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今さらだけどROE(自己資本利益率)、ついでにPBRも

 株式投資をしている人なら、当然ROEについては知っていると思う。今年3月末に東京証券取引所がPBR1倍割れ1800社に改善策の開示を要請したことで、改めて日本企業のROEの低さが注目されることになった。

 ROEに関しては10年ほど前に一度かなり関心が高まったことがあった。2014年8月の伊藤レポート(経済産業省の「『持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~』プロジェクト」の最終報告書の通称)でも、「最低限でも8%のROEを上げられるよう要請する」となっていた

伊藤レポートは改版を重ね、現在は3.0 (SX 版)になっている。


ROE関連の定義と式のまとめ

 私もROEについて再確認したので、少しまとめておくことにした。まず定義や関連する式を以下にまとめた。



 なお、参考図書は広木隆さんの『勝てるROE投資術』になる。2014年11月の書籍で参照しているデータは古くなっているが、基本部分は不変で今でも参考になる。

 以下では上のまとめを少し補足説明しておく。


自己資本と純資産は必ずしも一致しない

 ROE=純利益/純資産として簡便化する場合も多いが、正確には分母は自己資本になる。ここでの自己資本は純資産から新株予約権(未来の株主分)と少数株主持ち分(子会社の少数株主に帰属する分)を除いたもので、親会社の既存株主分になっている。

 各社の決算短信が出ると決算情報のまとめのニュースが出るが、NQN(日経QUICKニュース社)だと純資産と自己資本も明記されている。一方、四季報だと自己資本とBPS(1株純資産)という形のまとめになっている。

 自己資本の上記定義から、自己資本と純資産は一致しない場合も一致する場合もある。直近の決算のニュースから一部を切り抜くと以下の例のようになっている。




ROEと株価、PBRとの関係

 PBRとPERは株式を評価する主要な指標で、株価によって値が変わる。ROEとの関係ではROE=PBR/PERとなり、ROEは株価とは直接関係しなくなる。ただ、高ROE銘柄は高評価になって、株価も相応に高くなっているのが普通である。

 変形した式だとPBR=PER×ROEとなり、(PERを一定と考えれば)PBRはROEに比例する。低PBRを脱するにはROEを高くする必要がある。収益力を高めれば低PBRを脱することができるという当たり前の話である。また、ROEがPERの逆数(益利回り)を上回ればPBRは1倍を超えてくる

 益利回りは市場(投資家)が求める要求リターンであり、簡易的には自己資本コストである。ある株価で増資に応じる投資家、あるいは市場で買う投資家は、その株価に対して求めているリターンがあり、それが資本のコストということだ。

 株価とは市場で評価され価格付けされた自己資本にほかならない。すなわち、自己資本の市場価格が時価総額(株価×発行済株式数)である。PBRとは自己資本の簿価と時価の比較のことだ。


ROEは3つに分けて考える

 ROE=売上高純利益率×総資産回転率×財務レバリッジと分解できる。

 売上高純利益率は企業の稼ぐ力、収益力を図る尺度そのものだ。損益計算書の一番上の項目が売上高で、原価や販管費や金融収支や税金などすべて差し引いた後の一番下の項目が純利益だからだ。

 総資産回転率は企業の資産がどの程度効率的に使われているかを表す。売上高に対して資産が何回転したことになるかで測っている。

 財務レバリッジは資産が自己資本の何倍になっているかを表し、負債の活用度を測る指標だ。負債をうまく活用して大きな資産を動員すれば効率的に稼ぐことができROEも高くなるが、財務基盤としては脆弱になる。見ての通り財務レバリッジは自己資本比率の逆数だ。

まとめの補足説明はここまで終わり。


JPX日経400はROEを重視した株価指標

 以前、「日本株インデックス投資ならどの指数連動がよいのか?」という記事の中でJPX日経400 についても紹介した。「時価総額や流動性だけでなく、資本効率やガバナンスにも重点を置いて優良株を選別」と書いたが、その選別にROEが使われている。

 JPX日経400は、一定の除外基準で不適切な銘柄を除いた後、売買代金や時価総額で上位1000銘柄をスクリーニングし、その後スコアリングして400銘柄を選定している。スコアリングには定量的な指標と定性的な指標があるが、定量的な方の3項目の内の1つが3年平均ROEで40%のウェイトになってる。

 以前の記事に「投資対象銘柄がJPX日経400やJPX日経中小型に含まれているかは一応チェックしている」と書いたが、参考にしたい指標の一つである。


ROE8%以上の意味

 伊藤レポートでもそうだが、ROE8%以上というのが目標になっている。上で「PBRはROEに比例する」と書いたが、正確ではない。赤字の場合はもちろん、PBR1倍以下では純資産に支えられ下方硬直性がでる。一方、ROEが6%を超える辺りからPBRが上昇し、ROEが8%になるとPBRは1.5~2倍になる(参考図書による。2005年1月~2014年8月の日経平均株価に対しての説明)。

 参考図書に図があったが、同様の図をネットで探したら見つかった。参考図書と同様に、以下の図は個別銘柄ではなく日経平均株価を対象にした2004年6月から2021年11月のデータに基づいている。




 個別銘柄では色々事情があるので一概には言えないが、要するにPBR1倍以上にするためにはROE8%以上が必要だと考えられているということだ。

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