いな)か判別しにくい早い時点で、相手の戦争指導部を戦争遂行不能にさせてしまうことが狙われる。動き回るミサイル発射装置を的(まと)にしていたのでは、沖縄・鹿児島県を始めとする日米基地や日本の中枢などが攻撃されることを防げないからである。

しかし、中国側もこれを避ける作戦でやってくるであろう。このような熾烈な状況では、いずれかが核発射ボタンを押す危険も出てくる。今回のウクライナ侵略戦争を見ればわかるように、何が真実でフェイクであるのか判別しにくい状態で、犠牲者だけが積みあがっていく事態になってよいものであろうか。 

 

国連は、停戦への努力を

わたしは4月18日、国連総会でウクライナ即時停戦実現のために下記決議を採択するよう、国連グテーレス事務総長への要請文書を、外務省に届けた。

国連には、「平和のための結集決議」の発動という方策がある。この決議は、安保理常任理事国の拒否権行使などによって国連に期待されている責務を果たせない場合に、3分の2以上の賛成による緊急特別会合総会決議によって、必要に応じて武力行使・経済制裁を含む集団的措置について加盟国に適切な勧告を行うことが出来るというものだ。

一日も早い停戦を願ってやまない。

求める総会決議(案)

①ロシア・ウクライナ双方に対して、直ちに停戦をなし、停戦実効性を確保するため

 の国連平和維持軍がウクライナに派遣されることを承諾することを求める。

 

②国連事務総長に対し、双方に対して①を受け入れることを仲介するよう要請する。

 

③ ①の停戦並びに平和維持軍派遣についての関係国の同意が得られ次第、直ちに平

 和維持軍を派遣できるよう、各国並びに事務総長に対して、平和維持軍の派遣を計  

 画・準備するように要請する


最新の画像もっと見る

コメントを投稿