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月夜の五線譜(仮設置)

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望月家側  実況

2008-03-10 10:17:00 | ノンジャンル
許可が出たので、こちらに私が差し上げた原文を掲載させて頂きますw
それではどうぞ~
3月5日 深夜

日付が変わってから数時間、動画サイトで某PのKAITO曲を流しつつ、絵を描いてるところへ兄さんが帰宅。
「マスター、たっだいま~♪」
機嫌よく言うと、彼はすぐさまいつもの定位置(横に立たれて見下ろされるのが嫌なので、机の傍らに低い椅子を用意している)までやってくると、ニコニコとしながら腰を下ろした。
(あぁもう、コイツと来たら無邪気過ぎて、本当に処遇に困るったら…)
とりあえず、私はヘッドフォンを外し、振り向きながらお帰りと返事をして、彼へと手を差し伸べ…
ゴツン!
「い、痛っ。マスター何するんですか?!」
兄さんは、いきなりの事に状況が把握出来ないと言わんばかりの表情で、小突かれた頭をさすった。
いつもとは別の意味で涙目になっている。
力こそそれほど入れなかったが、小さく鈍い音がしたし、そりゃ突然小突かれれば、驚きもするだろう…。
でも、自業自得だ。
私は席を立ち上がり、上目遣い気味の兄さんを見据えた。
「何するじゃないわよ、あんた私があれほど言ったというのに…あちらにご迷惑は、絶対掛けちゃダメだよって!」
「か、かけてませんよ~。マスターの仰ったとおり、麒麟さんを応援してましたっ」
それは解ってる。報告も受けてることだし。でも…
「…じゃあ、なんで向こうの兄さんに苛められたのかなぁ?」
「え…何で、それ…」
兄さんは、あちらでの状態を私が知らないとでも思ってたらしく、一瞬目を見開くとパチパチと瞬きした。
「逐一、報告は来てました。残念ながら」
「…そうだったんですかぁ」
(そうだったんだ、じゃないっての、元凶がこれじゃ、本気で相手する気もさぞ失せただろう^^;)
「苛められたって事は、大方あんたが何かやらかしたって事でしょ…向こうの兄さんは割とドライな方だし、苛めなんて、わざわざ非生産的なことしなさそうだもんね…」
「…話しかけただけです。他のマスターさんに直に会いに行くのも、他の僕に会うのも珍しいことだから、話しがしたくて…」
「だったら尚更おかしいじゃない。普通に話しかければ、話の相手くらいしてくれるでしょう?」
何があったのかは、本当はもうあらかた知ってる。
でも、本人から言わせなきゃいけない。
明らかな非が有る以上、反省はさせねば。
「…何が、あったのかなぁ?」
再度問いかける。
数分の沈黙…それが長く、痛く感じる。それでも辛抱強く黙って待っていると、彼はようやく重い口を開いた。
「…いつも、僕がマスターに恥ずかしい事言わせられるのは、あなたのマスターのせいだ…って」
最早兄さんの表情は涙目どころではないし、鼻の頭まで赤くなっている。
そしてボソボソとした声で、やっと白状した彼は、私の視線に耐えかねたのか、視線を床に落として俯いた。
恐らく何もしなくても、あと数分もしないうちに、本気で泣き始めるはずだ。
でも…
「あのね…」
私は兄さんのインカム付きイヤホンを引っぺがすと、大きく息を吸いその耳元に向かって一気にまくし立てた。
「だぁから、そういう文句は私にだけ言えと、言ってるでしょうが~~~~~!!」
恐らく、かなりの大音量で。
「…マスター、今、夜中…」
ビックリして椅子から転げ落ちながら、兄さんは反射的にこちらを見上げ小さく呟く。
「黙らっしゃい」
けれどピシャリと一蹴されて、彼はグッと押し黙った。
「…あんたの言動は和み要素なの解ってたから、少しでも焦ってる気持ち落ち着かせてもらおうと思って、行って貰った訳だし。多少甘えさせてもらうとか、撫で繰り回されるだろうという事くらい、想定の範囲だったけどね…」
大仰に溜息を吐いて、背中を向ける。
「まさか、あっちの兄さんにケンカ売って来ようとはね…」
「ケンカなんて…売ってませんよ」
小さく憮然とした声が返って来た。
「じゃあ聞くけど、初対面の相手に、私への文句言われて、あんただったら怒らないで居られる?」
「…ぁ」
ようやく気が付いたのか、背後で小さく息を呑む声が聞こえる。
「そういう事。明日辺りまでは顔を出すんだから、ちゃんと謝っておくのよ。今度一緒に仕事するかも知れないんだからね」
「…はい」
「それと、幾ら可愛がってくれるからって、少しは空気読んで遠慮しなさいよ?」
「え?」
「言葉のまんま。よそ様のお家なんだから、あんたも少しは気を使えっていってんのよっ」
反応の余りの鈍さにイラッと来た私は、思わず振り返って両手で兄さんの頬を抓んでギューっと引っ張っていた。
「むぁ、むぁふふぁ~、い、いひゃいっ」
「お仕置きが、痛くなかったら、意・味・な・い・でしょ?!」
「わ、わくぁりむぁひふぁ、わくぁりむぁふぃたくぁら~」
私は涙混じりにわめく彼の、その頬を抓んだまま横に勢いよく引っ張りながら離した。
「じゃ、そこで正座してなさい。歯でも磨いてくるわ」
目の端に涙を滲ませつつ、頬をさすってる兄さんが言われた通りに居住まいを直したのを見届けて、私は部屋を出た。
甘えグセが付いたのは自分のせいとはいえ、先に我が家に来ていた妹のミクにまで、明白なヤキモチを妬くほど独占欲が強いという事に、彼自身の自覚がイマイチないのだ。(そのミクは兄に対しても意外なほど冷静で、最近はほぼ休眠状態で待機を命じられてても文句すら言わない)
そのせいか、どこか鈍いもする。
小さく溜息を吐きながら私は洗面所で歯を磨いて、洗い置きされているタオルを1枚失敬し、その足で台所へ向かう。
冷凍庫に珍しく買い置きして有ったのを思い出したからだ。
部屋に戻ってくると、涙でべしょべしょの顔で兄さんは律儀に正座して待っていた。
もともと長い説教をするのが苦手なので、私自身もここまでが限界だろう。
苦笑しながらその顔を、タオルで拭ってやった。
「今日のところは任務お疲れ。これ食べて落ち着いてよ」
そして隠し持っていたカップアイスをスプーン付きで差し出すと、それまで萎れていた彼の表情がパッと明るくなる。
その余りの判り易さに、声を殺して笑いながら、私は椅子に腰掛けなおす。
彼自身から、直に今日の報告を聞くために。