毛利正道のブログ

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憲法9条が地球人類を救う

2022-04-18 13:40:54 | 日記

               憲法9条が地球人類を救う

          2022年4月18日   毛利正道(弁護士・岡谷市)

21世紀型戦争の恐怖

私にとって連日約2か月間に亘って「体験」したロシアのウクライナ侵略戦争は、21世紀型戦争を脳裏に焼き付けるものとなった。自衛のための武力行使以外は厳禁されるという、2度に亘る世界大戦の教訓としての国連憲章を逆手にとって、自衛権の行使だから許されるという嘘の口実で開戦し、少なくともこの原稿が完成した4月18日まで延々と続けている。そこでは、真に必要な対応を遅らせかねないほどの虚実いずれとも容易に判断しにくい電子戦的情報が乱れ飛び、連日のようにおびただしい人類が高度殺戮兵器による卑劣な戦争犯罪の犠牲になり、核兵器・大量殺りく兵器の使用やその威嚇、原発武力攻撃まで再三なされ、使用された疑いがあってもこれを直ちに断罪することはすこぶる困難であるまま、いまだ第3次世界大戦に拡大する危険皆無とは言えないまま推移している。戦争とその準備・訓練による温室効果ガス大量発生も無視できない。

プーチンには、独立国同士というより「同一の民族だから構わない」とする内戦意識が強烈である点で、ロシアも介入して10年以上続く間に50万人が犠牲になっているシリアなど、世界の「内戦」をも注視が必要である。プーチンにはこの戦争を早期に終わらせる意思が見えず2035年まで13年間続くという説もあるほどであり、経済制裁等もあって兵士・民間人を問わず世界中の民衆の生存権が脅かされていく。重要なことは、ロシアで戦争に関する虚偽情報を流した者を最大15年の拘禁刑に処する法律が制定されるなど、戦争ないし戦争の方向に進むことに対する民衆の目耳口を塞ぐ攻勢が世界中で強まっていることである。

戦争で人類破滅

このように、今回の戦争を「21世紀型」として、第2次大戦終結から人ひとりの一生に並ぶほどの77年が経ち、もう少しで100年・1世紀経とうとする現在までの戦争の到達点として見るとき、もはや第1次大戦前における、兵士同士が軍事目標めがけて殺しあう戦争合法時代とは異質の、大殺戮時代に突入する恐れを抱かせる。ここで世界から戦争=武力行使を全廃しない限り、致死物質、人工放射線と温室効果ガスにまみれた、人類と生物亡き地球が遺されることになるのではないかと。

 とりわけ、現在、日本で声高に論じられている専守防衛否定論、敵国中枢攻撃能力保有論、核兵器共有論、対中国軍事対抗論、憲法9条改定論などに示される軍事力拡張論が、今回の戦争を同じように「体験」している地球上各国で一斉に幅を利かすようになるとどうなるか。「唯一の被爆国」日本が核兵器を持つとなったら(それは、核不拡散条約から核不保持国の保持禁止規定が改廃されている世界)、近隣韓国・フィリピン始め世界中の国々が核武装を競うようになるだろう。そこからは、今回のプーチンが再三言及しているように、通常兵器による攻撃を回避するために先に核兵器を実際に使用する国が次々に出てこない保証はない。計画中含め世界に648基ある原発を武力攻撃することはなによりも容易である。

そうなっては人類は終わり。世界的軍事力拡張論は、平和な世界を築く展望がないどころか、人類破滅の世界への確かな道程を提供している。

憲法9条生かし、地球上の全武力行使禁止を

 人権の深化と種の保存を求める人類として、対抗策があるか。ある。地球上から一切の武力行使を厳禁することである。そこには自衛目的の戦争も内戦も含む。世界は、人類めがけた原爆投下の翌年に、その直前に制定された国連憲章の域を遥かに超えた、一切の戦争を禁止する日本国憲法を生み出した。核兵器を含む戦争に、人類を根絶やしにする危険があることを察知し、そのような世界出現を阻むために、侵略戦争による夥しい破壊を生んだここ日本に、世界をリードして、武力紛争亡き地球を生み出す一大事業を託したのである。

 その決意さえあれば、方法は無数にある。軍隊のない世界23か国や国連、世界のNGOとも大いに協調することはむろんである。内戦を含む一切の武力行使禁止国際条約を、既に発効した核兵器禁止国際条約に学んで世界に提起していく道もあろう(本年4月10日付毛利正道のブログ「地球から全ての戦争をなくすために、戦争禁止国際条約を参照)。この3月27日投票の兵庫県西宮市長選で維新の会候補が3割しか得票できず、市議補選でも2名とも落ちた。核共有論への批判から「天から地に落ちた」と自評したほどの結果を生み出すエネルギーがそこにあった。軍事力拡張によって人類を滅亡させることよりは遥かに困難を伴うであろうが、しかし、人類を救うという夢と名誉がそこにはある。戦争か平和かを巡るこの地平に立ち、心ある人類同士、さあ夢を語り合うところから始めよう。

軍事同盟解体、「地域的取極」で地球を覆いつくす

講学的になるが、地域的取極に基づく集団安全保障とは、国連憲章に規定されているものであって当該地域を構成する全国家が加入してその中で紛争が起きた場合に武力紛争に移行発展しないように当該地域全体で対応するというもので、これに対し軍事同盟は同盟国でない国から攻撃されないように集団を形成するというもので、地域的取極のような国連憲章に基づく外的規制が働かないためいわば無秩序に自国らの利益を追求し武力行使もその一環として安易になされる危険がある。

今回の場合、NATOの東方拡大によってロシアが受けた脅威をロシア侵攻の原因として重視する声もあるが、ロシア側にもロシア・ベラルーシを含む6か国で構成されている集団安全保障条約機構(CSTO)という1992年に結成された軍事同盟があり、ロシア軍がベラルーシ国内から自由にウクライナに進撃ないし攻撃出来てこそ首都キーゥ総攻撃も可能であったという点一つとっても、この軍事同盟なくしてロシア侵攻がありえなかったことが分かる。振り返って、ここ東アジアにおいても、日米軍事同盟がなければ、日本が北朝鮮から攻撃されるかもと心配する必要はなく、台湾有事に関しても、日本が軍事協力しなければ米国に中国と戦争する能力はなく、沖縄県含む日本領土が中国から攻撃され国民が逃げる場を失うことを心配する必要もない。

このような時、改めて「地域的取極に基づく集団安全保障」が想起されるべきである。近くは、類似組織として東南アジア地域全10か国によって1967年に結成されたASEAN東南アジア諸国連合があり、互いに戦争し続けていた地域が結成以来年間1000回に及ぶ各種会合を重ねるなかで55年間戦争ゼロを更新し続けている。中国・韓国・日本もそのASEAN主導の東アジアサミット参加国であり、平和創造力を思いきり吸い込める立場にいる。模範的な地域的取極であるアフリカ連合は、1963年に前身が結成されて以来59年経過し、多くの紛争の武力化ないしその激化を防いできている、アフリカ大陸の全55か国が加入する組織である。そして、ロシアを含むほぼ全欧州57か国で結成されている欧州安全保障協力機構(OSCE)(これも地域的取極の類似組織)も、1975年に地域紛争の平和的解決等を掲げた「ヘルシンキ最終文書」を採択して発足以来47年間、多くの紛争の沈静化に尽力してきている(ロシアについては、2008年ジョージア紛争・2014年ウクライナ紛争などから内部での関係悪化が指摘されている)。あらゆる軍事同盟を解体して、地球を国連憲章で謳う「地域的取極」で覆うことは、内戦を含む全ての武力紛争を一掃するうえでも必要不可欠である。

平和を破壊する、敵国中枢攻撃力

従来、専守防衛の日本では、相手方が日本の(領海・領空を含む)領土に攻め込んできた時にこれを領土外に押し返すところまでが防衛力として適法というものであった。その後、2015年以降、米国に対する武力攻撃を日本への攻撃と見做して対応できる安保法制が整備されてきたことを踏まえ、その任を実行できる防衛力として「敵基地攻撃能力保有論」が展開されている。これは、本原稿執筆中の最新情報では、自民党安保調査会が政府が作成する外交・安全保障政策改定に向けた提言原案の全容が本年4月15日に判明した。そこでは、今後保有する敵基地攻撃能力は、大要、「ミサイル技術の急速な変化・進化により迎撃は困難になっている。専守防衛の下、弾道ミサイルを含む我が国への武力攻撃を抑止する。対象は、指揮統制機能等も含む。相手方から武力攻撃を受けて初めて行使し、先制攻撃はしない。」とあるという。この「先制攻撃はしない」ということが信用できるであろうか。

 この敵基地攻撃能力は、台湾有事に自衛隊が米軍と一体になって中国に向かっていくために必要な武力を備えることを、狙いのひとつとしている。今後もどんどん高性能化していく日米と中国側双方のミサイルが飛び交うことが想定される。そこでの悩ましい問題は、先に攻撃したほうが圧倒的に有利になるものの、先に攻撃したと判断されると国際法上、日本国がプーチン同様違法な侵略をなしたとして断罪されるとともに、その指導者たる内閣総理大臣が戦争犯罪としての侵略の罪(終身刑あり)に問われることになる。そこで、なるべく効果的に攻撃するためには、先に手を出したか否か判別しにくい早い時点で、相手の戦争指導部を一挙に壊滅させてしまうことが狙われる。動き回るミサイル発射装置を的にしていたのでは撃ち損ねた発射装置から発射されるミサイルで沖縄・鹿児島県を始めとする日米基地や日本の中枢などが攻撃されることを防げないからである(核兵器の覚悟も必要だ)。しかし、中国側も同様な作戦でやってくるであろう。今回のウクライナ侵略戦争を見ればわかるように、何が真実でフェイクであるのか判別しにくい状態で犠牲者だけが積みあがっていく。日本が侵略者として断罪され、且つ、焦土と化す。このような事態になってよいものであろうか。                      (「平和の種」2022年5月号掲載予定稿)

 


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